09 いざパーティへ
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さて、ゆっくりする時間もそこそこに、私たちは本邸へと向かった
義弟の政道くんの仏壇に手を合わせて、政宗さんと顔を出したのは、お義父さんの書斎でもなければ、お義母さんのお部屋でもなく
「お待ちしておりましたわ、政宗様、夕歌様」
「Long time no see.
元気にしてるようじゃねぇか、喜多?」
私のマナー講師役の喜多先生がいる、広間だった
その隣には、お馴染みの白石さんと留守さんが
「ドレスがこちらでございます」
「わ……すごい、素敵……!」
手渡されたドレスは、いつかの政宗さんを彷彿とさせる、マリンブルーのドレス
ドレスとは言っても、ウェディングドレスのような大袈裟なものではなくて、パーティドレスが少しだけ豪華になった程度
腰元のバックリボンが可愛らしいのに、Aラインの作りをしているおかげで、エレガントなイメージでスッキリと整っている
「採寸に問題は無いとは思いますが、念の為、あちらで着替えていただけますか?
衝立をご用意しておりますので」
「はい、分かりました」
「坊ちゃんも、スーツの最終チェックを」
「俺もか?」
「坊ちゃんもっス」
「ハァ……分かった、着替えてくる」
留守さんが政宗さんの背中を押しながら、私に向かってウインクを飛ばす
首を傾げると、隣で喜多先生がクスッと笑った
「政宗様にお綺麗な姿をお見せするのは、夜でも宜しいかと」
「えっ?
あ、あー、なるほど」
政宗さんに見せないためか……
確かに、ここにいたら絶対に見せろって言うだろうしな……
衝立の向こうに入って、服を脱ぐ
ドレスに腕を通して、背中のファスナーを喜多さんに上げてもらった
「きつい所はございますか?」
「無いです」
「スカートの丈も丁度良いですね
補正の必要はなさそうでございます」
私と目を合わせた喜多先生が、そう言って立ち上がった
それから私の手をそっと握って
「夕歌様」
「はい?」
瞬間、なにか迷ったように視線を泳がせた喜多先生は、笑って首を振った
「いいえ、なんでもございません
自信をお持ちください
今の夕歌様は、どこに出しても恥ずかしくない、立派な若奥様です」
「は、はい!
ありがとうございます!」
ドレスを脱ぐように言われて、再び衝立の向こうへと戻る
喜多先生が本当に言いたかったことは、一体何だったんだろう
* * *
「──話が違うじゃねぇか!?」
ダン、とテーブルを叩いて、目の前の男を睨む
ついでに俺の手の中にある招待客リストが潰れた
「表明があったのは、つい昨日のようです
それまで一貫して不参加を通していたのが、急に出席されることとなったようで」
「Shit!
あの野郎、どこまで夕歌を──!」
「我々が会場内まで同行できぬことを知ってのことかと」
藤野佳宏の、突然の参加表明──
あの野郎の不参加が決まっていたからこそ、俺たちはこのpartyを夕歌の社交界デビューとして位置付けた
「今更こっちが不参加にする訳にもいかねぇ……
最悪だ──」
夕歌が藤野の出である以上、あの野郎の私怨がどうであろうと、挨拶をしない訳にはいかない
まさかあの男も、人目が多い場所で自らの品位を落とすようなことはしないだろう──というのは、希望的観測だろうか
「救いなのは、成実と亘理の令嬢も招待されてるってことか……
こうなると分かってりゃ、このpartyは見逃したんだがな……」
苛立ちだけが先行して、前髪を掻き上げる
考えろ
俺に出来ることは何だ?
「……政宗様」
「なんだ」
「再三の申し出になりますが、怒りを覚えた時こそ冷静になられよ
なってしまったことはどうにもなりませぬ」
「分かってる、だから俺に出来ることを探して──」
「恐らく、夕歌にとっては、政宗様が隣におられるだけで充分かと」
「……Ah?」
意味が分からずに、問い返す
夕歌の隣にいるなんざ、そんなもんは当たり前だ
その上で、アイツを支えるために……
「……いや……そう、そういうことか」
小十郎の言わんとしたことが分かって、別の意味で溜息が漏れた
この問題は、夕歌があの野郎に立ち向かわなければ解決しない
俺が出たところで、根本的な解決にはならない
……が、アイツが面と向かって立ち向かえるだけの勇気を出すのなら、その手助けくらいはできる
歯痒いが──俺に出来るのは、それしかない
義弟の政道くんの仏壇に手を合わせて、政宗さんと顔を出したのは、お義父さんの書斎でもなければ、お義母さんのお部屋でもなく
「お待ちしておりましたわ、政宗様、夕歌様」
「Long time no see.
