束縛の中の限られた自由
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✽✽✽
「えっと。この後は会議ですよね?」
「ああ」
フェリーチェが、ファイルを抱え直し横で言った。
分厚い三冊のファイルは、小さいフェリーチェが持っているせいか、余計に厚く大きく見える。
当然、男としてそれを見逃せる筈も無く、さっきから何度も「俺が持つ」と言っているのだが、フェリーチェは首を縦に振らない。結構頑固なのだ。
「フェリーチェ。やっぱりそれは俺が持」
「大丈夫ですっ」
「……」
――頑固だ。
「俺が持たせてるみたいで、どうも気が引けるんだが」
「これ、私の仕事ですよ? 補佐が上官に荷物持たせるなんて聞いた事ありません」
「しかしだな」
「もうっ。リヴァイさんって結構頑固者ですよね!」
「……お前が言うのかよ」
「ん?」
本人には自覚があるのか無いのか。
全く無いのだろう。
「何か言いました?」と上目遣いで見られ、何でもない、と顔を逸らした。
その角度は……困る。
生々しい記憶が蘇り、ここがどういう場であるかを忘れそうになるからだ。
伸びそうになる手にそっと力を入れた――。
「今回の会議は資料が無いんですね」
「会議と言っちまえばそうなるが、そうじゃないと言ってもおかしくない集まりだからな」
「と、いいますと?」
「大した意味のない作戦会議……って事だ」
「……なんだかよく分からないですね」
――察しろ。
二日もかけて貴族と“お茶会”しなくてはならない事は、フェリーチェもすでに知っている。
エルヴィン、ハンジ、ミケ、自分。四人集まって話す内容は、その茶会についてだ。
前もって話したからといって当日どうなるものでもなく、そもそも相手あっての事だから、その場の流れに合わせるのが一番の得策でしかない。
だから「会議だ」といっても、その内容は大体想像出来た。
ハンジには『巨人の話はするな』。
ミケには『匂いを嗅ぐ癖を絶対に出すな』。
自分には『愛想を少しは持て』。
まぁ、そんな所だろう……。
「あ。私が思うに、リヴァイさんは愛想よくしなきゃダメ、って言われちゃうんじゃないですか?」
「あ? 待て。何故そこだけピンポイントで察するんだ、お前は」
「今度行くパーティーの話かな? って、ふと思って。やっぱりそうなんですか」
「だから、大した意味のない作戦会議だと言っただろ」
「そっちじゃなく、リヴァイさんが愛想よくしなさいって注意される方です」
「……」
どうにも返す言葉が見つからず、「うるさい」とフェリーチェの髪を引っ張った。
「ひゃっ!? 両手塞がってる補佐に意地悪はナシですよっ」
「手綱みてぇだな」
「たづなっ!? 馬じゃないのに」
「じゃじゃ馬を躾けてるのと大差ない。……いや、猪か?」
「猪……。だったらまだ馬の方がいいです」
「?」
ふいっと顔を正面に向け文句を言うフェリーチェから、微かに舞う香り。
いつもと違う感覚が不思議で、細い束を自分の顔に引き寄せる。……確かに違う――。
「え? 何ですかっ?」
「フェリーチェ。お前、石鹸を変えたのか?」
「はっ!?」
フェリーチェが目を丸くしているのを目の前にし、自分が言った言葉がいかに恥ずかしいものであったか気付いた。
が、言ってしまった後では遅い。
「……」
言い訳をするのも変な話だ。
「いつも使ってるのをうっかり切らしちゃって……。ぺトラさんに前にお裾分けして貰ったのを使ったんです。オススメだよって。ふふっ、いい香りですよね」
「そうか……」
「あっ。もしかして、いつもぺトラさんが使ってる石鹸だから気が付いたんですか?」
「いや。ぺトラが使ってる石鹸なんて気にしたことも無――」
「……?」
考えなく再び口を開いてしまい、フェリーチェの顔を見れなくなった。
これ以上余計な事を言う前に拳で口を塞ぐ。
柔らかい髪を持つ手は、パッと開き香りごと手放して……。――おい、この後どうすればいいんだ?
