Episode.3-9
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──旧美稜の居城跡には、先の城攻めで散った美稜の者たちの墓がある
ここには私の夫でもあった彦一郎様も眠っていて、旧美稜領に住む者たちの心の拠り所となっているらしい
その墓石に手を合わせ、私は関ヶ原での出来事を、彦一郎様に報告した
貴方様がお貸しくださった一矢で、魔王との何もかもを清算できたこと
私は奥州で幸せに生きること
そしていつか……竜の天下を実現してみせること
そっと目を開いて、顔を上げる
武田に残った美稜衆と共にここに来て、報告も終えた
次にここを訪れるのは、何年後だろう
「……戻りましょうか」
淡く微笑んで立ち上がり、墓石に背を向ける
そうして私たちは、跡地を去った
*********************
夕餉の時刻には間に合った、と胸を撫で下ろして、館の門をくぐると、藤次郎様が門前に立っておられた
私を待っていたのか、それとも別の御用があってここにいらっしゃるのか、どちらだろう
私に気付いた藤次郎様が、もたれかかっていた門の柱から離れ、こちらへと歩み寄ってくる
「戻ったか」
「はい、ただいま……
もしや私の帰りをお待ちになっておられたのですか?」
「里帰りを邪魔するのは野暮だろう」
答えのような、そうでないような一言を呟いて、藤次郎様が私に手を伸ばす
抱きかかえられて雛菊から降ろされた私は、そのまま藤次郎様によってどこかへ運ばれていく
慌てる私を他所に、雛菊は美稜衆によって厩へと連れて行かれ、残りの兵たちはニコニコとしたまま、私を見送るだけだった
「と、藤次郎様?
あの……私、馬に乗れるくらいには快復致しましたので、このように抱き上げて頂かずとも……」
「こうされるのは嫌いか?」
朝以来に見た、悪戯っぽい微笑み
好きか嫌いかで論じるなら……嫌いじゃない
藤次郎様に大切にされている、愛されていると感じる瞬間が、嫌いなはずない
「……その聞き方は、些か狡いのでは」
「お気に召さないならやめるぜ?」
「好き、です」
以前より明確に、藤次郎様のことを好きだと感じる
藤次郎様の鎧の下は、包帯だらけだ
だから本当は、私の事なんて抱き上げてほしくない
お身体に余計な負担をかけてほしくないから
でも、この腕が私のことを離したくないと言うようで、どうにも抗えなくて……
「……藤次郎様」
「ん?」
「以前私は、藤次郎様に相応しくないと申し上げました
魔王の因縁による呪縛に囚われた我が身では、いつ藤次郎様へ不幸を振りまいてしまうか分からない、と」
「……ああ」
「ですが今なら、はっきりと申せます
奥州筆頭の伴侶となるに相応しい者は、この日の本広しと言えど、私しかおらぬと」
「俺は最初からそう言っていたつもりだがな
ま、自覚が出たんなら、結果オーライだ」
くつりと喉の奥で笑って、藤次郎様が私の額に口付けを落とす
かぁ……と頬が熱を持つのを感じながら、額をそっと押さえていると、藤次郎様の足が不意に止まった
そこは伊達の人間が借りている部屋
障子は開きっぱなしだから、私が藤次郎様に抱えられているのも、兵たちにはばっちり見えている
「姐御、お帰りなせぇやす!」
「くぅ〜ッ、奥州一の美男美女、絵になるぜ!」
「お熱いですねぇ!
羨ましいです!」
「あーあ、俺も可愛い嫁さん欲しいなぁ……」
黙って聞いていれば、好き勝手にごちゃごちゃと……
あんた達、と私が雷を落とす前に、藤次郎様が勝ち誇ったように笑みを浮かべた
「慣れていけよ
こっから先は、これが日常になるぜ」
「な、何を……!
見せつけるようなことをなさらないでくださいませ!」
「見せつけるさ
お前が誰の女なのか、分からせてやらねぇとな」
「そんなことをなさらずとも、私は藤次郎様の……」
不自然に言葉を切ってしまった私に、藤次郎様が「どうした?」と尋ねてくる
答える代わりに、私は藤次郎様の首に手を伸ばした
そこにはあの首を守る防具があって、大きな刀傷が一文字に入っている
その傷に触れて、そっと藤次郎様に抱きついた
「この防具が守ってくれた
言ったろ、お前らの想いが俺を守ってくれるんだと」
「……はい
守ってくれてよかった……
不安だったのです、あの瞬間まで
私が関わりすぎたせいで、魔王の因縁が込められてしまっては、たまりませんでしたから
藤次郎様まで喪ってしまったら、私はもう……生きていけません」
藤次郎様は何も言わず、私を抱える手に力を込めた
耳元で残念がるため息が聞こえたのは、その直後のこと
「下ろすぞ」という声に頷く前に、私の体は地面に下ろされた
小首を傾げて部屋を見やると、なるほど片倉様がお見えだ
……たしかに病み上がりのお身体で私を抱えていたとなれば、私が怒られるわね
勝手に抱えたのは藤次郎様のほうなのに、という文句は、片倉様には通じないのだ
この理不尽に疑問を呈さなくなってきたあたり、私もすっかり伊達軍に染まってしまった気がする
私が藤次郎様の正室となっても、この理不尽は変わらないのだろう
だけど私が伊達家当主に輿入れしたら、伊達家内での地位は藤次郎様に次ぐものになってしまうわけで、そうしたら片倉様との立場も逆転するわけで……
……やりにくいわね、色々と
ここには私の夫でもあった彦一郎様も眠っていて、旧美稜領に住む者たちの心の拠り所となっているらしい
その墓石に手を合わせ、私は関ヶ原での出来事を、彦一郎様に報告した
貴方様がお貸しくださった一矢で、魔王との何もかもを清算できたこと
私は奥州で幸せに生きること
そしていつか……竜の天下を実現してみせること
そっと目を開いて、顔を上げる
武田に残った美稜衆と共にここに来て、報告も終えた
次にここを訪れるのは、何年後だろう
「……戻りましょうか」
淡く微笑んで立ち上がり、墓石に背を向ける
そうして私たちは、跡地を去った
*********************
夕餉の時刻には間に合った、と胸を撫で下ろして、館の門をくぐると、藤次郎様が門前に立っておられた
私を待っていたのか、それとも別の御用があってここにいらっしゃるのか、どちらだろう
私に気付いた藤次郎様が、もたれかかっていた門の柱から離れ、こちらへと歩み寄ってくる
「戻ったか」
「はい、ただいま……
もしや私の帰りをお待ちになっておられたのですか?」
「里帰りを邪魔するのは野暮だろう」
答えのような、そうでないような一言を呟いて、藤次郎様が私に手を伸ばす
抱きかかえられて雛菊から降ろされた私は、そのまま藤次郎様によってどこかへ運ばれていく
慌てる私を他所に、雛菊は美稜衆によって厩へと連れて行かれ、残りの兵たちはニコニコとしたまま、私を見送るだけだった
「と、藤次郎様?
