結婚生活はじめました。
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特別な数日間
しばらくお預けになっていた新婚旅行だったけど、リヴァイさんがやっとお休みが取れたという事で、夏場は避暑地として有名な高原へこうして来る事が出来た。
二泊三日――ずっと楽しみにしていた旅行だから、駅に着いた時の私の高揚感ったら、それはもう原稿用紙一枚くらいじゃ言い表せない感じで!
「温泉まんじゅう……!」
「……。来た早々に食い付くのはそこか」
数歩先行くリヴァイさんが低く言う。私が急に立ち止まったから慌てて振り向いてくれたんだけど、そこにお饅頭指差す私がいたもんだから脱力したらしい。頭……抱えてる?
でもほら! 来たらやっぱり温泉饅頭食べなきゃ!
「食べたいっ」
「俺はいらん。一人で食え」
「え〜っ! 出来たてですよ、リヴァイさんも食べるべきです!」
「だからお前だけ食えばいいだろうが。食いたいのはお前で、俺は甘いもんが苦手だ。出来たてだろうが知るか」
「すみません! 二個ください!」
「聞いてたか? 今の話」
温泉饅頭を売ってる店には出来たてが食べられる様、必ずと言っていいほど店頭に大きな蒸し器がある。温泉のある街ではよく見る光景。そして私はどこに行っても、お饅頭食べ歩きしたい人なのだ。
店員のおばさんは、ニコニコしながら蓋を開けた。フワッ! と上がる蒸気に美味しそうな匂い……そして並ぶ……おぉ?
「うちのは普通のよりちょっと大きいでしょう?」
「本当ですね。それに丸くて可愛い」
覗き込む私の顔を見てすかさず解説が飛んでくる。味もこだわりがあるのよ、それは食べてからのお楽しみね、と嬉しそうな顔のおばさんは、私の横に立つリヴァイさんを見て笑った。
「だからぜひ食べてみて? 彼女と半分こなら少しだし、うちのは甘さ控えめだから」
「そうしよ! リヴァイさん、半分こっ」
「……しょうがねぇな……残ったらフェリーチェ食えよ」
「残んないよ! 二口くらいじゃん! そこは頑張って食べましょうよ」
「その二口が多いから言ってんだ。この甘党め」
「私、お酒もいけるから甘辛党です」
「……」
「まぁ〜仲良しねぇ!」
――クスクス笑われてしまった。
おばさんがわざわざ半分に切ってくれたお饅頭はとても美味しそうで、受け取って速攻で一口食べた私。リヴァイさんは「お前なぁ」と溜息。
「せめて金払ってからにしてくれ」
「うん」
「待て。言ってるそばから口を開けるな」
片手で私の口を覆ってからお金を払ったリヴァイさんが、受け取ったお饅頭をこっちに渡してくる。
え! なんで!
「食べるって言ったのに!」
「食べないとは言ってない」
「あ」
渡したんじゃなく……預けたんですね。
お釣りをお財布に入れるリヴァイさんに納得した――。
そんな寄り道をしながらも、私達は目的だった名所の滝へ。平日だから観光客も少なめで、木々の中を歩く清々しさも想像以上だった。
滝へ続く道は綺麗に整備されてるけど、道幅はそんなに広くない。帰って来る人たちとすれ違う時は、場所によってはどちらかが道を譲る感じだ。
けれど、そういう時はお互いから自然と「こんにちは」や「ありがとう」の言葉が出て、気持ちがもっと清々しくなる。
こういうのってなんかいいよなぁ……。
「もっと早く連れて来れたら良かったんだが」
「へ?」
「遅くなって悪かったな」
さすが名所――迫力の滝を眺めていると、リヴァイさんがそんな事を言い出した。
「どうしたんですか? 急に」
「……。お前が買ったガイドブックに付箋が増えてくのを見る度、我慢させてたんじゃねぇかって思ってた……」
「えっ!? まさか! ここ来る為に仕事無理したんじゃ……!」
「してねぇよ。無理すりゃお前が怒り始めるだろうが」
柵に頬杖をつきながら、リヴァイさんは笑う。
うん。そうだね。リヴァイさんはすぐ無理すんだもん。自分の為じゃなくみんなの為に。
「待ちぼうけも、ちゃんと連れて来てくれたから帳消しですよ」
リヴァイさんの真似して頬杖ついて言うと、
「それなら……良かった」
眉間の皺を消したリヴァイさんが、嬉しそうに笑ってくれた――。
それから数カ所――オルゴール博物館や森の中にあるカフェのオープンテラスでのんびりしたりしてから、リゾートホテルにチェックインをした。
