43 そして夏は終わらない
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チーン……と、おりんの音が聞こえてくるようだ
日も暮れ始めた夕方六時前、道場の真ん中には、倒れ込んだまま微動だにできない伊達の三人がいた
「Too hard……」
「吐く……」
「死ぬ……」
屍と化した我々を見つめる部員達は、恐ろしいものを見るような顔だ
とりあえず助けてほしい
「大丈夫か、三人とも」
「……」
もはや喋る元気も無い
片倉先生も大丈夫じゃないと分かっていて聞いている気がする
たしかに鈍ってたけども……
「和真さ……」
「はい、お嬢様」
どこからともなく和真さんが現れ、私の体を抱えていく
「お前ずりぃぞ……」という成実の恨み節は無視した
一旦全員で整列して挨拶をして、稽古は終了
更衣室に入って、呻き声を上げながら何とか着替えた
先輩と同級生と後輩の視線が、私を憐れみながらもどこか面白がっている
更衣室を出ると、すぐ近くで政宗さんと成実が待ってくれていた
……それはいいけど、政宗さんも成実も顔が死んでいる
なんなら成実は魂が抜けてしまったみたいに抜け殻だ
「成実、駐車場まで頑張ろ……」
「……おう」
めちゃくちゃ声が小さかった
そりゃあ、下手すると政宗さんより厳しく指導されてたもんな……
「政宗さんは歩けます……?」
「歩くくらいなら、何とかな……」
「成実を背負っていっていただくことは……」
「死んでもお断りだ
お前なら背負ってやる」
「……和真さん、成実をお願いできますか」
「かしこまりました」
和真さんが成実を俵担ぎで抱えていく
「もうちょっとあったろ、やり方がよ……」という成実の恨み節は、またもや全員に無視された
政宗さんが私を背中に背負って歩き出す
政宗さんが歩けるまで回復してくれて助かった……
私はまだ歩けそうにない……
「ったく、だらしのねぇ」
「ハードワークすぎんだろ、さすがに……」
「マジで死ぬかと思いました……」
政宗さんは何も言わない
文句を言う元気もないらしい
「一日休むと、取り戻すのに三日かかると申しますからね」
「三十日分の遅れを一日で取り戻そうとすんじゃねぇよ……」
成実の言葉はごもっともだ
なぜ一日で取り戻せると思ったのか
「ぜってー動けねぇ気がする、明日」
「通常メニューをこなすだけで精一杯だもん……」
車にようやく着いて、政宗さんの背中から降りる
這いずるように後部座席に座ると、成実もよぼよぼしながら助手席に座った
「お夕食は私と片倉様でお作りしますので、皆様はご帰宅後、どうぞお寛ぎください」
「頼む……
俺もうメシとか……作る気力ない……」
というかご飯も食べられる気がしないし、朝まで爆睡できる自信ある
和真さんにマッサージだけ頼んでおこう
「政宗さん、明日は……?」
「親父にcancel入れた
……無理だろ、歩くだけで精一杯だぞ」
「ですよねぇ……」
よかった、政宗さんもちゃんと人間だった……
人間じゃないとおかしいけど、時々こう、人間じゃないんじゃないかと思う時があるから……
「……夏休みも折り返しかぁ」
「長いようであっという間だよな」
「今年は思いっきり旅行できたんで満足です」
「海行きてぇな……」
「……合宿とか言わないですよね」
「普通に海で遊ぶだけにしてくれ……」
過去の学院生徒会合宿の前例があるので、政宗さんの「海に行きたい」発言は三割ほど信用ならない
……あの時に比べたら、今のほうがもっとハードなことやってる気がするな
「海……海かぁ」
「ちゃんと遊んだら楽しいんだけどな」
成実の一言にうん……と頷く
なにせあのプライベートビーチ付きの別荘、剣道場があるんだもん
そりゃあ私も剣道は好きだけど、なんで海に来てまで剣道をしないといけないのかという話で……
「チッ……仕方ねぇな」
「ってことは?」
「遊ぶだけにしといてやる」
「え、やったー!」
「いつにする?
登勢も呼ぶからよ」
「え!
じゃあ私、愛と佐助先輩とかすが呼んじゃお!」
「猿はいらねぇだろ」
「佐助はいらねぇだろ」
従兄弟組が揃って佐助先輩の招集を却下してきた
可哀想な佐助先輩……でも呼ぶけど
「佐助が来るなら幸村も来るってことだし、ならもう親泰も呼ぼうぜ」
「いいね、クインテット集合だ」
「勝手に人が増えたな」
「どうせお前も呼ぶだろ、慶次と元親」
「じゃあ元就先輩と綱元先輩も呼ばなきゃ」
「もうメンツがほぼ生徒会合宿じゃねぇか!」
政宗さんが吠えた
仕方ない、だって政宗さんが慶次先輩と元親先輩を呼ぶなら、対抗策で元就先輩と綱元先輩は呼んでおかないと……
……絶対に面白いことになるじゃん?
「前回は到着早々、佐助の日輪焼きが出来上がったもんな」
「今年は誰が焼かれるんだろうね
やっぱ佐助先輩かな」
「嬉々として焼かせにかかる奴がいるもんな、約一名」
誰が焼かせにかかるかは推して知るべし
脳裏に浮かんだ大親友を隅に追いやって、とりあえず佐助先輩のLEINにメッセージを送っておいた
どれくらいの人が集まるんだろう
楽しみだなー!
