凪潔SS
「凪、売店いこ!」
にこにこの潔が、ベッドに仰向けで寝転がる俺の顔を覗き込んできた。
潔はさっきまでホテルについてるプールで泳ぎまくってたのに、大浴場で体を温め、ブッフェ形式の夕飯を食べたら体力回復したらしい。
俺はもーねむいけど。
でも、にこにこしながら「お菓子いっぱい買おーぜ!」ってはしゃいでる潔を見てたら、付き合ってあげてもいいかなって気になってきた。
ふぁ、と大あくびをして体を起こす。
潔は自分から誘ってきたのに、目を丸くしてから、きゅうっと目尻を跳ねさせて笑った。
その表情なにー。ちゅーしてもいいの?
背中を丸めて潔の顔を覗き込む。
無防備にきらきらした瞳で見上げてくる潔に負けて、ただほっぺをむにっとつまむだけですませてあげた。
「もち潔の全奢りっしょ。ごち〜」
「え……、」
ぽんぽんと潔の頭を撫でる。
潔自慢の双葉が俺の手のひらで潰れた。手を離すと復活する。
潔は唇を尖らせて「まぁいいけどさぁ、」と不服さをアピールをする。口端緩んでるけど。
そんなに売店のお菓子楽しみなのかな。きんつばはなさそうなのに。
「あのさ、いま、キスすんのかと思っちゃった」
「え?」
ドア近くの壁にかかった細長い鏡。そこで潔が立ち止まった。
鏡には、地味な色の館内着に身を包んだ俺と潔が映ってる。
潔は、耳たぶまで真っ赤にした自分に気づくと両腕で顔を隠してしまった。
「凪と旅行楽しくて。さすがに浮かれすぎだよな」
「ねぇ」
胸がむずむずする。くすぐったい。どーして潔はこんなに俺の衝動を刺激するのがうまいんだろ。サッカーでも、そうじゃない時でも。
力づくて潔の顔から腕を引き剥がして、鏡に潔の背中を押し付ける。
俺の腕に大人しくおさまった潔が眉尻を下げる。
照れて、困ってる顔だ。
潔が身じろぐから、掴んでた腕を解放する。
潔は胸元で手を彷徨わせて、それからぎゅっと俺の襟元を握った。
空気が変わる。
ちゅーしてもいいの雰囲気。
「Yes、Darling」
潔がうるうるの瞳を伏せる。
唇をくっつけあう。触れるだけじゃ足りなくて、角度を変えて啄んで、潔の股の間に足を入れる。
潔の体がふにゃふにゃになってきたから、そっと唇を離すと俺の胸に寄りかかってきた潔がそんな気なんてもうないくせに、売店の時間がどうのこうのとごにょごにょ呟いてくる。
めんどくさいから普段ならそのままベッドに引っ張ってて、うやむやにする。でも今日は、潔の茶番にちょっとだけ付き合ってあげることにした。
俺も浮かれてるのかな。全然いつもどーりのつもりだけど、そーいえば今日は朝から俺っぽくないことをしてみたくなる時がある。
「売店は明日帰る前に見よーよ」
「でも夜更かししてお菓子パーティしたいし、」
「そしたら近くのコンビニまで行けば良くない? アイス食べながら帰ってこよーよ」
なんて、コンビニいく体力残させるわけないじゃんね。潔もわかってるくせに、うんって頷いて笑ってた。
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