広大な敷地の自然の中、プライベートな空間での滞在を謳っているホテルは、レセプションから専用車で少し離れた宿泊施設まで行くといった徹底振り。各部屋は一棟一棟独立していて、人口の湖を囲う様に建っていた。
「これぞ贅沢! ゆっくり過ごせます!」
「散々ゆっくり過ごしてきた気がするが?」
「まぁまぁ……更にってことで。そういえばリヴァイさん、意外にアンティークオルゴールに食い付いてたから驚いちゃった。あそこは完っ全に私が行きたいだけの場所だったから、退屈してたらどうしよっかなって思ってたの」
湖を眺められるバルコニーに置いてあるソファーで安定のふんぞり返りを見せていたリヴァイさんは、それに驚いた顔をする。
「確かに、あれは中々見応えがあったが……」
「ホールで演奏会してた百年くらい前のおっきいの? あれ凄かったですよねぇ」
「この旅行は、フェリーチェが行きたい所へ行く旅行じゃねぇか。何故俺に気を遣う」
「私のワガママ旅行じゃなくて新婚旅行です。それなのに、計画立てたくてもリヴァイさん行きたい所とくに無いって言うんだもん」
「注文はつけたはずだ」
「温泉、ってだけでしょ」
リヴァイさんの隣に飛び込む様に座ると、「跳ねるな。埃が立つ」とプチ小言。外なんだからいいじゃん!
聞こえなかった振りして擦り寄ったら、顎を掬われキスされた。啄む様なキスを何度も。
「――唯一のリクエストがそれだったので、思いっきり贅沢な、癒しとスイーツざんま……休息の旅にしてみました!」
「お前……いま思いっきり本音出ただろ」
「気のせい気のせい」
「饅頭、ソフトクリーム、ケーキ……甘味食い倒れの理由が分かった」
「のんびりもしましたよ! 滝、森、散歩! マイナスイオン! リヴァイさん絶対疲れてるから存分に取り込んだ方がいいと思って……だって家で仕事してる時溜息ばっかりしてるもん」
リビングでパソコン開いてる事が多いリヴァイさんも、仕事によっては書斎に籠ってしまう。溜息をしてるのは大体そんな時。特に、ここ最近多いような気が……。
「勝手に覗いてたのか?」
「ノックしても返事無ければ心配でしょ? それに勝手にじゃないですよ? ちゃんと『入るよ〜』って言ってる」
「……気付かなかった」
「ね? リヴァイさんは疲れてるんです。妻としては放って置けません!」
いつも私がして貰ってる事を、今日は私が。
頭を“よしよし”と撫でてあげると、リヴァイさんは「お前なぁ」と言いつつクスッと笑った。
「癒されます?」
「ああ。……ありがとう」
「夜はたっくさん星が見えるんだって! ここから天体観測しましょうね!」
「――天体観測?」
「はい! これもちょっと私の趣味入っちゃいますけど……」
「そんな暇あるか?」
「はい?」
首を傾げたリヴァイさんを前に、私も同じ角度で首を傾げる。うん? と考えて……そして……読めた。
まさか……暇無いほど……あれこれするつもりですか?
「思いっきり贅沢な癒しの旅と言ったな。フェリーチェよ」
「思いっきり贅沢な休息の旅とも言いましたよ。リヴァイさん」
「妻として放って置けねぇんだろ?」
「言ったけど! リヴァイさんの考えてるのとはちょっと違いますからね!?」
ほう、と呟くリヴァイさんには全部バレてるっぽい。話してる間に熱くなった顔の理由――。
「……撫でて貰うだけじゃ癒されねぇんだが」
「そ、それはもう重々承知しておりますが、旅には予定というのがありまして……ね?」
「成程? つまりは、フェリーチェが念密に立てたプランがある…という事か」
「次の予定はっ! 夕食前に本館大浴場にてゆったりたっぷりのんびり入浴タイムです!」
「部屋にも風呂あんだろうが。そこで十分……おい、コラ待て、フェリーチェ!」
慌ててバルコニーから逃げ出す。
でも……分かってんだよ。
この流れじゃ、部屋出る前に捕まって……大浴場に行くプランは明日に伸びちゃうって事はさ。
勿論、天体観測も……ね。
しばらくお預けになっていた新婚旅行だったけど、リヴァイさんがやっとお休みが取れたという事で、夏場は避暑地として有名な高原へこうして来る事が出来た。
二泊三日――ずっと楽しみにしていた旅行だから、駅に着いた時の私の高揚感ったら、それはもう原稿用紙一枚くらいじゃ言い表せない感じで!
