束縛の中の限られた自由
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5
「リヴァイさんリヴァイさんっ!」
自分の部屋へ戻ろうと廊下を歩いていると、フェリーチェが叫びながら背中を追って来た。
いくら調整日で人が少ないとはいえ、こんな勢いで追いかけられては敵わない。また変な噂が立つかもしれない。
しかも、自分の部屋は目前だ。相変わらず男の部屋が並ぶ場所だという事を、フェリーチェは自覚していないようだ――。
「うるさい。大声を出さなくても聞こえる」
「夜、お出かけしましょうっ」
「何?」
声を弾ませ、フェリーチェはニッコリと笑った。
(なんだその無駄にキラキラした目は。俺は何を期待されてるんだ……)
「リヴァイさんと外でお食事したいです」
「……外。なんで急に」
「エルヴィンさんが、もっと自由に街に出て良いんだよって言ってくれました。私、昼間しか出たこと無いから……夜の街に行ってみたいんです」
「エルヴィンめ……余計な事を……」
(夜の街だと?)
昼間連れ歩くのはまだいい。最近は歩き慣れてきたせいか、フラフラと訳の分からない場所へ入って行かなくなったからだ。
だが、夜となると話は別だ。事情が変わってくる。
その時間帯、街は昼間とは違う賑わいを見せるのだが、出歩く人間も昼間とはまた違う。
悪酔いした野郎やタチの悪い輩が歩いている事は珍しくなく、フェリーチェを連れて歩くには一抹の不安を感じた。
どういうつもりで「もっと自由に街に出て良い」と言ったか知らないが、気苦労を増やす元を作ってくれたのは確かだ。
昼間はいつの間にかフェリーチェを連れ出していたし、エルヴィンの考えている事は相変わらず読めない――。
「デートのお誘いですよ?」
「は!?」
「ハンジさんにリヴァイさんを誘うと言ったら、じゃあデートだね! って……」
「チッ……どいつもこいつも……!」
(余計な事ばかり言いやがって……)
後で覚えていろ。特にハンジ!
「自分が何を言ってるか分かってんだろうな、フェリーチェ」
「はい! “デート”!」
「…………」
「いや、分かってないだろ」とリヴァイが口を開きかけたところを、フェリーチェは手で制した。
何だか妙に自信有り気な表情に、嫌な予感が……。
「それくらいは知ってます。お互いをもっとよく知りあう為にする、親睦会みたいなものでしょう? 仲良く食事をしたり、お出かけして色々な事を体験します。手、繋いだりっ!」
「……」
微妙な感じで正しく、絶妙な具合で間違っている。
しかも、訂正するのが非常に面倒そうな知識だ。
こんな中途半端な情報の仕入れ先といえば――。
「それも、開発部の資料室にあった本で知ったのか」
「オジサン研究員の人達から聞きました」
「……クソジジイどもが……数字だけ数えてればいいものを……」
「……リヴァイさん? あの…」
フェリーチェはリヴァイの返事を待っていた。
自分をジッと見てくる視線に、リヴァイは溜息まじりに返事をする。
断る理由など、どこを探しても無い――。
「……分かった。……連れてってやる」
「本当ですか!」
よくよく見れば、フェリーチェの格好は普段と違っていた。
いつもは余計な装飾はほとんどついていないシンプルなワンピースばかり着ているのに、今日着ているものには、横にリボンが編み込まれていたり、裾や袖口にレースがあしらわれていたりするものだった。
めかしこんでいる? 珍しい姿だ。
行く気満々なのが格好に表れている。
「お前のことだ。嫌だと言っても、しつこく誘うつもりだろう。行くと言うまで」
「ふふっ」
初めて街に出かけた日のフェリーチェのはしゃぎ様を思い出し、今度は初めての夜の外出にテンションを上げているのだろうか……とリヴァイは思った。
(あの調子で歩かれると厄介なんだが……)
リヴァイから良い返事を貰い、フェリーチェはすでに楽しそうに笑っていた。
自分の姿を見られている事に気付くと、ますますその笑顔をほころばせる。