「午前中に廊下でミケさんに会った時にも、言われまして……。やっぱりミケさんだなぁって面白かったんです。でも、まさかリヴァイさんに気付いて貰えるなんて。こういうの、不思議と嬉しいものなんですねぇ」
フェリーチェは自分の髪の毛をふわふわ振りながら、くすくす笑っている。
あまり深くまで事を考えてなさそうなので、とりあえずホッとし。しつつも、少々複雑な気分でもあり。
(調子が狂う……)
ファイルをまた抱え直しているフェリーチェに、心の中で「お前のせいだぞ」と戸惑いをぶつけた。
「フェリーチェよ。やっぱりそれ寄越せ。俺が持つ」
「え! 嫌ですよ! 駄目!」
「そこまで嫌がるもんか?」
「これ位のものも満足に持てないみたいで、なんか嫌ですっ」
「親切心だろうが。嫌味で言ってる訳じゃねぇ」
「分かってますけど、でも……駄目です!」
あくまで断るフェリーチェに、自分も負けじと手を出す。
そんな攻防を立ち止まってまでしていると、横から女の声が割って入ってきた。
「あの。お取り込み中、申し訳ないんですが……」
「あ?」
「はい?」
フェリーチェと同時にその女に向くと、女は一歩下がった。
人と話すのが苦手なのか、眼鏡越しの目はオドオドと斜め下を行ったり来たりし、背の高さを猫背で低く見せている。
地味の上に超を付けても足りない位の存在感だった。
「何か用か?」
「は、はい……。フェリーチェさんに……」
「私?」
「今、資料室の整理をしているんですが、分からない事が多々あって……。フェリーチェさんが詳しいから聞くと良い、と先輩達が教えてくれたんです……。なので、ご迷惑じゃなければ……」
声も小さくて、聞き取るのにも苦労する。自分の周りにはハキハキ喋る者が多いからか、「もっと声を張れ!」と言いたくなった。
「リヴァイさん、顔怖いですよ」
「……そんなつもりは無い」
「つもりは無くても実際怖いんです。――あぁ、えっと……でも私、十年以上前の資料しか見てないからお役に立てるかどうか……本当に私で良いんですか?」
フェリーチェの言葉にパッと表情を明るくした女は、「大丈夫です! ありがとうございます、よろしくお願いします」と礼をし、今度はこちらを見た。……見下ろした。
フェリーチェを連れて行っていいかを聞きたいのだろう。
「フェリーチェ、行ってやれ。そいつは俺が執務室に持っていく。ファイル持参じゃ邪魔だろう。失くされても困る」
「ああ〜結局リヴァイさんに持たせる羽目に……」
「最初から渡しておけば、つまんねぇ押し問答しなくて済んだものを……」
「すみません」
「す、すみません!」
何故か、フェリーチェの横で女も一緒になって謝ってきた。
「お前は何も悪くないだろう」
つい可笑しくなり、クッと笑ってしまう。
「は……はいっ……」
丸めていた体が、より丸く縮こまって見えた。
「……。では、リヴァイさん! コレお願いしますっ!」
「あぁ、分かった。……なんて顔してんだ、お前は」
「は? 普通の顔ですが?」
胸に放られるファイルを抱えたと同時に見えた、フェリーチェの顔。
そんなに自分の仕事を人に任せるのが嫌なのか、と言いたくなる程、機嫌悪そうな渋い表情をしている。
普通……それがか――?
