Episode.3-4
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冷えた手を握り込んで、遠くに見える政宗様を少し振り返る
政宗様はあの装備を、片倉様に付けてもらったようだ
……政宗様は、私の手で付けてほしいとおっしゃった
以前までの私なら、きっと喜んでそうしただろう
「綾葉様、どうかしたんです?」
「佐助……
なに、どうしたの?
今更改まって私に敬語なんか使っちゃって」
「そいつは失礼
ただの元奥方様から、領主となられたもんでね
俺様もそれなりに敬意を払うべきかと思ったってわけだけど」
「必要ないわよ、そんなの」
いつものように微笑んだつもりだけど、ぎこちなくなってしまったのは自覚している
特に佐助は、忍びらしく人の機微に聡いもの
隠し事なんてできやしない
「風の噂で、綾葉様が独眼竜の旦那に嫁ぐって聞いたんだけど……
それにしちゃあ、随分と距離を置いてるみたいだね?」
「その話なら、無くなったわ」
「は?」
「私から辞退したの」
「なんでさ?
だって綾葉様は独眼竜に惚れて……」
「そうね……だから武田の誘いを断って、奥州に帰ったわ
でもね、あの方にとって、私の想いは呪いになってしまうのよ」
「呪い……?
綾葉様にそんな物騒なもんが染み付いてるとは思えないけど……」
目に見えるものではない
ただこれは、私がそう運命づけられただけのこと
蝮の娘として織田に忠義を尽くすことなく、それどころか魔王に向かって私は銃を突きつけた
斎藤は織田に与する家
その家に生まれておきながら、私は織田に刃を向ける道を歩んだのだ
「生家である斎藤家を喪い、嫁ぎ先である美稜家を守ることもできず、最後には彦一郎様でさえ死んだ
このまま私が政宗様のお傍にいてしまったら、次は政宗様を喪ってしまう
それだけは避けたいの……
奥州は、政宗様を喪えないから」
「でもそれは全部、綾葉様が悪いってわけじゃないだろ?
魔王の嫁の実家である斎藤家を潰したのも、美稜に攻め込んで城を焼き払ったのも、それは織田がやったことで、綾葉様が手引きしたわけじゃない
隆政様だって、魔王から綾葉様を守って死んだんだ
……まさか綾葉様、あんた、隆政様の代わりに自分が死ねば良かったなんて、思ってるんじゃないよな?」
「そんなことを考えたりはしないわ
たらればなんて無意味だもの
そんなことを考えたって、彦一郎様は生き返ったりしない
だけど……そうね、無意味なたらればをひとつ考えるとするなら……
どうせ美稜を再興するなら、信州でやり直せばよかった、とは考えるわね
そうすれば私が政宗様の人生に死の呪いを振り撒くこともなかったでしょう」
だけれどそれも今となっては意味のない話だ
だって私はあの時、政宗様と共に──奥州にいたいと望んでそうしたのだから
私にとって奥州はもう、第三の故郷になった
今更、信州になんて戻れない
「蝮の娘は身体に蝶の刺青を入れる
上から焼いて消した程度では、魔王との因縁は切れないのでしょうね」
右の二の腕を服の上から押さえて、握り締める
この間から、ここが熱を持って疼くことが増えたのだ
それがまるで、魔王との因縁を忘れさせないための戒めのように思えて……
「政宗様は志半ばで死んでいいような人じゃない
私が完全に離れられたら、それが一番なのだけれど、それも出来ることではないもの
だからせめて、私と政宗様が触れ合うことのないように……
政宗様を愛したりしないと決めたの」
視線を向けた先では、両軍の大将同士での話もついたらしい
行き先が同じなら共に向かおうということになったようだ
両軍は関ヶ原へ向けて進軍を再開させようとしていた
「関ヶ原に着くまでの片道限りだけど、宜しくね、佐助」
軽く手を振って佐助に背を向け、伊達軍のほうへと踏み出す
その私の背へ、佐助の声がかかった
「隆政様の最期の言葉、忘れてないよな?」
「……ええ」
「綾葉様、あんたは今、奥州で幸せに生きてるのかい?」
「……勿論よ」
半分ほど佐助を振り返って、そう頷いて見せる
私が幸せかどうかと問われれば、それはもちろん是だ
「奥州で美稜家を再興できた
信州の地ではなくとも、美稜の名は日ノ本に残った
私にとっては、それだけで十分幸せよ」
「隆政様が言ってた幸せってのは、そんなんじゃ──」
「そろそろ出発するようね
私達も戻りましょう」
姐御、と私に手を振る奴らに、私も小さく手を振った
佐助も幸村の隣に戻って、既に武田軍副将の顔に戻っている
政宗様が私を視線だけで追いかけて来たものの、特に何を言われることもなかった
「お待たせ致しました
それでは参りますか、関ヶ原へ」
「ああ
何が待ち受けてやがるか、楽しみだ」
後藤黒に跨って、政宗様はニヤリと笑った
片倉様と目配せを交わし、政宗様の後に続いて進軍を再開する
伊達軍と共に武田も進軍するとなれば、機動力も落ちるというもの
行軍路の見直しは適宜、片倉様と佐助で行ってくれるそうだ
こうして我々は、関ヶ原へ向けて進軍を開始した
すべてはこの日ノ本で何が起きているのかを、確かめるために
政宗様はあの装備を、片倉様に付けてもらったようだ
……政宗様は、私の手で付けてほしいとおっしゃった
以前までの私なら、きっと喜んでそうしただろう
「綾葉様、どうかしたんです?」
「佐助……
なに、どうしたの?
