08 宵の宴に
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地獄のレッスンが始まって、早三十分──
「テメェッ、斎藤!!
俺の足に穴空けてぇのか!!」
「うわぁぁぁ!?
すみませんっ、あの、本当にわざとじゃないんです!!」
「はぁ……わざとならば、それはもはや恨みの域だぞ、夕歌……」
文字通りの大苦戦に大波乱、何度片倉先生の足を踏んでしまったか分からない
とうとう綱元先輩が顔を手で覆って、溜息をついてしまわれた
「……竹中の野郎、この状態からよくあのレベルまで持ち上げられたな……」
「なんだろう、竹中先輩の株だけが上がっていく……」
「むしろ、なぜお前の株が上がると思ったんだ?」
「おっしゃる通りで!!」
うう、と肩を落としていると、壁にもたれかかって眺めていたかすがが、これまた溜息と共にこちらへ歩いてきた
かと思うと、かすがは片倉先生の腕を掴み
「どけ、竜の右目」
「アァ?」
「お前を夕歌の練習相手にするには、体格差がありすぎる
せめて、まずは鬼庭との練習から始めるべきだろう」
私の手を取ったかすがが、フロアの中央へと誘う
か、かすがが練習相手になってくれるというのか!?
「かすが、男性パート踊れるの?」
「問題ない
任務の中には、男装してパーティに潜入するようなものもあるからな
男性パートも踊れるよう訓練している」
鬼庭、とかすがが綱元先輩に声を掛けると、綱元先輩がレッスン用の曲を最初から再生した
片倉先生と練習してきたステップ──のはずなのに、体格差や身長差が縮まったせいか、踊りやすさが桁違いだ
もちろん足を一度も踏むことなく、一曲を踊り通せた
「おっ……踊れた……!?」
「まったく、いきなり上級者と練習などするからだぞ
成実程度ここに呼べず、どうするというんだ」
「成実ってどこに行ってもヒエラルキーの底辺だな……」
可哀想に……と、まったく思ってもいないことを呟く
生憎だが、私はお前の上を行ってみせるぞ、成実!
「……お前なぁ、微塵も思ってねぇのバレッバレだぞ、夕歌」
「えっ、うぇぇぁあ!?
し、成実!?」
突然降って湧いた声に驚けば、なんとそこには伊達成実ご本人が
それもしっかりトレーニングウェアだった
「登勢以外の女と踊るなんて、私の頼みでも無理なんじゃなかったのかー?」
「気が変わったんだよ、っせーな
大体、それもこれもかすがが……」
「私が……なんだ?」
「かすがさんたっての頼みとあれば、断れねぇなーって思いまして!!」
「成実、あんた、かすがに弱みでも握られてんの?」
「概ねそれに近い」
「こいつの弱みなど、探さずとも見つかるぞ
弱点をぶら下げて歩いているようなものだからな」
「それを粗探しっつぅんだと思うんだけどな、俺は!!」
かすがが握りしめている成実の弱点が気になる
一体どんなものをチラつかせたら、ここまで素直に言うことを聞くのか
「しっかし、いきなりこじゅ兄と踊るとか、数段飛ばしにも程があんぞ
なんで踊ってやらなかったんだよ、綱元?」
「婚約者以外の女と踊るのは御免被るんでな」
「オメーも大概、人のこと言えねーからな!!!」
外側から檄を飛ばすなぁと思っていたら、成程そういう事だったんですね
かすがの言葉の通りなら、間違いなく綱元先輩が相手になった方が上達しただろうに
「ま、これも梵のためだ
登勢にはちゃーんと許可も貰ってるから、この俺がきっちり付き合ってやるよ」
「……成実が?」
「なんだその疑いの目は!
俺だってこう見えても社交は一通りこなせるんだからな!?」
「わ、分かってるよ!
後夜祭のダンスパーティーで見てるもん!」
かすがからバトンタッチした成実が私の手を取る
そして私の腰に手を回して──
「一回、ちょっとだけ盛大に笑っていいか?」
「私とかすがにタコ殴りにされたいならいいよ」
「ごめん嘘です、さすがの俺も命が惜しい」
こうやって間近で見ると、成実もかなり整った顔してるなぁ
モテるだろうなぁ、羨ましい
「こら、背中曲がってる」
「はい!」
「表情が硬ぇ、ちゃんとリードしてやるから、相手にもう少し委ねろ」
「はい!!」
「本当に分かってるか?」
「う……」
溜息をついた成実が、私をクルリとターンさせる
確かにリードが上手いし、すごく踊りやすい
「……負けない!」
「何と張り合ってんだよ、お前は」
また溜息をついた成実だけど、口調とは裏腹にリードする手は優しい
不覚のようにドキリとしてしまって、慌てて意識をステップに集中させた
曲が終わって、ポーズをとる
かと思いきや、成実に急に肩を抱かれ
「さて、あとは真打ちに鍛えてもらえ」
「へっ?
──うわっ!!」
背中を押されてつんのめると、誰かに優しく抱き止められる
ふわりと漂った香りに、ハッとして顔を上げると
「Sorry to keep you waiting ,honey?」
「……政宗さん……!」
軽いリップ音と共に額にキスが落ちる
私が追い付きたいと願う相手──伊達政宗その人が、私の目の前に立っていた
自分でも、気分が浮き足立つのが分かる
手を煩わせてしまうのは申し訳ないけど、この人の登場を待ち望む私がいたようで
今なら二時間連続で踊れと言われても、笑顔で頷ける気がした
「テメェッ、斎藤!!