「じゃ、行きましょうっ」
「はい」
颯爽と踵を返し歩き始めるフェリーチェの後を慌てて追いかける女は、途中で振り返りこちらに頭を下げ、また急いでフェリーチェの後を追って行った。
(それにしても……。ついこの間まで人に教わってた奴が、教える側になるとはな)
二人の後ろ姿を見送って思う。
もう何年も前からここに居たみたいに、調査兵団の空気に溶け込んできているフェリーチェは、兵団の女限定なら人見知りも落ち着いてきたようだ。
それはひとえにペトラの働きによるものだろう。ペトラは人当たりが良く自然と人を集める性質の人間なので、一緒にいるフェリーチェはペトラを介し、すんなりとその輪に入って行けたに違いない――。
友人が出来るのは良い事だ。
だが、それも一時の事となると喜ばしいばかりでは無く。兵団を離れる時は……。
「……。先を考えても仕方ない……」
溜息よりも先に言葉が出ていた。
そうだ。仕方がない――。
気を取り直し、執務室に戻ろうとファイルを脇に抱える。そこで「ん?」と気が付いた。
「結構重いじゃねぇかよ」
あの細腕でケロッとしてたが、女が持つには少し重量がある気が……。
(そういえば、変なところで馬鹿力発揮する奴だった……)
ぼんやりと以前を思い出しながら執務室へ戻る。
こんな大量に資料が必要な仕事を、リヴァイは頼んだ覚えがなかった。
また誰かから頼まれホイホイと引き受けてきたのでは? と思うと気が気でなく、執務室でファイルを捲って確認してみたところ……。
(そういう事か。フェリーチェめ)
理由が分かり、「心配して損した」とすぐに部屋を出た。
(全く関係ねぇじゃねぇか)
恐らく、“趣味の研究”に使いたいのであろうそれ。
仕事中上官の横で持つものが、仕事には全く関係ない趣味のものならば、あんなに頑なに拒否されたのも頷ける。
『補佐が上官に荷物持たせるなんて聞いた事ありません』
――なるほど。一理ある。
だが、別にそれをとやかく言いたいのではなく、自分がただフェリーチェにしてやりたかっただけなので結局はモヤッとしたものが残った。
上官だなんだ言いやがって。大人しく持たせりゃいいものを。
過ぎた事をブツブツ言うのもアレだがな、と思いながら、リヴァイは呼び出されている会議室へと足を向けた。
「えっと。この後は会議ですよね?」
「ああ」
フェリーチェが、ファイルを抱え直し横で言った。
分厚い三冊のファイルは、小さいフェリーチェが持っているせいか、余計に厚く大きく見える。
当然、男としてそれを見逃せる筈も無く、さっきから何度も「俺が持つ」と言っているのだが、フェリーチェは首を縦に振らない。結構頑固なのだ。
「フェリーチェ。やっぱりそれは俺が持」
「大丈夫ですっ」
「……」
――頑固だ。
「俺が持たせてるみたいで、どうも気が引けるんだが」
「これ、私の仕事ですよ? 補佐が上官に荷物持たせるなんて聞いた事ありません」
「しかしだな」
「もうっ。リヴァイさんって結構頑固者ですよね!」
「……お前が言うのかよ」
「ん?」
本人には自覚があるのか無いのか。
全く無いのだろう。
「何か言いました?」と上目遣いで見られ、何でもない、と顔を逸らした。
その角度は……困る。
生々しい記憶が蘇り、ここがどういう場であるかを忘れそうになるからだ。
伸びそうになる手にそっと力を入れた――。
「今回の会議は資料が無いんですね」
「会議と言っちまえばそうなるが、そうじゃないと言ってもおかしくない集まりだからな」
「と、いいますと?」
「大した意味のない作戦会議……って事だ」
「……なんだかよく分からないですね」
――察しろ。
二日もかけて貴族と“お茶会”しなくてはならない事は、フェリーチェもすでに知っている。
エルヴィン、ハンジ、ミケ、自分。四人集まって話す内容は、その茶会についてだ。
