Episode.3-4
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慶次殿の手が私に書状を渡してきて、四人もそれを覗き込んできた
政宗様に宛てられたものなのに、私たち、勝手に見てしまってるわね……
あとで怒られないことを祈るしかない……
『──某は徳川家康と申す者にて候
絆の力以て天下を平らかにせんと哀心より欲し居り候間、遍く諸国を巡りて人の絆の尊きことを説き来たりて候
然し乍ら恨むべくは之に志並ぶ者一人として見るべからず
只今戦乱相重なり、兵の疲弊ますます増し、民の悲哀極まりなし
然りと雖も、日の本に能く絆の力を信ずる者、未だ之れ無く候
某はこの有様を然と見、深く身に沁みて候間、新たに期する所之れ有り
忸怩たるを免れずと雖も、志は断固として曲ぐべからず
故に将に武を用いんと欲す
今方に武を悠にする者あり、石田三成なり
某もまた三成の如くすること手易すからずんば非ず
今、某思へらく
日の本に互いに手を相取る者無し、心貧しくして生くるは、凶徒三成と共に滅びるに如かんやと
然り乍ら武を用いるに急なるは粗悪なりと某心得居り候
然れば即ち天下の士を集め、群議を尽くさんと欲す
願わくは九月十五日の暁を期し、美濃関ヶ原に結集せられんことを
日の本を憂える士こぞりて来れよかし、来れよかし
花押』
……な、なに、この文は
私の知る徳川家康が書いたとは思えない内容で、うっかり握り潰すところだった
こんなの脅しと変わらないじゃない!
「家康殿がこのような文を書くなど、やはりありえません
他の諸将はどのように捉えておいでなのでしょうか」
「残念ながら、このご時世に絆の力だなんて胡散臭い……と思う連中のほうが多いのは事実だ
だけど俺でも分かるよ
筆の運びは同じだけど、どうにも怪しい」
「私も同じ意見です
……あんた達はどう思う?」
私の後ろから文を読んでいた四人を振り向く
腕を組んで唸ったのは、左馬助だ
「なんか臭うんスよねぇ……」
「どうにも怪しいっつーか……」
「分かる分かる
なんか美味そうな匂いしてるよな、この文」
「なんの匂いだろうな、これ?
……鍋みたいな匂い?」
「「……鍋?」」
私と慶次殿が、四人を振り向く
ピーヒョロロ……と、遠くで鳶が鳴いた
*********************
そうして伊達軍が出陣したのは、九月の上旬
野を越え川を越え、白河の関をも越え、私たちは石田三成を目指して西へと進んでいく
「……片倉様、徳川家康の動向について、斥候は何か情報を?」
「いや……それが何の情報も掴んじゃいねぇ
普通なら軍勢が動けば、誰かしらの目には止まるはずだ
だが徳川軍が動いたという情報はないまま、毎晩のようにどこかが攻め落とされている……」
「新手の兵器でも用いているのでしょうか
……いえ、そうだとしても、誰の目にも触れずに戦いを仕掛けるなど、できるものでは──」
ポツンと篝が残る場所に差し掛かった時、前方から軍勢の進む音が響いてきた
どこぞが東へと出陣してくるようだ
けれどいったい、どこの軍が──と警戒心を引き上げた時
現れたのは、よく見慣れた赤い軍勢
先頭を走るその武将は、私たちもよく知る人物だった
なんとなく既視感のある出会い方だ
「……政宗殿!」
「幸村……」
篝を挟んで、伊達軍と──真田幸村率いる武田軍が、相対した
そういえば武田軍は、信玄公がとうとうご隠居なされたのだったかしら
「……Long time no see.
血相変えてどこへ行きやがる、真田幸村」
「久しゅうござる
某、今より、徳川家康殿の元へ参るところ」
「……Fum.
