Episode.3-9
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奥州の空気が好きだ
山野を越えた先に広がる長閑な田園風景は、私たちの生活を支えてくれるもの
馴染みのある光景は、私たちの心をほっとさせてくれる
「か……帰ってきたぁ……」
「今回ばかりは死を覚悟したもんな……」
文七郎と左馬助のそれが合図であるかのように、道端へ領民がわらわらと集まってきた
生き残った奴らが嬉しそうに手を振る
関ヶ原で起こったことの情報は、この地まで届いているのだろうか
それは分からないけれど、門前に成実様と綱元様がおられるのが見えた
「梵、お前ら……!」
「大まかな事は伺っております
政宗様、小十郎、綾葉、よくぞ無事に戻られました」
「千夜が倒れそうな顔して待ってるぞ
小十郎と綾葉は先にそっちに行ってやってくれ
梵は先に手当てをするぞ
お前らも一旦、荷を解いて解散だ」
成実様によっててきぱきと出された指示の通りに、兵たちが動いていく
そうして藤次郎様は成実様に伴われて、ご自身の私室へ
私は片倉様と共に、千夜の待つ部屋へ急いだ
「どちらが声を掛けます?」
「お前でいい
俺は後から入る」
「あら、千夜の旦那様が先でなくて宜しいのです?」
「勝ち誇った顔しやがって……
千夜の一等は譲ってやる、それ以外は譲らねぇが」
「ふふ……私はそれさえ頂ければ充分です
──千夜、戻ったわよ!」
近くなったところで声を掛けてやれば、ものすごい勢いで障子が開かれた
壊れなかったかしら、今の
音にびっくりして、私の足が止まりかけたのだけれど
「姫様……小十郎様……!
よくぞご無事で……!!」
「あなたを泣かせる訳にはいかないもの、片倉様が死ぬわけないじゃない
藤次郎様とこの先の長い人生を共にすると約束したのに、こんなところで死んでいられないわよ」
「はい……はい!
嬉しゅうございます……姫様……!
お二方とも、お怪我はございませんか?
手当の用意を……」
「俺は他の奴らに手当を頼んでくる
綾葉だけ頼む
……政宗様の奥方になる奴だ、できるだけ傷が残らねぇように手当してやってくれ」
「……!!
かしこまりました、千夜めにお任せくださいませ!」
ふ、としてやったりな顔をして、片倉様が去っていく
そういえばここを出る時は、藤次郎様との関係を解消すると言っていたのだったか
それが帰ってきたら何もかもが元通りなのだから、千夜は無駄にヤキモキさせられただけだ
「千夜、心配かけてごめんなさい
私やっぱり、藤次郎様と一緒になりたいの
村の女たちに言って中止させていた、私の白無垢の件……再開させておいてくれる?」
「きっとそうなると思っておりました
輿入れの準備は全て滞りなく進んでおります」
「……え?」
「私が後から女たちに伝えておいたのです
関ヶ原から戻ったあと、姫様は殿と心を通わせ直すだろうからと
伊達軍の立て直しは急務でありましょうが、美稜家の用意が遅れたために、輿入れの日程が後倒しになるというのは、お家の沽券に関わります
そういうわけでして、こちらの用意は予定通りにすべて整う手筈で進めております故、姫様は心置きなく伊達軍の立て直しに奔走なさいませ」
「……してやられたわ」
まさか腹心たる侍女に先手を打たれようとは
でも……そうよね、こんな時だもの
関ヶ原であちらこちらの軍勢と戦ったものの、最後には復活した魔王の騒ぎで、それどころではなくなってしまった
日の本の勢力図はさして変わらず、藤次郎様もまた、天下を手にしてはいない
世間は何も変わらない──戦乱の世は続くし、民たちはそんな世に翻弄され続けていく
そんな世の中を、少しでも早く終わりにするために
私たちはまだまだ、戦い続けなくてはならない
そんな世の中だからこそ、明るい話題は、少しでも多いほうが良いに決まっている
「手当をさせて頂きながらで恐縮ですが、お伺いしても宜しいでしょうか」
「あら、なぁに?
