09 いざパーティへ
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ビュッフェのエリアで美味しそうな料理をお皿に盛って、フォークで口元に運ぶ
……美味しい
伊達家の数々の神料理に、完全に舌が肥えてしまった私でもそう思ってしまった
「よっ、楽しんでるか?」
「成実」
「夕歌、すっごく綺麗だった!」
「あはは……ありがとう、かすがと成実のお陰かも
あとは、忙しい合間を縫って、レッスンに付き合ってくれた政宗さんも……」
少し遠くにいる政宗さんをそっと見つめる
次期当主として立派に振る舞う彼は、やはりどこか遠い人のように思えてしまう
「私に出来ることを、出来る範囲での最大限で頑張るんだって、決めたばっかりなのになぁ……」
「ああいう姿を見ると、梵は、俺たちとは住んでる世界が違うなって思うよ、俺も」
「成実も?」
「前にも言ったろ?
俺にゃ、継ぐべき会社もないし、背負うべき立場もない
けどあいつは、その二つを一つの身体でやろうってんだからなぁ……
本当に一つしか離れてねぇのかって、たまに疑問に思う」
ノンアルコールのシャンパンを揺らしながら、成実が寂しそうに微笑む
けれど、その微笑みはほんの僅かなもので、次の瞬間にはいつもの勝ち気めいた微笑みが戻っていた
「ま、あいつがそれを望んで背負うって決めたんだ
俺に出来るのは、精々あいつがずっこけねぇように、道を均すくらいだな」
「満更でもないくせに」
「生意気だぞ、お前ー」
クスクスと隣で登勢が笑う
政宗さんと目が合って、少し手を振ってみると、政宗さんは話を切り上げたのか、こちらへと戻ってきていた
「夕歌、そろそろ次の──」
成実が何かを言いかけた時
「──久し振りだな、夕歌」
この場で聞くはずのない声が、聞こえた
「……な、ぜ」
「夕歌?」
登勢が私の手を繋ぐ
嘘だ、そんなはずはない
だって、だって……
「あんた……!?」
「藤野──佳宏」
登勢がそう呟いて、私の手を更に強く握る
さらに
「ようやくお出ましか、随分と時間がかかったじゃねぇか」
先程までの穏やかな雰囲気は見る影もなく、静かな怒気を孕ませて、政宗さんがやってきた
……知っていたんだ
政宗さんは、この人が来ることを知っていて、私をここに連れてきた
「すまんな、政宗くん
他の招待客への挨拶で遅れてしまった」
「ッ……!?
なんだそいつは……テメェはそんな野郎じゃ──」
表面上は、私の母と仲が良かったという叔父
そうか──こういうことか
「……夕歌?」
正直、怖い
この人と真正面から向き合うのは、とてつもなく勇気がいる
だけど、だけど……いつまでも、政宗さんの背中に隠れてはいられない
ギュッと登勢の手を握り締めて、それからその手を解く
あ、と登勢が声を小さく漏らして、成実が何かを言いかけて
政宗さんは、驚いたようにその隻眼を見開いて、それから何かを察したように、少し横にずれてくれた
「……ご無沙汰しております、叔父様
まさかこのパーティでお会い出来るとは思いませんでした
叔父様が顔を出されるような大きなパーティではございませんから……」
ドレスの裾をつまんで、腰を折る
目は笑っていなかったし、瞳の奥は私を拒絶する色だ
その瞳を真正面から見つめ返す
「夕歌が出席すると聞いてな
姪の社交界デビューを是非見たいと思った
よく出来ていたな」
「……勿体ないお言葉です」
周囲は、業界のツートップが顔を合わせたことで、異様な雰囲気に包まれようとしている
それは私も感じ取っていた
「……お祖母様はお元気ですか?」
「無論だとも
今日のパーティもひどく行きたがっておられたが、外せない用事があってな」
「……そうですか
ところで──新倉はどこですか」
そこでようやく、叔父の顔に表情が現れた
そもそも、この人にしてみれば、私がここまで立ち向かってくることさえ予想外だったはず
その上、和真さんの事まで聞かれるとは思わなかったのだろう
「……あれか」
「そろそろこちらに返していただけますか?
藤野邸に呼び出されてから、一向に戻らないんです
新倉は私の執事ですよ、叔父様」
無表情に戻った叔父様が、踵を返そうとする
叔父様、と呼び止めたけれど、私を振り返ることなく、会場を後にした
「……夕歌」
「和真さん……どこにいるんだろう」
「大丈夫か、夕歌?」
「……うん」
登勢と成実の心配に頷き返して、政宗さんを見上げる
政宗さんは何かを言おうとして──
ぐっと口を噤んで、それから
強く私を抱き締めた
彼のやるせない怒りが伝わってくる
「……ありがとうございます、政宗さん」
「何も出来なかった……礼を言われる筋合いはねぇ」
「いいえ、政宗さんが居たから、ちゃんと私自身が立ち向かえました
お礼を言うのは当然です」
「……新倉は、大丈夫だ」
囁くような声に頷き返す
きっと大丈夫だ
いつか……きっと、帰ってきてくれる──
……美味しい
伊達家の数々の神料理に、完全に舌が肥えてしまった私でもそう思ってしまった
「よっ、楽しんでるか?」
「成実」
「夕歌、すっごく綺麗だった!」
「あはは……ありがとう、かすがと成実のお陰かも
あとは、忙しい合間を縫って、レッスンに付き合ってくれた政宗さんも……」
少し遠くにいる政宗さんをそっと見つめる
次期当主として立派に振る舞う彼は、やはりどこか遠い人のように思えてしまう
「私に出来ることを、出来る範囲での最大限で頑張るんだって、決めたばっかりなのになぁ……」
「ああいう姿を見ると、梵は、俺たちとは住んでる世界が違うなって思うよ、俺も」
「成実も?」
「前にも言ったろ?
