08 宵の宴に
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──そして、来たる翌日
師範に鍛えられてヘトヘトの身体で、連れてこられたのは、とあるダンススタジオ
「失礼しまーす……」
動きやすいトレーニングウェアに着替えて指定されたスタジオに入ると
「よぅ、待ってたぜ」
「……片倉先生?」
そこには、同じくトレーニングウェアに身を包んだ、かつての顧問が立っていた
……おかしいな、今からダンスの練習のはずなんだけどな
「すみませんスタジオ間違えました」
「残念だが合ってるな」
「先生、ここ学院じゃないですよ」
「テメェは俺を馬鹿にしてやがんのか」
更に背後のドアが開いて、「お待たせしました」と聞き慣れた声が聞こえてきた
「つ……なもと、先輩……!?」
「さすが夕歌、時間ピッタリだな、と褒めてやろうとしたというのに、なんだその顔は?
言いたいことがあるなら聞いてやろう、ん?」
綱元先輩が、いつもの爽やかな笑顔でそう言い放つ
私はスゥ、と息を吸って
「嘘だ!!!」
「どこへ行こうとしてやがる、おい綱元」
「はっ」
綱元先輩が、苗字に違わぬ鬼のような速さで私の襟首を捕まえる
遠慮なしに引っ張られたせいで、思いっきり首に食い込んで「ぐぇ」なんて声が漏れた
「慈悲がない!!!」
「アァ?
テメェ相手にそんなもん必要ねぇだろうが」
「仮にも主の妻になんてことを!!」
「おっと、そんな大口は一人前に社交をこなせるようになってから言うんだな、夕歌?」
「イヤァァァ助けて誰かー!!」
「私を呼んだか、夕歌!?」
「かすがはどこから出てきたァ!!?」
「手出しは無用だぜ、春日山」
「往生際が悪いぞ、夕歌
腹を括れと政宗様に言われていただろう?」
「考えうる限りで最悪のコーチじゃないですか!!
成実とか原田さんとかじゃ駄目だったんですか!?」
「成実は『登勢以外の女と踊るとか、夕歌の頼みでも無理』、原田は嫁さんの出産に立ち会ってる頃だ」
「原田さんおめでとうございます!!
成実は明日を覚えとけー!!」
「夕歌……その、頑張れ」
「かすがにまで諦められた!!」
なんてことだ、親友まで向こう側だった
この場における味方はゼロか、四面楚歌もいい加減にしろ
「……ていうか、政宗さんはどうしたんですか」
「なんだ、夕歌は聞いていなかったのか?
政宗様なら、今夜は輝宗様に同行して、取引先との会合だ」
「……え、今ですか?」
あれだけのハードな練習を終えて、更に取引先との話し合い?
体力は向こうの方がタフだとか、そんなものは言い訳にさえならない
立っている場所が──見ている景色が、圧倒的に違う
「……すみません、駄々をこねました
稽古、お願いします」
「どうした?
急にやる気になったな」
「政宗さんの隣に立つには、血を吐くまで……吐いても努力しないと、到底無理だって分かりました」
今の私では、到底、政宗さんの隣に立つことなんて出来ない
せめて、政宗さんが恥ずかしくないような……伊達の人間として、表に出ても恥ずかしくないような、そんなレベルまで到達しないと
「……いい心掛けだ、気合いだけは褒めてやる」
「よろしくお願いします、片倉先生!」
「夕歌……忘れているようだから言っておくが、小十郎様は師範の息子だからな」
「……あっ」
綱元先輩の一言で、「現実」の二文字が目の前に迫ってきた
そう……そうだ……春先のあの日を忘れていた……!
片倉先生のお父様は……師範だ……!!
「それがどうした?」
「コーチ役チェンジで!!」
「残念ながら定数ギリギリだ、諦めろ夕歌」
「控えもいないコーチ陣なんて!!」
「普通はコーチに控えなんざいねぇだろうがな」
「正論は今いらないです!!」
「オラ、グダグダ言ってねぇで、さっさと始めるぞ
俺もこの後に予定があるんだからな」
「えっそうなんですか」
「政宗様のためにお夜食を用意して差し上げねぇといけねぇだろうが」
「この主バカ!!
盲目じゃない分、余計に厄介なことで!!」
──ごちゃごちゃうるせぇ、と一蹴された
悲しい、あまりにも私の立場が低すぎる
これじゃあ成実と扱いが同格じゃないか、と考えて、なんとはなしに危機感が芽生えた
このまま成実ポジションに落ち着いてたまるか、せめて原田さんのところまで上りたいぞ!
ヒエラルキーの最底辺は成実だけで十分だ!!
