05 新しい日常
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「──それで結婚祝いで十万円もらってきたのか、お前」
帰宅する頃には、政宗さんもとっくに晩ご飯を食べ終えていた
その政宗さんの前に十万円が入った紙の封筒を置いて、「かくかくしかじかで」と説明すると、合点が言ったような顔をしたのだった
「しっかし、お前があの剣道場の元生徒だったとはな」
「私も驚きました、まさかあの剣道場が片倉先生の実家だったなんて」
どういう経緯で伊達家と関係を持つことになったのかは知らないけど
「ったく……俺がいない時に限って面白れぇことしやがって」
「仲間はずれが寂しかったんですか?」
「Ah?
馬鹿言え、そんなんじゃねぇ」
ふいっと顔をそむけた政宗さんが、「さっさと食え」と作ってくれた晩ご飯を差し出してきた
美味しそうな匂いが漂って限界だったので、おとなしく頂くことにした
「美味しい!」
「たりめぇだろ、俺が作ったんだ」
口ではそう言うけど、私が美味しいと言うと僅かに目元が緩むので、内心ではホッとしているのがバレバレだ
気を付けて見ないと分からない変化なので、誰にも言うつもりはないけど
「……ふふふ」
「どうした?」
「いえ、師範の驚いた顔が浮かんで……」
「あのオッサン、小十郎に似ていつでも冷静だからな
ま、小十郎のガラの悪さはどこから来たのか知らねぇが……」
「政宗さんがガラが悪いって言うんですか……」
「俺は別に至って普通だろ」
「天性の自信家精神が普通なわけないでしょうに」
クルクルとパスタをフォークに巻いて、特製ソースと一緒に口に運ぶ
しかし本当に美味しい、政宗さんも私の味覚の好みは把握してるしな……
「政宗さんが料理上手で良かった……」
「やっと俺のありがたみに気付いたか?」
「素直に嬉しいって言っていいんですよ」
「Ah?」
「そういう素直じゃないところも好きですけど」
「……お前は、そうやって」
「たまには仕返ししないと、いつもやられっぱなしは性に合わないです」
はー、とため息をついた政宗さんが立ちあがる
どこへ行くかと思えば脱衣所へ消えたので、お風呂に入るんだろう
お風呂自体は、和真さんが掃除してお湯まで張ってくれているので、問題なく入浴できる
つくづく出来た執事だ、私にはもったいない気がする
……おばあちゃんもそうだけど、師範にも、「子供が出来たら連れてこい」と言われた
分かってる……私と政宗さんの跡継ぎのためにも、子供が必要だって、分かってはいるけど
思い出して身体が震える
見下ろす瞳の鋭さ、押し付けられた床の冷たさ
心無い言葉と、受けた痛みの数は、数え切れないほどだ
ずっと纏わりついてくる──政宗さんがそんなことをしない人だって、頭では理解しているのに
心が、身体が拒絶してしまう
傷つくのが嫌だと叫んでいるようで……
──生きてる価値もないくせに
──さっさと死ねばいいのに
「……う」
嫌なことを思い出した
止まっていた手を動かして、無理矢理喉を通す
「何か……克服するきっかけがあればいいのに……」
そうは思うけど、克服する方法など浮かぶはずもなく
お互いお風呂を済ませて寝室のベッドに横になって、そういう雰囲気が一切ないままに眠ってしまう
「ん……」
結局、今日もそうだ
抱き寄せられてキスをして、政宗さんの細い指が私の髪を梳いて遊んで
「寝るか」
「……はい」
ゆっくりでいい、と彼は言う
時間が解決してくれる、とも……
「………」
私は……弱い
トラウマの一つも乗り越えられない、弱い存在……
ため息をついて、寝ようと身動ぎをすると
「……眠れねぇのか?」
「え……」
「いつもならすぐに寝ちまうくせに、今日はやたらと動くんだな」
「あ、ごめんなさい……」
「いや、構わねぇさ」
政宗さんが、私が動いたことで出来た隙間を埋めるように抱き寄せる
そして、私の頭を抱え込むように包んでくれた
「相手の心臓の音を聞くと、眠れるようになるらしい」
「そうなんですか?」
「試してみる価値はあると思ってな」
「……政宗さん、ごめんなさい……」
「急にどうした」
「何でもないんです、ごめんなさい」
「何でもねぇなら謝るな、お前が謝ることなんざ何もねぇだろ」
「……ん」
「気にすんなよ
急く必要もねぇしな」
寝るぞ、と呟いて、政宗さんがポンポンと私の頭を撫でる
いつか……この人と、深くまで愛し合うことができるようになる日が来ますように
トクン、トクン、とゆっくりと音を立てる彼の鼓動に意識を預ける
「……Good night,my sweet」
優しい声が、そう告げて
暖かい腕の中で、そっと意識を手放した──
帰宅する頃には、政宗さんもとっくに晩ご飯を食べ終えていた
その政宗さんの前に十万円が入った紙の封筒を置いて、「かくかくしかじかで」と説明すると、合点が言ったような顔をしたのだった
「しっかし、お前があの剣道場の元生徒だったとはな」
「私も驚きました、まさかあの剣道場が片倉先生の実家だったなんて」
どういう経緯で伊達家と関係を持つことになったのかは知らないけど
「ったく……俺がいない時に限って面白れぇことしやがって」
「仲間はずれが寂しかったんですか?」
「Ah?