「この服、自分で選んだんですよ!」
「そりゃそうだろうな」
「似合ってます?」
「……まぁな……お前らしい」
いつも着ている服は、似合っていないとは言わないが、フェリーチェには少し大人びている様にも見えていた。歳が歳なのだからそれらを着ていても無論不思議ではないのだが、フェリーチェの雰囲気とは僅かなズレを感じるというか……。
ただ大人っぽいものより、可愛さの中に品のあるこちらの方が、ずっとフェリーチェらしいと思う。
「初めてだったから、ドキドキしました」
「何?」
「自分のすきなものを選ぶの!」
「――は? お前……さっきから何を」
「?」
微笑んだまま首を傾げたフェリーチェに、思わず口を閉じた。
妙な違和感だけが増していくのは何故だ――。
「支給品を自分で選べるとは思わなかったので」
「……支給品、だと?」
「兵団の皆さんは、自分で選んでお洋服を用意するとか……。ビックリでした」
「私服だぞ? 兵服とは違う。自分で選ぶなんて、そんなの当たり前だろうが。そもそも俺にはお前の言ってる意味が分からねぇんだが……」
「私も、次からは“私服”を自分で“選んで買える”んです。楽しみです!」
「だからちょっと待て!……どうなってる……。フェリーチェ、今着てるお前のそれは何なんだ?」
「支給品です。兵団からの。エルヴィンさんがそう言って選ばせてくれたので、お言葉に甘えて…」
「それは“支給品”じゃねぇ」
フェリーチェの話の内容が全く分からない。
まぁ、それは後で一つずつ聞いていけばいいとしても……。
エルヴィンが絡んでいる部分は、明らかにおかしい。
「要はプレゼントだろうが。エルヴィンからの」
「違いますよ」
「違わない」
「違いますってば。お誕生日でもないのに、プレゼントは受け取れません」
堂々と答えているフェリーチェに、リヴァイは眉を顰めた。
(いや。それ以外にどう考えろと……?)
――それで昼間フェリーチェを連れ出したのか。
リヴァイの表情にフェリーチェは困惑を見せている。
その顔にリヴァイも溜息しか出なかった。
「リヴァイさんリヴァイさんっ!」
自分の部屋へ戻ろうと廊下を歩いていると、フェリーチェが叫びながら背中を追って来た。
いくら調整日で人が少ないとはいえ、こんな勢いで追いかけられては敵わない。また変な噂が立つかもしれない。
しかも、自分の部屋は目前だ。相変わらず男の部屋が並ぶ場所だという事を、フェリーチェは自覚していないようだ――。
「うるさい。大声を出さなくても聞こえる」
「夜、お出かけしましょうっ」
「何?」
声を弾ませ、フェリーチェはニッコリと笑った。
(なんだその無駄にキラキラした目は。俺は何を期待されてるんだ……)
「リヴァイさんと外でお食事したいです」
「……外。なんで急に」
「エルヴィンさんが、もっと自由に街に出て良いんだよって言ってくれました。私、昼間しか出たこと無いから……夜の街に行ってみたいんです」
「エルヴィンめ……余計な事を……」
(夜の街だと?)
昼間連れ歩くのはまだいい。最近は歩き慣れてきたせいか、フラフラと訳の分からない場所へ入って行かなくなったからだ。
だが、夜となると話は別だ。事情が変わってくる。
その時間帯、街は昼間とは違う賑わいを見せるのだが、出歩く人間も昼間とはまた違う。
悪酔いした野郎やタチの悪い輩が歩いている事は珍しくなく、フェリーチェを連れて歩くには一抹の不安を感じた。
どういうつもりで「もっと自由に街に出て良い」と言ったか知らないが、気苦労を増やす元を作ってくれたのは確かだ。
昼間はいつの間にかフェリーチェを連れ出していたし、エルヴィンの考えている事は相変わらず読めない――。
「デートのお誘いですよ?」
「は!?」
「ハンジさんにリヴァイさんを誘うと言ったら、じゃあデートだね! って……」
「チッ……どいつもこいつも……!」
(余計な事ばかり言いやがって……)
後で覚えていろ。特にハンジ!
