51 母校へ行こう
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時は遡って、十月の下旬
それはいつもの如く、成実の一言から始まった
「なあみんな」
「なに?」
「学院の文化祭、行かねぇ?」
「なんで?」
51 母校へ行こう
我々の母校、それはもちろん、スーパー金持ち学校こと私立婆娑羅学院である
学院と名乗っているものの、まったくもってミッション系などではないという、絶妙に中途半端なところには触れてはいけない
それはそれとして、なぜ今になって学院祭に?
「思った以上に否定的でびっくりしたんだけどよ」
「己のファンクラブの総本山に出向いてどうなるか分からない馬鹿じゃないからだよ」
「お前ほんっとうに厄介な状況に置かれてるよな」
「これっぽっちも私が望んだ状況じゃないんだけどね!?」
「まあまあ夕歌さん、かすがさんだって夕歌さんのためを思ってのことだし……」
「半分は私欲だがな」
「せっかくのフォローが台無しだよ!!」
親泰君が全力でツッコミを入れる相手って、元親先輩だけじゃなかったんだな
これ言ったら親泰君に怒られるから言わないけど
しかし私のためを思ってなぜファンクラブが出来るのか
「お前にヘイトを向けるくらいなら、お前を信奉するように仕向ければいいだけだろう」
「まぁ実際、その判断は正しかったと思うぜ
右を見ても左を見ても金持ちだらけの学校に、常識も生活環境もまるで違うド庶民が来るわけだろ?
大なり小なりトラブルは出るだろうし、お前が孤立する可能性もあったしな」
「なるほど、そういうことか……
かすがが私と友達になろうと思ったきっかけは打算も混みだったらしいけど、ファンクラブを作ったことについては、百パーセントの善意だったってこと?」
「半分は私欲だっつってたぞ」
「せやった」
親泰君のフォローを台無しにしてたんだった
まあ経緯はどうあれ、ファンクラブに守られていたのは事実のようだ
おかげでマイホームも手に入ったしね
いやおかしいだろ、なんでファンクラブが家を建てるんだよ
「話を戻すが、なぜ今年になって文化祭に行く気になったのだ?」
「いやほら、よく考えたら俺たち、のんびり文化祭を回ったことなかったなって思ってよ」
成実のそれで、私たちは顔を見合わせてしまった
言われてみれば……そうかも?
気付いてなかったけどそうだったかも
「たしかに俺と夕歌さんは、クラスの作品に生徒会の企画にって忙しかったし……」
「めっちゃ忙しかったよね
もう一人だけ自分が欲しいなって思ったもん」
「二年次のお化け屋敷など、夕歌殿がお客人の悲鳴に驚かれ、お客人以上の悲鳴を上げておられたものでござったな」
「みんなそれでいじってくるじゃん」
「いじるなってほうが無理だろ」
「政宗さんだって未だにそれでいじってくる!」
「綱元が知らねぇだけマシだと思っとけよ」
「さすが鬼庭に弱みを握られ続ける男は言うことが違うな」
「かすが殿も成実殿の弱みを多数握っておられるそうでござるが?」
「こいつの弱みなど、分かりやすくて心配になるぞ」
たしかに綱元先輩に知られたら終わりだな
……バレてる可能性は大いにあるけど……
政宗さんとか片倉先生とか、嬉々として教えてそうだもんね
なんで敵が身内にいるんだ、ふざけるなよ……
「まあそれはさておき、乗り気じゃねぇなら俺だけで行こうかなって思うんだけどよ」
「俺も行こうかな
今年も模擬店とか屋台とかキッチンカーとかいるんだろうし」
「親泰殿が食を目当てにされるとは、珍しいのではござらぬか?
無論、某も気になっておるところではござりまするが」
「私は夕歌の判断に従おう
行くというのなら、ファンクラブにお前と直接の接触を禁止する旨を通達すればいいだけだ
お前の傍にはこの私がいる、トラブルからは守ると誓おう」
「えー……じゃ、じゃあ行こう……かな?」
「よっしゃ!
五人で仲良く回ろうぜ!」
なんだかんだで満足に文化祭を見て回ることをしなかった我々
ここに来て遅れた青春を取り戻すチャンスがやってきた
それはいいけど、こっちの学祭との期間は被ってないのか?
