51 母校へ行こう
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そして時はほんの少し流れ、十一月の第二土曜
我々の目の前には、絢爛豪華な門構えにして、やんごとない雰囲気を漂わせる、婆娑羅学院の入口がある
幼等部、初等部、中等部、高等部、大学部と、全校揃っての文化祭ということもあり、学院は年に一度の大賑わいだ
「通ってる時はなんにも思わなかったけど、久々に来るととんでもない外観してるよね」
「明らかにそんじょそこらの一般市民が入っていい場所じゃねぇもんな」
「ここだけ完全に別世界すぎるなぁ……」
「駅の改札のようなものから、空港の保安検査場のようなものまであるとは……
警備は厳重でござるな」
「あの猿飛佐助が、学院内でだけは独眼竜に手を出さなかった
学院のセキュリティは信頼していいだろうな」
手荷物検査なんて序の口で、敷地内にはもっと凄まじいセキュリティが存在しているんだろう
改めて見れば、防犯カメラの数もとんでもないもんね
さて、手荷物検査を通る前に、まずは我々の身分を登録しなければならない
学院の公式サイトで来場者登録はしているので、入口の端末にQRコードを翳して、ゲートオープン
ちなみに文化祭に来場できるのは、生徒の二等身以内の家族と親族、またはOBだけだ
今回我々はOBとしてのご来場である
手荷物検査も難なくクリアして、いよいよ敷地内へ
正門から校舎に入るまでの広ぉぉぉぉい入口は、ロータリーも兼ねているために、真ん中にデデドンとご立派な噴水が相変わらず存在していた
その隣には駐車場もあって、送迎車が百台並んでも混雑しないよう、独自の混雑緩和システムが採用されているらしいと聞いた事がある
昇降口は生徒専用なので、私たちは来客用の玄関へ案内された
当然ながら敷地内には、警備員も案内役も完備だ
卒業生と書かれた名札を玄関で受け取って、ストラップで首から下げる
スリッパに履き替えて、いざ校内へ!
「どこから回る?」
「とりあえず……サクッと展示から見て回りたいかな」
「模擬店は時間を取られるぞ
全部見て回るのは難しいが、文化部の展示から回ってみるのはどうだ?
途中でグラウンドに出て食事をしつつ、午後から講堂で演劇部とオーケストラ部の公演を観るのもいいだろう」
「そうでござるな
ここから一番近いのは、写真部でござろうか」
「じゃあとりあえず、写真部から見て回るか」
三年間通っただけあって、展示室の場所は迷わなくて済みそうだ
周囲の人たちの騒ぎも思ったほどじゃないし、心配して損したな
写真部には知り合いもいないし、今日はゆっくり見て回れそう
……そう思っていた時期が私にもありました
写真部の展示室である、一年生の教室に入ると──
「キャァァァァアア!!」
「えっ、うそ、えっ!?
夕歌様!?」
「ほ、本物だわ!?」
悲鳴が私たちをお出迎えしてくれた
私も有名になったものですね
卒業して二年も経ってるのに、なんで未だに私が人気なんだろう
知りたくないので教えようとしないでくれ、かすが
「こんにちは
ちょっと見て行くね」
「は、はい!
どうぞお好きなだけ!」
完全に舞い上がってしまった様子だ
長居は難しそうだな
「まさかご本人のご尊顔を拝する機会に恵まれるなんて……」
「有名な人なの?」
「あら、ご存知ないの?
斎藤夕歌様は二年前にご卒業された、最初で最後の奨学特待生よ
お母様は斎藤グループの亡き美奈子社長、お父様は明政大学にいらっしゃった、亡き斎藤教授
今は伊達政宗様とご結婚されて伊達夕歌様だけれど、将来は藤野を継ぐそうよ」
「雲の上の存在じゃない……
なのにあんなふうに気さくに話しかけてくださるなんて……」
「ファンクラブ会員は今も募集中よ」
「入るわ」
「入るの!?」
「歓迎しよう!」
「すんな!!」
増やすなこれ以上!!
別にもう要らんだろ!!
なんで卒業してからファンクラブ会員が増えるんだよ!!
怖いよ!!
「入会プランはどうする?