あの……私、馬に乗れるくらいには快復致しましたので、このように抱き上げて頂かずとも……」
「こうされるのは嫌いか?」
朝以来に見た、悪戯っぽい微笑み
好きか嫌いかで論じるなら……嫌いじゃない
藤次郎様に大切にされている、愛されていると感じる瞬間が、嫌いなはずない
「……その聞き方は、些か狡いのでは」
「お気に召さないならやめるぜ?」
「好き、です」
以前より明確に、藤次郎様のことを好きだと感じる
藤次郎様の鎧の下は、包帯だらけだ
だから本当は、私の事なんて抱き上げてほしくない
お身体に余計な負担をかけてほしくないから
でも、この腕が私のことを離したくないと言うようで、どうにも抗えなくて……
「……藤次郎様」
「ん?」
「以前私は、藤次郎様に相応しくないと申し上げました
魔王の因縁による呪縛に囚われた我が身では、いつ藤次郎様へ不幸を振りまいてしまうか分からない、と」
「……ああ」
「ですが今なら、はっきりと申せます
奥州筆頭の伴侶となるに相応しい者は、この日の本広しと言えど、私しかおらぬと」
「俺は最初からそう言っていたつもりだがな
ま、自覚が出たんなら、結果オーライだ」
くつりと喉の奥で笑って、藤次郎様が私の額に口付けを落とす
かぁ……と頬が熱を持つのを感じながら、額をそっと押さえていると、藤次郎様の足が不意に止まった
そこは伊達の人間が借りている部屋
障子は開きっぱなしだから、私が藤次郎様に抱えられているのも、兵たちにはばっちり見えている
「姐御、お帰りなせぇやす!」
「くぅ〜ッ、奥州一の美男美女、絵になるぜ!」
「お熱いですねぇ!
羨ましいです!」
「あーあ、俺も可愛い嫁さん欲しいなぁ……」
黙って聞いていれば、好き勝手にごちゃごちゃと……
あんた達、と私が雷を落とす前に、藤次郎様が勝ち誇ったように笑みを浮かべた
「慣れていけよ
こっから先は、これが日常になるぜ」
「な、何を……!
見せつけるようなことをなさらないでくださいませ!」
「見せつけるさ
お前が誰の女なのか、分からせてやらねぇとな」
「そんなことをなさらずとも、私は藤次郎様の……」
不自然に言葉を切ってしまった私に、藤次郎様が「どうした?」と尋ねてくる
答える代わりに、私は藤次郎様の首に手を伸ばした
そこにはあの首を守る防具があって、大きな刀傷が一文字に入っている
その傷に触れて、そっと藤次郎様に抱きついた
「この防具が守ってくれた
言ったろ、お前らの想いが俺を守ってくれるんだと」
「……はい
守ってくれてよかった……
不安だったのです、あの瞬間まで
私が関わりすぎたせいで、魔王の因縁が込められてしまっては、たまりませんでしたから
藤次郎様まで喪ってしまったら、私はもう……生きていけません」
藤次郎様は何も言わず、私を抱える手に力を込めた
耳元で残念がるため息が聞こえたのは、その直後のこと
「下ろすぞ」という声に頷く前に、私の体は地面に下ろされた
小首を傾げて部屋を見やると、なるほど片倉様がお見えだ
……たしかに病み上がりのお身体で私を抱えていたとなれば、私が怒られるわね
勝手に抱えたのは藤次郎様のほうなのに、という文句は、片倉様には通じないのだ
この理不尽に疑問を呈さなくなってきたあたり、私もすっかり伊達軍に染まってしまった気がする
私が藤次郎様の正室となっても、この理不尽は変わらないのだろう
だけど私が伊達家当主に輿入れしたら、伊達家内での地位は藤次郎様に次ぐものになってしまうわけで、そうしたら片倉様との立場も逆転するわけで……
……やりにくいわね、色々と
