同棲設定
「性欲つよめです!発散させてくれる方募集」「経験すくなめです。やさしいエッチなひとがすきです」「らぶりつで制服フェラ動画DMでおくります」「フォロー、RTでスタンプなしえち画像送ります」「すぐあえるかたとえちしたいです」「濃厚精液ぶっかけてください」
目に飛び込んでくる破廉恥な言葉の羅列と、肌の露出が多い画像にスマホからそっと目を逸らした。
ハッシュタグ、裏アカ女子。会員制SNSでそう検索すると、欲に塗れた投稿の数々が表示される。
「……これに成りすますって、どうすりゃいいんだよ」
頭を抱え、スマホからそらしたばかりの視線をいやいや元に戻した。
……嫌々だから、怒らないでくれよ、零さん。
心の中で、仕事中の恋人に謝罪をし、恋人じゃない人間のほぼ裸体の画像を見続けることに専念した。
事の発端は、大学の友人から、人探しの依頼を持ち込まれたことにある。「裏アカ繋がりで知り合った女の子がトラブルに巻き込まれている可能性があるから探してほしい」と、そいつはかなり思い詰めた表情でオレに相談をしてきた。
裏アカとはつまり、SNSで自身がメインで使っているアカウントとは別に秘密裏に名前を隠し持っているアカウントのことらしい。そのアカウントの運用方法は人によって様々で、愚痴を吐くのに使うやつもいれば、情報収集に利用したり、隠れた趣味の仲間と繋がるために使用したりするのだそうだ。
友人は、性欲の発散目的で裏アカを作ったと、話辛そうに教えてくれた。
そのSNSには、裏アカ女子というタグがあり、そのタグを検索すると、露出の激しい写真や、えっちな動画を投稿したりして男性との出逢いを求めたり、金銭的な援助を募ったりしている女の子を見つけられるようになっているそうだ。
友人は、好奇心でそのタグを検索し、偶然見つけた好みの女の子とメッセージのやりとりをしたあと、実際に何度か会ってデートをしたという。
『来週もフォロワーさんと会うんだけど、その人ちょっと面倒かもしれなくて悩んでるんだよね』
最後に友人に会った時、友人にぼやいた彼女は、その週末から毎日ログインしていたSNSにも浮上しなくなり、メッセージアプリにも既読がつくこともなくなったらしい。
「親バレでスマホ取り上げられた、とか、俺のこと面倒になって切ったとかならいいんだけど、なんか嫌な予感してさ……頼むよ、工藤! あの子が無事かどうかだけでも調べてくれないか?」
頭を下げた友人に、住所や居場所などが判明しても教えないことを条件に、調査を開始したのが先月の話。
彼女がSNSのプロフに書いていた誕生日や出身地、投稿していた画像の背景などから情報を抜き出し、彼女のメインアカウントを特定した。メインアカウントの方も、裏アカと同じ日からログインしなくなっていたのが気になり、メインアカに書かれていた大学に聞き込みにいくと、彼女は学校も欠席していることがわかった。大学の友人が心配してメッセージをするもやはり既読にならず、大学近くにある一人暮らしのアパートを訪ねても留守だった。
こうなると、彼女の言っていた「面倒なフォロワー」が事情を知っている可能性がありそうだ。
そこで友人に、もう一度他にわかることはないのかと聞くと、迷ったように他にも急にログインしなくなった女の子のアカウントが二つあることを教えてくれた。
一人とはまだDMでのやりとりだけで会っていなかったが、もう一人とは会っていて、そちらも次の日に新しいフォロワーと会うと言っていたらしい。
三人の女性には裏アカ女子であること以外にも共通点があった。髪がかなり明るい金色で、色白、メイクは濃い目、そして巨乳。
そういえばこの友人が飲み会で好みのタイプを聞かれ「金髪白ギャル」と言っていたのを思い出した。
どうでもいい。
オレは、他の二人の特定と、行方不明になっている子の最後の足取りを探りつつ、なにか他の手がかりを掴めるかもしれないと考え、裏アカ女子に成りすますことにした。
雰囲気を掴むために、裏アカ女子の投稿を遡れるだけ遡り、なんとなく傾向を理解した。
外見は、三人の女性に近づけることにした。金髪というより白に近いウェーブでくるくるのウィッグを被り、ばっちり猫目のメイクに、ブラウンのカラコンを入れる。阿笠博士に頼んで作ってもらったシリコン製の乳を胸に装着すると、立派な谷間が出現した。メロンくらいある。
