モブになった僕&私が降新のラブを目の当たりにする話
降新にあてられるモブな私♂♀(当て馬や見守り設定)
名前変換設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
首筋にチリチリと焼けるような視線を感じる。
振り返りたいのをぐっと堪え、隣で僕の腕を組む山田に視線を向けた。……ふりをして、山田の向こうにある、ショーウィンドウを見た。
良く磨かれたショーウインドウは外界を反射し、鏡のような役割を期待できる。
僕の後ろには、すごい目つきをして僕を睨みつけている最愛の恋人がいる。
彼の名前は、工藤新一。
少しばかりやきもちやきの可愛い年下の恋人だ。
しかめっ面で唇を尖らし、日本警察の救世主とも呼ばれる探偵であるのに、気配を殺せずバレバレの尾行をしていることに笑ってしまいそうになる。
「あの、ふ、安室さん?」
「ああ、気にしないで」
綻んだ唇を隠さずに、山田を見下ろす。
山田は、今年公安部に配属されたばかりの警察官だ。
普段は風見が指導に当たっているが、風見には別途頼みたい仕事があり、その間だけ僕が預かることにした。
今は、その山田と恋人のふりをしてマルタイを尾行中だった。少しでもマルタイが尾行を気にする素振りをすれば即解散となってしまうだけあって、山田は気を張りつめすぎている。
この調子だと、恐らく尾行の継続は難しいだろう。
チラリと、マルタイが後ろを気にする素振りを見せた。マルタイの後方から離脱し、山田を伴ったまま一番近くにあったデパートの入口に入る。
「え……、?」
真っ青な顔をする山田の肩を軽く叩いた。
髪で隠れたインカムに手をあて、他の班にも尾行の中止を指示する。
そのままデパートをぐるりと一周したあと、外に出て庁舎に戻ることにした。
♡ ♡ ♡
「ずいぶんデレデレした顔してたじゃねぇか」
家の扉を開けると、仁王立ちになった恋人が腹を立てていた。
かわいい。
思いっきり抱きしめようとすると僕の手を振り払って、新一はそっぽを向いてしまった。
「デレデレなんかしてないよ」
「してた。ぜってぇしてた。心が浮ついたら浮気だからな」
「僕の心が浮つくのは、新一くんにだけだよ」
「うそつき」
「嘘じゃないさ。きみが一番よく知っているはずだろう」
新一の腰を抱いて、身体を引寄せる。
まだ視線を合わせてはくれないけれど、今度は抵抗せずに僕の腕に収まってくれた。
額に唇を押し付ける。
じわりと目尻を桜色に染めた新一くんが俯いた。
あともう少しだ。
指先でするりと頬を撫で、「新一」と熱を込めて名前を呼ぶ。
ぽぽぽっと可愛らしく新一の顔から首筋までが、林檎のような色になった。
「し……」
「高塚譲」
「は?」
もう一度、名前を呼ぼうとした僕の声を、新一が別の男の名前で遮った。
聞き覚えがありすぎる名前だ。声から熱が抜け、氷点下に下がる。
新一は、僕の機嫌などには頓着せず、ニッといたずらっ子のように笑った。
「零さんたちが追ってた男だろ? ここ最近の行動まとめたデータならあるぜ」
思わず頭を抱え、溜息をつく。
新一があの僕の姿を見て、大人しく見逃すはずがなかったのだ。
新一は弧にした瞳の奥に、メラメラと嫉妬の炎を燃やし、挑むような視線を僕にぶつけてきた。
1/7ページ