俺にゃ、継ぐべき会社もないし、背負うべき立場もない
けどあいつは、その二つを一つの身体でやろうってんだからなぁ……
本当に一つしか離れてねぇのかって、たまに疑問に思う」
ノンアルコールのシャンパンを揺らしながら、成実が寂しそうに微笑む
けれど、その微笑みはほんの僅かなもので、次の瞬間にはいつもの勝ち気めいた微笑みが戻っていた
「ま、あいつがそれを望んで背負うって決めたんだ
俺に出来るのは、精々あいつがずっこけねぇように、道を均すくらいだな」
「満更でもないくせに」
「生意気だぞ、お前ー」
クスクスと隣で登勢が笑う
政宗さんと目が合って、少し手を振ってみると、政宗さんは話を切り上げたのか、こちらへと戻ってきていた
「夕歌、そろそろ次の──」
成実が何かを言いかけた時
「──久し振りだな、夕歌」
この場で聞くはずのない声が、聞こえた
「……な、ぜ」
「夕歌?」
登勢が私の手を繋ぐ
嘘だ、そんなはずはない
だって、だって……
「あんた……!?」
「藤野──佳宏」
登勢がそう呟いて、私の手を更に強く握る
さらに
「ようやくお出ましか、随分と時間がかかったじゃねぇか」
先程までの穏やかな雰囲気は見る影もなく、静かな怒気を孕ませて、政宗さんがやってきた
……知っていたんだ
政宗さんは、この人が来ることを知っていて、私をここに連れてきた
「すまんな、政宗くん
他の招待客への挨拶で遅れてしまった」
「ッ……!?
なんだそいつは……テメェはそんな野郎じゃ──」
表面上は、私の母と仲が良かったという叔父
そうか──こういうことか
「……夕歌?」
正直、怖い
この人と真正面から向き合うのは、とてつもなく勇気がいる
だけど、だけど……いつまでも、政宗さんの背中に隠れてはいられない
ギュッと登勢の手を握り締めて、それからその手を解く
あ、と登勢が声を小さく漏らして、成実が何かを言いかけて
政宗さんは、驚いたようにその隻眼を見開いて、それから何かを察したように、少し横にずれてくれた
「……ご無沙汰しております、叔父様
まさかこのパーティでお会い出来るとは思いませんでした
叔父様が顔を出されるような大きなパーティではございませんから……」
ドレスの裾をつまんで、腰を折る
目は笑っていなかったし、瞳の奥は私を拒絶する色だ
その瞳を真正面から見つめ返す
「夕歌が出席すると聞いてな
姪の社交界デビューを是非見たいと思った
よく出来ていたな」
「……勿体ないお言葉です」
周囲は、業界のツートップが顔を合わせたことで、異様な雰囲気に包まれようとしている
それは私も感じ取っていた
「……お祖母様はお元気ですか?」
「無論だとも
今日のパーティもひどく行きたがっておられたが、外せない用事があってな」
「……そうですか
ところで──新倉はどこですか」
そこでようやく、叔父の顔に表情が現れた
そもそも、この人にしてみれば、私がここまで立ち向かってくることさえ予想外だったはず
その上、和真さんの事まで聞かれるとは思わなかったのだろう
「……あれか」
「そろそろこちらに返していただけますか?
藤野邸に呼び出されてから、一向に戻らないんです
新倉は私の執事ですよ、叔父様」
無表情に戻った叔父様が、踵を返そうとする
叔父様、と呼び止めたけれど、私を振り返ることなく、会場を後にした
「……夕歌」
「和真さん……どこにいるんだろう」
「大丈夫か、夕歌?」
「……うん」
登勢と成実の心配に頷き返して、政宗さんを見上げる
政宗さんは何かを言おうとして──
ぐっと口を噤んで、それから
強く私を抱き締めた
彼のやるせない怒りが伝わってくる
「……ありがとうございます、政宗さん」
「何も出来なかった……礼を言われる筋合いはねぇ」
「いいえ、政宗さんが居たから、ちゃんと私自身が立ち向かえました
お礼を言うのは当然です」
「……新倉は、大丈夫だ」
囁くような声に頷き返す
きっと大丈夫だ
いつか……きっと、帰ってきてくれる──
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