元気にしてるようじゃねぇか、喜多?」
私のマナー講師役の喜多先生がいる、広間だった
その隣には、お馴染みの白石さんと留守さんが
「ドレスがこちらでございます」
「わ……すごい、素敵……!」
手渡されたドレスは、いつかの政宗さんを彷彿とさせる、マリンブルーのドレス
ドレスとは言っても、ウェディングドレスのような大袈裟なものではなくて、パーティドレスが少しだけ豪華になった程度
腰元のバックリボンが可愛らしいのに、Aラインの作りをしているおかげで、エレガントなイメージでスッキリと整っている
「採寸に問題は無いとは思いますが、念の為、あちらで着替えていただけますか?
衝立をご用意しておりますので」
「はい、分かりました」
「坊ちゃんも、スーツの最終チェックを」
「俺もか?」
「坊ちゃんもっス」
「ハァ……分かった、着替えてくる」
留守さんが政宗さんの背中を押しながら、私に向かってウインクを飛ばす
首を傾げると、隣で喜多先生がクスッと笑った
「政宗様にお綺麗な姿をお見せするのは、夜でも宜しいかと」
「えっ?
あ、あー、なるほど」
政宗さんに見せないためか……
確かに、ここにいたら絶対に見せろって言うだろうしな……
衝立の向こうに入って、服を脱ぐ
ドレスに腕を通して、背中のファスナーを喜多さんに上げてもらった
「きつい所はございますか?」
「無いです」
「スカートの丈も丁度良いですね
補正の必要はなさそうでございます」
私と目を合わせた喜多先生が、そう言って立ち上がった
それから私の手をそっと握って
「夕歌様」
「はい?」
瞬間、なにか迷ったように視線を泳がせた喜多先生は、笑って首を振った
「いいえ、なんでもございません
自信をお持ちください
今の夕歌様は、どこに出しても恥ずかしくない、立派な若奥様です」
「は、はい!
ありがとうございます!」
ドレスを脱ぐように言われて、再び衝立の向こうへと戻る
喜多先生が本当に言いたかったことは、一体何だったんだろう
* * *
「──話が違うじゃねぇか!?」
ダン、とテーブルを叩いて、目の前の男を睨む
ついでに俺の手の中にある招待客リストが潰れた
「表明があったのは、つい昨日のようです
それまで一貫して不参加を通していたのが、急に出席されることとなったようで」
「Shit!
あの野郎、どこまで夕歌を──!」
「我々が会場内まで同行できぬことを知ってのことかと」
藤野佳宏の、突然の参加表明──
あの野郎の不参加が決まっていたからこそ、俺たちはこのpartyを夕歌の社交界デビューとして位置付けた
「今更こっちが不参加にする訳にもいかねぇ……
最悪だ──」
夕歌が藤野の出である以上、あの野郎の私怨がどうであろうと、挨拶をしない訳にはいかない
まさかあの男も、人目が多い場所で自らの品位を落とすようなことはしないだろう──というのは、希望的観測だろうか
「救いなのは、成実と亘理の令嬢も招待されてるってことか……
こうなると分かってりゃ、このpartyは見逃したんだがな……」
苛立ちだけが先行して、前髪を掻き上げる
考えろ
俺に出来ることは何だ?
「……政宗様」
「なんだ」
「再三の申し出になりますが、怒りを覚えた時こそ冷静になられよ
なってしまったことはどうにもなりませぬ」
「分かってる、だから俺に出来ることを探して──」
「恐らく、夕歌にとっては、政宗様が隣におられるだけで充分かと」
「……Ah?」
意味が分からずに、問い返す
夕歌の隣にいるなんざ、そんなもんは当たり前だ
その上で、アイツを支えるために……
「……いや……そう、そういうことか」
小十郎の言わんとしたことが分かって、別の意味で溜息が漏れた
この問題は、夕歌があの野郎に立ち向かわなければ解決しない
俺が出たところで、根本的な解決にはならない
……が、アイツが面と向かって立ち向かえるだけの勇気を出すのなら、その手助けくらいはできる
歯痒いが──俺に出来るのは、それしかない