お見合い相手はリヴァイさんでした。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ハンジ叔母さんが、バージンロードの意味を教えてくれた。
バージンロードは新婦の人生を表していて、チャペルの扉が開いた瞬間は、新婦の「誕生」なんだって。
そして一歩目は「生まれた日」、次の一歩は「初めて立った日」……と、大事な人と一緒に今までの事を思い出しながらゆっくりと歩いていく。
バージンロードの中盤が“今日”。
お父さんから新郎にバトンタッチして、それからの道は新郎と新婦で。
祭壇の前の階段を二人で一緒に上がるのは、人生の困難も二人で乗り越えていく……っていう意味があるらしい。
素敵だね、ってリヴァイさんに話したら、リヴァイさんは「そうだな」って微笑んでいた――。
それでも主役は私です。
《番外編2》
「き、緊張する…!」
私より先に横でお父さんが呟いた。緊張しすぎてるのか、顔が引き攣ってる。大丈夫だろうか?
カチコチになってるお父さんを見て、式場の人が「皆さんそうおっしゃいますよ」と優しく声をかけてくれた。
その言葉に、首が落っこちるんじゃないかと思う位に激しく頷くお父さん。つられて式場の人の顔も緊張で固まっていく……だ、大丈夫だろうか?
――おかげで私の緊張はどこかへ消えてしまったけど。
……と、そんなこんなで。
チャペルの扉が開いた時。
叔母さんの話を聞いていたから、目の前のバージンロードを見て少し感動。
「フェリーチェ。行こうか」
「うん」
お父さんが、腕を組む私の手に自分の手を重ねて言った。
聖歌隊の歌声にオルガンの調べ。外国にある大聖堂の様な素敵なチャペル内には、大きなステンドグラスから穏やかな陽の光が降り注いでいて……。
下見では何度か来てたけど、こうしてドレスを着て立つと全然雰囲気が……ど、どうしよう、また緊張してきた…!
みんなに注目されてるから余計かも!
お父さんじゃないけど顔が引き攣りそうになった。
でもすぐにホッとする。少し先に立つリヴァイさんと目が合ったからだ。
相変わらず無に近い表情。緊張とは縁の無い様子の立ち姿に、引き攣りそうだった頬は逆に緩む。
一歩歩みを進める毎、胸が一杯になった。
(私はこの人に出逢う為に今まで生きてきたんだなぁ……)
それが出来たのも、両親のおかげ――。
あがり症で人前に出るのが一番の苦手……というお父さんに、「一緒にバージンロードを歩いてくれてありがとう」って囁こうと思い横を見た私は、
(……お父さん)
……せっかく回避した引き攣り感を頬に感じた。
(右手と右足一緒に出てるよ!)
緊張で顔面凍結、体はロボット状態になってるお父さんの脇腹を突くけど、全く気付いてくれない。今にも電池切れ起こしそうなぎこちなさで、一歩ずつ進んでる。
ああ……心配してた事が現実に……。
友人達の苦笑が目に入り、私も同じ笑いを返した。
前方にいる叔母さんも、真下を向いてブルブル肩を震わせつつ、笑いを堪えている……――。
バージンロード中盤は、お父さんから花婿へバトンタッチをする“今日”という日――。
『あとは頼みます』
『任せてください』
みたいな感じなのかな?
向かい合った二人はゆっくりお辞儀をした。うわ、どうしよう。感激で泣いちゃいそうだよ。
「…………」
先に頭を上げたリヴァイさんは、お父さんを見て一瞬目を見開いた。
えっと……分かりますリヴァイさん。
お父さん、記者会見で謝罪するどっかの偉い人みたいなお辞儀になってるからでしょ……?
直角か! ていうか、早く頭上げて!!
「……」
『おい、フェリーチェ。お前のオヤジなんとかしろ』
リヴァイさんが呆れ果てた目で訴えてきた。
それに小さく頷いて、「ちょっとお父さん…」とコッソリ声をかける。
「もういいから、早く……」
「………っあ!?」
囁き声なのに飛び上がるほど驚いたお父さんに、私もビクッと驚いてしまった。は〜ブーケ落とすかと思っ
「こ、これから先……む、むす…………よろしくお願いしますッッ!!」
「!?」
ちっがーーーうっ!!
早く挨拶しろっていう意味じゃないからっ! そういうの今要らないよ!
ていうかね、「娘を」って部分……緊張で声詰まってんじゃん!
なんか、お父さんがリヴァイさんに嫁ぐみたいな挨拶にも聞こえるしっ!?
「…………」
どうせ言うなら、ちゃんとハッキリ言って欲しかった……。
感激で泣くどころか恥ずかしさで涙が出そうだ。
荘厳な雰囲気のチャペルは、一瞬妙な空気に包まれたけど、我慢しきれなかった叔母さんの「ぶくくっ」という吹き出し笑いに、一転、和やかな空気に変わる。
今ばかりは叔母さんに感謝。そして、お父さんは一躍この場の主役に。
何かあるだろうなと思ってたものの、まさかこんな形で注目の的になるなんて……お父さん、さすがだよ。
「さすがフェリーチェのオヤジだな。行動が全く読めん」
「返す言葉も無いです……」
神父さんの前で、私達は内緒話を交わす。会話を聞いた神父さんは「素敵な御父様ですね」と笑った。
そう言ってもらえると助かります……――。
最初のハプニングを乗り越えれば、後は大丈夫。ドレスに散りばめられてるスワロフスキーに陽があたってキラキラしてるのも、余裕で見てられる。
(綺麗だなぁ……ドレス)
私が、とは言いません……。
思わず息を止めちゃったくらい緊張した指輪交換も終わって。次は……誓いのキス。
ベールを上げたリヴァイさんは、私に言った。
「フェリーチェ」
「ん?」
「綺麗だ」
「えっ!?」
(ま、まさかの直球褒め言葉がここで!?)
「だが、オヤジの思わぬ働きですっかり持っていかれたからな……。今日の主役が誰か、今一度全員に教えておこう」
「な、何する気ですか…?」
忘れてた。リヴァイさんの行動パターン。
私のイメージぴったり、憧れをまんま形にしたこの教会を見つけてくれたのは、リヴァイさんだ。
私がここに初めて来た時、感動で泣いちゃったのもリヴァイさんは見てる……。
(もしかしてリヴァイさん……私がここで式挙げられるの一番楽しみにしてたこと知ってるから……。さっきの事、私よりすっっごく気にしてる!?)
だ、大丈夫ですよ…?
式が進んで、ちゃんと私達メインになってますから!
言うより前に、リヴァイさんは私の頬を両手で包んだ。キスは触れるだけでいい筈。
……なのになんでこんな手に力入ってんですか! これ絶対私が逃げない様にしてるよね!?
「フェリーチェ」
こめられてる強い力とは、全っ然違う甘い囁き声。
こんな場面じゃストップもかけられない。
あああ……どんな結果で主役に返り咲くか解って怖いんですが!?
というより、これ、私よりリヴァイさんが主役持っていくパターンじゃないの?
前代未聞の誓いのキスになる事を予想しつつ、私は覚悟を決めて目を閉じた——。
congratulations!
8/8ページ