モブになった僕&私が降新のラブを目の当たりにする話
降新にあてられるモブな私♂♀(当て馬や見守り設定)
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島で唯一のおまわりさん×移住してきた探偵くどくん
「大事件だわ……」
頭痛で痛む頭を抱える。
机に突っ伏すと幼馴染の(この島で同じ年代に生まれた子供は強制的に全員幼馴染となるわけだけど!)ナツミが、スマホをいじりながら「へえ〜」とどうでも良さそうに相槌を打った。
おもっくそため息をつく。
「あんたはいいよね。悩みなんか一つもなさそうで……」
「葵衣はいっつもどうでもいいことで悩んで、暇そうでいいよね〜」
ああいえばこういう。顔をあげ視線をぶつけあう。一瞬の攻防。ナツミがわざとらしくため息を吐き、スマホを机の上に伏せた。
「……で、今度はなにで悩んでるわけ?」
さすが幼馴染で一番話のわかる女。なんだかんだでいつも話を聞いてくれるナツミはみんなの姉貴分的存在で、校内一人気がある。まあ、ナツミの一番は私だけどね!
「あのさあ……先週東都からこの世のものとは思えん造形美の探偵さんが来たでしょ?」
「ああ、葵衣が好きな漫画のキャラ似てるって騒いでたやつ」
「そうなの! っていうか調べたら、逆だった! 原作者がファースト様のモデルにした元高校生探偵っていうのがあの探偵さんだったんだって!」
「それが大事件?」
「ちがうんよ! それはもう大事件だけど、ちがくてさ……昨日、わたしさ、あんまミーハーみたいな真似はしたくなかったんだけど? でもせっかくファースト様のモデルになった方と話すチャンスがあるなら、今後の創作に活かせるかもしれんし、って、おもってさ、」
ごくり。唾を飲み込む。
「でも至近距離にあんな……、こんなジジババだらけの島では見たことのない美形がいて、隠キャの私が話せると思うか?」
ナツミが半眼で呆れたように私を見た。
「なるほど? まーた去年やってきた駐在さんの時みたいに後をつけて回ったって?」
「つけたなんて人聞きが悪いこと言わんで! 話すタイミングを見計らってただけ!」
ナツミに言われて去年の出来事を思い出す。
去年のちょうど同じくらいの時期に、定年を迎えた島の駐在さんの代わりに、この島に若いおまわりさんがやってきた。
この島では見たことのない長身で、きっとモデル体型ってこう言う人のことを言うんだろうってくらい足が長くて顔の小さいお兄さん。
私が生まれてからずっと、こんなおじいちゃんがもしもの時本当に島の平和を守れるのか? むしろうちのお父ちゃんのが強いかもしれん…っていうくらいヒョロヒョロのおじい…おじさんしかいなかったのに随分な変わりようだった。
年齢は二十代後半くらい、いつもボサボサの黒髪で、黒縁の大きなメガネでスタイルの良さを相殺しているけど、その物腰の柔らかさと親切さでいまやお母ちゃんらのアイドルと化してる。
そのおまわりさんが島に赴任してきたとき、きっと都会で大失態をやらかし左遷されたおまわりさんか、それともこの島になにか不穏な動きがあってもしもの時のためやってきた凄腕の警察官なのかもしれないと思って、しばらくおまわりさんの周りをこっそり探っていたのだ。
まあ、すぐに見つかっておまわりさんから「都会の喧騒に疲れてしまってね。そこでちょうどこの島の駐在さんが定年になるって聞いて、自分から異動を申し出たんだ」って理由を教えてもらったんだけど。
現実は漫画やドラマみたいに刺激的じゃない。
……はずだった。
「あ〜……もう、こんなちっぽけな島でこんなラブロマンスが始まるなんて、わたしはどうしたらいいの!」
机を拳で思いっきり叩く。ナツミが肩を跳ねさせた。
「ちょお、突然なに? その探偵さんと島の誰かが恋に落ちたの?」
「そう、そうなんよ……」
ナツミが瞳を輝かせる。
「えっ、誰!! アキコ先生? ちふゆねーちゃん?」
「全然ちがう……」
「サオリちゃん? マユ姉? うそ、ちがうの……ってことは、まさか不倫……?」
「なんでよ! もっといるでしょ! この島の若くて人気者が! 駐在さんよ!」
「……は? あんた現実と夢の区別もつかんくなったの」
ナツミの興味関心が一気に失せたのが見てとれる。スマホを再びいじりだすナツミを横目に、机に頬杖をつく。
信じられないのなら信じなくていい。
私だっていくらなんでも、二人が夜の駐在所でキスをしてたことを言いふらしたりしないんだから。
……つっても、暗くてよく見えなかったんだけど。……やっぱ幻覚だったのかな、自信なくなってきた。
昨日、夕日で赤く染まった駐在所で長身の影が二つ重なったのを思い出す。
『きみが……どうしてここに?!』
『逢いたくて、追ってきちゃいました……』
『困った人だな……でも、僕もずっと、きみに逢いたかった……』
『駐在さん……!!』
会話は聞こえなかったから全部妄想だけど、遠目にも親しげな様子で駐在さんに話しかけた探偵さんの頬に、駐在さんが手を伸ばしたまでは現実だったような気がする。
そのあとは興奮による酸欠で意識が朦朧としてきてよく覚えてないんだけど。
「……まさかの愛の逃避行、か」
「葵衣、現実戻ってきてー! そろそろ帰るよー!」
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