ライトプラン、レギュラープラン、プレミアムプランの三プランから選べ
夕歌のことを深く知らぬうちは、ライトもしくはレギュラーをお勧めする」
「それプラン別に特典みたいなのがあるの?」
「プランごとに継続特典が異なる
プレミアムプランならそれに加えて、私が撮影したお前の写真をブロマイドとして購入可能だ」
「ブロマイド」
「先日の学祭でお好み焼きを焼くお前のブロマイドは、売れに売れたぞ」
「その売上金はどこに……」
「運営資金に売上の一パーセント
残りは全額、被写体報酬としてお前の口座に振り込んだぞ
新倉から収支の報告を聞いていなかったか?」
「たぶん聞き流したかも……」
違う違うそうじゃなくて
ファンクラブ会員をこれ以上増やすなって話をだな
頭を抱える私を他所に、また新たなファンクラブ会員が誕生してしまった
ポン……と成実が私の肩を叩く
本当に勘弁してほしいよ
とほほ……と肩を落として、私は写真部の展示室を後にした
次はお隣の書道部へ
何食わぬ顔をして教室へ入り
「キャアアアアア夕歌様!!」
「本物の夕歌様!?」
「ああ……美しく輝き揺れる御髪……ずっと通った鼻筋に愛くるしい二重の瞳……
世界が恋をしてしまうわ……!!」
そっと親泰君を振り返る
親泰君は私を見つめて、それから黙って首を振った
諦めろってことだね
私もそうしようと思ったところだよ
我々の目の前には、絢爛豪華な門構えにして、やんごとない雰囲気を漂わせる、婆娑羅学院の入口がある
幼等部、初等部、中等部、高等部、大学部と、全校揃っての文化祭ということもあり、学院は年に一度の大賑わいだ
「通ってる時はなんにも思わなかったけど、久々に来るととんでもない外観してるよね」
「明らかにそんじょそこらの一般市民が入っていい場所じゃねぇもんな」
「ここだけ完全に別世界すぎるなぁ……」
「駅の改札のようなものから、空港の保安検査場のようなものまであるとは……
警備は厳重でござるな」
「あの猿飛佐助が、学院内でだけは独眼竜に手を出さなかった
学院のセキュリティは信頼していいだろうな」
手荷物検査なんて序の口で、敷地内にはもっと凄まじいセキュリティが存在しているんだろう
改めて見れば、防犯カメラの数もとんでもないもんね
さて、手荷物検査を通る前に、まずは我々の身分を登録しなければならない
学院の公式サイトで来場者登録はしているので、入口の端末にQRコードを翳して、ゲートオープン
ちなみに文化祭に来場できるのは、生徒の二等身以内の家族と親族、またはOBだけだ
今回我々はOBとしてのご来場である
手荷物検査も難なくクリアして、いよいよ敷地内へ
正門から校舎に入るまでの広ぉぉぉぉい入口は、ロータリーも兼ねているために、真ん中にデデドンとご立派な噴水が相変わらず存在していた
その隣には駐車場もあって、送迎車が百台並んでも混雑しないよう、独自の混雑緩和システムが採用されているらしいと聞いた事がある
昇降口は生徒専用なので、私たちは来客用の玄関へ案内された
当然ながら敷地内には、警備員も案内役も完備だ
卒業生と書かれた名札を玄関で受け取って、ストラップで首から下げる
スリッパに履き替えて、いざ校内へ!
「どこから回る?」
「とりあえず……サクッと展示から見て回りたいかな」
「模擬店は時間を取られるぞ
全部見て回るのは難しいが、文化部の展示から回ってみるのはどうだ?
途中でグラウンドに出て食事をしつつ、午後から講堂で演劇部とオーケストラ部の公演を観るのもいいだろう」
「そうでござるな
ここから一番近いのは、写真部でござろうか」
「じゃあとりあえず、写真部から見て回るか」
三年間通っただけあって、展示室の場所は迷わなくて済みそうだ
周囲の人たちの騒ぎも思ったほどじゃないし、心配して損したな
写真部には知り合いもいないし、今日はゆっくり見て回れそう
……そう思っていた時期が私にもありました
写真部の展示室である、一年生の教室に入ると──
「キャァァァァアア!!」
「えっ、うそ、えっ!?
夕歌様!?」
「ほ、本物だわ!?」
悲鳴が私たちをお出迎えしてくれた
私も有名になったものですね
卒業して二年も経ってるのに、なんで未だに私が人気なんだろう
知りたくないので教えようとしないでくれ、かすが
「こんにちは
ちょっと見て行くね」
「は、はい!
どうぞお好きなだけ!」
完全に舞い上がってしまった様子だ
長居は難しそうだな
「まさかご本人のご尊顔を拝する機会に恵まれるなんて……」
「有名な人なの?」
「あら、ご存知ないの?
斎藤夕歌様は二年前にご卒業された、最初で最後の奨学特待生よ
お母様は斎藤グループの亡き美奈子社長、お父様は明政大学にいらっしゃった、亡き斎藤教授
今は伊達政宗様とご結婚されて伊達夕歌様だけれど、将来は藤野を継ぐそうよ」
「雲の上の存在じゃない……
なのにあんなふうに気さくに話しかけてくださるなんて……」
「ファンクラブ会員は今も募集中よ」
「入るわ」
「入るの!?」
「歓迎しよう!」
「すんな!!」
増やすなこれ以上!!
別にもう要らんだろ!!
なんで卒業してからファンクラブ会員が増えるんだよ!!
怖いよ!!
「入会プランはどうする?
ライトプラン、レギュラープラン、プレミアムプランの三プランから選べ
夕歌のことを深く知らぬうちは、ライトもしくはレギュラーをお勧めする」
「それプラン別に特典みたいなのがあるの?」
「プランごとに継続特典が異なる
プレミアムプランならそれに加えて、私が撮影したお前の写真をブロマイドとして購入可能だ」
「ブロマイド」
「先日の学祭でお好み焼きを焼くお前のブロマイドは、売れに売れたぞ」
「その売上金はどこに……」
「運営資金に売上の一パーセント
残りは全額、被写体報酬としてお前の口座に振り込んだぞ
新倉から収支の報告を聞いていなかったか?」
「たぶん聞き流したかも……」
違う違うそうじゃなくて
ファンクラブ会員をこれ以上増やすなって話をだな
頭を抱える私を他所に、また新たなファンクラブ会員が誕生してしまった
ポン……と成実が私の肩を叩く
本当に勘弁してほしいよ
とほほ……と肩を落として、私は写真部の展示室を後にした
次はお隣の書道部へ
何食わぬ顔をして教室へ入り
「キャアアアアア夕歌様!!」
「本物の夕歌様!?」
「ああ……美しく輝き揺れる御髪……ずっと通った鼻筋に愛くるしい二重の瞳……
世界が恋をしてしまうわ……!!」
そっと親泰君を振り返る
親泰君は私を見つめて、それから黙って首を振った
諦めろってことだね
私もそうしようと思ったところだよ