誰も見てないから、つい両手で乳を抱えてゆさゆさしてしまった。すげー。
「って、……こんなことしてる場合じゃねえな」
こほん、と咳払いをして、気を取り直す。
通販で用意した白いレースのブラジャーをシリコンおっぱいの上に装着し、 真っ白でぬいぐるみのようにもこもこしたルームウェアのパーカーを羽織る。チャックは全開のままだ。下は、同じようにもこもこしたショートパンツ。一応履いておくけど、なるべくカメラには足を映さないようにしねーと、男だってバレそうだ。サッカーで鍛えた太ももは女性のような柔らかさとは無縁だった。
スマホをインカメラにして、自分の前にかざす。左手は股の上に置き、右手はカメラを握りながらも、両腕で胸を挟み、谷間を強調する。ピンクのグロスを引いた唇をアヒル口にし、シャッターを切った。
スマホには、女装したオレの写真が写っていた。勝負はここからだ。加工アプリを起動し、撮ったばかりの画像をとりこみ、女性用の顔に加工していく。
ちまちま自分の顔をいじって、工藤新一の痕跡がほとんど消えたところで手を止めた。
このために取得していたSNSアプリを開く。プロフは既に設定済みだ。
『20↑168せんち。えふかっぷ。経験人数すくないです。DMきぶんでかえします』
さっきの画像を使い、胸の谷間部分だけアイコンに設定する。
『はじめまして、めいです。なかよくしてね #裏アカ女子』
加工した画像とともにそう投稿すると、すぐにいいねが押された。
「お、もう見てるやついんのか」
しばらく放置して様子を見ようと思っていたけれど、『りくえすとあったら、DMで』と呟いてみた。すぐにDMに通知がつく。それも一件じゃなくて、二件だ。
『こんばんは。僕のおちんぽ辛口評価してくれませんか?』
気分の悪くなる画像付きだった。
「おえ……」
無視。
『こんばんは。おっぱいの画像ほしいです』
「え~……どうすっかな」
DMの送り主のアカウントをチェックしようとすると、DMの通知が一気に増えた。一応全て開いてみる。変な画像がついているのもあるし、いきなりDMでセックス始めたやつもいた。
返事をするやつを厳選しようと、アカウントを見極めることにした。
「あ、こいつ……」
急にDMでセックスしようと言い出して『くちゅ……ちゅぷっ、』と書きだし始めたやつのフォローしているアカウントを見ると、友人が言っていた連絡のとれなくなった三人の女の子を全員フォローしていることがわかった。とはいっても、フォロー数が283人もいるから、ただの偶然だっていう可能性も高いけど。
『ん……っ、きゅうに、はげし……っ』
手始めにこいつとやりとりしてみようと、DMに文字を打ち込む。送信ボタンを押そうとした瞬間、ポンッと肩を叩かれた。びくりと肩が跳ねる。スマホが手から抜き取られた。
「やあ、新一くん。随分楽しそうなことをしているね」
背後から地を這うような低い声が空気を震わせた。ひ、と声にならない悲鳴が漏れる。
「ほぉー……」
振り向かなくてもわかる。青筋立てた恋人が、背後に立って、オレのスマホを見ている。
「新一くん」
「……はい」
脳内では怒った零さんが、お仕置きだって言ってオレのもこもこパーカーを剥ぎ取っていた。そういうことをされても仕方ない、と思う。
心臓が激しく脈打つ。恐る恐る振り向く。眉間に皺を寄せた零さんは、溜息を吐いた。
「正座」
「は?」
「いいか。きみ、これは立派な浮気だぞ。そこに座れ」
腕を組んだ零さんは、しかめっ面でソファを指さした。もう一度、「は?」と言う。再び「正座」と指示された。
はやく、と苛立った声に急かされ、ソファの上に正座をする。降谷さんは仁王立ちになり、深い深い溜息をついた。
それから二時間、降谷さんの説教はみっちり続いた。
「こんなふしだらな子に育てた覚えはない」だとか、「きみの貞操観念を教育し直す必要があるようだ」とか、ぐちぐちぐちぐちうるせー零さんは、オレにえっちなことを教え込んだことを棚にあげて、文句を言い続けた。
渾身の出来だった裏アカは、零さんの手により即削除されてしまっていた。
「えっちなお仕置きしねえの?」
「きみが喜ぶから今日はしない」