前もって話したからといって当日どうなるものでもなく、そもそも相手あっての事だから、その場の流れに合わせるのが一番の得策でしかない。
だから「会議だ」といっても、その内容は大体想像出来た。
ハンジには『巨人の話はするな』。
ミケには『匂いを嗅ぐ癖を絶対に出すな』。
自分には『愛想を少しは持て』。
まぁ、そんな所だろう……。
「あ。私が思うに、リヴァイさんは愛想よくしなきゃダメ、って言われちゃうんじゃないですか?」
「あ? 待て。何故そこだけピンポイントで察するんだ、お前は」
「今度行くパーティーの話かな? って、ふと思って。やっぱりそうなんですか」
「だから、大した意味のない作戦会議だと言っただろ」
「そっちじゃなく、リヴァイさんが愛想よくしなさいって注意される方です」
「……」
どうにも返す言葉が見つからず、「うるさい」とフェリーチェの髪を引っ張った。
「ひゃっ!? 両手塞がってる補佐に意地悪はナシですよっ」
「手綱みてぇだな」
「たづなっ!? 馬じゃないのに」
「じゃじゃ馬を躾けてるのと大差ない。……いや、猪か?」
「猪……。だったらまだ馬の方がいいです」
「?」
ふいっと顔を正面に向け文句を言うフェリーチェから、微かに舞う香り。
いつもと違う感覚が不思議で、細い束を自分の顔に引き寄せる。……確かに違う――。
「え? 何ですかっ?」
「フェリーチェ。お前、石鹸を変えたのか?」
「はっ!?」
フェリーチェが目を丸くしているのを目の前にし、自分が言った言葉がいかに恥ずかしいものであったか気付いた。
が、言ってしまった後では遅い。
「……」
言い訳をするのも変な話だ。
「いつも使ってるのをうっかり切らしちゃって……。ぺトラさんに前にお裾分けして貰ったのを使ったんです。オススメだよって。ふふっ、いい香りですよね」
「そうか……」
「あっ。もしかして、いつもぺトラさんが使ってる石鹸だから気が付いたんですか?」
「いや。ぺトラが使ってる石鹸なんて気にしたことも無――」
「……?」
考えなく再び口を開いてしまい、フェリーチェの顔を見れなくなった。
これ以上余計な事を言う前に拳で口を塞ぐ。
柔らかい髪を持つ手は、パッと開き香りごと手放して……。――おい、この後どうすればいいんだ?
「午前中に廊下でミケさんに会った時にも、言われまして……。やっぱりミケさんだなぁって面白かったんです。でも、まさかリヴァイさんに気付いて貰えるなんて。こういうの、不思議と嬉しいものなんですねぇ」
フェリーチェは自分の髪の毛をふわふわ振りながら、くすくす笑っている。
あまり深くまで事を考えてなさそうなので、とりあえずホッとし。しつつも、少々複雑な気分でもあり。
(調子が狂う……)
ファイルをまた抱え直しているフェリーチェに、心の中で「お前のせいだぞ」と戸惑いをぶつけた。
「フェリーチェよ。やっぱりそれ寄越せ。俺が持つ」
「え! 嫌ですよ! 駄目!」
「そこまで嫌がるもんか?」
「これ位のものも満足に持てないみたいで、なんか嫌ですっ」
「親切心だろうが。嫌味で言ってる訳じゃねぇ」
「分かってますけど、でも……駄目です!」
あくまで断るフェリーチェに、自分も負けじと手を出す。
そんな攻防を立ち止まってまでしていると、横から女の声が割って入ってきた。
「あの。お取り込み中、申し訳ないんですが……」
「あ?」
「はい?」
フェリーチェと同時にその女に向くと、女は一歩下がった。
人と話すのが苦手なのか、眼鏡越しの目はオドオドと斜め下を行ったり来たりし、背の高さを猫背で低く見せている。
地味の上に超を付けても足りない位の存在感だった。
「何か用か?」
「は、はい……。フェリーチェさんに……」
「私?」
「今、資料室の整理をしているんですが、分からない事が多々あって……。フェリーチェさんが詳しいから聞くと良い、と先輩達が教えてくれたんです……。なので、ご迷惑じゃなければ……」