こうして、義兄弟による鬼の指導が幕を開けた──
師範に鍛えられてヘトヘトの身体で、連れてこられたのは、とあるダンススタジオ
「失礼しまーす……」
動きやすいトレーニングウェアに着替えて指定されたスタジオに入ると
「よぅ、待ってたぜ」
「……片倉先生?」
そこには、同じくトレーニングウェアに身を包んだ、かつての顧問が立っていた
……おかしいな、今からダンスの練習のはずなんだけどな
「すみませんスタジオ間違えました」
「残念だが合ってるな」
「先生、ここ学院じゃないですよ」
「テメェは俺を馬鹿にしてやがんのか」
更に背後のドアが開いて、「お待たせしました」と聞き慣れた声が聞こえてきた
「つ……なもと、先輩……!?」
「さすが夕歌、時間ピッタリだな、と褒めてやろうとしたというのに、なんだその顔は?
言いたいことがあるなら聞いてやろう、ん?」
綱元先輩が、いつもの爽やかな笑顔でそう言い放つ
私はスゥ、と息を吸って
「嘘だ!!!」
「どこへ行こうとしてやがる、おい綱元」
「はっ」
綱元先輩が、苗字に違わぬ鬼のような速さで私の襟首を捕まえる
遠慮なしに引っ張られたせいで、思いっきり首に食い込んで「ぐぇ」なんて声が漏れた
「慈悲がない!!!」
「アァ?
テメェ相手にそんなもん必要ねぇだろうが」
「仮にも主の妻になんてことを!!」
「おっと、そんな大口は一人前に社交をこなせるようになってから言うんだな、夕歌?」
「イヤァァァ助けて誰かー!!」
「私を呼んだか、夕歌!?」
「かすがはどこから出てきたァ!!?」
「手出しは無用だぜ、春日山」
「往生際が悪いぞ、夕歌
腹を括れと政宗様に言われていただろう?」
「考えうる限りで最悪のコーチじゃないですか!!
成実とか原田さんとかじゃ駄目だったんですか!?」
「成実は『登勢以外の女と踊るとか、夕歌の頼みでも無理』、原田は嫁さんの出産に立ち会ってる頃だ」
「原田さんおめでとうございます!!
成実は明日を覚えとけー!!」
「夕歌……その、頑張れ」
「かすがにまで諦められた!!」
なんてことだ、親友まで向こう側だった
この場における味方はゼロか、四面楚歌もいい加減にしろ
「……ていうか、政宗さんはどうしたんですか」
「なんだ、夕歌は聞いていなかったのか?
政宗様なら、今夜は輝宗様に同行して、取引先との会合だ」
「……え、今ですか?」
あれだけのハードな練習を終えて、更に取引先との話し合い?
体力は向こうの方がタフだとか、そんなものは言い訳にさえならない
立っている場所が──見ている景色が、圧倒的に違う
「……すみません、駄々をこねました
稽古、お願いします」
「どうした?
急にやる気になったな」
「政宗さんの隣に立つには、血を吐くまで……吐いても努力しないと、到底無理だって分かりました」
今の私では、到底、政宗さんの隣に立つことなんて出来ない
せめて、政宗さんが恥ずかしくないような……伊達の人間として、表に出ても恥ずかしくないような、そんなレベルまで到達しないと
「……いい心掛けだ、気合いだけは褒めてやる」
「よろしくお願いします、片倉先生!」
「夕歌……忘れているようだから言っておくが、小十郎様は師範の息子だからな」
「……あっ」
綱元先輩の一言で、「現実」の二文字が目の前に迫ってきた
そう……そうだ……春先のあの日を忘れていた……!
片倉先生のお父様は……師範だ……!!
「それがどうした?」
「コーチ役チェンジで!!」
「残念ながら定数ギリギリだ、諦めろ夕歌」
「控えもいないコーチ陣なんて!!」
「普通はコーチに控えなんざいねぇだろうがな」
「正論は今いらないです!!」
「オラ、グダグダ言ってねぇで、さっさと始めるぞ
俺もこの後に予定があるんだからな」
「えっそうなんですか」
「政宗様のためにお夜食を用意して差し上げねぇといけねぇだろうが」
「この主バカ!!
盲目じゃない分、余計に厄介なことで!!」
──ごちゃごちゃうるせぇ、と一蹴された
悲しい、あまりにも私の立場が低すぎる
これじゃあ成実と扱いが同格じゃないか、と考えて、なんとはなしに危機感が芽生えた
このまま成実ポジションに落ち着いてたまるか、せめて原田さんのところまで上りたいぞ!
ヒエラルキーの最底辺は成実だけで十分だ!!
こうして、義兄弟による鬼の指導が幕を開けた──