la felicità
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『休日ですが、ご機嫌は?』
「リヴァイさん? あれ? 今日はお休みですよね? どうしてこんな所に?」
本を持って歩くフェリーチェが、目を丸くして俺を見る。こっちが私服である事を確認すると、今度は首を傾げた。
「どうしてこんな所に?」
「また言うか」
「だって、会うとは思わなかったから。午前中はどこかに出かけてたみたいですし? 私はてっきり紅茶飲みに街に行ったのかと。一人で」
強調してくる最後の「一人で」。
制服姿のフェリーチェは、休みの俺と違って通常業務だ。休みは大体二人合わせて取る様にしてるが、全部が全部そういう訳にはいかず、こうしてバラバラになる事も多い。
「飲みに行くとは言ってねぇぞ」
「いつも行くじゃないですか」
「お前も休みの時だろ、それは」
激しい人見知り野郎のフェリーチェは、独りで歩き回るのを未だに毛嫌いする。仕事上どうしても、という時以外は常に俺の横にいて、時には人を盾代わりにする徹底ぶりだ。
――まぁ、男を寄せ付けない為の盾ならいくらでもなってやるが。
「昼飯は食ったんだろうな」
「忙しかっただけです」
「言い訳を先にする奴がいるか、アホが」
「お腹空いてなかったし。食堂混んでたし!」
「………」
さらに言い訳を並べると、フェリーチェはそっぽを向いた。放っといてください、と、横髪からチラリと見える頬が赤く膨らみ訴えてくる。
……俺だけが休みの日は、フェリーチェは大抵こんな具合らしく、この間はハンジに『フェリーチェ、リヴァイがいないとずっと機嫌が悪くて大変なんだよ〜。私じゃもうお手上げだって!』と泣き付かれた。
(機嫌が悪くて大変? 拗ねて可愛いだけじゃねぇか)
「フェリーチェ」
「何ですか」
「この間俺が買ってやった石鹸はどうした。使ってねぇだろ」
「あ〜……」
フェリーチェのキャラメルブラウンの髪色は、陽に当たると部分的に明るいオレンジや金色に見える。掴んだ一束を軽く振ると、今日もいつもと同じ様にキラキラと色を変えた。
「ペトラさんから貰ったやつ、まだ残ってますもん。リヴァイさんのはその後です!」
「……ほう」
「だからもうしばらくかかるんだからっ」
「……ほう」
(まだ拗ねてやがる)
「まぁいい。……そういえば、エルヴィンがお前に渡した菓子があったな。全部食ったのか?」
「へっ!?……あのお土産……の? まだ残ってますけど……何でまた急にそれを」
「今日はお前の三時のおやつに付き合ってやれねぇからな。夜にでも、と思って茶菓子を仕入れてきたが……」
「午前中出掛けてたの、それですかっ!?」
「エルヴィンの菓子が残ってるなら、俺のは出番が無い様だ」
「ちょ、ちょっ……! 待って! リヴァイさん!」
「あ? なんだよ」
「食べるっ!」
目を輝かせるな!
わざわざ素っ気なく返したというのに、フェリーチェの表情に台無しだ。頬の筋肉が緩みそうになる――。
「食べたい! 夜お部屋にお邪魔します!」
「残ってるもんから片付けるんだろ」
「石鹸の話じゃないですか。それはそれ、これはこれ!」
「………」
菓子の話で全部吹っ飛んだのか、フェリーチェは一転し上機嫌だ。ヘタしたら、自分が何故へそを曲げてたか忘れてるかもしれない。
お菓子! お菓子! とはしゃぐフェリーチェに、どうにも複雑な気持ちが湧いてきた。
「それはそれ、これはこれ……ってお前……」
自分が選んだ香りのしない髪を引っ張ると、フェリーチェはバランスを崩し、「いたたたっ」と言葉と一緒に胸に飛び込んで来る。
それを、抱き締める形で受け止めた。
「……リヴァイさん……? あの、もしかして拗ねてます?」
「あ? んな訳あるかよ」
「でもその顔……」
「フェリーチェ」
微笑ましい物を見る様な目しやがって。コイツ……。
「俺の部屋に来るなら、この香りは変えてこい。じゃなかったら部屋には入れてやらん。菓子もナシだ」
「えーっ!? それやっぱり拗ねてんじゃないですか!」
「……拗ねてない。風呂に入ってから部屋に来いと言ってんだ。説明はしねぇぞ。考えりゃ分かる事だからな」
「……っえ! ええっ!?」
「大声出すな。うるせぇ」
――これはこれで悪くは無いが、俺が一番好む香りにしておきたい。
――拗ねてる顔も悪くは無いが、笑ってる方が良いに決まってる。それ以上に良いのは……。
「お菓子……食べれるんですよね?」
「ああ。大層美味いんだろうな」
「……」
フェリーチェの香りは今夜を境に変わる。
夜が楽しみだ――。

《Illustrator:ロッカさん(X @rocka_by)》
