人類最強の男が立ち向かうもの
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✽2✽
開発部の引きこもり娘は、殆ど表に出ないせいか大層人見知りするらしい。
しかし、元来の性格は明るく朗らかの様で、一度慣れてしまえさせすればそれはどこかへ消えてしまうのだと、エルヴィンは言っていた。
実際フェリーチェがエルヴィンに懐いて笑うようになったのは調査兵団に来たその日。ハンジには二日後。ミケには五日後……といった具合に。
彼女が調査兵団に溶け込むのも時間の問題だろう。食堂に行けば兵士達が、会ってみたいだの、話してみたいだのと言っているのを最近よく耳にする。
フェリーチェが彼らに会うのが先か。彼らが彼女に接近するのが先か。要はそれだけだ。
「あの……。リヴァイ兵長」
「なんだ」
「この書類不備があります。十三行目の六文字目に誤字。三十七行目の十二文字目に脱字。あと最後の報告文の四行目、計算ミスからの結果数矛盾で、」
そこまで言われてから、リヴァイは読んでいた書類から顔を上げた。
フェリーチェと目が合う。
「……ど……どうしますか?」
「それくらいならお前が判断して勝手に訂正して良い」
「了解です……」
細けぇ。
それは言わずに指示を与える。そうするとフェリーチェはすぐに視線をずらしリヴァイに背を向けた。
確かにエルヴィンの言っていた通り、彼女の仕事は迅速で正確だ。何の問題も無く完璧にこなす。
そのおかげでリヴァイの仕事の効率は格段に上がった。だが、精神的疲労も格段に上がった。
フェリーチェは極度の人見知りをする。
けれども一度慣れてしまえばそれは消えるらしい。
エルヴィンはその日。ハンジは二日後。ミケは五日後。
今日で、フェリーチェがここにやって来て丁度一週間だ。
フェリーチェって本当可愛いコだよ。笑うとコッチまでほんわかしちゃう。癒しだねぇ、癒し! まさか巨人以外で私の心を満たしてくれるコに出会えるとは思わなかったなぁ。
昨日の夜一緒に酒を飲んだ時、ハンジはそう言い楽しそうに笑っていた。
(何故俺には慣れない)
少なくとも他の奴らより接しているはず。彼女は自分の補佐なのだ。
けれども、フェリーチェがリヴァイに慣れたのだろうと判断出来る材料は実に少なかった。というか、ほぼ無いに等しかった。
呼べばビクリと肩を揺らしていたのが、微かに髪を揺らす程度に。リヴァイ兵士長という呼び方が、リヴァイ兵長に。
――これで慣れたとはお世辞にもいえない。
……リヴァイ。急に仲良くなろうとしてがっついたんだね? ただでさえ第一印象で怖がられてるのに、それ以上怖がらせてどうすんのさ。
ハンジには三発ほど蹴りをお見舞いしてやった。
「仕事は慣れたか」
「はい」
「そうか。調査兵団には」
「はい大分。出会う人はみんな親切ですね」
「実地調査もすると聞いたが」
「はい。でもそれはもう少し経ってからにしようと思ってます」
まだ此処のことを把握しきれてませんし……。
ポツリと漏らされた小さな声に机から顔を上げる。
「……そうか」
普段に違わず、フェリーチェはリヴァイと視線が重なるとさりげなくそれを逸らした。
思わず溜息を出しかけたのを堪え、リヴァイは休憩にするかと声をかける。はい。そう答えが返って来た。
「紅茶ですよね? お淹れします」
「あぁ」
フェリーチェが執務室に長く居たままなのは珍しい。書類を届けさせれば行った先でも何かを頼まれるらしく、律儀にそれを受けるフェリーチェがこの部屋へ戻ってくるのには、いつもとても時間がかかる。
自分の仕事に影響が無いから放って置いたが、成程、そう考えれば補佐だから長く接していると単純に言い切るのは間違いだったのかもしれない。
リヴァイは置かれた紅茶を見て思っていた。こうして彼女にお茶を淹れてもらうのは初めてだ。
「不味い」
「まっ……! す、すみませんっ。開発部の人達はコーヒー派だったので淹れ慣れてなくて……」
(慣れてない)
「……チッ」
「い、淹れ直します!」
つい言葉に反応してしまい舌打ちするリヴァイを見、フェリーチェが慌てて席を立とうとした。
「いやいい。淹れてやるから座ってろ」
「え!?」
「なんだ? 俺が部下を労おうとするのがそんなに意外か?」
ふるふると首を振る姿。
――数分後、気付かれない様に少し息を吐いてから、リヴァイは聞いてみることにした。疑問を疑問のままにしているのも正直キツくなってきたし、何よりこれ以上の精神的疲労はただただ迷惑だからだ。
「お前は何故俺にいつまでも怯えている」
「……それは……。……」
(言えないと?)
