だいすきの構成要素
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
幽霊の正体
「フェリーチェ! 大変だっ!」
キッチンでのんびりお茶を飲んでいるとイザベルが飛び込んで来た。その勢いで危うくお茶を吹き出しそうになったフェリーチェは、慌てて口を押さえる。良かった派手に吹かなくて……と思いながらお茶をゆっくり飲み込んだ。
「ど、どうしたの? イザベル」
「幽霊だ! 幽霊が出た!」
「えっ!? 幽霊っ!?」
今気付いた、窓に手形がついてる! とイザベルは興奮気味に言うと、フェリーチェの手を引っ張りいつも皆で過ごす居間へ走る。
地下街では幽霊の目撃談が後を絶たない。ここもあそこもとよく聞こえてくる。本当かどうか分からない分、気持ち悪いし怖い。薄暗くどんよりとした小道を通る時はフェリーチェはいつもビクビクしていた。独り言や鼻歌で恐怖を紛らわす事も多々ある。
この世で一番怖いもの。見た事はないが、フェリーチェは幽霊が苦手だった。
「ほら、これ見てみろよ!」
腰高窓の隅に薄っすらと手形。右手のそれは数個重なる様にあって。フェリーチェの心臓は跳ね上がる。
「こ、こ、これ……」
「ヤバイよな? 昨日の昼は無かったから絶対夜中に出たんだ。しかもこれ内側じゃん? ウチに居るって事!」
「うぅ……ゆうれい……」
フェリーチェは小さく呟いた。
どうしよう。覚えがあり過ぎる。
これは絶対、自分の手形だ。
昨夜の情事——リヴァイに後ろから突かれ、その激しさを受け止めるため必死に自分の身体を支えた時についたのだろう。
立ったまま。服を着たまま。耳に直接流し込まれる甘い声と熱い吐息。こんな所で……という背徳感にコッソリ興奮してしまった事。
全部思い出すと顔が赤くも青くもなる。
非常にマズい。これ以上騒がれる前に、早く消さないと——。
「どうした」
「あっ! 兄貴! これ見てくれよ、幽霊が出たんだ!」
「ひぇっ」
「幽霊?」
タイミング悪く帰ってきたリヴァイをイザベルは手招きで呼ぶ。
(よ、呼ばないで! 呼んじゃ駄目!)
あたふたするフェリーチェと興奮気味のイザベル。
怪訝そうな顔で二人の元へ来たリヴァイは、イザベルの早口説明に「ほう……」と目を細めた。一瞬で理解したらしい。だから消さなきゃって思ったのに!
「確かについてるな。なぁフェリーチェ?」
「ソ、ソウダネ……」
「コイツ夜中に出るんだよ。今日も出てくるのかな」
「だとよ、フェリーチェ。どう思う?」
「デ、デナイトオモウナ」
ガチガチに緊張して不自然な喋り方になるフェリーチェに、リヴァイは俯き肩を揺らしている。
(人の気も知らないで! リヴァイのせいなのに〜〜!)
「えぇ〜そうかぁ? 俺、夜中見張ってようかな。面白そう」
「やめておけ」
フェリーチェの腰を引き寄せ背後から抱きしめるリヴァイは言った。
「うっかり見ちまったらどうする。フェリーチェが泣くぞ」
「…………」
——それはどういう意味? まさか今日も、なんて言わないよね?
引きつり顔のフェリーチェを見てイザベルは「そっか」と頷いた。
「フェリーチェ怖いのダメだもんな。いるって分かったら怖くて寝れなくなっちゃうか。でも大丈夫だぜ、もしいるってなっても兄貴がいるから!」
「ううぅ……」
リヴァイがいるから“幽霊”が出たの!