今更改まって私に敬語なんか使っちゃって」
「そいつは失礼
ただの元奥方様から、領主となられたもんでね
俺様もそれなりに敬意を払うべきかと思ったってわけだけど」
「必要ないわよ、そんなの」
いつものように微笑んだつもりだけど、ぎこちなくなってしまったのは自覚している
特に佐助は、忍びらしく人の機微に聡いもの
隠し事なんてできやしない
「風の噂で、綾葉様が独眼竜の旦那に嫁ぐって聞いたんだけど……
それにしちゃあ、随分と距離を置いてるみたいだね?」
「その話なら、無くなったわ」
「は?」
「私から辞退したの」
「なんでさ?
だって綾葉様は独眼竜に惚れて……」
「そうね……だから武田の誘いを断って、奥州に帰ったわ
でもね、あの方にとって、私の想いは呪いになってしまうのよ」
「呪い……?
綾葉様にそんな物騒なもんが染み付いてるとは思えないけど……」
目に見えるものではない
ただこれは、私がそう運命づけられただけのこと
蝮の娘として織田に忠義を尽くすことなく、それどころか魔王に向かって私は銃を突きつけた
斎藤は織田に与する家
その家に生まれておきながら、私は織田に刃を向ける道を歩んだのだ
「生家である斎藤家を喪い、嫁ぎ先である美稜家を守ることもできず、最後には彦一郎様でさえ死んだ
このまま私が政宗様のお傍にいてしまったら、次は政宗様を喪ってしまう
それだけは避けたいの……
奥州は、政宗様を喪えないから」
「でもそれは全部、綾葉様が悪いってわけじゃないだろ?
魔王の嫁の実家である斎藤家を潰したのも、美稜に攻め込んで城を焼き払ったのも、それは織田がやったことで、綾葉様が手引きしたわけじゃない
隆政様だって、魔王から綾葉様を守って死んだんだ
……まさか綾葉様、あんた、隆政様の代わりに自分が死ねば良かったなんて、思ってるんじゃないよな?」
「そんなことを考えたりはしないわ
たらればなんて無意味だもの
そんなことを考えたって、彦一郎様は生き返ったりしない
だけど……そうね、無意味なたらればをひとつ考えるとするなら……
どうせ美稜を再興するなら、信州でやり直せばよかった、とは考えるわね
そうすれば私が政宗様の人生に死の呪いを振り撒くこともなかったでしょう」
だけれどそれも今となっては意味のない話だ
だって私はあの時、政宗様と共に──奥州にいたいと望んでそうしたのだから
私にとって奥州はもう、第三の故郷になった
今更、信州になんて戻れない
「蝮の娘は身体に蝶の刺青を入れる
上から焼いて消した程度では、魔王との因縁は切れないのでしょうね」
右の二の腕を服の上から押さえて、握り締める
この間から、ここが熱を持って疼くことが増えたのだ
それがまるで、魔王との因縁を忘れさせないための戒めのように思えて……
「政宗様は志半ばで死んでいいような人じゃない
私が完全に離れられたら、それが一番なのだけれど、それも出来ることではないもの
だからせめて、私と政宗様が触れ合うことのないように……
政宗様を愛したりしないと決めたの」
視線を向けた先では、両軍の大将同士での話もついたらしい
行き先が同じなら共に向かおうということになったようだ
両軍は関ヶ原へ向けて進軍を再開させようとしていた
「関ヶ原に着くまでの片道限りだけど、宜しくね、佐助」
軽く手を振って佐助に背を向け、伊達軍のほうへと踏み出す
その私の背へ、佐助の声がかかった
「隆政様の最期の言葉、忘れてないよな?」
「……ええ」
「綾葉様、あんたは今、奥州で幸せに生きてるのかい?」
「……勿論よ」
半分ほど佐助を振り返って、そう頷いて見せる
私が幸せかどうかと問われれば、それはもちろん是だ
「奥州で美稜家を再興できた
信州の地ではなくとも、美稜の名は日ノ本に残った
私にとっては、それだけで十分幸せよ」
「隆政様が言ってた幸せってのは、そんなんじゃ──」
「そろそろ出発するようね
私達も戻りましょう」
姐御、と私に手を振る奴らに、私も小さく手を振った
佐助も幸村の隣に戻って、既に武田軍副将の顔に戻っている
政宗様が私を視線だけで追いかけて来たものの、特に何を言われることもなかった
「お待たせ致しました
それでは参りますか、関ヶ原へ」
「ああ
何が待ち受けてやがるか、楽しみだ」
後藤黒に跨って、政宗様はニヤリと笑った
片倉様と目配せを交わし、政宗様の後に続いて進軍を再開する
伊達軍と共に武田も進軍するとなれば、機動力も落ちるというもの
行軍路の見直しは適宜、片倉様と佐助で行ってくれるそうだ
こうして我々は、関ヶ原へ向けて進軍を開始した
すべてはこの日ノ本で何が起きているのかを、確かめるために
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