「自分が何を言ってるか分かってんだろうな、フェリーチェ」
「はい! “デート”!」
「…………」
「いや、分かってないだろ」とリヴァイが口を開きかけたところを、フェリーチェは手で制した。
何だか妙に自信有り気な表情に、嫌な予感が……。
「それくらいは知ってます。お互いをもっとよく知りあう為にする、親睦会みたいなものでしょう? 仲良く食事をしたり、お出かけして色々な事を体験します。手、繋いだりっ!」
「……」
微妙な感じで正しく、絶妙な具合で間違っている。
しかも、訂正するのが非常に面倒そうな知識だ。
こんな中途半端な情報の仕入れ先といえば――。
「それも、開発部の資料室にあった本で知ったのか」
「オジサン研究員の人達から聞きました」
「……クソジジイどもが……数字だけ数えてればいいものを……」
「……リヴァイさん? あの…」
フェリーチェはリヴァイの返事を待っていた。
自分をジッと見てくる視線に、リヴァイは溜息まじりに返事をする。
断る理由など、どこを探しても無い――。
「……分かった。……連れてってやる」
「本当ですか!」
よくよく見れば、フェリーチェの格好は普段と違っていた。
いつもは余計な装飾はほとんどついていないシンプルなワンピースばかり着ているのに、今日着ているものには、横にリボンが編み込まれていたり、裾や袖口にレースがあしらわれていたりするものだった。
めかしこんでいる? 珍しい姿だ。
行く気満々なのが格好に表れている。
「お前のことだ。嫌だと言っても、しつこく誘うつもりだろう。行くと言うまで」
「ふふっ」
初めて街に出かけた日のフェリーチェのはしゃぎ様を思い出し、今度は初めての夜の外出にテンションを上げているのだろうか……とリヴァイは思った。
(あの調子で歩かれると厄介なんだが……)
リヴァイから良い返事を貰い、フェリーチェはすでに楽しそうに笑っていた。
自分の姿を見られている事に気付くと、ますますその笑顔をほころばせる。
「この服、自分で選んだんですよ!」
「そりゃそうだろうな」
「似合ってます?」
「……まぁな……お前らしい」
いつも着ている服は、似合っていないとは言わないが、フェリーチェには少し大人びている様にも見えていた。歳が歳なのだからそれらを着ていても無論不思議ではないのだが、フェリーチェの雰囲気とは僅かなズレを感じるというか……。
ただ大人っぽいものより、可愛さの中に品のあるこちらの方が、ずっとフェリーチェらしいと思う。
「初めてだったから、ドキドキしました」
「何?」
「自分のすきなものを選ぶの!」
「――は? お前……さっきから何を」
「?」
微笑んだまま首を傾げたフェリーチェに、思わず口を閉じた。
妙な違和感だけが増していくのは何故だ――。
「支給品を自分で選べるとは思わなかったので」
「……支給品、だと?」
「兵団の皆さんは、自分で選んでお洋服を用意するとか……。ビックリでした」
「私服だぞ? 兵服とは違う。自分で選ぶなんて、そんなの当たり前だろうが。そもそも俺にはお前の言ってる意味が分からねぇんだが……」
「私も、次からは“私服”を自分で“選んで買える”んです。楽しみです!」
「だからちょっと待て!……どうなってる……。フェリーチェ、今着てるお前のそれは何なんだ?」
「支給品です。兵団からの。エルヴィンさんがそう言って選ばせてくれたので、お言葉に甘えて…」
「それは“支給品”じゃねぇ」
フェリーチェの話の内容が全く分からない。
まぁ、それは後で一つずつ聞いていけばいいとしても……。
エルヴィンが絡んでいる部分は、明らかにおかしい。
「要はプレゼントだろうが。エルヴィンからの」
「違いますよ」
「違わない」
「違いますってば。お誕生日でもないのに、プレゼントは受け取れません」
堂々と答えているフェリーチェに、リヴァイは眉を顰めた。
(いや。それ以外にどう考えろと……?)
――それで昼間フェリーチェを連れ出したのか。
リヴァイの表情にフェリーチェは困惑を見せている。
その顔にリヴァイも溜息しか出なかった。