凪潔SS
朝起きると、潔の眠っていた枕元に、どでかい黒の紙袋が置いてあった。
紙袋には、三角を斜めに三分割したスタイリッシュな某スポーツブランドの白いロゴ。袋の右上にはギフトシールまでついている。
潔はツンっと冷えた部屋で鼻をすすって、寝ぼけた頭で、今日がクリスマスイブであることにようやく思い至った。
(そうか……クリスマス、クリスマスか~~~!)
袋を手に取る前に頭を抱えた。
潔は、今日がクリスマスイブであることがすっかり頭から抜け落ちていた。
潔は、隣で寝ていた白いサンタクロースに目を向ける。
さっきまで潔を抱き込んですやすや眠っていた凪は、潔が身体を起こしたせいで布団に入り込んできた寒気に目を覚まし、ベッドについた片腕で頭を支え、潔をみていた。
「潔いい子だからサンタ来たじゃん」
おはよ、とあくびまじりで挨拶をする凪は、自分の元にプレゼントがないことを気にする様子もない。
「凪、すまん、俺クリスマスだってすっかり忘れてた」
「べつにいーよ。ねえ、それより早く開けてくんない? 喜んでるとこが見たいんだけど」
凪は寝そべったまま手を伸ばして、潔の冷えた鼻をきゅっとつまむ。潔はうん、と頷いて枕よりも大きな紙袋に手を伸ばした。
紙袋をあけ、中に入っていた不織布の袋を取り出し、中から畳まれた衣類を取り出す。
袋の中には、ジャージの上下セットと、長袖と半袖のTシャツが二枚ずつ入っていた。
「うわ、すげえかっこいい! 似合うかな?」
声を弾ませた潔は、黒地にライムグリーンのロゴと肩に三本線が入ったジャージのジャケットを体に当てる。
「うん、かっこいい。ますます強そうに見える」
「そうかな? ありがと。このメーカーなら外でも着れるから、チーム練の時以外は使う!」
瞳を三日月にして笑った潔は、横向きに寝そべる凪の腕に飛び込んだ。
ジャージがベッドに落ち、潔に押しつぶされた凪は仰向けになって、潔の腰に腕をまわした。
ちゅっと軽い音を立て、柔らかいキスが凪の唇に触れる。
「……最高のクリスマスプレゼントどーも」
凪はわずかに唇を綻ばせると、潔の前髪をかきあげ、むきだしになった額に触れるだけのキスをした。
潔がくすぐったそうに笑う。
「……なあ、凪は何が欲しい?」
「べつに。潔の金で課金したいとは思わないし、なんもないかな」
凪の言葉に潔はちょっとだけ安堵する。
(一万ちょーだい。クリスマスガチャに課金する、とか言われなくて本当良かった。この流れで言われたら断れないとこだった)
潔はもぞりと身じろぎして、凪の腰上に座り直し、パジャマとして着ているスウェットの裾を両手でいじった。
「じゃあ……ですね、」
裾をぐにぐに引っ張っていじる自身の手元に視線を落とし、それからちらりと凪に視線を送る。
凪は、上半身を起こして潔に顔を近づけると、小首を傾げて潔の言葉を待った。
「…………は、俺とか、?」
「え? 全然聞こえない。なんて言った?」
きゅっと唇を結んだ潔は、顔を真っ赤にして「だから……」と視線をあちこちにさまよわせた。
「ぷ、プレゼントは、俺とか……? どーかな……って、さすがに寒いよな……はは」
やっぱ今のなし。
そう言って、凪の上から逃げようとする潔の腰を、凪は素早く掴んでベッドの上にくるりと押し倒す。
「全然寒くない。むしろ世界で一番熱い。最高じゃん。潔天才? 俺の一番欲しいもの、誰より一番よくわかってるね」
潔がぐにぐにしていたスウェットの裾から、凪の手が滑り込む。
潔は凪の背中に手をまわして、ぎゅっと自分を覆いつくしてしまう大きな体にしがみついた。肩に額を押し付け、呼吸に交えて「好き」を呟く。
凪が笑って、潔の好きな掠れた声で「俺も」と囁いた。
空調をつけていなかった寝室で、冷えていた唇が二つ重なって、熱を持つ。
今年一の大寒波が襲来したクリスマスイブの朝は、二人の熱でじりじりと溶けていくのだった。
紙袋には、三角を斜めに三分割したスタイリッシュな某スポーツブランドの白いロゴ。袋の右上にはギフトシールまでついている。
潔はツンっと冷えた部屋で鼻をすすって、寝ぼけた頭で、今日がクリスマスイブであることにようやく思い至った。
(そうか……クリスマス、クリスマスか~~~!)
