07 絶望又は希望
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──夕歌、と呼ぶ声が聞こえた
目を開けると……そこはまだ夜で
隣で私を見つめる政宗さんの瞳で、また魘されていたのだと分かった
「……ごめんなさい」
「Are you OK?」
「大丈夫です……ごめんなさい
ちょっとお水、飲んできます」
寝室を出て、廊下に出る
昨日、本邸からそのまま私たちは伊達の別邸に帰った
少しでも人数が多い方が、私の気も紛れるだろう、という配慮だ
リビングに降りると、そこからは明かりが漏れていた
「……お」
そこに居たのは成実で、私を見るとニカッと笑って手招きした
「なに?」
「魔王様の貴重な寝顔」
ひょいっとソファを覗き込むと、そこには綱元先輩が横になって眠っていた
……こうしてみると、本当に爽やかな好青年なんだけどな
「どした?
眠れなかった?」
「……ちょっと、魘されたみたいで
政宗さんに起こされた」
「そっか、なんか飲む?
眠れないってんなら、ホットミルクがお勧め」
「じゃあそれで
……なんか、成実が優しいと調子狂うな」
「普通に失礼じゃねぇかよ
あのなぁ、俺だって、お前のことはこれでも大事な親友だって思ってんだぞ?」
「あはは、分かってるよ
ありがとう」
成実がホットミルクを作って、ハチミツを混ぜてくれた
それを一口飲んで、染み渡る温かさにほっと息が漏れた
「……弱くなっちゃったかなぁ」
「なにが」
「昔なら、あんな拒絶されたって、何ともなかったのに……
耐えられるって思ったんだけどなぁ……」
「……優しさを知ると、弱くなるって思うんだ」
自分の分のホットミルクに口をつけて、成実がそう呟く
「今までだったら耐えられたことにも、耐えられなくなるんだ
でも……それでいいんじゃねぇの?」
「え……」
「ずーっと耐え続けて、ふとした瞬間にお前がぽっきり折れちまうより、よっぽどいいよ
そうやって折れたら、もう元には戻らねぇから」
……成実は、その一歩手前までいってしまった
私があと少しでも遅ければ、成実は死んでいた──いつか、こっそり留守さんから教えられたことだった
「輝宗様がお前の面倒見るって言ってくれたんだろ?」
「うん……」
「だったら安心しろよ
いくら藤野ったって、そう簡単には伊達に手出しもできやしねぇからな」
「そうなの?」
「お前なぁ、自分の立場を考えてもみろよ?
伊達家の次期当主の妻を拒絶したってだけでも、うちに宣戦布告したようなモンだぞ?
……正直に言っちゃあ悪いが、潰し合いになった時、粘れるのはうちのほうだ
藤野は、勢いと若さはうちよりあるかもしれねぇけど……基盤が違う」
基盤?と首を傾げる
「伊達に長く続いてる会社じゃねぇからな、うちは」
「そんなに長いんだ?」
「梵が十七代社長になる予定
少なくとも百五十年は超えてるぞ、うちは」
「そうなの!?
藤野は?」
「六十……もうすぐ七十年かな?」
「半分だ……」
「だろ?
伊達に老舗やってねぇってこった、どーんと構えとけって」
ぽん、と背中を叩かれて、うん、と頷く
伊達家が私の面倒を見てくれると言ってくれた、ならば私はその恩に報いるべきだ
そして、現状、私がその恩に報いる唯一の方法は、政宗さんの隣で彼を支え続けることだろう
「……ありがとう、成実
私、頑張るよ、伊達家の一員として」
「あんまり気負いすぎんなよ?
お前は十分、頑張ってるからさ」
「……どうしたの、本当に
すっごく優しいじゃん、登勢と喧嘩した?」
「しーてーまーせーんー
登勢とは現在進行形で仲良くやってるから、余計なお世話ですー
そうじゃなくて、まぁほら……なんだ、俺もお前に救われた人間の一人だからさ」
「……?」
一人、つまり成実以外にも、私に救われたらしい人がいる
残念ながら私はマリア様やメサイアではないので、本当に人を救ったりは出来ないんだけど
……確かに、持て囃され方はそれに近いけども
「やっぱり自覚なかったんだな、まぁお前らしいか
誰かとまでは言わないけど、結構お前に救われた奴は多いんだからな
だから……ま、今度は俺達が、お前を救う番だってわけだ」
「そんな大げさな……
こうやって気に掛けてくれるだけでも嬉しいよ」
「はいはい、そうやってお前は遠慮するからな
遠慮なく好き勝手にやらせてもらうから、気にすんな
何年お前と一緒につるんできたと思ってんだよ、ばーか」
成実のぶっきらぼうな言葉でも嬉しくて、自然と口元が緩んだのに気付いた
成実が大丈夫って言うんだ、きっと大丈夫だろう
伊達家の皆と……政宗さんを信じていけば、必ず──
目を開けると……そこはまだ夜で
隣で私を見つめる政宗さんの瞳で、また魘されていたのだと分かった
「……ごめんなさい」
「Are you OK?」
「大丈夫です……ごめんなさい
ちょっとお水、飲んできます」
寝室を出て、廊下に出る
昨日、本邸からそのまま私たちは伊達の別邸に帰った
少しでも人数が多い方が、私の気も紛れるだろう、という配慮だ
リビングに降りると、そこからは明かりが漏れていた
「……お」
そこに居たのは成実で、私を見るとニカッと笑って手招きした
「なに?」
「魔王様の貴重な寝顔」
ひょいっとソファを覗き込むと、そこには綱元先輩が横になって眠っていた
……こうしてみると、本当に爽やかな好青年なんだけどな
「どした?
