Episode.3-10
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美稜領へ帰ってから三ヶ月
奥州は真冬へと突入し、連日厳しい寒さが続いている
……私と政宗様の噂は、あっという間に領内に広がってしまった
婚礼衣装の用意を担ってくれた女たちは勿論のこと、今回に至っては男たちまでもが怒り心頭であるらしい
「政宗様がそんなお方だったとは」「輿入れ目前の姫様に対してなんという」「独眼竜には人の血が通っていないのか」という声が噴出し、私はそれの火消しに追われている
私自身の影響力をもっと見直すべきね……
「作次郎、この書状を各村の村長へ渡して」
「はっ」
作次郎へ書状を持たせ、ひとつ息を吐く
美稜領は先の関ヶ原では何の被害も被っていないから、戦の後処理がないのはありがたい話だけれど……
「政宗様はどうなさっているかしら……」
ぽつりとこぼれたそれに首を振り、山積みの書状に手を伸ばす
他のことを考えていないと、すぐこれだ
美稜衆も今の人数でいいわけはないから、少しずつ新兵を集めないと
政宗様がご出陣されるとき、領内の守備を担うことになるもの
生半可な鍛え方では許されない
「失礼致します、姫様
伊達家より早馬が」
「早馬?
そこまでの急用があったかしら」
千夜の後ろには、見慣れない男が伊達軍の甲冑を身に付けている
見たことのない顔だから、新しく加わった新兵だろうか
目元は前髪で隠れていて判別がつかない
「……?」
妙な既視感を覚えながらも、千夜が差し出してきた書状を受け取って、ばらりと開く
そこに認められた文は、間違いなく政宗様からのものだった
文の裏側を指でなぞれば、鶺鴒の目に穴が空いている
……直筆だわ
「すぐに返事を書くわ
そこで待っていて」
そう言って文に目を通し──私は絶句した
祝言の日取りについて話がしたい、至急屋敷へ参上せよ
要約すればそんなところだ
……何を馬鹿なことを
「……姫様?」
「どこまで私をこけにすれば気が済むのかしらね」
「と、申されますのは?」
「そこのお前、名は」
「一之進と」
「そう、では一之進
政宗様に伝えなさい
この私と本気で祝言を挙げる気があるのなら、政宗様がここに来て私を掻っ攫うぐらいはしてみせろ、とね」
「委細承知」
ふん、と鼻を鳴らして、政宗様からの書状を文机の端に寄せる
そうして次の書状を──と、山に手を伸ばしたとき
突然、私の身体がぐわっと持ち上がった
「えっ?」
誰かに担がれている──誰に?
見下ろすと伊達軍の甲冑
一之進の仕業だ
「なんの真似よ!」
「お前が言ったんだろ?
テメェが欲しけりゃ、ここからお前を掻っ攫えとな」
「……ま──」
そのお声は、間違いない
前髪に隠れていた目元も、よく見ればあの鍔型の眼帯がある
待って、これはどこからどこまでが計算のうちなの!?
「Hey,千夜
約束通り、綾葉は借りていくぜ」
「祝言の日取りが決まりましたらお返しを
白無垢の調整もまだでございますゆえ」
「千夜!?
あなた、政宗様だと知っていて通したわね!?」
「殿と承知でお通ししましたし、姫様が『ここから掻っ攫ってみろ』と腹を立てることも予想しておりました」
「な──」
「詳しい話は俺の屋敷で、だ
See you again!」
「う、うそっ、やだ本当に!?」
いやぁぁぁ──という私の悲鳴を置き去りにして、私を担いだままの政宗様が、屋敷内を歩いていく
そうして私を後藤黒に乗せた政宗様は、私の後ろに乗って、私を抱き締めたまま、器用に後藤黒を走らせた
「ま、政宗様──」
「話は屋敷に着いてからだ」
そう答えた声音が真剣さを帯びていて、思わず口を閉ざした
……政宗様が正室を迎えられたという話は聞いていない
まさか──本当に?
心が浮き足立ちかけて……はたと思い出した
政宗様は結婚相手を自由に選べるお立場にはいない
祝言というのも、もしかすると私を側室にという話でのことかもしれない
「……悪かった」
「え?」
「今回のことは俺に非がある
文句があるなら、あとでいくらでも聞いてやるぜ
殴りたきゃ好きなだけ殴れ
お前にゃそうする権利がある」
「そんな……政宗様に非などございません
私に価値がないのは、本当のことでございますから」
「価値ならあるさ……とびきりのな」
何をおっしゃっておられるのだろう
私に価値がないからこそ、成実様は私を正室として迎えることに反対なさった
そして政宗様もそうお考えであったから、何も言わなかったのだろうに
「Don't make excuses.