「温泉まんじゅう……!」
「……。来た早々に食い付くのはそこか」
数歩先行くリヴァイさんが低く言う。私が急に立ち止まったから慌てて振り向いてくれたんだけど、そこにお饅頭指差す私がいたもんだから脱力したらしい。頭……抱えてる?
でもほら! 来たらやっぱり温泉饅頭食べなきゃ!
「食べたいっ」
「俺はいらん。一人で食え」
「え〜っ! 出来たてですよ、リヴァイさんも食べるべきです!」
「だからお前だけ食えばいいだろうが。食いたいのはお前で、俺は甘いもんが苦手だ。出来たてだろうが知るか」
「すみません! 二個ください!」
「聞いてたか? 今の話」
温泉饅頭を売ってる店には出来たてが食べられる様、必ずと言っていいほど店頭に大きな蒸し器がある。温泉のある街ではよく見る光景。そして私はどこに行っても、お饅頭食べ歩きしたい人なのだ。
店員のおばさんは、ニコニコしながら蓋を開けた。フワッ! と上がる蒸気に美味しそうな匂い……そして並ぶ……おぉ?
「うちのは普通のよりちょっと大きいでしょう?」
「本当ですね。それに丸くて可愛い」
覗き込む私の顔を見てすかさず解説が飛んでくる。味もこだわりがあるのよ、それは食べてからのお楽しみね、と嬉しそうな顔のおばさんは、私の横に立つリヴァイさんを見て笑った。
「だからぜひ食べてみて? 彼女と半分こなら少しだし、うちのは甘さ控えめだから」
「そうしよ! リヴァイさん、半分こっ」
「……しょうがねぇな……残ったらフェリーチェ食えよ」
「残んないよ! 二口くらいじゃん! そこは頑張って食べましょうよ」
「その二口が多いから言ってんだ。この甘党め」
「私、お酒もいけるから甘辛党です」
「……」
「まぁ〜仲良しねぇ!」
――クスクス笑われてしまった。
おばさんがわざわざ半分に切ってくれたお饅頭はとても美味しそうで、受け取って速攻で一口食べた私。リヴァイさんは「お前なぁ」と溜息。
「せめて金払ってからにしてくれ」
「うん」
「待て。言ってるそばから口を開けるな」
片手で私の口を覆ってからお金を払ったリヴァイさんが、受け取ったお饅頭をこっちに渡してくる。
え! なんで!
「食べるって言ったのに!」
「食べないとは言ってない」
「あ」
渡したんじゃなく……預けたんですね。
お釣りをお財布に入れるリヴァイさんに納得した――。
そんな寄り道をしながらも、私達は目的だった名所の滝へ。平日だから観光客も少なめで、木々の中を歩く清々しさも想像以上だった。
滝へ続く道は綺麗に整備されてるけど、道幅はそんなに広くない。帰って来る人たちとすれ違う時は、場所によってはどちらかが道を譲る感じだ。
けれど、そういう時はお互いから自然と「こんにちは」や「ありがとう」の言葉が出て、気持ちがもっと清々しくなる。
こういうのってなんかいいよなぁ……。
「もっと早く連れて来れたら良かったんだが」
「へ?」
「遅くなって悪かったな」
さすが名所――迫力の滝を眺めていると、リヴァイさんがそんな事を言い出した。
「どうしたんですか? 急に」
「……。お前が買ったガイドブックに付箋が増えてくのを見る度、我慢させてたんじゃねぇかって思ってた……」
「えっ!? まさか! ここ来る為に仕事無理したんじゃ……!」
「してねぇよ。無理すりゃお前が怒り始めるだろうが」
柵に頬杖をつきながら、リヴァイさんは笑う。
うん。そうだね。リヴァイさんはすぐ無理すんだもん。自分の為じゃなくみんなの為に。
「待ちぼうけも、ちゃんと連れて来てくれたから帳消しですよ」
リヴァイさんの真似して頬杖ついて言うと、
「それなら……良かった」
眉間の皺を消したリヴァイさんが、嬉しそうに笑ってくれた――。
それから数カ所――オルゴール博物館や森の中にあるカフェのオープンテラスでのんびりしたりしてから、リゾートホテルにチェックインをした。
