09 いざパーティへ
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宵の帳が降りた頃──
「では、行ってらっしゃいませ」
「おう」
「行ってきます……!」
小十郎さんと綱元先輩に見送られて、私と政宗さん、成実と登勢は会場へと入った
「き、緊張する」
「知ってる、お前めちゃくちゃ顔が強ばってるぞ」
「成実も登勢も慣れてるから……!」
「うーん……確かに、これは慣れた者勝ちだもんね」
慣れたようにエスコートする成実と、これまた慣れたようにエスコートされる登勢
スカイブルーの可愛らしいドレスを纏った登勢は、誰が見たって素敵なご令嬢だし、成実が同じ色のタイを使用している時点で、二人の関係も明らかだった
……それは、私と政宗さんも
マリンブルーのドレスと、マリンブルーのタイ
「お手をどうぞ」
「は、はい」
そこは日本語なんだな、と余計なことを思いながら、差し出された手を取る
……間違えた、腕を組むんだった
しれっと矯正して、会場の入口へと向かう
「大森伊達家ご子息、伊達成実様、並びに亘理登勢様」
「伊達本家ご子息、伊達政宗様、並びに伊達夕歌様」
私たちの名前が呼ばれて、フロアがざわざわと騒がしくなる
なにせ業界トップクラスの大企業の御曹司と、その従弟
騒がれない方がおかしいわけだ
「……政宗さん」
「どうした?」
「いえ……何となく、表情が怖いような気がして」
「ぼーん、気持ちは分かるが、なるようにしかならねぇだろ
しっかりエスコートしてやれよな」
登勢を連れた成実がフロアに進んで、登勢に向かって腰を折って、手を差し出す
嬉しそうに微笑んだ登勢がその手を握り返して──同じ現象が、私の目の前でも起きた
「……政宗さん」
「まずは一曲、お相手願います──ってな」
「ふ、ふふっ……!
はいっ!」
政宗さんの手を取って、フロアの中央へ
誰もが、私と政宗さんに視線を向けていた
「……緊張してるな」
「さすがに……します」
「大丈夫だ、今のお前なら」
音楽が流れて、政宗さんの手が腰を支える
伊達家の名に恥じない立ち振る舞いをしなきゃ
政宗さんのリードに合わせてステップを踏む
……と、不意に政宗さんが私の耳元に顔を寄せた
「余計なことは考えるな
俺との時間を楽しむことだけ考えろ」
「え……」
「出来るな?」
「……はい」
自分に余計なプレッシャーを与えるなという事だろう
ふっと肩の力が抜けると、政宗さんも満足そうに口の端を持ち上げた
「good.」
ちらりと横を盗み見ると、成実は今まで見たこともないような甘い微笑みを浮かべて、登勢をリードしていた
幸せそうで……羨ましいくらい
「……よそ見とはいい度胸だな?」
「そ、そんなつもりは……」
「お前は俺だけ見てろ」
ぐっと腰を引き寄せられて、開いてしまっていた間が埋まる
政宗さんを見上げると、独眼が私を見つめていた
「……それでいい」
「政宗さん……」
「So beautiful.
今のお前は、どこに出しても恥ずかしくない、自慢の俺の嫁だ」
最上級の褒め言葉が飛び出てきて、私の頬が熱を持つ
「私、ちょっとは政宗さんに追い付けました?」
「なんだそいつは?
俺はお前が後れを取ってるとも、お前に先を越されたとも思っちゃいねぇんだが」
「……え?」
「お前はお前のままでいい
変に気負うな、本質を忘れるな
お前はお前らしく、俺の隣で笑ってくれりゃそれでいい」
「でも……」
「自信を持て
お前は、お前が思ってるより随分、ちゃんと伊達家に相応しい奴だ」
……自己評価が低すぎるのは、何となく分かっていた
政宗さんに不釣り合いなんじゃないか、もっと自分を変えなきゃ駄目なんじゃないか
いつか政宗さんに「要らない」と言われる日が来ないか、不安だった
だから自分を変えようと必死だった
誰からも見捨てられないように
こんな私を好きになってくれた政宗さんに、迷惑だけはかけられなかった
「……私、政宗さんのお役に立ってますか?」
足手まといにだけは、なりたくなかった
そんな私を、政宗さんは
「……ああ、とびっきりな」
初めて見るような、真綿のように優しくて、蜂蜜のように甘い──そんな微笑みと共に、背中を押してくれた
その瞬間
私の中でずっと張り詰めていた一本の糸が、ぷつりと断ち切られる感覚があって
不意に浮かんだのは、「気負いすぎんなよ」という、成実の言葉だった
あぁ、そっか、私ってば頑張りすぎてたんだなぁ
早く政宗さんと同じ景色を見なきゃって、一人で焦ってたのかな
でも、私は忘れていた
同じ景色なんて、見られるはずがない
だって私は政宗さんじゃないから
そもそも立つべき場所も違うのに、同じ景色なんて見えるわけが無い
私が見るべきは、彼の背中
歩みを止めずに進み続ける彼が、道を間違えそうになった時、正しい道へ促す役目
そして、立ち止まりそうになった時、その背中を押すのが、私のやるべき事
だから、私は信じるだけだ
「政宗さん、私、ようやく分かりました」
「何がだ?」
「私、政宗さんの背中を信じてついて行きます」
「………」
「小十郎さんが露払いをするのなら……成実と綱元先輩が道を均すのなら
私は、政宗さんの背中について行くだけです
政宗さんが道を間違えないように……立ち止まった時、ちゃんと背中を押せるように
何が正しい道なのか、見極められるようになります」
