人類最強の男が立ち向かうもの
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
✽4✽
フェリーチェの衝撃的? 発言から数日。
王都での重要会議へ出席したリヴァイは兵団本部を離れていた。会議は面倒臭くて嫌いだが、いまだ扱いづらいままの補佐と仕事をするのも何ともいえない。
良いのか悪いのか……。
――複雑な思いで数日を過ごした。
ただ、自分が留守の間の仕事についてはあまり気にはならなかった。今までは数日本部を離れて帰るとうんざりする程の量の書類が待っていたが、今回は補佐のフェリーチェがいる。
自分が居なくても問題無いものは、適当に片付けておいてくれと頼んで来た。勿論彼女なら言われた通りにしているだろう。しかも、適当ではなく完璧に。
これに関しては大変良い。
――憂鬱な思いはしないで済んだ。
「リヴァイ兵長。お疲れ様でした」
執務室に帰ると、フェリーチェがリヴァイより小さな身体を丁寧に折り彼を出迎えた。
ああ。と生返事。
今までに無い待遇に変な気分になりながらも、つい習慣でリヴァイは部屋を見渡していた。潔癖症の性分は数日間分だけの埃も気になってしまう。だが、今回は特別気になる所は無かった。
フェリーチェがしっかり掃除をした様だ。
「どうかされましたか?」
「……いや。しっかりと掃除……おい」
「はい?」
「あれはどういう事だ?」
「書類……ですか? 言われた通り処理したんですけど……」
想像以上に机上にある紙の束が少なかった事に、リヴァイは驚いていた。
二日は書類に手こずるくらいの量は残っていると思っていたのだ。だが、あの感じでは多く見積もったとしても一日で片が付きそうだ。
全く、この補佐の事務処理能力は一体どうなっているんだ。さすがは開発部副部長という大き過ぎる肩書きを背負っているだけある……という事か。
「すみません。出しゃばり過ぎてしまいました……」
「いや。責めてる訳じゃない。逆だ」
「逆?」
「いつもは帰ってくると書類の多さにうんざりして疲労感が増す。だが今日はそれが無い。お前が頑張ってくれたおかげだな。助かった、ありがとう」
「………」
「……なんだそのあからさまな驚き顔は」
「えっ!? いや、違います違いますごめんなさいっ」
謝ってしまえば違うと弁解してる意味が無いだろう。リヴァイがそう言いたげにフェリーチェを見ると、フェリーチェは頬をうっすらと赤めていた。
――その反応は初めてだ。
この部屋の空気と、向かい合う補佐との距離。そこにある何かが少しだけ変わる瞬間を、今自分は垣間見たのかもしれない。
(しかし何だこの違和感は……?)
身体を覆う疲労感までも僅かに変わった気がしたリヴァイは、心の中で首を傾げた。
どうしてみたって、現実である疲労は減るものでも無いのに……減った……? そんな馬鹿な。
フェリーチェを見ると、彼女もまた自分を見上げ首を傾げていた。
「あの……どうしたんですか? やっぱり王都に出張っていうのは疲れるものなんでしょうか?」
「自分の能力を著しく勘違いしてる最低な豚野郎ばかりだからな。奴等の相手をしてると苛々する。街中の雰囲気もこの辺とは全く違うクソみたいな所だ。俺には合わねぇ」
「それは……辛いです……ね」
そう言いつつフェリーチェの表情は同情を含んではいなかった。どちらかといえば、必死に考えている顔だ。
ああ、そうだ。コイツ引きこもり女だったな。外を知らないから想像もつかねぇんだろう。
そんな相手に愚痴まがいの説明をした自分が馬鹿馬鹿しく思えて、はぁ……とリヴァイは溜息を漏らした。
「お前の方こそ合わねぇだろうな」
「そうなんですか?」
「そうだ。世間知らずにはあそこは……まぁいい。疲れたから休む。紅茶を淹れてやるからお前も付き合え」
「えっ。でも、」
「不味い茶より美味い方が良いだろう?」
「……ですよ……ね…」
自分を包んだ違和感の正体に、リヴァイはまだ気付かなかった。何かが変わった事は察しても、それを理解する為の気持ちを彼はまだ持ち合わせていない。
知らないから想像出来ない。リヴァイも彼女と同じだった。
「淹れて貰えるのって嬉しいですっ」
「そうか? ……まぁ、悪くはないな」
「はい。嬉しいものなんです!」
フェリーチェに背を向けて紅茶を淹れるリヴァイは知らなかった。
自分を見てフェリーチェが笑っている事を。そして、言葉通り本当に嬉しそうにしている事を。
ついでに言うなら、フェリーチェの口調がほんの少し変わった事も、自分と視線をちゃんと合わせていた事も、彼女があまりにも自然に変化させたので分からなかった。
やっと気付いたのは数分後。
フェリーチェが「やっぱりリヴァイさんの淹れてくれた紅茶は美味しいですねぇ」なんて呑気に呟いた時だった。