広大な敷地の自然の中、プライベートな空間での滞在を謳っているホテルは、レセプションから専用車で少し離れた宿泊施設まで行くといった徹底振り。各部屋は一棟一棟独立していて、人口の湖を囲う様に建っていた。
「これぞ贅沢! ゆっくり過ごせます!」
「散々ゆっくり過ごしてきた気がするが?」
「まぁまぁ……更にってことで。そういえばリヴァイさん、意外にアンティークオルゴールに食い付いてたから驚いちゃった。あそこは完っ全に私が行きたいだけの場所だったから、退屈してたらどうしよっかなって思ってたの」
湖を眺められるバルコニーに置いてあるソファーで安定のふんぞり返りを見せていたリヴァイさんは、それに驚いた顔をする。
「確かに、あれは中々見応えがあったが……」
「ホールで演奏会してた百年くらい前のおっきいの? あれ凄かったですよねぇ」
「この旅行は、フェリーチェが行きたい所へ行く旅行じゃねぇか。何故俺に気を遣う」
「私のワガママ旅行じゃなくて新婚旅行です。それなのに、計画立てたくてもリヴァイさん行きたい所とくに無いって言うんだもん」
「注文はつけたはずだ」
「温泉、ってだけでしょ」
リヴァイさんの隣に飛び込む様に座ると、「跳ねるな。埃が立つ」とプチ小言。外なんだからいいじゃん!
聞こえなかった振りして擦り寄ったら、顎を掬われキスされた。啄む様なキスを何度も。
「――唯一のリクエストがそれだったので、思いっきり贅沢な、癒しとスイーツざんま……休息の旅にしてみました!」
「お前……いま思いっきり本音出ただろ」
「気のせい気のせい」
「饅頭、ソフトクリーム、ケーキ……甘味食い倒れの理由が分かった」
「のんびりもしましたよ! 滝、森、散歩! マイナスイオン! リヴァイさん絶対疲れてるから存分に取り込んだ方がいいと思って……だって家で仕事してる時溜息ばっかりしてるもん」
リビングでパソコン開いてる事が多いリヴァイさんも、仕事によっては書斎に籠ってしまう。溜息をしてるのは大体そんな時。特に、ここ最近多いような気が……。
「勝手に覗いてたのか?」
「ノックしても返事無ければ心配でしょ? それに勝手にじゃないですよ? ちゃんと『入るよ〜』って言ってる」
「……気付かなかった」
「ね? リヴァイさんは疲れてるんです。妻としては放って置けません!」
いつも私がして貰ってる事を、今日は私が。
頭を“よしよし”と撫でてあげると、リヴァイさんは「お前なぁ」と言いつつクスッと笑った。
「癒されます?」
「ああ。……ありがとう」
「夜はたっくさん星が見えるんだって! ここから天体観測しましょうね!」
「――天体観測?」
「はい! これもちょっと私の趣味入っちゃいますけど……」
「そんな暇あるか?」
「はい?」
首を傾げたリヴァイさんを前に、私も同じ角度で首を傾げる。うん? と考えて……そして……読めた。
まさか……暇無いほど……あれこれするつもりですか?
「思いっきり贅沢な癒しの旅と言ったな。フェリーチェよ」
「思いっきり贅沢な休息の旅とも言いましたよ。リヴァイさん」
「妻として放って置けねぇんだろ?」
「言ったけど! リヴァイさんの考えてるのとはちょっと違いますからね!?」
ほう、と呟くリヴァイさんには全部バレてるっぽい。話してる間に熱くなった顔の理由――。
「……撫でて貰うだけじゃ癒されねぇんだが」
「そ、それはもう重々承知しておりますが、旅には予定というのがありまして……ね?」
「成程? つまりは、フェリーチェが念密に立てたプランがある…という事か」
「次の予定はっ! 夕食前に本館大浴場にてゆったりたっぷりのんびり入浴タイムです!」
「部屋にも風呂あんだろうが。そこで十分……おい、コラ待て、フェリーチェ!」
慌ててバルコニーから逃げ出す。
でも……分かってんだよ。
この流れじゃ、部屋出る前に捕まって……大浴場に行くプランは明日に伸びちゃうって事はさ。
勿論、天体観測も……ね。