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「今回の報告書、計算違いが二箇所。誤字五箇所。……もちろん直しておきました!」
「……チッ。相変わらず細けぇな。いちいち報告は要らねぇよ。お前が直したんだろ」
「でも、指摘しとかないとリヴァイさん直らないじゃないですか。これでも私の報告が功を奏して間違い箇所減ってるんですよ? 神経質な割に報告書は雑だから、リヴァイさんって」
「こっちは毎日何枚の書類に追われてると思ってんだ。多少大目に見ろ。俺が完璧に仕上げたらお前の仕事が無くなるだけだ」
二人のやり取りを、私はお茶を啜りながら見ている。
最初の頃が嘘みたいだ。あんなに距離が遠かったのに、今やどう?兵団内ではこのコンビかなり有名だ。
みんな二人の会話に興味津々で、食堂内でも廊下でも、二人が揃っていると聞き耳を立てている。
ま。かくいう私もその一人なんだけどね。
「今までのあの書類……エルヴィンさんは黙って見逃していたんですねぇ。さすがです」
「どういう意味だそれは。しかも何故そこでエルヴィンが出てきやがる」
「え? 見逃してたのはミケさんなんですか?」
「………」
ああ……リヴァイ。でっかい溜息だねぇ。
私には分かるよ! 君はフェリーチェの口から他の男の名前が出るのが嫌なんだろう? 要するに嫉妬ってやつだ。
絶対そうだよ。私はそうだと思ってる!
ニコニコ笑ってるフェリーチェを見て、リヴァイは諦めたようだった。
彼女は仕事は良く出来るんだけど、どうも恋愛事になると駄目らしい。疎い。
リヴァイも素直じゃないし、自分の気持ちにいまいち気が付いて無いところもあるもんだから、見てるこっちはいつもハラハラ……でもないか。面白くて仕方無い。うん。こっちだ。
「そういえば、紅茶そろそろ切れますね。在庫は一缶あるけど、どうします?」
「次の休みに買いに行く」
「じゃあ私、またアップルティー買います!」
「またか……。馬鹿の一つ覚えみたいにそればっかだなお前は」
仕事が一段落したのか、フェリーチェはリヴァイに紅茶を淹れた。私もおかわりを勧められて遠慮無く頂く事にする。
彼女の淹れる紅茶は美味しい。リヴァイが太鼓判を押すんだから間違い無い。
ただ残念なのは、リヴァイはフェリーチェは仕事の延長で紅茶淹れ習得に励んだと思っている事と、フェリーチェはリヴァイの為に美味しく淹れたいという自分の気持ちが、本当はどこから生まれているのかを知らないって事だ。
だから、いつも二人は微妙な距離。
くっつきもせず離れもせず。
最近は皆それに気付いてきたもんだから、お前ら早くくっつけよと思いつつ生温かい目で見守ってる。
「フェリーチェ。お前、今度また迷子になったら置いてくからな」
「もう! なりませんってば。あの辺は大分覚えました。問題ありません」
「そう言ってお前は毎回消える」
「えッ!? 二人って、お休みはいつも一緒に街に行くの!?」
「!!!」
しまった。つい前のめりで聞いてしまった。
リヴァイは片眉をひくりと動かしてこっちを見てる。
しまった、とは私みたいに大袈裟に顔に出さなかったけど、明らかに今、お前の存在を忘れてたって顔したよね?
「そうなんですよ。最近は一緒に連れてってもらってるんです。この間は美味しいご飯のお店に行きました」
「そうなんだ~。ふーんご飯かぁ」
「ハンジさんも今度一緒に行きませんか?」
「えっっ!?」
いや、それ多分デートだからフェリーチェ。世間一般的にはデートだよ。それしかないでしょ!
他の人誘っちゃ駄目だって……。
「街案内しろとうるさいから連れ回してるだけだ。貴重な休みを……面倒くせぇ。そういうのは女同士の方が良いんじゃねぇのか? ハンジお前代われ」
アンタはそれでいいのかよ! リヴァイ!
エルヴィンが「あの二人はなぁ……」と遠い目をしてた理由が分かった。本当にこの二人は……。
もう早々においとますることにしよう。
これ以上ここにいるより、モブリットに仕事完遂の催促されてる方がマシな気がしてきたし……。
周りがいちいち口挟まなくても、その内二人はお互いの気持ちにちゃんと気付くはずだ。
だってもう隣にいるの当たり前になってるみたいだからね。
私は紅茶のお礼をし、部屋を出る。
廊下に出た瞬間、二人がまたテンポの良い会話を始めたのが聞こえて思わず一人で笑ってしまった。
隣同士がいちばん自然
(ちょっとモブリット聞いてよ~! あの二人ったらさぁ~!)
(分隊長! また兵長の邪魔しに行ってたんですか!?)
(……あ! やっぱ私が居たらリヴァイもフェリーチェの事を口説けないか)
(分かってるんなら止めてあげてください!)
誰も兵長の仕事の事は心配していない……。