Episode.3-8
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
両腕には何の力も入ってはいない
それでもそいつは──石田三成は、突き刺さったままの刀へと歩み寄った
「秀吉、様……
ここで朽ち果てる無様に……
何卒、ご許可を──!!」
口で柄を咥え、石田三成が刀を引き抜く
そしてそのまま魔王へと突っ込んでいった
魔王の銃弾が石田三成を掠めるが、そのどれひとつとして奴を仕留められない
硝煙の中から、石田が魔王の頭上へと飛びかかる
「刃に咎を、鞘に贖いをッ!!」
闇と光のオーラを纏って、石田の刀が──魔王の首を捉えた
着地したが、balanceを取る気力はないらしい
そのまま顔から地面に突っ込んでいき、起き上がることはなかった
「三、成……!」
「フハハハハハ!
癪にも触れぬわ……ぬぅ!?」
魔王の首が切れ、そこから黒い瘴気が溢れていく
今までとは様子の違う叫びを上げ、魔王が首を押さえるが、瘴気は噴き出したまま止まらない
その光景を、呆然と見ていることしか出来ない俺の横を
静かに──だが力強く、しなやかな足取りで
綾葉が、通り過ぎた
「……綾葉?」
濡れ羽色の髪が美しく靡く
手には──白く輝く、白樺の弓
風神……美稜隆政の得物が、綾葉の左手に握られていた
凛と張り詰めた横顔は、綾葉のようでもあり、風神のようでもある
半分は風神の野郎も混じっているのだろう
綾葉は弓を引けるはずがない
だが、静かに矢を番える立ち姿は、正しく美稜の風神のそれだった
……断ち切れ、綾葉
お前の手で、お前自身に残った魔王のしがらみを……
蝮の呪いを──打ち払え
*********************
願ったのは、魔王の因縁を断つ力
この日の本を……明日を、藤次郎様と共に生きていくために
諦めなんかじゃない、そうする必要だってない
大紫の羽は折れた
それでも私はもう、蝮の蝶などではないのだ
『──綾葉、私の力を貸そう』
「彦一郎、様……?」
『この一矢で、お前の生きる明日を拓け
お前なら必ずできる、お前は誇り高き美稜の名を持つ者なのだから』
託された一本の矢を受け取り、祈るように握り締める
私は、美稜綾葉
誇り高き信州美稜の生き残りにして、天を翔ける独眼竜と、明日を共にする者
全ての因縁を──この矢で断つ
「……」
目を開けた先では、魔王の首から瘴気が噴き出していた
立ち上がった私の左手には、白樺の弓
右手には矢がひとつ
もう右腕は痛まないし、頭の中で響く声も聞こえない
立ち上がることの出来ない藤次郎様の横を通って、魔王と真正面から相対した
弓の引き方は身体が知っている
弓に矢を番えて──鏃に逆巻く風が宿り、炎が渦を巻いた
弓矢全体を覆うほどの炎風が、限界まで引き絞られる
「魔王の因縁、蝮の呪縛、この身に宿った大紫──
すべて、断ち切ります
奥州伊達軍、美稜綾葉──
私の全てを……愛する竜に!」
ヒュ、と風を切る音を残して、矢が放たれる
力を放った衝撃でドン、と風が揺れた
炎に巻かれた風を纏う矢が一直線に魔王の左胸を貫く
絶叫を残して、左胸からも瘴気が溢れ出した
「……っ、これで──」
くらりと後ろに身体が傾いていく
硬い地面を想像して身体が強ばったけれど……
私の体は、温かい手のひらが受け止めてくれた
「……藤次郎、様」
「綾葉……」
瘴気が魔王を包み、棘岩の華が揺れる
その中を──誰かが歩いていくのが見えた
あれは……
「……兄様」
透明な声は、魔王をそう呼んだ
魔王を『兄様』と呼ぶ人なんて、一人しかいない
「お市殿……!」
「魔王の、妹……!?」
どうしてお市の方が……
それになんだか、雰囲気が違う
まるで全てを包み込むような、清廉な気配で……
「市と、眠ろう……」
お市の方が瘴気の幕へと、躊躇いもなく入っていく
そうか……それがあなたの、贖いなのね
「化楽……!?
うつけがぁ……!」
「市が、ずっと傍にいてあげる」
魔王を抱き留め、お市の方がそう囁いた直後
二人の足元は常闇へと代わり、兄妹がゆっくりと地の底へ沈んでいく
奇怪な声を上げ続ける魔王だったけれど、ゆっくりとその瞳から禍々しい光が消えていき
「心地よき腕……
是非も──」
関ヶ原に咲いた棘岩が全て崩れ落ちていく
私たちの足元も亀裂が入り、そして一気に崩れ去った
「「……!!」」
落下していく身体
悲鳴を上げる前に、藤次郎様の腕が私を強く抱き締めた
耳元で風が唸る
その轟音を掻き消すように、大声と駆動音が迫ってきた
「みんな──!!」
真っ暗な大地から、大鍋がこちらへと飛んできている
手を振っているのは小早川秀秋、そして鍋を支えて飛んでいるのは、本多忠勝殿だ
「忠勝……!」
「お──い!!」
関ヶ原の窪みに、棘岩が崩落する土煙が轟々と立ち込める
落ち続ける私たちの体は、小早川殿の乗る巨大な大鍋に拾われ──
全員が鍋の中で揉みくちゃになり、男たちの呻き声が響き合った
それでもそいつは──石田三成は、突き刺さったままの刀へと歩み寄った
「秀吉、様……
ここで朽ち果てる無様に……
何卒、ご許可を──!!」
口で柄を咥え、石田三成が刀を引き抜く
そしてそのまま魔王へと突っ込んでいった
魔王の銃弾が石田三成を掠めるが、そのどれひとつとして奴を仕留められない
硝煙の中から、石田が魔王の頭上へと飛びかかる
「刃に咎を、鞘に贖いをッ!!」
闇と光のオーラを纏って、石田の刀が──魔王の首を捉えた
着地したが、balanceを取る気力はないらしい
そのまま顔から地面に突っ込んでいき、起き上がることはなかった
「三、成……!」
「フハハハハハ!