「こっちの学祭が十一月最初の金土日って続いてるけど、学院の文化祭っていつなの?」
「そういえば、期間被ってないか?」
「いや、そこら辺は大丈夫っぽい
今年は諸事情あって、例年と開催期間が一週間遅れるらしいぞ
二年生の修学旅行の日程が関係してるらしい
こじゅ兄から聞いた話だから、詳しいことは分かんねぇけど」
「今年は片倉先生が引率なんだっけ」
「念願の南半球だってんで、ちょっと楽しそうにしてるよ
どうせ美味いワインが安く飲めるからだろうけど」
なるほどワイン、たしかに輸入となれば関税がかかる分だけ高くなる
現地で買ったほうが安いのは間違いないだろうしね
……片倉先生ってワインも飲むんだ
「完全なイメージだけど、片倉先生は焼酎が似合うよね」
「あ〜分かる
新橋のガードレール下にいてもおかしくない」
「こじゅ兄は割と何でも飲むぜ?
梵に酒の味を仕込んだのもこじゅ兄だし」
そういうのは普通、親から教えてもらうものなのかもしれないけど、お義父さんは相変わらず日本にいないし、お義母さんはさほどお酒を嗜まれない
そうなればそれは片倉先生の仕事になるわけだ
内心めちゃくちゃ楽しかっただろうな
私だったら楽しいもん
「話が脱線したが、とりあえず全員参加ってことでいいか?」
「えーい仕方ない!
一緒に回ってやんよ!
なんかひとつ奢ってよね」
「へーへー、いちばん高いやつだろ、わぁーったよ
じゃあ当日は現地集合現地解散で
あーただし夕歌、お前は俺が迎えに行くから家で待ってろ」
「了解〜
ひょっとしたら当日、政宗さんがついてくるかもしれないけど、そん時は諦めて」
「梵には大殿から仕事わんさか振ってもらう予定だから大丈夫」
「それあとで成実が政宗さんから八つ当たり受けるやつじゃない?」
「え、うん」
「慣れてやがる……」
「何年アイツの従弟やってると思ってんだよ」
傍から見たら理不尽なそれを、さも当然のように受け入れる成実に、私たちは薄らと恐怖を覚えた
さすが伊達家のヒエラルキー最底辺……
とまぁそんなこんなで、卒業以来一度も足を運んでいない学院へ、久々に顔を出すことになったのだった
楽しみだなー!
それはいつもの如く、成実の一言から始まった
「なあみんな」
「なに?」
「学院の文化祭、行かねぇ?」
「なんで?」
51 母校へ行こう
我々の母校、それはもちろん、スーパー金持ち学校こと私立婆娑羅学院である
学院と名乗っているものの、まったくもってミッション系などではないという、絶妙に中途半端なところには触れてはいけない
それはそれとして、なぜ今になって学院祭に?
「思った以上に否定的でびっくりしたんだけどよ」
「己のファンクラブの総本山に出向いてどうなるか分からない馬鹿じゃないからだよ」
「お前ほんっとうに厄介な状況に置かれてるよな」
「これっぽっちも私が望んだ状況じゃないんだけどね!?」
「まあまあ夕歌さん、かすがさんだって夕歌さんのためを思ってのことだし……」
「半分は私欲だがな」
「せっかくのフォローが台無しだよ!!」
親泰君が全力でツッコミを入れる相手って、元親先輩だけじゃなかったんだな
これ言ったら親泰君に怒られるから言わないけど
しかし私のためを思ってなぜファンクラブが出来るのか
「お前にヘイトを向けるくらいなら、お前を信奉するように仕向ければいいだけだろう」
「まぁ実際、その判断は正しかったと思うぜ
右を見ても左を見ても金持ちだらけの学校に、常識も生活環境もまるで違うド庶民が来るわけだろ?
大なり小なりトラブルは出るだろうし、お前が孤立する可能性もあったしな」
「なるほど、そういうことか……
かすがが私と友達になろうと思ったきっかけは打算も混みだったらしいけど、ファンクラブを作ったことについては、百パーセントの善意だったってこと?」
「半分は私欲だっつってたぞ」
「せやった」
親泰君のフォローを台無しにしてたんだった
まあ経緯はどうあれ、ファンクラブに守られていたのは事実のようだ
おかげでマイホームも手に入ったしね
いやおかしいだろ、なんでファンクラブが家を建てるんだよ
「話を戻すが、なぜ今年になって文化祭に行く気になったのだ?」
「いやほら、よく考えたら俺たち、のんびり文化祭を回ったことなかったなって思ってよ」
成実のそれで、私たちは顔を見合わせてしまった
言われてみれば……そうかも?
