shot.15 あなたに花束を
ネジ山はホドモエシティと繋がっているヤーコンロードを抜けた先にあった。豊富な鉱物資源が眠っているこの場所では、採掘の為に作業員が汗水を垂らしながら働いている。
「あの、すみません。ここにリンエイという方はいますか?」
「ああ、いるよ。この先を真っ直ぐ行ったところにいるはずだ」
「ありがとうございます」
作業員に一礼すると、アンヌ達は言われた通りに進んだ。
開けた場所に出て周囲を見渡すと、その中に一際目立つ作業員の姿があった。他の作業員とは違い、ツルハシを使わず、素手で岩を削り、道を切り拓いている人物がいた。
青い坊主頭で、歳は20代半ばと言ったところだろうか。
「リンエイ!」
思わずディアナは駆け寄る。だが、その声に彼は振り向くこともせず、黙々と壁を掘り続けている。
ディアナは目を伏せて、彼の一歩前で立ち止まってしまった。悲しげな彼女の肩にアンヌは励ますように手を置く。
「私はアンヌ。あなたに話したいことがあってここに来たの」
ディアナの代わりにアンヌが一歩踏み出す。それでもリンエイは尚、背を向けたままだ。その背中が会話を拒絶していた。
「話すことなどない。お引き取り願おう」
「ディアナはあなたとPWTに出る、それが夢だって言っていたわ」
「……」
「以前のように一緒に居たい。本当はあなただって、そうなのでしょう?」
アンヌはかつて自分が、仲間に何も告げず、全てを抱え込んで、一人になろうとしていた時のことを思い出していた。自分の存在がみんなを危険な目に合わせてしまうのではないか。みんなのためには自分がいない方がいいとさえ思った。
リンエイもディアナの怪我を自分のせいだと思い、再び彼女が同じ目に遭わないよう、わざと彼女と距離をとっている。アンヌにはそう思われてならなかった。
リンエイは苛立ちをぶつけるように岩壁を何度も叩き、その拳は血が滲んでいた。まるでそれは自分の心を何度も殴り続けているようで——。
「止めて!そんな使い方をしたら、あなたの拳が壊れてしまうの!」
ディアナが悲鳴も似た声で叫ぶも、彼は止めようとしなかった。その姿はあまりにも痛々しく、誰もが茫然と立ち尽くす。罪悪感を纏った空気が、重くのしかかるように感じられた。
「その嬢ちゃんの言う通りだぜ。馬鹿な真似は止めな」
再び彼の拳が突き出されようとした時、その腕をグルートが掴んだ。リンエイの拳が宙で止まったまま震えている。腕を掴むグルートの力とそれに反発するリンエイの力が拮抗する。
「貴殿にはわからぬ……己の未熟さを呪う者の気持ちが……!」
絞り出すように漏れた声は、血反吐を吐くような苦しそうな声色で。
リンエイはグルートの手を跳ね除け、両腕を前に突き出し、構えをとる。
「……どうやら、大人しく話を聞く気は無ぇってことか。まあ、そっちの方が分かりやすくて助かるけどな?」
「グルート……!」
「こいつは口で言って聞くようなヤツじゃあねぇよ」
不安げなアンヌの眼差しを見つめて、グルートは彼女の頭をぽん、と軽く撫ででから、小さく笑う。
リンエイに向き直る。彼を見据えるグルートの赤い瞳が炎のように揺らめいていた。
「俺が勝ったら、こいつらの話を聞いてもらうぜ。いいな?」
「……良いだろう。だが、拙者が勝った時には、二度と拙者の前に姿を現すな。無論、ディアナ殿も含めてな」
「ああ、いいぜ」
身を乗り出そうとしたディアナを、アンヌが制する。不安げな顔をする彼女にアンヌは微笑みかける。「きっと勝つから」と。ディアナは躊躇いながら頷く。リンエイに贈るための花束をぎゅっと握り締めていた。
「あの、すみません。ここにリンエイという方はいますか?」
「ああ、いるよ。この先を真っ直ぐ行ったところにいるはずだ」
「ありがとうございます」
作業員に一礼すると、アンヌ達は言われた通りに進んだ。
開けた場所に出て周囲を見渡すと、その中に一際目立つ作業員の姿があった。他の作業員とは違い、ツルハシを使わず、素手で岩を削り、道を切り拓いている人物がいた。
青い坊主頭で、歳は20代半ばと言ったところだろうか。
「リンエイ!」
思わずディアナは駆け寄る。だが、その声に彼は振り向くこともせず、黙々と壁を掘り続けている。
ディアナは目を伏せて、彼の一歩前で立ち止まってしまった。悲しげな彼女の肩にアンヌは励ますように手を置く。
「私はアンヌ。あなたに話したいことがあってここに来たの」
ディアナの代わりにアンヌが一歩踏み出す。それでもリンエイは尚、背を向けたままだ。その背中が会話を拒絶していた。
「話すことなどない。お引き取り願おう」
「ディアナはあなたとPWTに出る、それが夢だって言っていたわ」
「……」
「以前のように一緒に居たい。本当はあなただって、そうなのでしょう?」
アンヌはかつて自分が、仲間に何も告げず、全てを抱え込んで、一人になろうとしていた時のことを思い出していた。自分の存在がみんなを危険な目に合わせてしまうのではないか。みんなのためには自分がいない方がいいとさえ思った。
リンエイもディアナの怪我を自分のせいだと思い、再び彼女が同じ目に遭わないよう、わざと彼女と距離をとっている。アンヌにはそう思われてならなかった。
リンエイは苛立ちをぶつけるように岩壁を何度も叩き、その拳は血が滲んでいた。まるでそれは自分の心を何度も殴り続けているようで——。
「止めて!そんな使い方をしたら、あなたの拳が壊れてしまうの!」
ディアナが悲鳴も似た声で叫ぶも、彼は止めようとしなかった。その姿はあまりにも痛々しく、誰もが茫然と立ち尽くす。罪悪感を纏った空気が、重くのしかかるように感じられた。
「その嬢ちゃんの言う通りだぜ。馬鹿な真似は止めな」
再び彼の拳が突き出されようとした時、その腕をグルートが掴んだ。リンエイの拳が宙で止まったまま震えている。腕を掴むグルートの力とそれに反発するリンエイの力が拮抗する。
「貴殿にはわからぬ……己の未熟さを呪う者の気持ちが……!」
絞り出すように漏れた声は、血反吐を吐くような苦しそうな声色で。
リンエイはグルートの手を跳ね除け、両腕を前に突き出し、構えをとる。
「……どうやら、大人しく話を聞く気は無ぇってことか。まあ、そっちの方が分かりやすくて助かるけどな?」
「グルート……!」
「こいつは口で言って聞くようなヤツじゃあねぇよ」
不安げなアンヌの眼差しを見つめて、グルートは彼女の頭をぽん、と軽く撫ででから、小さく笑う。
リンエイに向き直る。彼を見据えるグルートの赤い瞳が炎のように揺らめいていた。
「俺が勝ったら、こいつらの話を聞いてもらうぜ。いいな?」
「……良いだろう。だが、拙者が勝った時には、二度と拙者の前に姿を現すな。無論、ディアナ殿も含めてな」
「ああ、いいぜ」
身を乗り出そうとしたディアナを、アンヌが制する。不安げな顔をする彼女にアンヌは微笑みかける。「きっと勝つから」と。ディアナは躊躇いながら頷く。リンエイに贈るための花束をぎゅっと握り締めていた。
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