お見合い相手はリヴァイさんでした。
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鏡に映る真っ白なドレスを着た自分に、「ついにこの日が来たよ!頑張れ私っ」と励ましを送った。
身体を捻って、後姿を確認。
腰に大きめのリボン。ふわふわと揺れるチュールに、やっぱりこのデザインにして良かった~!と笑う。
「リヴァイさん! 見て! 感想はっ?」
一人掛けのソファーで、映画監督よろしく偉そうにしてるリヴァイさんに向いた。
「上手く化けたな」
「……『綺麗だよ』とか期待した私がバカでした……」
今日は一日中主役のはずです。
《番外編》
「もう少し露出があった方が良かった……」
「これ以上は無理です!」
これでも結構なオフショルダーだと思う。自分的には最大露出だ!
「リヴァイさん、ドレス選びの時からそれ主張してましたよね……」
「出すもん出さねぇでどうする」
「モノには限度っつうもんがあるんです! ていうか、出すもん出さないとって何!」
「お前は肌も肩のラインも綺麗だから、思い切って出しても大丈夫とか言われてたじゃねぇか」
立ち上がったリヴァイさんは、スタスタ私に近付いてくる。真っ白なタキシード姿は、いつものスーツ姿とは違う洗練さと何故か色っぽさがあって相当格好いい。
女友達が絶対ざわつくぞ、これ……。
主役取られる……。
「それ、試着室での会話ですよ? 何でリヴァイさん知ってるの?」
「………待ってる間、他のプランナーに散々聞かされた」
「そういえば、リヴァイさんの周り……やたらに女性のプランナーいましたよね」
打ち合わせに行く度に、資料持って来たりお茶持ってきたりと人の出入りが増えていたのを思い出した。……あれは、みーんなリヴァイさん目的の見学女子だ。気持ちは分からないでもないけどさ……。
「嫉妬か?」
「違いますよ。私の旦那さんはモテる人だなぁって感心してただけです」
「ふくれっ面していう事かよ。式の打ち合わせに行ってるのに、他の女物色してどうする。お前しか見てねぇよ」
リヴァイさんの腕が腰に回る。引き寄せられると、ドレスの衣擦れの音が響いた。それに重ねて、額にチュッとリップ音。
「『綺麗』というより、お前には『可愛い』の方が似合ってる」
「!!」
微笑まれて、一気に頬が熱くなった。相変わらず不意打ちでこういう事をしてくるんだもん。一緒に暮らして、私大丈夫なのだろうか? 全然慣れない……。
「あ、ありがとう……? リヴァイさん? 何してるの?」
抱き締められて、褒められて、そうそう花嫁はこの幸福感を味わうものだ~って浸っていたら、リヴァイさんの唇が肩に触れた。
しかも、ちょっとずつ移動してる。
吐息にビクッと反応した身体に、マズい! と思った。
「可愛いだけじゃ物足りないかと思ってな。色気をプラスしようと」
「い、いいい要らない! 大丈夫別に物足りないなんて思ってないですよ!?」
「お前がじゃねぇよ。俺がだ」
「たった今可愛いの方が似合うって言ったのに! 可愛いには色気いらないっ」
「あった方がより可愛くなる」
「今なんと!?……っ、せ、背中!」
多分、ひとつふたつホックを外された。
オフショルダーの袖がずらされたので、慌てて胸元を押さえる。油断も隙も無いよ! この新郎!
「フェリーチェ。腕どかせ」
「だめだめだめ! 絶対にだめ……っん!?」
今日初めてのキスだった。朝はバタバタしてたし、準備が多い私の方が先に家を出たからだ。
おはようのキスも行ってきますのキスもしてない! それに気付いたのは、式場でお化粧してる時。
当然、リヴァイさんとはしばらく顔を合わせられるはずも無く……。
仕事で疲れちゃって(もちろん私の方が)、うっかりおやすみのキスする間もなく寝てしまった日には、翌日朝のリヴァイさんの機嫌は雪国の吹雪どころじゃない。南極のブリザードだ。
その度に、仕事は遅刻ギリギリの目にあったり、休日は午前中潰れちゃったりしてるのに……迂闊だった!