ガチギレの零さんに放置され、その日は同じベッドで寝たのに指一本触れてもらえなかったし、後日、貞操観念についてのレポートを提出させられた。
目に飛び込んでくる破廉恥な言葉の羅列と、肌の露出が多い画像にスマホからそっと目を逸らした。
ハッシュタグ、裏アカ女子。会員制SNSでそう検索すると、欲に塗れた投稿の数々が表示される。
「……これに成りすますって、どうすりゃいいんだよ」
頭を抱え、スマホからそらしたばかりの視線をいやいや元に戻した。
……嫌々だから、怒らないでくれよ、零さん。
心の中で、仕事中の恋人に謝罪をし、恋人じゃない人間のほぼ裸体の画像を見続けることに専念した。
事の発端は、大学の友人から、人探しの依頼を持ち込まれたことにある。「裏アカ繋がりで知り合った女の子がトラブルに巻き込まれている可能性があるから探してほしい」と、そいつはかなり思い詰めた表情でオレに相談をしてきた。
裏アカとはつまり、SNSで自身がメインで使っているアカウントとは別に秘密裏に名前を隠し持っているアカウントのことらしい。そのアカウントの運用方法は人によって様々で、愚痴を吐くのに使うやつもいれば、情報収集に利用したり、隠れた趣味の仲間と繋がるために使用したりするのだそうだ。
友人は、性欲の発散目的で裏アカを作ったと、話辛そうに教えてくれた。
そのSNSには、裏アカ女子というタグがあり、そのタグを検索すると、露出の激しい写真や、えっちな動画を投稿したりして男性との出逢いを求めたり、金銭的な援助を募ったりしている女の子を見つけられるようになっているそうだ。
友人は、好奇心でそのタグを検索し、偶然見つけた好みの女の子とメッセージのやりとりをしたあと、実際に何度か会ってデートをしたという。
『来週もフォロワーさんと会うんだけど、その人ちょっと面倒かもしれなくて悩んでるんだよね』
最後に友人に会った時、友人にぼやいた彼女は、その週末から毎日ログインしていたSNSにも浮上しなくなり、メッセージアプリにも既読がつくこともなくなったらしい。
「親バレでスマホ取り上げられた、とか、俺のこと面倒になって切ったとかならいいんだけど、なんか嫌な予感してさ……頼むよ、工藤! あの子が無事かどうかだけでも調べてくれないか?」
頭を下げた友人に、住所や居場所などが判明しても教えないことを条件に、調査を開始したのが先月の話。
彼女がSNSのプロフに書いていた誕生日や出身地、投稿していた画像の背景などから情報を抜き出し、彼女のメインアカウントを特定した。メインアカウントの方も、裏アカと同じ日からログインしなくなっていたのが気になり、メインアカに書かれていた大学に聞き込みにいくと、彼女は学校も欠席していることがわかった。大学の友人が心配してメッセージをするもやはり既読にならず、大学近くにある一人暮らしのアパートを訪ねても留守だった。
こうなると、彼女の言っていた「面倒なフォロワー」が事情を知っている可能性がありそうだ。
そこで友人に、もう一度他にわかることはないのかと聞くと、迷ったように他にも急にログインしなくなった女の子のアカウントが二つあることを教えてくれた。
一人とはまだDMでのやりとりだけで会っていなかったが、もう一人とは会っていて、そちらも次の日に新しいフォロワーと会うと言っていたらしい。
三人の女性には裏アカ女子であること以外にも共通点があった。髪がかなり明るい金色で、色白、メイクは濃い目、そして巨乳。
そういえばこの友人が飲み会で好みのタイプを聞かれ「金髪白ギャル」と言っていたのを思い出した。
どうでもいい。
オレは、他の二人の特定と、行方不明になっている子の最後の足取りを探りつつ、なにか他の手がかりを掴めるかもしれないと考え、裏アカ女子に成りすますことにした。
雰囲気を掴むために、裏アカ女子の投稿を遡れるだけ遡り、なんとなく傾向を理解した。
外見は、三人の女性に近づけることにした。金髪というより白に近いウェーブでくるくるのウィッグを被り、ばっちり猫目のメイクに、ブラウンのカラコンを入れる。阿笠博士に頼んで作ってもらったシリコン製の乳を胸に装着すると、立派な谷間が出現した。メロンくらいある。
誰も見てないから、つい両手で乳を抱えてゆさゆさしてしまった。すげー。