これが、今の私に求められる答え
伊達政宗の妻としての、私の答えだ
「では、行ってらっしゃいませ」
「おう」
「行ってきます……!」
小十郎さんと綱元先輩に見送られて、私と政宗さん、成実と登勢は会場へと入った
「き、緊張する」
「知ってる、お前めちゃくちゃ顔が強ばってるぞ」
「成実も登勢も慣れてるから……!」
「うーん……確かに、これは慣れた者勝ちだもんね」
慣れたようにエスコートする成実と、これまた慣れたようにエスコートされる登勢
スカイブルーの可愛らしいドレスを纏った登勢は、誰が見たって素敵なご令嬢だし、成実が同じ色のタイを使用している時点で、二人の関係も明らかだった
……それは、私と政宗さんも
マリンブルーのドレスと、マリンブルーのタイ
「お手をどうぞ」
「は、はい」
そこは日本語なんだな、と余計なことを思いながら、差し出された手を取る
……間違えた、腕を組むんだった
しれっと矯正して、会場の入口へと向かう
「大森伊達家ご子息、伊達成実様、並びに亘理登勢様」
「伊達本家ご子息、伊達政宗様、並びに伊達夕歌様」
私たちの名前が呼ばれて、フロアがざわざわと騒がしくなる
なにせ業界トップクラスの大企業の御曹司と、その従弟
騒がれない方がおかしいわけだ
「……政宗さん」
「どうした?」
「いえ……何となく、表情が怖いような気がして」
「ぼーん、気持ちは分かるが、なるようにしかならねぇだろ
しっかりエスコートしてやれよな」
登勢を連れた成実がフロアに進んで、登勢に向かって腰を折って、手を差し出す
嬉しそうに微笑んだ登勢がその手を握り返して──同じ現象が、私の目の前でも起きた
「……政宗さん」
「まずは一曲、お相手願います──ってな」
「ふ、ふふっ……!
はいっ!」
政宗さんの手を取って、フロアの中央へ
誰もが、私と政宗さんに視線を向けていた
「……緊張してるな」
「さすがに……します」
「大丈夫だ、今のお前なら」
音楽が流れて、政宗さんの手が腰を支える
伊達家の名に恥じない立ち振る舞いをしなきゃ
政宗さんのリードに合わせてステップを踏む
……と、不意に政宗さんが私の耳元に顔を寄せた
「余計なことは考えるな
俺との時間を楽しむことだけ考えろ」
「え……」
「出来るな?」
「……はい」
自分に余計なプレッシャーを与えるなという事だろう
ふっと肩の力が抜けると、政宗さんも満足そうに口の端を持ち上げた
「good.」
ちらりと横を盗み見ると、成実は今まで見たこともないような甘い微笑みを浮かべて、登勢をリードしていた
幸せそうで……羨ましいくらい
「……よそ見とはいい度胸だな?」
「そ、そんなつもりは……」
「お前は俺だけ見てろ」
ぐっと腰を引き寄せられて、開いてしまっていた間が埋まる
政宗さんを見上げると、独眼が私を見つめていた
「……それでいい」
「政宗さん……」
「So beautiful.
今のお前は、どこに出しても恥ずかしくない、自慢の俺の嫁だ」
最上級の褒め言葉が飛び出てきて、私の頬が熱を持つ
「私、ちょっとは政宗さんに追い付けました?」
「なんだそいつは?
俺はお前が後れを取ってるとも、お前に先を越されたとも思っちゃいねぇんだが」
「……え?」
「お前はお前のままでいい
変に気負うな、本質を忘れるな
お前はお前らしく、俺の隣で笑ってくれりゃそれでいい」
「でも……」
「自信を持て
お前は、お前が思ってるより随分、ちゃんと伊達家に相応しい奴だ」
……自己評価が低すぎるのは、何となく分かっていた
政宗さんに不釣り合いなんじゃないか、もっと自分を変えなきゃ駄目なんじゃないか
いつか政宗さんに「要らない」と言われる日が来ないか、不安だった
だから自分を変えようと必死だった
誰からも見捨てられないように
こんな私を好きになってくれた政宗さんに、迷惑だけはかけられなかった
「……私、政宗さんのお役に立ってますか?」
足手まといにだけは、なりたくなかった
そんな私を、政宗さんは
「……ああ、とびっきりな」
初めて見るような、真綿のように優しくて、蜂蜜のように甘い──そんな微笑みと共に、背中を押してくれた
その瞬間
私の中でずっと張り詰めていた一本の糸が、ぷつりと断ち切られる感覚があって
不意に浮かんだのは、「気負いすぎんなよ」という、成実の言葉だった
あぁ、そっか、私ってば頑張りすぎてたんだなぁ
早く政宗さんと同じ景色を見なきゃって、一人で焦ってたのかな
でも、私は忘れていた
同じ景色なんて、見られるはずがない
だって私は政宗さんじゃないから
そもそも立つべき場所も違うのに、同じ景色なんて見えるわけが無い
私が見るべきは、彼の背中
歩みを止めずに進み続ける彼が、道を間違えそうになった時、正しい道へ促す役目
そして、立ち止まりそうになった時、その背中を押すのが、私のやるべき事
だから、私は信じるだけだ
「政宗さん、私、ようやく分かりました」
「何がだ?」
「私、政宗さんの背中を信じてついて行きます」
「………」
「小十郎さんが露払いをするのなら……成実と綱元先輩が道を均すのなら
私は、政宗さんの背中について行くだけです
政宗さんが道を間違えないように……立ち止まった時、ちゃんと背中を押せるように
何が正しい道なのか、見極められるようになります」
これが、今の私に求められる答え
伊達政宗の妻としての、私の答えだ