凪潔SS
「凪って大人の人と付き合ってそう」
好きな子(16)が鈍感バカすぎて救えない。
ブルーロックから二週間の脱獄を許されて7日目。
うちに遊びに来た潔と一緒に、サブスクでランキング上位に入っていた洋画を観ていた。
ベッドを背もたれに二人で並んで座って、目の前で繰り広げられる濃厚なキスシーン。
気まずそうに視線を伏せる潔の横顔を眺めていたら、突然潔が血迷ったことを言い出した。
柄にもなく浮ついていた気持ちが地の底に落ちる。
「……なんで?」
俺の低くなった声にも気づかないで、潔は小首を傾げた。
「んー、こういう映画さらっと選ぶとことか?」
「じゃあ潔だったら、好きな子と二人っきりのときどんな映画選ぶの?」
「え…………」
腕を組んだ潔はしばらく考え込んで、何度も地上波で再放送されてるアニメ映画の名前を答えた。
潔の一言でムッとした気持ちが、潔の無垢さで解消されていく。
俺はけっこー潔に甘め。
「じゃあ、今度はそれ観よ?」
立てた片膝に頬を押しつけ、潔を見上げる。
潔には全然意味が通じてなくて、「そーだな」って頷かれただけで会話が終わってしまった。
……むー。
「あと、俺どっちかってゆーと、年下のが好き」
「ぇ、そーなん?」
「うん、11ヶ月くらい下がちょーど良い」
「……やけに細かくね?」
潔がようやく疑問を抱いた。
もはやBGMと化したラブストーリーが『I love you』を告げる。
「潔は年上の相手がいいよ、11ヶ月くらい」
ポカンと口を開けた潔が、間抜けヅラで俺にやっと視線を向けた。
首筋からじわりと赤く染め上げた潔の手を掴むとやけに熱い。
「……たった11ヶ月差で年上アピールすんな」 きゅっと眉間に皺を寄せた潔が真っ赤な顔で、困った顔をした。
ぎゅっと握った手はまだ振り解かれない。
「……脈ありっすか?」
膝から頬を離して、潔をまっすぐ見つめる。
潔は呻きながら床に亀みたいに突っ伏した。
「わかんねーよ、……ライバルとか、友だちだって、思ってたし、」
くぐもった声が、「でも、ドキドキする」って白状する。
ほんと、こいつの素直で隠し事できないとこ可愛くてすき。
「ねー、やばい。潔が可愛すぎて死にそー」
「……知らんし、」
「知って。ほら、すげードキドキしてんの」
握ったままだった手を強制的に俺の心臓に押し当てる。
亀潔は、そろりとりんごみたいな色した顔をあげて、ぷっと吹き出した。
「マジですげー音……」
「でしょ。ねー、潔」
「……なに?」
体を起こして座り直した潔に、ゆっくり顔を近づける。
潔は逃げればよかったのに、思いっきり目を瞑って、顎を上げた。
据え膳、いただきます。
潔の唇に、微かに触れて離れる。
目を開けた潔は、指先で唇をなぞって「手がはえーよ」と、ぼやいた。
潔の顎を親指と人差し指で挟んでまた顔を上げさせる。
潔は今度も目を瞑った。眉間の力は一回目より抜けている。
セカンドキスは、さっきより長めに。啄むように三回目、四回目と奪っていくと、仰け反りすぎた潔が床にひっくり返りそうになった。首の後ろを掴んで潔が倒れないよう補助する。
八回目に触れた時、キラキラの涙の膜を張った青い目が開いた。
慌てて唇を離す。
「凪、俺、初心者だから……、」
「俺も。がっついてごめん」
濡れた潔の唇を親指で拭って謝る。
潔のへにょりと下がった眉の間に唇で触れると、潔は額を抑え、また亀になってしまった。
♡ ♡ ♡
「なぎ、もう昼だぞー……」
ほっぺに優しい雨が降る。
柔らかな温もりに誘われ、うっすら目を開けると、視線の斜め下、シーツの海に溺れた潔がまだ眠そうな目を細めていた。
「ん〜……」
潔の頭の下で枕化してた左腕を曲げ、青味がかった前髪を撫でる。
右肩をベッドから浮かせて、猫みたいに目を弧にした潔のこめかみに唇を寄せた。
「おはよ、シュガー。朝からかわいーことしてんね」
手を伸ばした潔が俺の頬を両手で掴んだ。
むにーとほっぺをつねられるけど、痛みに負けず潔の顔中にキスの雨を降らせる。
唇に触れると、観念した潔がシーツの海にぱたりと腕を投げ出した。
キスしたまま潔に覆い被さって、放置された腕をなぞり、たどりついた手に指を絡める。
「……ン、誰が、シュガーだって?」
キスの合間に潔が笑った。
「甘いの、凪の方じゃん」
まーね。これくらい甘々でわかりやすい方がいーでしょ、潔は。よけいな勘違いとかされたくないし。
……って言うのはめんどくさくて、つんっと小突くようにノーズキスをした。
普段遠距離でなかなか逢えない分、逢えた時のスキンシップはダイジ。長持ちの秘訣だって、昔見たドラマか映画で誰かが言ってた。
鼻を擦った潔が照れ臭そうに、ぼそぼそと使い古されたフレーズを口にする。