気付いてなかったけどそうだったかも
「たしかに俺と夕歌さんは、クラスの作品に生徒会の企画にって忙しかったし……」
「めっちゃ忙しかったよね
もう一人だけ自分が欲しいなって思ったもん」
「二年次のお化け屋敷など、夕歌殿がお客人の悲鳴に驚かれ、お客人以上の悲鳴を上げておられたものでござったな」
「みんなそれでいじってくるじゃん」
「いじるなってほうが無理だろ」
「政宗さんだって未だにそれでいじってくる!」
「綱元が知らねぇだけマシだと思っとけよ」
「さすが鬼庭に弱みを握られ続ける男は言うことが違うな」
「かすが殿も成実殿の弱みを多数握っておられるそうでござるが?」
「こいつの弱みなど、分かりやすくて心配になるぞ」
たしかに綱元先輩に知られたら終わりだな
……バレてる可能性は大いにあるけど……
政宗さんとか片倉先生とか、嬉々として教えてそうだもんね
なんで敵が身内にいるんだ、ふざけるなよ……
「まあそれはさておき、乗り気じゃねぇなら俺だけで行こうかなって思うんだけどよ」
「俺も行こうかな
今年も模擬店とか屋台とかキッチンカーとかいるんだろうし」
「親泰殿が食を目当てにされるとは、珍しいのではござらぬか?
無論、某も気になっておるところではござりまするが」
「私は夕歌の判断に従おう
行くというのなら、ファンクラブにお前と直接の接触を禁止する旨を通達すればいいだけだ
お前の傍にはこの私がいる、トラブルからは守ると誓おう」
「えー……じゃ、じゃあ行こう……かな?」
「よっしゃ!
五人で仲良く回ろうぜ!」
なんだかんだで満足に文化祭を見て回ることをしなかった我々
ここに来て遅れた青春を取り戻すチャンスがやってきた
それはいいけど、こっちの学祭との期間は被ってないのか?
「こっちの学祭が十一月最初の金土日って続いてるけど、学院の文化祭っていつなの?」
「そういえば、期間被ってないか?」
「いや、そこら辺は大丈夫っぽい
今年は諸事情あって、例年と開催期間が一週間遅れるらしいぞ
二年生の修学旅行の日程が関係してるらしい
こじゅ兄から聞いた話だから、詳しいことは分かんねぇけど」
「今年は片倉先生が引率なんだっけ」
「念願の南半球だってんで、ちょっと楽しそうにしてるよ
どうせ美味いワインが安く飲めるからだろうけど」
なるほどワイン、たしかに輸入となれば関税がかかる分だけ高くなる
現地で買ったほうが安いのは間違いないだろうしね
……片倉先生ってワインも飲むんだ
「完全なイメージだけど、片倉先生は焼酎が似合うよね」
「あ〜分かる
新橋のガードレール下にいてもおかしくない」
「こじゅ兄は割と何でも飲むぜ?
梵に酒の味を仕込んだのもこじゅ兄だし」
そういうのは普通、親から教えてもらうものなのかもしれないけど、お義父さんは相変わらず日本にいないし、お義母さんはさほどお酒を嗜まれない
そうなればそれは片倉先生の仕事になるわけだ
内心めちゃくちゃ楽しかっただろうな
私だったら楽しいもん
「話が脱線したが、とりあえず全員参加ってことでいいか?」
「えーい仕方ない!
一緒に回ってやんよ!
なんかひとつ奢ってよね」
「へーへー、いちばん高いやつだろ、わぁーったよ
じゃあ当日は現地集合現地解散で
あーただし夕歌、お前は俺が迎えに行くから家で待ってろ」
「了解〜
ひょっとしたら当日、政宗さんがついてくるかもしれないけど、そん時は諦めて」
「梵には大殿から仕事わんさか振ってもらう予定だから大丈夫」
「それあとで成実が政宗さんから八つ当たり受けるやつじゃない?」
「え、うん」
「慣れてやがる……」
「何年アイツの従弟やってると思ってんだよ」
傍から見たら理不尽なそれを、さも当然のように受け入れる成実に、私たちは薄らと恐怖を覚えた
さすが伊達家のヒエラルキー最底辺……
とまぁそんなこんなで、卒業以来一度も足を運んでいない学院へ、久々に顔を出すことになったのだった
楽しみだなー!
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