馬鹿言え、そんなんじゃねぇ」
ふいっと顔をそむけた政宗さんが、「さっさと食え」と作ってくれた晩ご飯を差し出してきた
美味しそうな匂いが漂って限界だったので、おとなしく頂くことにした
「美味しい!」
「たりめぇだろ、俺が作ったんだ」
口ではそう言うけど、私が美味しいと言うと僅かに目元が緩むので、内心ではホッとしているのがバレバレだ
気を付けて見ないと分からない変化なので、誰にも言うつもりはないけど
「……ふふふ」
「どうした?」
「いえ、師範の驚いた顔が浮かんで……」
「あのオッサン、小十郎に似ていつでも冷静だからな
ま、小十郎のガラの悪さはどこから来たのか知らねぇが……」
「政宗さんがガラが悪いって言うんですか……」
「俺は別に至って普通だろ」
「天性の自信家精神が普通なわけないでしょうに」
クルクルとパスタをフォークに巻いて、特製ソースと一緒に口に運ぶ
しかし本当に美味しい、政宗さんも私の味覚の好みは把握してるしな……
「政宗さんが料理上手で良かった……」
「やっと俺のありがたみに気付いたか?」
「素直に嬉しいって言っていいんですよ」
「Ah?」
「そういう素直じゃないところも好きですけど」
「……お前は、そうやって」
「たまには仕返ししないと、いつもやられっぱなしは性に合わないです」
はー、とため息をついた政宗さんが立ちあがる
どこへ行くかと思えば脱衣所へ消えたので、お風呂に入るんだろう
お風呂自体は、和真さんが掃除してお湯まで張ってくれているので、問題なく入浴できる
つくづく出来た執事だ、私にはもったいない気がする
……おばあちゃんもそうだけど、師範にも、「子供が出来たら連れてこい」と言われた
分かってる……私と政宗さんの跡継ぎのためにも、子供が必要だって、分かってはいるけど
思い出して身体が震える
見下ろす瞳の鋭さ、押し付けられた床の冷たさ
心無い言葉と、受けた痛みの数は、数え切れないほどだ
ずっと纏わりついてくる──政宗さんがそんなことをしない人だって、頭では理解しているのに
心が、身体が拒絶してしまう
傷つくのが嫌だと叫んでいるようで……
──生きてる価値もないくせに
──さっさと死ねばいいのに
「……う」
嫌なことを思い出した
止まっていた手を動かして、無理矢理喉を通す
「何か……克服するきっかけがあればいいのに……」
そうは思うけど、克服する方法など浮かぶはずもなく
お互いお風呂を済ませて寝室のベッドに横になって、そういう雰囲気が一切ないままに眠ってしまう
「ん……」
結局、今日もそうだ
抱き寄せられてキスをして、政宗さんの細い指が私の髪を梳いて遊んで
「寝るか」
「……はい」
ゆっくりでいい、と彼は言う
時間が解決してくれる、とも……
「………」
私は……弱い
トラウマの一つも乗り越えられない、弱い存在……
ため息をついて、寝ようと身動ぎをすると
「……眠れねぇのか?」
「え……」
「いつもならすぐに寝ちまうくせに、今日はやたらと動くんだな」
「あ、ごめんなさい……」
「いや、構わねぇさ」
政宗さんが、私が動いたことで出来た隙間を埋めるように抱き寄せる
そして、私の頭を抱え込むように包んでくれた
「相手の心臓の音を聞くと、眠れるようになるらしい」
「そうなんですか?」
「試してみる価値はあると思ってな」
「……政宗さん、ごめんなさい……」
「急にどうした」
「何でもないんです、ごめんなさい」
「何でもねぇなら謝るな、お前が謝ることなんざ何もねぇだろ」
「……ん」
「気にすんなよ
急く必要もねぇしな」
寝るぞ、と呟いて、政宗さんがポンポンと私の頭を撫でる
いつか……この人と、深くまで愛し合うことができるようになる日が来ますように
トクン、トクン、とゆっくりと音を立てる彼の鼓動に意識を預ける
「……Good night,my sweet」
優しい声が、そう告げて
暖かい腕の中で、そっと意識を手放した──
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