眠れなかった?」
「……ちょっと、魘されたみたいで
政宗さんに起こされた」
「そっか、なんか飲む?
眠れないってんなら、ホットミルクがお勧め」
「じゃあそれで
……なんか、成実が優しいと調子狂うな」
「普通に失礼じゃねぇかよ
あのなぁ、俺だって、お前のことはこれでも大事な親友だって思ってんだぞ?」
「あはは、分かってるよ
ありがとう」
成実がホットミルクを作って、ハチミツを混ぜてくれた
それを一口飲んで、染み渡る温かさにほっと息が漏れた
「……弱くなっちゃったかなぁ」
「なにが」
「昔なら、あんな拒絶されたって、何ともなかったのに……
耐えられるって思ったんだけどなぁ……」
「……優しさを知ると、弱くなるって思うんだ」
自分の分のホットミルクに口をつけて、成実がそう呟く
「今までだったら耐えられたことにも、耐えられなくなるんだ
でも……それでいいんじゃねぇの?」
「え……」
「ずーっと耐え続けて、ふとした瞬間にお前がぽっきり折れちまうより、よっぽどいいよ
そうやって折れたら、もう元には戻らねぇから」
……成実は、その一歩手前までいってしまった
私があと少しでも遅ければ、成実は死んでいた──いつか、こっそり留守さんから教えられたことだった
「輝宗様がお前の面倒見るって言ってくれたんだろ?」
「うん……」
「だったら安心しろよ
いくら藤野ったって、そう簡単には伊達に手出しもできやしねぇからな」
「そうなの?」
「お前なぁ、自分の立場を考えてもみろよ?
伊達家の次期当主の妻を拒絶したってだけでも、うちに宣戦布告したようなモンだぞ?
……正直に言っちゃあ悪いが、潰し合いになった時、粘れるのはうちのほうだ
藤野は、勢いと若さはうちよりあるかもしれねぇけど……基盤が違う」
基盤?と首を傾げる
「伊達に長く続いてる会社じゃねぇからな、うちは」
「そんなに長いんだ?」
「梵が十七代社長になる予定
少なくとも百五十年は超えてるぞ、うちは」
「そうなの!?
藤野は?」
「六十……もうすぐ七十年かな?」
「半分だ……」
「だろ?
伊達に老舗やってねぇってこった、どーんと構えとけって」
ぽん、と背中を叩かれて、うん、と頷く
伊達家が私の面倒を見てくれると言ってくれた、ならば私はその恩に報いるべきだ
そして、現状、私がその恩に報いる唯一の方法は、政宗さんの隣で彼を支え続けることだろう
「……ありがとう、成実
私、頑張るよ、伊達家の一員として」
「あんまり気負いすぎんなよ?
お前は十分、頑張ってるからさ」
「……どうしたの、本当に
すっごく優しいじゃん、登勢と喧嘩した?」
「しーてーまーせーんー
登勢とは現在進行形で仲良くやってるから、余計なお世話ですー
そうじゃなくて、まぁほら……なんだ、俺もお前に救われた人間の一人だからさ」
「……?」
一人、つまり成実以外にも、私に救われたらしい人がいる
残念ながら私はマリア様やメサイアではないので、本当に人を救ったりは出来ないんだけど
……確かに、持て囃され方はそれに近いけども
「やっぱり自覚なかったんだな、まぁお前らしいか
誰かとまでは言わないけど、結構お前に救われた奴は多いんだからな
だから……ま、今度は俺達が、お前を救う番だってわけだ」
「そんな大げさな……
こうやって気に掛けてくれるだけでも嬉しいよ」
「はいはい、そうやってお前は遠慮するからな
遠慮なく好き勝手にやらせてもらうから、気にすんな
何年お前と一緒につるんできたと思ってんだよ、ばーか」
成実のぶっきらぼうな言葉でも嬉しくて、自然と口元が緩んだのに気付いた
成実が大丈夫って言うんだ、きっと大丈夫だろう
伊達家の皆と……政宗さんを信じていけば、必ず──
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