関ヶ原で何があったか知りたいの?」
「勿論それもお聞きしとうございますが……
千夜めが気になっておりますのは、如何にして殿とお心をまた重ねられたのかでございます」
「あなたはそっちが気になるのね
……簡単なことよ
もう一度だけ信じてみようと思ったの
藤次郎様が愛してくださる、私自身のことを」
「その心は?」
「あなた、今日は随分と食い下がるわね
……彦一郎様の墓前に、奥州で幸せになると約束したでしょう
その幸せは、奥州で美稜家を繋げられたことだけで満足するようなものなのか、と問われてね
……それだけで満足するべきだと言い聞かせていたのに、本当はそれだけじゃ満足なんか出来なかった」
どんなに言い聞かせても、藤次郎様を慕う心は消えなかった
否、消すつもりがなかったからこそ、藤次郎様と距離を置こうとしたのだ
藤次郎様の事を愛しているからこそ、藤次郎様から離れなければいけない
そうやって藤次郎様との関係さえ諦めようとしていた私に、藤次郎様は
「自分につり合う女は私しかいないんだそうよ」
「そうでしょうとも」
「どうして千夜が頷くのよ」
「破天荒な殿に合わせられる女人など、姫様以外におられませぬ」
「それは私も藤次郎様に負けず劣らず破天荒だと言っているの?」
「まさか、違います!
殿がどれほど突っ走ろうと、姫様は必ず殿に合わせて、共に往くことができましょう?
それは姫様にしかできぬ事であると思うのです」
「……そうかしら
いえ、きっとそうよね
藤次郎様がどんな行動を取られるかなんて、私と片倉様しか分からないもの」
「左様でございます
それを抜きに致しましても、姫様は殿と並び立つに相応しいお方でございますれば」
乳母子としての贔屓目が多少は入っている気がせんでもないけれど、千夜にそう言ってもらえると、本当にそうなんだと思える
私はあの、天下に名を馳せる奥州筆頭に相応しい女なのだと
ああ、どうしよう
今すぐにでも藤次郎様にお会いしたい
「どうしましょう、千夜」
「はい?」
「藤次郎様にお会いしたくてたまらないわ」
「ふふ……姫様が幸せそうで、千夜めは嬉しゅうございます
さ、手当もちょうど終わりましてございますよ
心置き無く殿と睦み合われませ」
「ありがとう、千夜
藤次郎様のところに行く前に、片倉様をお呼びするわね!」
「お気遣い痛み入ります」
足取り軽く部屋を出て、片倉様がいるであろうお部屋へ顔を覗かせる
私が来たことで千夜の手が空いたことを悟ったのか、片倉様は何も聞かずに部屋を出て、千夜へ会いに行った
なんというか……あの堅物が、ああも千夜にベタ惚れだなんて、ちょっと面白いわね
山野を越えた先に広がる長閑な田園風景は、私たちの生活を支えてくれるもの
馴染みのある光景は、私たちの心をほっとさせてくれる
「か……帰ってきたぁ……」
「今回ばかりは死を覚悟したもんな……」
文七郎と左馬助のそれが合図であるかのように、道端へ領民がわらわらと集まってきた
生き残った奴らが嬉しそうに手を振る
関ヶ原で起こったことの情報は、この地まで届いているのだろうか
それは分からないけれど、門前に成実様と綱元様がおられるのが見えた
「梵、お前ら……!」
「大まかな事は伺っております
政宗様、小十郎、綾葉、よくぞ無事に戻られました」
「千夜が倒れそうな顔して待ってるぞ
小十郎と綾葉は先にそっちに行ってやってくれ
梵は先に手当てをするぞ
お前らも一旦、荷を解いて解散だ」
成実様によっててきぱきと出された指示の通りに、兵たちが動いていく
そうして藤次郎様は成実様に伴われて、ご自身の私室へ
私は片倉様と共に、千夜の待つ部屋へ急いだ
「どちらが声を掛けます?」
「お前でいい
俺は後から入る」
「あら、千夜の旦那様が先でなくて宜しいのです?」
「勝ち誇った顔しやがって……
千夜の一等は譲ってやる、それ以外は譲らねぇが」
「ふふ……私はそれさえ頂ければ充分です
──千夜、戻ったわよ!」
近くなったところで声を掛けてやれば、ものすごい勢いで障子が開かれた
壊れなかったかしら、今の
音にびっくりして、私の足が止まりかけたのだけれど
「姫様……小十郎様……!
よくぞご無事で……!!」
「あなたを泣かせる訳にはいかないもの、片倉様が死ぬわけないじゃない
藤次郎様とこの先の長い人生を共にすると約束したのに、こんなところで死んでいられないわよ」
「はい……はい!
嬉しゅうございます……姫様……!
お二方とも、お怪我はございませんか?
手当の用意を……」
「俺は他の奴らに手当を頼んでくる
綾葉だけ頼む
……政宗様の奥方になる奴だ、できるだけ傷が残らねぇように手当してやってくれ」
「……!!