――不意をつかれた発言にリヴァイが紅茶をこぼしかけた事は……今のところ誰にも知られていない。
フェリーチェの衝撃的? 発言から数日。
王都での重要会議へ出席したリヴァイは兵団本部を離れていた。会議は面倒臭くて嫌いだが、いまだ扱いづらいままの補佐と仕事をするのも何ともいえない。
良いのか悪いのか……。
――複雑な思いで数日を過ごした。
ただ、自分が留守の間の仕事についてはあまり気にはならなかった。今までは数日本部を離れて帰るとうんざりする程の量の書類が待っていたが、今回は補佐のフェリーチェがいる。
自分が居なくても問題無いものは、適当に片付けておいてくれと頼んで来た。勿論彼女なら言われた通りにしているだろう。しかも、適当ではなく完璧に。
これに関しては大変良い。
――憂鬱な思いはしないで済んだ。
「リヴァイ兵長。お疲れ様でした」
執務室に帰ると、フェリーチェがリヴァイより小さな身体を丁寧に折り彼を出迎えた。
ああ。と生返事。
今までに無い待遇に変な気分になりながらも、つい習慣でリヴァイは部屋を見渡していた。潔癖症の性分は数日間分だけの埃も気になってしまう。だが、今回は特別気になる所は無かった。
フェリーチェがしっかり掃除をした様だ。
「どうかされましたか?」
「……いや。しっかりと掃除……おい」
「はい?」
「あれはどういう事だ?」
「書類……ですか? 言われた通り処理したんですけど……」
想像以上に机上にある紙の束が少なかった事に、リヴァイは驚いていた。
二日は書類に手こずるくらいの量は残っていると思っていたのだ。だが、あの感じでは多く見積もったとしても一日で片が付きそうだ。
全く、この補佐の事務処理能力は一体どうなっているんだ。さすがは開発部副部長という大き過ぎる肩書きを背負っているだけある……という事か。
「すみません。出しゃばり過ぎてしまいました……」
「いや。責めてる訳じゃない。逆だ」
「逆?」
「いつもは帰ってくると書類の多さにうんざりして疲労感が増す。だが今日はそれが無い。お前が頑張ってくれたおかげだな。助かった、ありがとう」
「………」
「……なんだそのあからさまな驚き顔は」
「えっ!? いや、違います違いますごめんなさいっ」
謝ってしまえば違うと弁解してる意味が無いだろう。リヴァイがそう言いたげにフェリーチェを見ると、フェリーチェは頬をうっすらと赤めていた。
――その反応は初めてだ。
この部屋の空気と、向かい合う補佐との距離。そこにある何かが少しだけ変わる瞬間を、今自分は垣間見たのかもしれない。
(しかし何だこの違和感は……?)
身体を覆う疲労感までも僅かに変わった気がしたリヴァイは、心の中で首を傾げた。
どうしてみたって、現実である疲労は減るものでも無いのに……減った……? そんな馬鹿な。
フェリーチェを見ると、彼女もまた自分を見上げ首を傾げていた。
「あの……どうしたんですか? やっぱり王都に出張っていうのは疲れるものなんでしょうか?」
「自分の能力を著しく勘違いしてる最低な豚野郎ばかりだからな。奴等の相手をしてると苛々する。街中の雰囲気もこの辺とは全く違うクソみたいな所だ。俺には合わねぇ」
「それは……辛いです……ね」
そう言いつつフェリーチェの表情は同情を含んではいなかった。どちらかといえば、必死に考えている顔だ。
ああ、そうだ。コイツ引きこもり女だったな。外を知らないから想像もつかねぇんだろう。
そんな相手に愚痴まがいの説明をした自分が馬鹿馬鹿しく思えて、はぁ……とリヴァイは溜息を漏らした。
「お前の方こそ合わねぇだろうな」
「そうなんですか?」
「そうだ。世間知らずにはあそこは……まぁいい。疲れたから休む。紅茶を淹れてやるからお前も付き合え」
「えっ。でも、」
「不味い茶より美味い方が良いだろう?」
「……ですよ……ね…」
自分を包んだ違和感の正体に、リヴァイはまだ気付かなかった。何かが変わった事は察しても、それを理解する為の気持ちを彼はまだ持ち合わせていない。
知らないから想像出来ない。リヴァイも彼女と同じだった。
「淹れて貰えるのって嬉しいですっ」
「そうか? ……まぁ、悪くはないな」
「はい。嬉しいものなんです!」
フェリーチェに背を向けて紅茶を淹れるリヴァイは知らなかった。
自分を見てフェリーチェが笑っている事を。そして、言葉通り本当に嬉しそうにしている事を。
ついでに言うなら、フェリーチェの口調がほんの少し変わった事も、自分と視線をちゃんと合わせていた事も、彼女があまりにも自然に変化させたので分からなかった。
やっと気付いたのは数分後。
フェリーチェが「やっぱりリヴァイさんの淹れてくれた紅茶は美味しいですねぇ」なんて呑気に呟いた時だった。
――不意をつかれた発言にリヴァイが紅茶をこぼしかけた事は……今のところ誰にも知られていない。