やっぱ甘いの、お前の方だよ潔。
好きな子(16)が鈍感バカすぎて救えない。
ブルーロックから二週間の脱獄を許されて7日目。
うちに遊びに来た潔と一緒に、サブスクでランキング上位に入っていた洋画を観ていた。
ベッドを背もたれに二人で並んで座って、目の前で繰り広げられる濃厚なキスシーン。
気まずそうに視線を伏せる潔の横顔を眺めていたら、突然潔が血迷ったことを言い出した。
柄にもなく浮ついていた気持ちが地の底に落ちる。
「……なんで?」
俺の低くなった声にも気づかないで、潔は小首を傾げた。
「んー、こういう映画さらっと選ぶとことか?」
「じゃあ潔だったら、好きな子と二人っきりのときどんな映画選ぶの?」
「え…………」
腕を組んだ潔はしばらく考え込んで、何度も地上波で再放送されてるアニメ映画の名前を答えた。
潔の一言でムッとした気持ちが、潔の無垢さで解消されていく。
俺はけっこー潔に甘め。
「じゃあ、今度はそれ観よ?」
立てた片膝に頬を押しつけ、潔を見上げる。
潔には全然意味が通じてなくて、「そーだな」って頷かれただけで会話が終わってしまった。
……むー。
「あと、俺どっちかってゆーと、年下のが好き」
「ぇ、そーなん?」
「うん、11ヶ月くらい下がちょーど良い」
「……やけに細かくね?」
潔がようやく疑問を抱いた。
もはやBGMと化したラブストーリーが『I love you』を告げる。
「潔は年上の相手がいいよ、11ヶ月くらい」
ポカンと口を開けた潔が、間抜けヅラで俺にやっと視線を向けた。
首筋からじわりと赤く染め上げた潔の手を掴むとやけに熱い。
「……たった11ヶ月差で年上アピールすんな」 きゅっと眉間に皺を寄せた潔が真っ赤な顔で、困った顔をした。
ぎゅっと握った手はまだ振り解かれない。
「……脈ありっすか?」
膝から頬を離して、潔をまっすぐ見つめる。
潔は呻きながら床に亀みたいに突っ伏した。
「わかんねーよ、……ライバルとか、友だちだって、思ってたし、」
くぐもった声が、「でも、ドキドキする」って白状する。
ほんと、こいつの素直で隠し事できないとこ可愛くてすき。
「ねー、やばい。潔が可愛すぎて死にそー」
「……知らんし、」
「知って。ほら、すげードキドキしてんの」
握ったままだった手を強制的に俺の心臓に押し当てる。
亀潔は、そろりとりんごみたいな色した顔をあげて、ぷっと吹き出した。
「マジですげー音……」
「でしょ。ねー、潔」
「……なに?」
体を起こして座り直した潔に、ゆっくり顔を近づける。
潔は逃げればよかったのに、思いっきり目を瞑って、顎を上げた。
据え膳、いただきます。
潔の唇に、微かに触れて離れる。
目を開けた潔は、指先で唇をなぞって「手がはえーよ」と、ぼやいた。
潔の顎を親指と人差し指で挟んでまた顔を上げさせる。
潔は今度も目を瞑った。眉間の力は一回目より抜けている。
セカンドキスは、さっきより長めに。啄むように三回目、四回目と奪っていくと、仰け反りすぎた潔が床にひっくり返りそうになった。首の後ろを掴んで潔が倒れないよう補助する。
八回目に触れた時、キラキラの涙の膜を張った青い目が開いた。
慌てて唇を離す。
「凪、俺、初心者だから……、」
「俺も。がっついてごめん」
濡れた潔の唇を親指で拭って謝る。
潔のへにょりと下がった眉の間に唇で触れると、潔は額を抑え、また亀になってしまった。
♡ ♡ ♡
「なぎ、もう昼だぞー……」
ほっぺに優しい雨が降る。
柔らかな温もりに誘われ、うっすら目を開けると、視線の斜め下、シーツの海に溺れた潔がまだ眠そうな目を細めていた。
「ん〜……」
潔の頭の下で枕化してた左腕を曲げ、青味がかった前髪を撫でる。
右肩をベッドから浮かせて、猫みたいに目を弧にした潔のこめかみに唇を寄せた。
「おはよ、シュガー。朝からかわいーことしてんね」
手を伸ばした潔が俺の頬を両手で掴んだ。
むにーとほっぺをつねられるけど、痛みに負けず潔の顔中にキスの雨を降らせる。
唇に触れると、観念した潔がシーツの海にぱたりと腕を投げ出した。
キスしたまま潔に覆い被さって、放置された腕をなぞり、たどりついた手に指を絡める。
「……ン、誰が、シュガーだって?」
キスの合間に潔が笑った。
「甘いの、凪の方じゃん」
まーね。これくらい甘々でわかりやすい方がいーでしょ、潔は。よけいな勘違いとかされたくないし。
……って言うのはめんどくさくて、つんっと小突くようにノーズキスをした。
普段遠距離でなかなか逢えない分、逢えた時のスキンシップはダイジ。長持ちの秘訣だって、昔見たドラマか映画で誰かが言ってた。
鼻を擦った潔が照れ臭そうに、ぼそぼそと使い古されたフレーズを口にする。
やっぱ甘いの、お前の方だよ潔。