「って、……こんなことしてる場合じゃねえな」
こほん、と咳払いをして、気を取り直す。
通販で用意した白いレースのブラジャーをシリコンおっぱいの上に装着し、 真っ白でぬいぐるみのようにもこもこしたルームウェアのパーカーを羽織る。チャックは全開のままだ。下は、同じようにもこもこしたショートパンツ。一応履いておくけど、なるべくカメラには足を映さないようにしねーと、男だってバレそうだ。サッカーで鍛えた太ももは女性のような柔らかさとは無縁だった。
スマホをインカメラにして、自分の前にかざす。左手は股の上に置き、右手はカメラを握りながらも、両腕で胸を挟み、谷間を強調する。ピンクのグロスを引いた唇をアヒル口にし、シャッターを切った。
スマホには、女装したオレの写真が写っていた。勝負はここからだ。加工アプリを起動し、撮ったばかりの画像をとりこみ、女性用の顔に加工していく。
ちまちま自分の顔をいじって、工藤新一の痕跡がほとんど消えたところで手を止めた。
このために取得していたSNSアプリを開く。プロフは既に設定済みだ。
『20↑168せんち。えふかっぷ。経験人数すくないです。DMきぶんでかえします』
さっきの画像を使い、胸の谷間部分だけアイコンに設定する。
『はじめまして、めいです。なかよくしてね #裏アカ女子』
加工した画像とともにそう投稿すると、すぐにいいねが押された。
「お、もう見てるやついんのか」
しばらく放置して様子を見ようと思っていたけれど、『りくえすとあったら、DMで』と呟いてみた。すぐにDMに通知がつく。それも一件じゃなくて、二件だ。
『こんばんは。僕のおちんぽ辛口評価してくれませんか?』
気分の悪くなる画像付きだった。
「おえ……」
無視。
『こんばんは。おっぱいの画像ほしいです』
「え~……どうすっかな」
DMの送り主のアカウントをチェックしようとすると、DMの通知が一気に増えた。一応全て開いてみる。変な画像がついているのもあるし、いきなりDMでセックス始めたやつもいた。
返事をするやつを厳選しようと、アカウントを見極めることにした。
「あ、こいつ……」
急にDMでセックスしようと言い出して『くちゅ……ちゅぷっ、』と書きだし始めたやつのフォローしているアカウントを見ると、友人が言っていた連絡のとれなくなった三人の女の子を全員フォローしていることがわかった。とはいっても、フォロー数が283人もいるから、ただの偶然だっていう可能性も高いけど。
『ん……っ、きゅうに、はげし……っ』
手始めにこいつとやりとりしてみようと、DMに文字を打ち込む。送信ボタンを押そうとした瞬間、ポンッと肩を叩かれた。びくりと肩が跳ねる。スマホが手から抜き取られた。
「やあ、新一くん。随分楽しそうなことをしているね」
背後から地を這うような低い声が空気を震わせた。ひ、と声にならない悲鳴が漏れる。
「ほぉー……」
振り向かなくてもわかる。青筋立てた恋人が、背後に立って、オレのスマホを見ている。
「新一くん」
「……はい」
脳内では怒った零さんが、お仕置きだって言ってオレのもこもこパーカーを剥ぎ取っていた。そういうことをされても仕方ない、と思う。
心臓が激しく脈打つ。恐る恐る振り向く。眉間に皺を寄せた零さんは、溜息を吐いた。
「正座」
「は?」
「いいか。きみ、これは立派な浮気だぞ。そこに座れ」
腕を組んだ零さんは、しかめっ面でソファを指さした。もう一度、「は?」と言う。再び「正座」と指示された。
はやく、と苛立った声に急かされ、ソファの上に正座をする。降谷さんは仁王立ちになり、深い深い溜息をついた。
それから二時間、降谷さんの説教はみっちり続いた。
「こんなふしだらな子に育てた覚えはない」だとか、「きみの貞操観念を教育し直す必要があるようだ」とか、ぐちぐちぐちぐちうるせー零さんは、オレにえっちなことを教え込んだことを棚にあげて、文句を言い続けた。
渾身の出来だった裏アカは、零さんの手により即削除されてしまっていた。
「えっちなお仕置きしねえの?」
「きみが喜ぶから今日はしない」
ガチギレの零さんに放置され、その日は同じベッドで寝たのに指一本触れてもらえなかったし、後日、貞操観念についてのレポートを提出させられた。