凪潔SS
絶対にすれ違わない凪潔
「凪……実は俺、好きな人できたんだよね」
潔世一、一世一代の大勝負。勝率五〇……いや三〇……もしかして一〇パーセント以下の賭けに出ることにした。
その名も、好きな人に好きな人がいるって言ってみて、その反応でどう思われるか量る作戦だ。つまり、作戦名そのままの内容。
俺は、凪のことがす、好きだって最近自覚した。
自他ともに認めるめんどくさがり屋の凪は、なぜか度々時間を作って国境を越え、俺に逢いに来てくれる。一緒にいるうちに、凪の微かに感じなくもない優しさとか、日々鍛えられ成長していくフィジカルの素晴らしさとか、人間一年目かって言うくらいの不器用さに情が沸き、気付いたら凪のことが好きになっていた。
うぬぼれじゃなきゃ、凪も俺のコト……って、普通なら考える。でも、この天才の思考は未だ俺には読み切れないことがあった。
凪が俺に逢いにくる考えられる理由として、一番可能性が高いのは「潔に勝ちたいから。そのためにお前のことが知りたいんだ」ってやつだ。実際、言われたこともある。あとはまあ、次の移籍先にドイツチームを候補に入れている、とか。
凪は、俺のところに遊びにきても、スマホゲームで一人で遊んでることが多いし、ドイツにある日本のクラブハウスでのトレーニングには一緒に行くけど、それ以外は家に引きこもって俺と出掛けることはない。
俺が作った夕飯もマズけりゃ「うぇ~、マズいよコレ」とか普通にいうし、夜は俺のベッドの半分を占領してすぐにすやすや眠りだす。
うん、思い返してみても、やっぱり絶対に意識されてないな、コレ。
俺の勝率五パーセント以下の賭けの結果は、俺んちのソファに我が物顔で寝そべってる凪だけが握っている。
凪は、「んー」とスマホに向けていた視線で天井を見上げ、のっそりと身体を起こした。
凪がスマホを離したことで、ソファに仰向けになったスマホがゲームオーバーの表示を俺に見せつけてくる。
凪はソファに座り直し、床に正座している俺を見下ろして、柔らかで眠そうな榛色の瞳を瞬かせた。
「……それって俺のコト?」
凪が右手を首に当て首を傾げた。
「え……?」
「潔の好きな人、俺じゃなかったら、嫌なんだけど……」
凪が眉間に皺をよせ、唇を尖らせる。
「お、」
「お?」
「お前のことだよ……っ!」
気づいたら凪の胸倉をつかんでいた。そのまま力いっぱい引き寄せて、凪の唇を奪う。
「いっ!」
「ぶへっ」
勢い良すぎて、ガチンッと唇がぶつかったし、凪がバランスを崩して俺の上に倒れ込んできた。
「いってえ~……」
「俺のが痛かったし。へたくそ」
床にひっくり返った俺の上に被さった凪が、血のにじむ唇を親指で拭った。
「あ、すまん。切れちゃったな」
「ん、……ねえ、潔。キスはさ、たぶんこーやってするんだよ」
凪が俺の顔の横に腕をついて、そうっと唇を近づけてきた。ちゅっと音を立てて、(血で)赤い唇が離れて行く。
「たぶん?」
「だって、俺もはじめてだし。こーした方が気持ちよくない?」
「……こう?」
凪の肩に手をかけて、凪の真似をしてゆっくりそっと血のにじむ唇に唇を押し付けた。ちゅって音は出せなかった。
「そー。まだ下手だけど、俺といっぱいしてるうちに、上手になるでしょ」
凪が俺と額を擦り合わせて、鼻先をくっつけてくる。至近距離で凪と目を合わせていると、深い色をした瞳に吸い込まれそうになった。
「なんか……気のせいじゃなかったら、凪……俺のコトすげえ好きって目してない……?」
「んー、今まで押さえてた分、我慢できなくなったかも」
凪がそう言って、床についていた手をぐーっと伸ばして、俺に全体重をかけ、そのでかい身体で押しつぶしにかかってきた。
「ぐぇ、凪、重……っ!」
「俺の気持ちはもっと重いから、これから覚悟してよね、潔」
「……俺だってそーだからな」
血が渇き始めた唇が、触れあう。
――こうして、実は勝率一〇〇だった賭けに、俺は勝ったのだった