袋を手に取る前に頭を抱えた。
潔は、今日がクリスマスイブであることがすっかり頭から抜け落ちていた。
潔は、隣で寝ていた白いサンタクロースに目を向ける。
さっきまで潔を抱き込んですやすや眠っていた凪は、潔が身体を起こしたせいで布団に入り込んできた寒気に目を覚まし、ベッドについた片腕で頭を支え、潔をみていた。
「潔いい子だからサンタ来たじゃん」
おはよ、とあくびまじりで挨拶をする凪は、自分の元にプレゼントがないことを気にする様子もない。
「凪、すまん、俺クリスマスだってすっかり忘れてた」
「べつにいーよ。ねえ、それより早く開けてくんない? 喜んでるとこが見たいんだけど」
凪は寝そべったまま手を伸ばして、潔の冷えた鼻をきゅっとつまむ。潔はうん、と頷いて枕よりも大きな紙袋に手を伸ばした。
紙袋をあけ、中に入っていた不織布の袋を取り出し、中から畳まれた衣類を取り出す。
袋の中には、ジャージの上下セットと、長袖と半袖のTシャツが二枚ずつ入っていた。
「うわ、すげえかっこいい! 似合うかな?」
声を弾ませた潔は、黒地にライムグリーンのロゴと肩に三本線が入ったジャージのジャケットを体に当てる。
「うん、かっこいい。ますます強そうに見える」
「そうかな? ありがと。このメーカーなら外でも着れるから、チーム練の時以外は使う!」
瞳を三日月にして笑った潔は、横向きに寝そべる凪の腕に飛び込んだ。
ジャージがベッドに落ち、潔に押しつぶされた凪は仰向けになって、潔の腰に腕をまわした。
ちゅっと軽い音を立て、柔らかいキスが凪の唇に触れる。
「……最高のクリスマスプレゼントどーも」
凪はわずかに唇を綻ばせると、潔の前髪をかきあげ、むきだしになった額に触れるだけのキスをした。
潔がくすぐったそうに笑う。
「……なあ、凪は何が欲しい?」
「べつに。潔の金で課金したいとは思わないし、なんもないかな」
凪の言葉に潔はちょっとだけ安堵する。
(一万ちょーだい。クリスマスガチャに課金する、とか言われなくて本当良かった。この流れで言われたら断れないとこだった)
潔はもぞりと身じろぎして、凪の腰上に座り直し、パジャマとして着ているスウェットの裾を両手でいじった。
「じゃあ……ですね、」
裾をぐにぐに引っ張っていじる自身の手元に視線を落とし、それからちらりと凪に視線を送る。
凪は、上半身を起こして潔に顔を近づけると、小首を傾げて潔の言葉を待った。
「…………は、俺とか、?」
「え? 全然聞こえない。なんて言った?」
きゅっと唇を結んだ潔は、顔を真っ赤にして「だから……」と視線をあちこちにさまよわせた。
「ぷ、プレゼントは、俺とか……? どーかな……って、さすがに寒いよな……はは」
やっぱ今のなし。
そう言って、凪の上から逃げようとする潔の腰を、凪は素早く掴んでベッドの上にくるりと押し倒す。
「全然寒くない。むしろ世界で一番熱い。最高じゃん。潔天才? 俺の一番欲しいもの、誰より一番よくわかってるね」
潔がぐにぐにしていたスウェットの裾から、凪の手が滑り込む。
潔は凪の背中に手をまわして、ぎゅっと自分を覆いつくしてしまう大きな体にしがみついた。肩に額を押し付け、呼吸に交えて「好き」を呟く。
凪が笑って、潔の好きな掠れた声で「俺も」と囁いた。
空調をつけていなかった寝室で、冷えていた唇が二つ重なって、熱を持つ。
今年一の大寒波が襲来したクリスマスイブの朝は、二人の熱でじりじりと溶けていくのだった。