膝を突き合わせて話をしようぜ」
「……」
私はもう、何も答えられなかった
政宗様のお心がここまで分からないなんて、今までになかったことだ
まさか本当に私を正室にと思っているのなら……
成実様を筆頭にそれに反対する方々と、政宗様は真っ向から対立することになる
それは私が望んでいないこと
家中の対立を生むくらいなら、私はその地位を得たいと思わない
奥州は真冬へと突入し、連日厳しい寒さが続いている
……私と政宗様の噂は、あっという間に領内に広がってしまった
婚礼衣装の用意を担ってくれた女たちは勿論のこと、今回に至っては男たちまでもが怒り心頭であるらしい
「政宗様がそんなお方だったとは」「輿入れ目前の姫様に対してなんという」「独眼竜には人の血が通っていないのか」という声が噴出し、私はそれの火消しに追われている
私自身の影響力をもっと見直すべきね……
「作次郎、この書状を各村の村長へ渡して」
「はっ」
作次郎へ書状を持たせ、ひとつ息を吐く
美稜領は先の関ヶ原では何の被害も被っていないから、戦の後処理がないのはありがたい話だけれど……
「政宗様はどうなさっているかしら……」
ぽつりとこぼれたそれに首を振り、山積みの書状に手を伸ばす
他のことを考えていないと、すぐこれだ
美稜衆も今の人数でいいわけはないから、少しずつ新兵を集めないと
政宗様がご出陣されるとき、領内の守備を担うことになるもの
生半可な鍛え方では許されない
「失礼致します、姫様
伊達家より早馬が」
「早馬?
そこまでの急用があったかしら」
千夜の後ろには、見慣れない男が伊達軍の甲冑を身に付けている
見たことのない顔だから、新しく加わった新兵だろうか
目元は前髪で隠れていて判別がつかない
「……?」
妙な既視感を覚えながらも、千夜が差し出してきた書状を受け取って、ばらりと開く
そこに認められた文は、間違いなく政宗様からのものだった
文の裏側を指でなぞれば、鶺鴒の目に穴が空いている
……直筆だわ
「すぐに返事を書くわ
そこで待っていて」
そう言って文に目を通し──私は絶句した
祝言の日取りについて話がしたい、至急屋敷へ参上せよ
要約すればそんなところだ
……何を馬鹿なことを
「……姫様?」
「どこまで私をこけにすれば気が済むのかしらね」
「と、申されますのは?」
「そこのお前、名は」
「一之進と」
「そう、では一之進
政宗様に伝えなさい
この私と本気で祝言を挙げる気があるのなら、政宗様がここに来て私を掻っ攫うぐらいはしてみせろ、とね」
「委細承知」
ふん、と鼻を鳴らして、政宗様からの書状を文机の端に寄せる
そうして次の書状を──と、山に手を伸ばしたとき
突然、私の身体がぐわっと持ち上がった
「えっ?」
誰かに担がれている──誰に?
見下ろすと伊達軍の甲冑
一之進の仕業だ
「なんの真似よ!」
「お前が言ったんだろ?
テメェが欲しけりゃ、ここからお前を掻っ攫えとな」
「……ま──」
そのお声は、間違いない
前髪に隠れていた目元も、よく見ればあの鍔型の眼帯がある
待って、これはどこからどこまでが計算のうちなの!?
「Hey,千夜
約束通り、綾葉は借りていくぜ」
「祝言の日取りが決まりましたらお返しを
白無垢の調整もまだでございますゆえ」
「千夜!?
あなた、政宗様だと知っていて通したわね!?」
「殿と承知でお通ししましたし、姫様が『ここから掻っ攫ってみろ』と腹を立てることも予想しておりました」
「な──」
「詳しい話は俺の屋敷で、だ
See you again!」
「う、うそっ、やだ本当に!?」
いやぁぁぁ──という私の悲鳴を置き去りにして、私を担いだままの政宗様が、屋敷内を歩いていく
そうして私を後藤黒に乗せた政宗様は、私の後ろに乗って、私を抱き締めたまま、器用に後藤黒を走らせた
「ま、政宗様──」
「話は屋敷に着いてからだ」
そう答えた声音が真剣さを帯びていて、思わず口を閉ざした
……政宗様が正室を迎えられたという話は聞いていない
まさか──本当に?
心が浮き足立ちかけて……はたと思い出した
政宗様は結婚相手を自由に選べるお立場にはいない
祝言というのも、もしかすると私を側室にという話でのことかもしれない
「……悪かった」
「え?」
「今回のことは俺に非がある
文句があるなら、あとでいくらでも聞いてやるぜ
殴りたきゃ好きなだけ殴れ
お前にゃそうする権利がある」
「そんな……政宗様に非などございません
私に価値がないのは、本当のことでございますから」
「価値ならあるさ……とびきりのな」
何をおっしゃっておられるのだろう
私に価値がないからこそ、成実様は私を正室として迎えることに反対なさった
そして政宗様もそうお考えであったから、何も言わなかったのだろうに
「Don't make excuses.
膝を突き合わせて話をしようぜ」
「……」
私はもう、何も答えられなかった
政宗様のお心がここまで分からないなんて、今までになかったことだ
まさか本当に私を正室にと思っているのなら……
成実様を筆頭にそれに反対する方々と、政宗様は真っ向から対立することになる
それは私が望んでいないこと
家中の対立を生むくらいなら、私はその地位を得たいと思わない