眉間に力が入る。しまった。目が合ってしまった。
案の定、慌てて視線を外し誤魔化す様に出された紅茶を一口飲むフェリーチェ。
が、すぐ目を丸くして「美味しい」と呟いた。
大きな瞳がリヴァイを見上げる。
「リヴァイ兵長の眉間の皺、怖いです」
「……。そう…か……」
紅茶のお礼に教えてやるという顔で言うんじゃねぇ。
開発部の引きこもり娘は、殆ど表に出ないせいか大層人見知りするらしい。
しかし、元来の性格は明るく朗らかの様で、一度慣れてしまえさせすればそれはどこかへ消えてしまうのだと、エルヴィンは言っていた。
実際フェリーチェがエルヴィンに懐いて笑うようになったのは調査兵団に来たその日。ハンジには二日後。ミケには五日後……といった具合に。
彼女が調査兵団に溶け込むのも時間の問題だろう。食堂に行けば兵士達が、会ってみたいだの、話してみたいだのと言っているのを最近よく耳にする。
フェリーチェが彼らに会うのが先か。彼らが彼女に接近するのが先か。要はそれだけだ。
「あの……。リヴァイ兵長」
「なんだ」
「この書類不備があります。十三行目の六文字目に誤字。三十七行目の十二文字目に脱字。あと最後の報告文の四行目、計算ミスからの結果数矛盾で、」
そこまで言われてから、リヴァイは読んでいた書類から顔を上げた。
フェリーチェと目が合う。
「……ど……どうしますか?」
「それくらいならお前が判断して勝手に訂正して良い」
「了解です……」
細けぇ。
それは言わずに指示を与える。そうするとフェリーチェはすぐに視線をずらしリヴァイに背を向けた。
確かにエルヴィンの言っていた通り、彼女の仕事は迅速で正確だ。何の問題も無く完璧にこなす。
そのおかげでリヴァイの仕事の効率は格段に上がった。だが、精神的疲労も格段に上がった。
フェリーチェは極度の人見知りをする。
けれども一度慣れてしまえばそれは消えるらしい。
エルヴィンはその日。ハンジは二日後。ミケは五日後。
今日で、フェリーチェがここにやって来て丁度一週間だ。
フェリーチェって本当可愛いコだよ。笑うとコッチまでほんわかしちゃう。癒しだねぇ、癒し! まさか巨人以外で私の心を満たしてくれるコに出会えるとは思わなかったなぁ。
昨日の夜一緒に酒を飲んだ時、ハンジはそう言い楽しそうに笑っていた。
(何故俺には慣れない)
少なくとも他の奴らより接しているはず。彼女は自分の補佐なのだ。
けれども、フェリーチェがリヴァイに慣れたのだろうと判断出来る材料は実に少なかった。というか、ほぼ無いに等しかった。
呼べばビクリと肩を揺らしていたのが、微かに髪を揺らす程度に。リヴァイ兵士長という呼び方が、リヴァイ兵長に。
――これで慣れたとはお世辞にもいえない。
……リヴァイ。急に仲良くなろうとしてがっついたんだね? ただでさえ第一印象で怖がられてるのに、それ以上怖がらせてどうすんのさ。
ハンジには三発ほど蹴りをお見舞いしてやった。
「仕事は慣れたか」
「はい」
「そうか。調査兵団には」
「はい大分。出会う人はみんな親切ですね」
「実地調査もすると聞いたが」
「はい。でもそれはもう少し経ってからにしようと思ってます」
まだ此処のことを把握しきれてませんし……。
ポツリと漏らされた小さな声に机から顔を上げる。
「……そうか」
普段に違わず、フェリーチェはリヴァイと視線が重なるとさりげなくそれを逸らした。
思わず溜息を出しかけたのを堪え、リヴァイは休憩にするかと声をかける。はい。そう答えが返って来た。
「紅茶ですよね? お淹れします」
「あぁ」
フェリーチェが執務室に長く居たままなのは珍しい。書類を届けさせれば行った先でも何かを頼まれるらしく、律儀にそれを受けるフェリーチェがこの部屋へ戻ってくるのには、いつもとても時間がかかる。
自分の仕事に影響が無いから放って置いたが、成程、そう考えれば補佐だから長く接していると単純に言い切るのは間違いだったのかもしれない。
リヴァイは置かれた紅茶を見て思っていた。こうして彼女にお茶を淹れてもらうのは初めてだ。
「不味い」
「まっ……! す、すみませんっ。開発部の人達はコーヒー派だったので淹れ慣れてなくて……」
(慣れてない)
「……チッ」
「い、淹れ直します!」
つい言葉に反応してしまい舌打ちするリヴァイを見、フェリーチェが慌てて席を立とうとした。
「いやいい。淹れてやるから座ってろ」
「え!?」
「なんだ? 俺が部下を労おうとするのがそんなに意外か?」
ふるふると首を振る姿。
――数分後、気付かれない様に少し息を吐いてから、リヴァイは聞いてみることにした。疑問を疑問のままにしているのも正直キツくなってきたし、何よりこれ以上の精神的疲労はただただ迷惑だからだ。
「お前は何故俺にいつまでも怯えている」
「……それは……。……」
(言えないと?)
眉間に力が入る。しまった。目が合ってしまった。
案の定、慌てて視線を外し誤魔化す様に出された紅茶を一口飲むフェリーチェ。
が、すぐ目を丸くして「美味しい」と呟いた。
大きな瞳がリヴァイを見上げる。
「リヴァイ兵長の眉間の皺、怖いです」
「……。そう…か……」
紅茶のお礼に教えてやるという顔で言うんじゃねぇ。