この晴れの日に、よりにもよって二回もキスを逃してる……!
怒ってようが何だろうが、リヴァイさんのキスはいつも甘ったるくて、すぐ気持ちを持っていかれてしまう。
何も考えられなくなっちゃうのが怖い所。
挨拶代わりのキスなら、ほわんとして終わりだけど、本気で来られると危険極まりないのだ。
「口紅落ちちゃう……」
「塗り直せばいいだけの話だろ……」
角度を変えて何度もされてる間に、案の定意識を一瞬持ってかれてた。
目が覚めたのは奇跡だと思う。きっと私の結婚式への執念が、自分を叩き起こしたに違いない。
ハッと我に返った時は、ソファーに押し倒されてて胸も露わになろうとしている時だった。
「リヴァイさん! もう時間無いからダメ!」
発言がおかしいのは寝起き? だから仕方ない……。言ってしまってから考える私。無いからダメって……あったらOKなのか……?
「まだある」
「無いですよ! それに誰か入ってきたら困ります!」
「そしたら慌てて遠慮するだろう。すぐ出て行くに決まってる」
「あ、そっか……。――いや違う! 見られるのが問題です! じゃないっ、夜まで待って!」
「お前、昨日も『明日早いから』って、さっさと寝たよな。朝は朝でこっちのハナシもろくに聞かず出て行きやがって……。夜まで? これからどれだけあると思ってんだ。式、ブーケトス、写真撮影………長ぇんだよ」
「披露宴と二次会飛んでますよ……忘れてませんよね……」
思い出してください。そして、シャツのボタンを留めてタイを締め直しましょう。ついでに私の背中のホックも留めてくれると助かります……。
「リヴァイさんが見つけてくれた教会で式挙げて、二人で考えた披露宴やんなかったら、もうずっとさせてあげない」
「…………その反則技を使うか」
「リヴァイさんだって今のキス反則だもん」
少々見合って……二人で同時に溜息を吐いた。
夜まで二人っきりになれないのかぁ……と思ったのは私だけじゃない――。
「……おはようと行ってきますの分くらいは良いです……よね?」
「そうだな」
乱れた服装を直すのは後回しでキスを。一度離れたけど、あと一回だけ……と顔を近づけた時だった。
南極のブリザードより恐ろしい嵐がやって来たのは。
「二人ともおっめでとーう! 今日はよろしくねぇ! この私が最高にハッピーな一日にしたげるーーっ!」
「………」
「………」
空気読もう叔母さん。いきなりの登場、ノックもせずそのテンションですか……。
「まだ初夜には早いよ?」
「お前の登場こそ早過ぎる」
「ウエディングドレスの花嫁との背徳感を味わうプレイなら止めないけど」
「ほぉ……そういう言い方もアリだな」
「叔母さん! リヴァイさんに変なこと教えないでっ!」
「だってー。こんな可愛い姿のフェリーチェみたら、そりゃ押し倒したくなるでしょ~? 分かる分かる」
「身内! 身内がいう事じゃない!」
抱き起こしてくれたリヴァイさんは、私が頼む前に背中のホックをちゃんと留めてくれた。
自分もタイを直しながら、叔母さんに不審気な視線を向けて言う。
「結局、披露宴の司会をやると押し通したが、お前に任せて波乱は起きねぇんだろうな」
「当たり前でしょ。余興の練習は仕事より頑張ったんだから」
「余興の話はしてない。それから仕事は真面目にしろ。同僚が気の毒でならん」
「叔母さん……余興って何するの?」
「感動と涙を誘う歌をお届けする!」
「爆笑と笑い泣きの間違いじゃねぇか?」
「んな訳有るか!」
「………」
二人を見て思う。
格好良過ぎる新郎と、爆笑か波乱かどっちかを呼びそうな叔母。
この二人を前にして、私は今日一日主役でいられるんだろうか……――。