義憤に駆られるとはアンタらしいな
相当手強くなってるって噂だ、せいぜい気をつけろよ」
……正直、幸村の返答は意外だった
まさか幸村が自ら、徳川家康の性根を叩き直すつもりだったとは
一国を預かる立場となろうとも……いえ、そうなったからこそ、家康殿のやり口には我慢ならないのだろう
(……大きくなったわね、幸村
あなたと馴染みのある人間として、私も鼻が高いわ)
勝手に感心してしまって申し訳なかった
徳川家康を武田が討つのなら、そっちは任せてしまっていいだろう
幸村なら、不覚を取らない限りは負けやしないだろうから
「いや、そうではなく──」
「俺はこれから石田三成を蹴散らしに行く
取って返すつもりだったが、そういうことなら家康はアンタに任せるぜ」
「政宗殿──」
「アンタ、虎のオッサンの跡を継いだんだってな?」
そう声を掛けた政宗様は、感慨深そうだった
互いに好敵手と認め合う関係なれど、立場は違っていた二人
政宗様は一国を預かる国主
幸村は信玄公にお仕えする、武田軍配下の将
それがようやく──幸村が政宗様に並ぼうかというところまで来たのだから
政宗様がお喜びになるのも当然のことだろう
幸村の成長を、きっと信玄公の次に期待していたのは、他ならぬこの政宗様なのだから
政宗様に宛てられたものなのに、私たち、勝手に見てしまってるわね……
あとで怒られないことを祈るしかない……
『──某は徳川家康と申す者にて候
絆の力以て天下を平らかにせんと哀心より欲し居り候間、遍く諸国を巡りて人の絆の尊きことを説き来たりて候
然し乍ら恨むべくは之に志並ぶ者一人として見るべからず
只今戦乱相重なり、兵の疲弊ますます増し、民の悲哀極まりなし
然りと雖も、日の本に能く絆の力を信ずる者、未だ之れ無く候
某はこの有様を然と見、深く身に沁みて候間、新たに期する所之れ有り
忸怩たるを免れずと雖も、志は断固として曲ぐべからず
故に将に武を用いんと欲す
今方に武を悠にする者あり、石田三成なり
某もまた三成の如くすること手易すからずんば非ず
今、某思へらく
日の本に互いに手を相取る者無し、心貧しくして生くるは、凶徒三成と共に滅びるに如かんやと
然り乍ら武を用いるに急なるは粗悪なりと某心得居り候
然れば即ち天下の士を集め、群議を尽くさんと欲す
願わくは九月十五日の暁を期し、美濃関ヶ原に結集せられんことを
日の本を憂える士こぞりて来れよかし、来れよかし
花押』
……な、なに、この文は
私の知る徳川家康が書いたとは思えない内容で、うっかり握り潰すところだった
こんなの脅しと変わらないじゃない!
「家康殿がこのような文を書くなど、やはりありえません
他の諸将はどのように捉えておいでなのでしょうか」
「残念ながら、このご時世に絆の力だなんて胡散臭い……と思う連中のほうが多いのは事実だ
だけど俺でも分かるよ
筆の運びは同じだけど、どうにも怪しい」
「私も同じ意見です
……あんた達はどう思う?」
私の後ろから文を読んでいた四人を振り向く
腕を組んで唸ったのは、左馬助だ
「なんか臭うんスよねぇ……」
「どうにも怪しいっつーか……」
「分かる分かる
なんか美味そうな匂いしてるよな、この文」
「なんの匂いだろうな、これ?
……鍋みたいな匂い?」
「「……鍋?」」
私と慶次殿が、四人を振り向く
ピーヒョロロ……と、遠くで鳶が鳴いた
*********************
そうして伊達軍が出陣したのは、九月の上旬
野を越え川を越え、白河の関をも越え、私たちは石田三成を目指して西へと進んでいく
「……片倉様、徳川家康の動向について、斥候は何か情報を?」
「いや……それが何の情報も掴んじゃいねぇ
普通なら軍勢が動けば、誰かしらの目には止まるはずだ
だが徳川軍が動いたという情報はないまま、毎晩のようにどこかが攻め落とされている……」
「新手の兵器でも用いているのでしょうか
……いえ、そうだとしても、誰の目にも触れずに戦いを仕掛けるなど、できるものでは──」
ポツンと篝が残る場所に差し掛かった時、前方から軍勢の進む音が響いてきた
どこぞが東へと出陣してくるようだ
けれどいったい、どこの軍が──と警戒心を引き上げた時
現れたのは、よく見慣れた赤い軍勢
先頭を走るその武将は、私たちもよく知る人物だった
なんとなく既視感のある出会い方だ
「……政宗殿!」
「幸村……」
篝を挟んで、伊達軍と──真田幸村率いる武田軍が、相対した
そういえば武田軍は、信玄公がとうとうご隠居なされたのだったかしら
「……Long time no see.
血相変えてどこへ行きやがる、真田幸村」
「久しゅうござる
某、今より、徳川家康殿の元へ参るところ」
「……Fum.
義憤に駆られるとはアンタらしいな
相当手強くなってるって噂だ、せいぜい気をつけろよ」
……正直、幸村の返答は意外だった
まさか幸村が自ら、徳川家康の性根を叩き直すつもりだったとは
一国を預かる立場となろうとも……いえ、そうなったからこそ、家康殿のやり口には我慢ならないのだろう
(……大きくなったわね、幸村
あなたと馴染みのある人間として、私も鼻が高いわ)
勝手に感心してしまって申し訳なかった
徳川家康を武田が討つのなら、そっちは任せてしまっていいだろう
幸村なら、不覚を取らない限りは負けやしないだろうから
「いや、そうではなく──」
「俺はこれから石田三成を蹴散らしに行く
取って返すつもりだったが、そういうことなら家康はアンタに任せるぜ」
「政宗殿──」
「アンタ、虎のオッサンの跡を継いだんだってな?」
そう声を掛けた政宗様は、感慨深そうだった
互いに好敵手と認め合う関係なれど、立場は違っていた二人
政宗様は一国を預かる国主
幸村は信玄公にお仕えする、武田軍配下の将
それがようやく──幸村が政宗様に並ぼうかというところまで来たのだから
政宗様がお喜びになるのも当然のことだろう
幸村の成長を、きっと信玄公の次に期待していたのは、他ならぬこの政宗様なのだから