「リヴァイさん? あれ? 今日はお休みですよね? どうしてこんな所に?」
本を持って歩くフェリーチェが、目を丸くして俺を見る。こっちが私服である事を確認すると、今度は首を傾げた。
「どうしてこんな所に?」
「また言うか」
「だって、会うとは思わなかったから。午前中はどこかに出かけてたみたいですし? 私はてっきり紅茶飲みに街に行ったのかと。一人で」
強調してくる最後の「一人で」。
制服姿のフェリーチェは、休みの俺と違って通常業務だ。休みは大体二人合わせて取る様にしてるが、全部が全部そういう訳にはいかず、こうしてバラバラになる事も多い。
「飲みに行くとは言ってねぇぞ」
「いつも行くじゃないですか」
「お前も休みの時だろ、それは」
激しい人見知り野郎のフェリーチェは、独りで歩き回るのを未だに毛嫌いする。仕事上どうしても、という時以外は常に俺の横にいて、時には人を盾代わりにする徹底ぶりだ。
――まぁ、男を寄せ付けない為の盾ならいくらでもなってやるが。
「昼飯は食ったんだろうな」
「忙しかっただけです」
「言い訳を先にする奴がいるか、アホが」
「お腹空いてなかったし。食堂混んでたし!」
「………」
さらに言い訳を並べると、フェリーチェはそっぽを向いた。放っといてください、と、横髪からチラリと見える頬が赤く膨らみ訴えてくる。
……俺だけが休みの日は、フェリーチェは大抵こんな具合らしく、この間はハンジに『フェリーチェ、リヴァイがいないとずっと機嫌が悪くて大変なんだよ〜。私じゃもうお手上げだって!』と泣き付かれた。
(機嫌が悪くて大変? 拗ねて可愛いだけじゃねぇか)
「フェリーチェ」
「何ですか」
「この間俺が買ってやった石鹸はどうした。使ってねぇだろ」
「あ〜……」
フェリーチェのキャラメルブラウンの髪色は、陽に当たると部分的に明るいオレンジや金色に見える。掴んだ一束を軽く振ると、今日もいつもと同じ様にキラキラと色を変えた。
「ペトラさんから貰ったやつ、まだ残ってますもん。リヴァイさんのはその後です!」
「……ほう」
「だからもうしばらくかかるんだからっ」
「……ほう」
(まだ拗ねてやがる)
「まぁいい。……そういえば、エルヴィンがお前に渡した菓子があったな。全部食ったのか?」
「へっ!?……あのお土産……の? まだ残ってますけど……何でまた急にそれを」
「今日はお前の三時のおやつに付き合ってやれねぇからな。夜にでも、と思って茶菓子を仕入れてきたが……」
「午前中出掛けてたの、それですかっ!?」
「エルヴィンの菓子が残ってるなら、俺のは出番が無い様だ」
「ちょ、ちょっ……! 待って! リヴァイさん!」
「あ? なんだよ」
「食べるっ!」
目を輝かせるな!
わざわざ素っ気なく返したというのに、フェリーチェの表情に台無しだ。頬の筋肉が緩みそうになる――。
「食べたい! 夜お部屋にお邪魔します!」
「残ってるもんから片付けるんだろ」
「石鹸の話じゃないですか。それはそれ、これはこれ!」
「………」
菓子の話で全部吹っ飛んだのか、フェリーチェは一転し上機嫌だ。ヘタしたら、自分が何故へそを曲げてたか忘れてるかもしれない。
お菓子! お菓子! とはしゃぐフェリーチェに、どうにも複雑な気持ちが湧いてきた。
「それはそれ、これはこれ……ってお前……」
自分が選んだ香りのしない髪を引っ張ると、フェリーチェはバランスを崩し、「いたたたっ」と言葉と一緒に胸に飛び込んで来る。
それを、抱き締める形で受け止めた。
「……リヴァイさん……? あの、もしかして拗ねてます?」
「あ? んな訳あるかよ」
「でもその顔……」
「フェリーチェ」
微笑ましい物を見る様な目しやがって。コイツ……。
「俺の部屋に来るなら、この香りは変えてこい。じゃなかったら部屋には入れてやらん。菓子もナシだ」
「えーっ!? それやっぱり拗ねてんじゃないですか!」
「……拗ねてない。風呂に入ってから部屋に来いと言ってんだ。説明はしねぇぞ。考えりゃ分かる事だからな」
「……っえ! ええっ!?」
「大声出すな。うるせぇ」
――これはこれで悪くは無いが、俺が一番好む香りにしておきたい。
――拗ねてる顔も悪くは無いが、笑ってる方が良いに決まってる。それ以上に良いのは……。
「お菓子……食べれるんですよね?」
「ああ。大層美味いんだろうな」
「……」
フェリーチェの香りは今夜を境に変わる。
夜が楽しみだ――。

《Illustrator:ロッカさん(X @rocka_by)》
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