癪にも触れぬわ……ぬぅ!?」
魔王の首が切れ、そこから黒い瘴気が溢れていく
今までとは様子の違う叫びを上げ、魔王が首を押さえるが、瘴気は噴き出したまま止まらない
その光景を、呆然と見ていることしか出来ない俺の横を
静かに──だが力強く、しなやかな足取りで
綾葉が、通り過ぎた
「……綾葉?」
濡れ羽色の髪が美しく靡く
手には──白く輝く、白樺の弓
風神……美稜隆政の得物が、綾葉の左手に握られていた
凛と張り詰めた横顔は、綾葉のようでもあり、風神のようでもある
半分は風神の野郎も混じっているのだろう
綾葉は弓を引けるはずがない
だが、静かに矢を番える立ち姿は、正しく美稜の風神のそれだった
……断ち切れ、綾葉
お前の手で、お前自身に残った魔王のしがらみを……
蝮の呪いを──打ち払え
*********************
願ったのは、魔王の因縁を断つ力
この日の本を……明日を、藤次郎様と共に生きていくために
諦めなんかじゃない、そうする必要だってない
大紫の羽は折れた
それでも私はもう、蝮の蝶などではないのだ
『──綾葉、私の力を貸そう』
「彦一郎、様……?」
『この一矢で、お前の生きる明日を拓け
お前なら必ずできる、お前は誇り高き美稜の名を持つ者なのだから』
託された一本の矢を受け取り、祈るように握り締める
私は、美稜綾葉
誇り高き信州美稜の生き残りにして、天を翔ける独眼竜と、明日を共にする者
全ての因縁を──この矢で断つ
「……」
目を開けた先では、魔王の首から瘴気が噴き出していた
立ち上がった私の左手には、白樺の弓
右手には矢がひとつ
もう右腕は痛まないし、頭の中で響く声も聞こえない
立ち上がることの出来ない藤次郎様の横を通って、魔王と真正面から相対した
弓の引き方は身体が知っている
弓に矢を番えて──鏃に逆巻く風が宿り、炎が渦を巻いた
弓矢全体を覆うほどの炎風が、限界まで引き絞られる
「魔王の因縁、蝮の呪縛、この身に宿った大紫──
すべて、断ち切ります
奥州伊達軍、美稜綾葉──
私の全てを……愛する竜に!」
ヒュ、と風を切る音を残して、矢が放たれる
力を放った衝撃でドン、と風が揺れた
炎に巻かれた風を纏う矢が一直線に魔王の左胸を貫く
絶叫を残して、左胸からも瘴気が溢れ出した
「……っ、これで──」
くらりと後ろに身体が傾いていく
硬い地面を想像して身体が強ばったけれど……
私の体は、温かい手のひらが受け止めてくれた
「……藤次郎、様」
「綾葉……」
瘴気が魔王を包み、棘岩の華が揺れる
その中を──誰かが歩いていくのが見えた
あれは……
「……兄様」
透明な声は、魔王をそう呼んだ
魔王を『兄様』と呼ぶ人なんて、一人しかいない
「お市殿……!」
「魔王の、妹……!?」
どうしてお市の方が……
それになんだか、雰囲気が違う
まるで全てを包み込むような、清廉な気配で……
「市と、眠ろう……」
お市の方が瘴気の幕へと、躊躇いもなく入っていく
そうか……それがあなたの、贖いなのね
「化楽……!?
うつけがぁ……!」
「市が、ずっと傍にいてあげる」
魔王を抱き留め、お市の方がそう囁いた直後
二人の足元は常闇へと代わり、兄妹がゆっくりと地の底へ沈んでいく
奇怪な声を上げ続ける魔王だったけれど、ゆっくりとその瞳から禍々しい光が消えていき
「心地よき腕……
是非も──」
関ヶ原に咲いた棘岩が全て崩れ落ちていく
私たちの足元も亀裂が入り、そして一気に崩れ去った
「「……!!」」
落下していく身体
悲鳴を上げる前に、藤次郎様の腕が私を強く抱き締めた
耳元で風が唸る
その轟音を掻き消すように、大声と駆動音が迫ってきた
「みんな──!!」
真っ暗な大地から、大鍋がこちらへと飛んできている
手を振っているのは小早川秀秋、そして鍋を支えて飛んでいるのは、本多忠勝殿だ
「忠勝……!」
「お──い!!」
関ヶ原の窪みに、棘岩が崩落する土煙が轟々と立ち込める
落ち続ける私たちの体は、小早川殿の乗る巨大な大鍋に拾われ──
全員が鍋の中で揉みくちゃになり、男たちの呻き声が響き合った
