Episode.3-9
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──翌日
数日間、世話になった礼を言って、伊達軍は奥州への帰路についた
またも蒼紅の決着は次回へ持ち越しとなった割には、藤次郎様はそれほど残念そうには見受けられない
……正直に言えば、伊達軍は関ヶ原での被害もあって、立て直しが急務
下手をすると、私の輿入れも翌年になる可能性がある程だ
悠長にはしていられないのが現実なのは否めない
「奥州に帰ったら──」
口元に微かな笑みを浮かべて、藤次郎様がそう口を開いた
それに反応してみせると、肩で少し笑って、藤次郎様は私を振り向いた
「祝言の日取りを考えねぇとな
とびきりド派手なpartyになるだろうぜ」
「しかしまずは、軍備を整えることを優先なさいませ
日取りを早めたところで、こちらの準備も間に合いませんので……」
「Um?
お前の花嫁衣装も嫁入り道具も、そのまま進めてりゃあ……」
「ああいえ、実は白無垢の縫製は中止しておりまして」
「そりゃどういうこった」
「……奥州を発つ前は、藤次郎様への輿入れなど、するつもりがございませんでしたので……
その……場合によっては、完成が年明けになる可能性もありまして」
仕方ないわよね……私もまさか、魔王の因縁を断つことができるなんて、思ってもみなかった
藤次郎様のことをお慕いしているからこそ、離れなければ……と思っていたのだし
「ですので、私の輿入れは、伊達軍の立て直しが済んでからに
その頃には私の白無垢も、完成の目処が立っておりましょう」
深いため息をついた藤次郎様が、拗ねたような舌打ちをした
そこまで残念がっていただけるのは嬉しいけれど、やっぱり輿入れなんて一生に一度だもの
諸々が片付いて、落ち着いてからのほうが、それだけ準備に時間もかけられる
それにしても……領民たちの笑顔が目に浮かぶようだ
あの土地を預かるようになってまだ二年だけれど、お陰様で民たちからは慕ってもらえている
一年目はどうなる事かと思ったけれど、二年目の増収は想像以上だった
預かる村の全てから作物の増収報告を聞いた時は、千夜と二人で抱き合ったものだ
今年もそろそろ新米の季節
毎年危惧する冷夏も、今年はなんのその
予定では去年と同等か、それ以上の収穫を見込んでいる
「そういうわけですので、片倉様
当分の間、千夜を預からせていただきます」
「終わったら返せよ」
「言われずとも」
そんな会話をしたところで、「そういやぁ」と左馬助が会話に混ざってきた
ちょっと珍しく思いつつ先を促してやると
「姐御が筆頭の奥方様になるのは大歓迎なんスけど、そうなったら美稜の領地は誰が治めるんスか?」
「今後も私が治めるわよ
ただ、今までのようにとはいかないから、美稜領には名代を立てて、私の代わりに政を執り行ってもらうしかないわね」
「定期的に行ったり来たりはあるだろうがな
それもこれまでみてぇに頻繁にはならねぇはずだ」
「なるべく伊達屋敷に居るようには致しますが、やはり政というのは、己の目で見てからでなければ、判断を誤ってしまいかねません
無論、藤次郎様との間に男児を二人成したならば、片方の男児に美稜家を継がせることになりますから、私が出向く必要もなくなるとは思いますが」
「婿養子でもいいんじゃねぇのか
奥州美稜家はお前から始まっただろう」
「……宜しいのですか?」
てっきり娘が産まれたら、政略結婚でどこぞに嫁ぐものかと思っていた
……私は藤次郎様に見初められたから、婿養子をとることは叶わなかったけれど
もし娘が美稜家を継ぐことを許されたら、それはどんなに──
「まあ……何はともあれ、まずは姐御と筆頭の祝言ですね!」
「俺たちも盛大にお祝いするッス!」
良直と孫兵衛に頷いて、先を往く藤次郎様の速さに合わせるべく、雛菊の脚を急がせた
白河の関まではまだまだかかる
美濃から奥州へ帰るのも、楽じゃないわね
(美濃、か)
あとで知った話……実は関ヶ原と、生家の斎藤家が居城とした稲葉山城は、あまり離れていないらしい
とはいえ稲葉山城へ行っても、そこにはもう何もないわけだし……
……何もないから、というのは、少し言い訳だ
城の近くに住む者に聞けば、母の行方は知れたかもしれない
……母上、私を産んでくださった母上
あなたは今、どこで何をされておられるのでしょう
(いつかお会いしとうございました
……どうやらそれは叶わぬようです
母上、どうかいつまでもお元気で
揚羽は奥州にて、美稜綾葉として幸せに暮らします)
来た道を戻るように、伊達軍は妻女山を抜けて奥州方面へ
美濃国は遥か彼方へと遠ざかり、もはや帰る事も叶わない
美濃を故郷と思うことはないけれど……それでもやはり、私の生まれた地ではあるのだ
そのくらいの愛着はある
母上、と誰にも聞こえない声で呟く
それからその憧憬を胸の中に仕舞い、私はぐっと堪えて前を向いた
数日間、世話になった礼を言って、伊達軍は奥州への帰路についた
またも蒼紅の決着は次回へ持ち越しとなった割には、藤次郎様はそれほど残念そうには見受けられない
……正直に言えば、伊達軍は関ヶ原での被害もあって、立て直しが急務
下手をすると、私の輿入れも翌年になる可能性がある程だ
悠長にはしていられないのが現実なのは否めない
「奥州に帰ったら──」
口元に微かな笑みを浮かべて、藤次郎様がそう口を開いた
それに反応してみせると、肩で少し笑って、藤次郎様は私を振り向いた
「祝言の日取りを考えねぇとな
とびきりド派手なpartyになるだろうぜ」
「しかしまずは、軍備を整えることを優先なさいませ
日取りを早めたところで、こちらの準備も間に合いませんので……」
「Um?