俺の足に穴空けてぇのか!!」
「うわぁぁぁ!?
すみませんっ、あの、本当にわざとじゃないんです!!」
「はぁ……わざとならば、それはもはや恨みの域だぞ、夕歌……」
文字通りの大苦戦に大波乱、何度片倉先生の足を踏んでしまったか分からない
とうとう綱元先輩が顔を手で覆って、溜息をついてしまわれた
「……竹中の野郎、この状態からよくあのレベルまで持ち上げられたな……」
「なんだろう、竹中先輩の株だけが上がっていく……」
「むしろ、なぜお前の株が上がると思ったんだ?」
「おっしゃる通りで!!」
うう、と肩を落としていると、壁にもたれかかって眺めていたかすがが、これまた溜息と共にこちらへ歩いてきた
かと思うと、かすがは片倉先生の腕を掴み
「どけ、竜の右目」
「アァ?」
「お前を夕歌の練習相手にするには、体格差がありすぎる
せめて、まずは鬼庭との練習から始めるべきだろう」
私の手を取ったかすがが、フロアの中央へと誘う
か、かすがが練習相手になってくれるというのか!?
「かすが、男性パート踊れるの?」
「問題ない
任務の中には、男装してパーティに潜入するようなものもあるからな
男性パートも踊れるよう訓練している」
鬼庭、とかすがが綱元先輩に声を掛けると、綱元先輩がレッスン用の曲を最初から再生した
片倉先生と練習してきたステップ──のはずなのに、体格差や身長差が縮まったせいか、踊りやすさが桁違いだ
もちろん足を一度も踏むことなく、一曲を踊り通せた
「おっ……踊れた……!?」
「まったく、いきなり上級者と練習などするからだぞ
成実程度ここに呼べず、どうするというんだ」
「成実ってどこに行ってもヒエラルキーの底辺だな……」
可哀想に……と、まったく思ってもいないことを呟く
生憎だが、私はお前の上を行ってみせるぞ、成実!
「……お前なぁ、微塵も思ってねぇのバレッバレだぞ、夕歌」
「えっ、うぇぇぁあ!?
し、成実!?」
突然降って湧いた声に驚けば、なんとそこには伊達成実ご本人が
それもしっかりトレーニングウェアだった
「登勢以外の女と踊るなんて、私の頼みでも無理なんじゃなかったのかー?」
「気が変わったんだよ、っせーな
大体、それもこれもかすがが……」
「私が……なんだ?」
「かすがさんたっての頼みとあれば、断れねぇなーって思いまして!!」
「成実、あんた、かすがに弱みでも握られてんの?」
「概ねそれに近い」
「こいつの弱みなど、探さずとも見つかるぞ
弱点をぶら下げて歩いているようなものだからな」
「それを粗探しっつぅんだと思うんだけどな、俺は!!」
かすがが握りしめている成実の弱点が気になる
一体どんなものをチラつかせたら、ここまで素直に言うことを聞くのか
「しっかし、いきなりこじゅ兄と踊るとか、数段飛ばしにも程があんぞ
なんで踊ってやらなかったんだよ、綱元?」
「婚約者以外の女と踊るのは御免被るんでな」
「オメーも大概、人のこと言えねーからな!!!」
外側から檄を飛ばすなぁと思っていたら、成程そういう事だったんですね
かすがの言葉の通りなら、間違いなく綱元先輩が相手になった方が上達しただろうに
「ま、これも梵のためだ
登勢にはちゃーんと許可も貰ってるから、この俺がきっちり付き合ってやるよ」
「……成実が?」
「なんだその疑いの目は!
俺だってこう見えても社交は一通りこなせるんだからな!?」
「わ、分かってるよ!
後夜祭のダンスパーティーで見てるもん!」
かすがからバトンタッチした成実が私の手を取る
そして私の腰に手を回して──
「一回、ちょっとだけ盛大に笑っていいか?」
「私とかすがにタコ殴りにされたいならいいよ」
「ごめん嘘です、さすがの俺も命が惜しい」
こうやって間近で見ると、成実もかなり整った顔してるなぁ
モテるだろうなぁ、羨ましい
「こら、背中曲がってる」
「はい!」
「表情が硬ぇ、ちゃんとリードしてやるから、相手にもう少し委ねろ」
「はい!!」
「本当に分かってるか?」
「う……」
溜息をついた成実が、私をクルリとターンさせる
確かにリードが上手いし、すごく踊りやすい
「……負けない!」
「何と張り合ってんだよ、お前は」
また溜息をついた成実だけど、口調とは裏腹にリードする手は優しい
不覚のようにドキリとしてしまって、慌てて意識をステップに集中させた
曲が終わって、ポーズをとる
かと思いきや、成実に急に肩を抱かれ
「さて、あとは真打ちに鍛えてもらえ」
「へっ?
──うわっ!!」
背中を押されてつんのめると、誰かに優しく抱き止められる
ふわりと漂った香りに、ハッとして顔を上げると
「
「……政宗さん……!」
軽いリップ音と共に額にキスが落ちる
私が追い付きたいと願う相手──伊達政宗その人が、私の目の前に立っていた
自分でも、気分が浮き足立つのが分かる
手を煩わせてしまうのは申し訳ないけど、この人の登場を待ち望む私がいたようで
今なら二時間連続で踊れと言われても、笑顔で頷ける気がした
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