「凪……実は俺、好きな人できたんだよね」
潔世一、一世一代の大勝負。勝率五〇……いや三〇……もしかして一〇パーセント以下の賭けに出ることにした。
その名も、好きな人に好きな人がいるって言ってみて、その反応でどう思われるか量る作戦だ。つまり、作戦名そのままの内容。
俺は、凪のことがす、好きだって最近自覚した。
自他ともに認めるめんどくさがり屋の凪は、なぜか度々時間を作って国境を越え、俺に逢いに来てくれる。一緒にいるうちに、凪の微かに感じなくもない優しさとか、日々鍛えられ成長していくフィジカルの素晴らしさとか、人間一年目かって言うくらいの不器用さに情が沸き、気付いたら凪のことが好きになっていた。
うぬぼれじゃなきゃ、凪も俺のコト……って、普通なら考える。でも、この天才の思考は未だ俺には読み切れないことがあった。
凪が俺に逢いにくる考えられる理由として、一番可能性が高いのは「潔に勝ちたいから。そのためにお前のことが知りたいんだ」ってやつだ。実際、言われたこともある。あとはまあ、次の移籍先にドイツチームを候補に入れている、とか。
凪は、俺のところに遊びにきても、スマホゲームで一人で遊んでることが多いし、ドイツにある日本のクラブハウスでのトレーニングには一緒に行くけど、それ以外は家に引きこもって俺と出掛けることはない。
俺が作った夕飯もマズけりゃ「うぇ~、マズいよコレ」とか普通にいうし、夜は俺のベッドの半分を占領してすぐにすやすや眠りだす。
うん、思い返してみても、やっぱり絶対に意識されてないな、コレ。
俺の勝率五パーセント以下の賭けの結果は、俺んちのソファに我が物顔で寝そべってる凪だけが握っている。
凪は、「んー」とスマホに向けていた視線で天井を見上げ、のっそりと身体を起こした。
凪がスマホを離したことで、ソファに仰向けになったスマホがゲームオーバーの表示を俺に見せつけてくる。
凪はソファに座り直し、床に正座している俺を見下ろして、柔らかで眠そうな榛色の瞳を瞬かせた。
「……それって俺のコト?」
凪が右手を首に当て首を傾げた。
「え……?」
「潔の好きな人、俺じゃなかったら、嫌なんだけど……」
凪が眉間に皺をよせ、唇を尖らせる。
「お、」
「お?」
「お前のことだよ……っ!」
気づいたら凪の胸倉をつかんでいた。そのまま力いっぱい引き寄せて、凪の唇を奪う。
「いっ!」
「ぶへっ」
勢い良すぎて、ガチンッと唇がぶつかったし、凪がバランスを崩して俺の上に倒れ込んできた。
「いってえ~……」
「俺のが痛かったし。へたくそ」
床にひっくり返った俺の上に被さった凪が、血のにじむ唇を親指で拭った。
「あ、すまん。切れちゃったな」
「ん、……ねえ、潔。キスはさ、たぶんこーやってするんだよ」
凪が俺の顔の横に腕をついて、そうっと唇を近づけてきた。ちゅっと音を立てて、(血で)赤い唇が離れて行く。
「たぶん?」
「だって、俺もはじめてだし。こーした方が気持ちよくない?」
「……こう?」
凪の肩に手をかけて、凪の真似をしてゆっくりそっと血のにじむ唇に唇を押し付けた。ちゅって音は出せなかった。
「そー。まだ下手だけど、俺といっぱいしてるうちに、上手になるでしょ」
凪が俺と額を擦り合わせて、鼻先をくっつけてくる。至近距離で凪と目を合わせていると、深い色をした瞳に吸い込まれそうになった。
「なんか……気のせいじゃなかったら、凪……俺のコトすげえ好きって目してない……?」
「んー、今まで押さえてた分、我慢できなくなったかも」
凪がそう言って、床についていた手をぐーっと伸ばして、俺に全体重をかけ、そのでかい身体で押しつぶしにかかってきた。
「ぐぇ、凪、重……っ!」
「俺の気持ちはもっと重いから、これから覚悟してよね、潔」
「……俺だってそーだからな」
血が渇き始めた唇が、触れあう。
――こうして、実は勝率一〇〇だった賭けに、俺は勝ったのだった