声も小さくて、聞き取るのにも苦労する。自分の周りにはハキハキ喋る者が多いからか、「もっと声を張れ!」と言いたくなった。
「リヴァイさん、顔怖いですよ」
「……そんなつもりは無い」
「つもりは無くても実際怖いんです。――あぁ、えっと……でも私、十年以上前の資料しか見てないからお役に立てるかどうか……本当に私で良いんですか?」
フェリーチェの言葉にパッと表情を明るくした女は、「大丈夫です! ありがとうございます、よろしくお願いします」と礼をし、今度はこちらを見た。……見下ろした。
フェリーチェを連れて行っていいかを聞きたいのだろう。
「フェリーチェ、行ってやれ。そいつは俺が執務室に持っていく。ファイル持参じゃ邪魔だろう。失くされても困る」
「ああ〜結局リヴァイさんに持たせる羽目に……」
「最初から渡しておけば、つまんねぇ押し問答しなくて済んだものを……」
「すみません」
「す、すみません!」
何故か、フェリーチェの横で女も一緒になって謝ってきた。
「お前は何も悪くないだろう」
つい可笑しくなり、クッと笑ってしまう。
「は……はいっ……」
丸めていた体が、より丸く縮こまって見えた。
「……。では、リヴァイさん! コレお願いしますっ!」
「あぁ、分かった。……なんて顔してんだ、お前は」
「は? 普通の顔ですが?」
胸に放られるファイルを抱えたと同時に見えた、フェリーチェの顔。
そんなに自分の仕事を人に任せるのが嫌なのか、と言いたくなる程、機嫌悪そうな渋い表情をしている。
普通……それがか――?
「じゃ、行きましょうっ」
「はい」
颯爽と踵を返し歩き始めるフェリーチェの後を慌てて追いかける女は、途中で振り返りこちらに頭を下げ、また急いでフェリーチェの後を追って行った。
(それにしても……。ついこの間まで人に教わってた奴が、教える側になるとはな)
二人の後ろ姿を見送って思う。
もう何年も前からここに居たみたいに、調査兵団の空気に溶け込んできているフェリーチェは、兵団の女限定なら人見知りも落ち着いてきたようだ。
それはひとえにペトラの働きによるものだろう。ペトラは人当たりが良く自然と人を集める性質の人間なので、一緒にいるフェリーチェはペトラを介し、すんなりとその輪に入って行けたに違いない――。
友人が出来るのは良い事だ。
だが、それも一時の事となると喜ばしいばかりでは無く。兵団を離れる時は……。
「……。先を考えても仕方ない……」
溜息よりも先に言葉が出ていた。
そうだ。仕方がない――。
気を取り直し、執務室に戻ろうとファイルを脇に抱える。そこで「ん?」と気が付いた。
「結構重いじゃねぇかよ」
あの細腕でケロッとしてたが、女が持つには少し重量がある気が……。
(そういえば、変なところで馬鹿力発揮する奴だった……)
ぼんやりと以前を思い出しながら執務室へ戻る。
こんな大量に資料が必要な仕事を、リヴァイは頼んだ覚えがなかった。
また誰かから頼まれホイホイと引き受けてきたのでは? と思うと気が気でなく、執務室でファイルを捲って確認してみたところ……。
(そういう事か。フェリーチェめ)
理由が分かり、「心配して損した」とすぐに部屋を出た。
(全く関係ねぇじゃねぇか)
恐らく、“趣味の研究”に使いたいのであろうそれ。
仕事中上官の横で持つものが、仕事には全く関係ない趣味のものならば、あんなに頑なに拒否されたのも頷ける。
『補佐が上官に荷物持たせるなんて聞いた事ありません』
――なるほど。一理ある。
だが、別にそれをとやかく言いたいのではなく、自分がただフェリーチェにしてやりたかっただけなので結局はモヤッとしたものが残った。
上官だなんだ言いやがって。大人しく持たせりゃいいものを。
過ぎた事をブツブツ言うのもアレだがな、と思いながら、リヴァイは呼び出されている会議室へと足を向けた。