かしこまりました、千夜めにお任せくださいませ!」
ふ、としてやったりな顔をして、片倉様が去っていく
そういえばここを出る時は、藤次郎様との関係を解消すると言っていたのだったか
それが帰ってきたら何もかもが元通りなのだから、千夜は無駄にヤキモキさせられただけだ
「千夜、心配かけてごめんなさい
私やっぱり、藤次郎様と一緒になりたいの
村の女たちに言って中止させていた、私の白無垢の件……再開させておいてくれる?」
「きっとそうなると思っておりました
輿入れの準備は全て滞りなく進んでおります」
「……え?」
「私が後から女たちに伝えておいたのです
関ヶ原から戻ったあと、姫様は殿と心を通わせ直すだろうからと
伊達軍の立て直しは急務でありましょうが、美稜家の用意が遅れたために、輿入れの日程が後倒しになるというのは、お家の沽券に関わります
そういうわけでして、こちらの用意は予定通りにすべて整う手筈で進めております故、姫様は心置きなく伊達軍の立て直しに奔走なさいませ」
「……してやられたわ」
まさか腹心たる侍女に先手を打たれようとは
でも……そうよね、こんな時だもの
関ヶ原であちらこちらの軍勢と戦ったものの、最後には復活した魔王の騒ぎで、それどころではなくなってしまった
日の本の勢力図はさして変わらず、藤次郎様もまた、天下を手にしてはいない
世間は何も変わらない──戦乱の世は続くし、民たちはそんな世に翻弄され続けていく
そんな世の中を、少しでも早く終わりにするために
私たちはまだまだ、戦い続けなくてはならない
そんな世の中だからこそ、明るい話題は、少しでも多いほうが良いに決まっている
「手当をさせて頂きながらで恐縮ですが、お伺いしても宜しいでしょうか」
「あら、なぁに?
関ヶ原で何があったか知りたいの?」
「勿論それもお聞きしとうございますが……
千夜めが気になっておりますのは、如何にして殿とお心をまた重ねられたのかでございます」
「あなたはそっちが気になるのね
……簡単なことよ
もう一度だけ信じてみようと思ったの
藤次郎様が愛してくださる、私自身のことを」
「その心は?」
「あなた、今日は随分と食い下がるわね
……彦一郎様の墓前に、奥州で幸せになると約束したでしょう
その幸せは、奥州で美稜家を繋げられたことだけで満足するようなものなのか、と問われてね
……それだけで満足するべきだと言い聞かせていたのに、本当はそれだけじゃ満足なんか出来なかった」
どんなに言い聞かせても、藤次郎様を慕う心は消えなかった
否、消すつもりがなかったからこそ、藤次郎様と距離を置こうとしたのだ
藤次郎様の事を愛しているからこそ、藤次郎様から離れなければいけない
そうやって藤次郎様との関係さえ諦めようとしていた私に、藤次郎様は
「自分につり合う女は私しかいないんだそうよ」
「そうでしょうとも」
「どうして千夜が頷くのよ」
「破天荒な殿に合わせられる女人など、姫様以外におられませぬ」
「それは私も藤次郎様に負けず劣らず破天荒だと言っているの?」
「まさか、違います!
殿がどれほど突っ走ろうと、姫様は必ず殿に合わせて、共に往くことができましょう?
それは姫様にしかできぬ事であると思うのです」
「……そうかしら
いえ、きっとそうよね
藤次郎様がどんな行動を取られるかなんて、私と片倉様しか分からないもの」
「左様でございます
それを抜きに致しましても、姫様は殿と並び立つに相応しいお方でございますれば」
乳母子としての贔屓目が多少は入っている気がせんでもないけれど、千夜にそう言ってもらえると、本当にそうなんだと思える
私はあの、天下に名を馳せる奥州筆頭に相応しい女なのだと
ああ、どうしよう
今すぐにでも藤次郎様にお会いしたい
「どうしましょう、千夜」
「はい?」
「藤次郎様にお会いしたくてたまらないわ」
「ふふ……姫様が幸せそうで、千夜めは嬉しゅうございます
さ、手当もちょうど終わりましてございますよ
心置き無く殿と睦み合われませ」
「ありがとう、千夜
藤次郎様のところに行く前に、片倉様をお呼びするわね!」
「お気遣い痛み入ります」
足取り軽く部屋を出て、片倉様がいるであろうお部屋へ顔を覗かせる
私が来たことで千夜の手が空いたことを悟ったのか、片倉様は何も聞かずに部屋を出て、千夜へ会いに行った
なんというか……あの堅物が、ああも千夜にベタ惚れだなんて、ちょっと面白いわね