——なんて言える訳もなく。
フェリーチェの肩口に顔を埋め、また小刻みに震えているリヴァイ。くくく……と隠しきれていない笑いが身体に響いてくる。この頭……引っ叩いてやろうかと思いながら、フェリーチェは何も知らずにニコニコしているイザベルに引きつり笑顔を返した。
一方。
幽霊苦手なのに、幽霊になっちゃうなんて納得いかない! と拗ねるフェリーチェを見て、可愛いという感想しか出てこないリヴァイは、定期的に幽霊発現させるか……と思うのだった。
「フェリーチェ! 大変だっ!」
キッチンでのんびりお茶を飲んでいるとイザベルが飛び込んで来た。その勢いで危うくお茶を吹き出しそうになったフェリーチェは、慌てて口を押さえる。良かった派手に吹かなくて……と思いながらお茶をゆっくり飲み込んだ。
「ど、どうしたの? イザベル」
「幽霊だ! 幽霊が出た!」
「えっ!? 幽霊っ!?」
今気付いた、窓に手形がついてる! とイザベルは興奮気味に言うと、フェリーチェの手を引っ張りいつも皆で過ごす居間へ走る。
地下街では幽霊の目撃談が後を絶たない。ここもあそこもとよく聞こえてくる。本当かどうか分からない分、気持ち悪いし怖い。薄暗くどんよりとした小道を通る時はフェリーチェはいつもビクビクしていた。独り言や鼻歌で恐怖を紛らわす事も多々ある。
この世で一番怖いもの。見た事はないが、フェリーチェは幽霊が苦手だった。
「ほら、これ見てみろよ!」
腰高窓の隅に薄っすらと手形。右手のそれは数個重なる様にあって。フェリーチェの心臓は跳ね上がる。
「こ、こ、これ……」
「ヤバイよな? 昨日の昼は無かったから絶対夜中に出たんだ。しかもこれ内側じゃん? ウチに居るって事!」
「うぅ……ゆうれい……」
フェリーチェは小さく呟いた。
どうしよう。覚えがあり過ぎる。
これは絶対、自分の手形だ。
昨夜の情事——リヴァイに後ろから突かれ、その激しさを受け止めるため必死に自分の身体を支えた時についたのだろう。
立ったまま。服を着たまま。耳に直接流し込まれる甘い声と熱い吐息。こんな所で……という背徳感にコッソリ興奮してしまった事。
全部思い出すと顔が赤くも青くもなる。
非常にマズい。これ以上騒がれる前に、早く消さないと——。
「どうした」
「あっ! 兄貴! これ見てくれよ、幽霊が出たんだ!」
「ひぇっ」
「幽霊?」
タイミング悪く帰ってきたリヴァイをイザベルは手招きで呼ぶ。
(よ、呼ばないで! 呼んじゃ駄目!)
あたふたするフェリーチェと興奮気味のイザベル。
怪訝そうな顔で二人の元へ来たリヴァイは、イザベルの早口説明に「ほう……」と目を細めた。一瞬で理解したらしい。だから消さなきゃって思ったのに!
「確かについてるな。なぁフェリーチェ?」
「ソ、ソウダネ……」
「コイツ夜中に出るんだよ。今日も出てくるのかな」
「だとよ、フェリーチェ。どう思う?」
「デ、デナイトオモウナ」
ガチガチに緊張して不自然な喋り方になるフェリーチェに、リヴァイは俯き肩を揺らしている。
(人の気も知らないで! リヴァイのせいなのに〜〜!)
「えぇ〜そうかぁ? 俺、夜中見張ってようかな。面白そう」
「やめておけ」
フェリーチェの腰を引き寄せ背後から抱きしめるリヴァイは言った。
「うっかり見ちまったらどうする。フェリーチェが泣くぞ」
「…………」
——それはどういう意味? まさか今日も、なんて言わないよね?
引きつり顔のフェリーチェを見てイザベルは「そっか」と頷いた。
「フェリーチェ怖いのダメだもんな。いるって分かったら怖くて寝れなくなっちゃうか。でも大丈夫だぜ、もしいるってなっても兄貴がいるから!」
「ううぅ……」
リヴァイがいるから“幽霊”が出たの!
——なんて言える訳もなく。
フェリーチェの肩口に顔を埋め、また小刻みに震えているリヴァイ。くくく……と隠しきれていない笑いが身体に響いてくる。この頭……引っ叩いてやろうかと思いながら、フェリーチェは何も知らずにニコニコしているイザベルに引きつり笑顔を返した。
一方。
幽霊苦手なのに、幽霊になっちゃうなんて納得いかない! と拗ねるフェリーチェを見て、可愛いという感想しか出てこないリヴァイは、定期的に幽霊発現させるか……と思うのだった。