お前の花嫁衣装も嫁入り道具も、そのまま進めてりゃあ……」
「ああいえ、実は白無垢の縫製は中止しておりまして」
「そりゃどういうこった」
「……奥州を発つ前は、藤次郎様への輿入れなど、するつもりがございませんでしたので……
その……場合によっては、完成が年明けになる可能性もありまして」
仕方ないわよね……私もまさか、魔王の因縁を断つことができるなんて、思ってもみなかった
藤次郎様のことをお慕いしているからこそ、離れなければ……と思っていたのだし
「ですので、私の輿入れは、伊達軍の立て直しが済んでからに
その頃には私の白無垢も、完成の目処が立っておりましょう」
深いため息をついた藤次郎様が、拗ねたような舌打ちをした
そこまで残念がっていただけるのは嬉しいけれど、やっぱり輿入れなんて一生に一度だもの
諸々が片付いて、落ち着いてからのほうが、それだけ準備に時間もかけられる
それにしても……領民たちの笑顔が目に浮かぶようだ
あの土地を預かるようになってまだ二年だけれど、お陰様で民たちからは慕ってもらえている
一年目はどうなる事かと思ったけれど、二年目の増収は想像以上だった
預かる村の全てから作物の増収報告を聞いた時は、千夜と二人で抱き合ったものだ
今年もそろそろ新米の季節
毎年危惧する冷夏も、今年はなんのその
予定では去年と同等か、それ以上の収穫を見込んでいる
「そういうわけですので、片倉様
当分の間、千夜を預からせていただきます」
「終わったら返せよ」
「言われずとも」
そんな会話をしたところで、「そういやぁ」と左馬助が会話に混ざってきた
ちょっと珍しく思いつつ先を促してやると
「姐御が筆頭の奥方様になるのは大歓迎なんスけど、そうなったら美稜の領地は誰が治めるんスか?」
「今後も私が治めるわよ
ただ、今までのようにとはいかないから、美稜領には名代を立てて、私の代わりに政を執り行ってもらうしかないわね」
「定期的に行ったり来たりはあるだろうがな
それもこれまでみてぇに頻繁にはならねぇはずだ」
「なるべく伊達屋敷に居るようには致しますが、やはり政というのは、己の目で見てからでなければ、判断を誤ってしまいかねません
無論、藤次郎様との間に男児を二人成したならば、片方の男児に美稜家を継がせることになりますから、私が出向く必要もなくなるとは思いますが」
「婿養子でもいいんじゃねぇのか
奥州美稜家はお前から始まっただろう」
「……宜しいのですか?」
てっきり娘が産まれたら、政略結婚でどこぞに嫁ぐものかと思っていた
……私は藤次郎様に見初められたから、婿養子をとることは叶わなかったけれど
もし娘が美稜家を継ぐことを許されたら、それはどんなに──
「まあ……何はともあれ、まずは姐御と筆頭の祝言ですね!」
「俺たちも盛大にお祝いするッス!」
良直と孫兵衛に頷いて、先を往く藤次郎様の速さに合わせるべく、雛菊の脚を急がせた
白河の関まではまだまだかかる
美濃から奥州へ帰るのも、楽じゃないわね
(美濃、か)
あとで知った話……実は関ヶ原と、生家の斎藤家が居城とした稲葉山城は、あまり離れていないらしい
とはいえ稲葉山城へ行っても、そこにはもう何もないわけだし……
……何もないから、というのは、少し言い訳だ
城の近くに住む者に聞けば、母の行方は知れたかもしれない
……母上、私を産んでくださった母上
あなたは今、どこで何をされておられるのでしょう
(いつかお会いしとうございました
……どうやらそれは叶わぬようです
母上、どうかいつまでもお元気で
揚羽は奥州にて、美稜綾葉として幸せに暮らします)
来た道を戻るように、伊達軍は妻女山を抜けて奥州方面へ
美濃国は遥か彼方へと遠ざかり、もはや帰る事も叶わない
美濃を故郷と思うことはないけれど……それでもやはり、私の生まれた地ではあるのだ
そのくらいの愛着はある
母上、と誰にも聞こえない声で呟く
それからその憧憬を胸の中に仕舞い、私はぐっと堪えて前を向いた