夏休みは折り返しだけど、まだまだ終わらせないぜ、夏!!
「そこまで元気なら、テメェが今日の晩メシを作るこったな」
「ウッ!
急に腹が……!」
「白々しいにも程がありすぎない?」
成実が助手席で項垂れた
夏はまだ終わらないけど、成実のメンタルは終わりそうらしい
……頑張れ、成実
日も暮れ始めた夕方六時前、道場の真ん中には、倒れ込んだまま微動だにできない伊達の三人がいた
「Too hard……」
「吐く……」
「死ぬ……」
屍と化した我々を見つめる部員達は、恐ろしいものを見るような顔だ
とりあえず助けてほしい
「大丈夫か、三人とも」
「……」
もはや喋る元気も無い
片倉先生も大丈夫じゃないと分かっていて聞いている気がする
たしかに鈍ってたけども……
「和真さ……」
「はい、お嬢様」
どこからともなく和真さんが現れ、私の体を抱えていく
「お前ずりぃぞ……」という成実の恨み節は無視した
一旦全員で整列して挨拶をして、稽古は終了
更衣室に入って、呻き声を上げながら何とか着替えた
先輩と同級生と後輩の視線が、私を憐れみながらもどこか面白がっている
更衣室を出ると、すぐ近くで政宗さんと成実が待ってくれていた
……それはいいけど、政宗さんも成実も顔が死んでいる
なんなら成実は魂が抜けてしまったみたいに抜け殻だ
「成実、駐車場まで頑張ろ……」
「……おう」
めちゃくちゃ声が小さかった
そりゃあ、下手すると政宗さんより厳しく指導されてたもんな……
「政宗さんは歩けます……?」
「歩くくらいなら、何とかな……」
「成実を背負っていっていただくことは……」
「死んでもお断りだ
お前なら背負ってやる」
「……和真さん、成実をお願いできますか」
「かしこまりました」
和真さんが成実を俵担ぎで抱えていく
「もうちょっとあったろ、やり方がよ……」という成実の恨み節は、またもや全員に無視された
政宗さんが私を背中に背負って歩き出す
政宗さんが歩けるまで回復してくれて助かった……
私はまだ歩けそうにない……
「ったく、だらしのねぇ」
「ハードワークすぎんだろ、さすがに……」
「マジで死ぬかと思いました……」
政宗さんは何も言わない
文句を言う元気もないらしい
「一日休むと、取り戻すのに三日かかると申しますからね」
「三十日分の遅れを一日で取り戻そうとすんじゃねぇよ……」
成実の言葉はごもっともだ
なぜ一日で取り戻せると思ったのか
「ぜってー動けねぇ気がする、明日」
「通常メニューをこなすだけで精一杯だもん……」
車にようやく着いて、政宗さんの背中から降りる
這いずるように後部座席に座ると、成実もよぼよぼしながら助手席に座った
「お夕食は私と片倉様でお作りしますので、皆様はご帰宅後、どうぞお寛ぎください」
「頼む……
俺もうメシとか……作る気力ない……」
というかご飯も食べられる気がしないし、朝まで爆睡できる自信ある
和真さんにマッサージだけ頼んでおこう
「政宗さん、明日は……?」
「親父にcancel入れた
……無理だろ、歩くだけで精一杯だぞ」
「ですよねぇ……」
よかった、政宗さんもちゃんと人間だった……
人間じゃないとおかしいけど、時々こう、人間じゃないんじゃないかと思う時があるから……
「……夏休みも折り返しかぁ」
「長いようであっという間だよな」
「今年は思いっきり旅行できたんで満足です」
「海行きてぇな……」
「……合宿とか言わないですよね」
「普通に海で遊ぶだけにしてくれ……」
過去の学院生徒会合宿の前例があるので、政宗さんの「海に行きたい」発言は三割ほど信用ならない
……あの時に比べたら、今のほうがもっとハードなことやってる気がするな
「海……海かぁ」
「ちゃんと遊んだら楽しいんだけどな」
成実の一言にうん……と頷く
なにせあのプライベートビーチ付きの別荘、剣道場があるんだもん
そりゃあ私も剣道は好きだけど、なんで海に来てまで剣道をしないといけないのかという話で……
「チッ……仕方ねぇな」
「ってことは?」
「遊ぶだけにしといてやる」
「え、やったー!」
「いつにする?
登勢も呼ぶからよ」
「え!
じゃあ私、愛と佐助先輩とかすが呼んじゃお!」
「猿はいらねぇだろ」
「佐助はいらねぇだろ」
従兄弟組が揃って佐助先輩の招集を却下してきた
可哀想な佐助先輩……でも呼ぶけど
「佐助が来るなら幸村も来るってことだし、ならもう親泰も呼ぼうぜ」
「いいね、クインテット集合だ」
「勝手に人が増えたな」
「どうせお前も呼ぶだろ、慶次と元親」
「じゃあ元就先輩と綱元先輩も呼ばなきゃ」
「もうメンツがほぼ生徒会合宿じゃねぇか!」
政宗さんが吠えた
仕方ない、だって政宗さんが慶次先輩と元親先輩を呼ぶなら、対抗策で元就先輩と綱元先輩は呼んでおかないと……
……絶対に面白いことになるじゃん?
「前回は到着早々、佐助の日輪焼きが出来上がったもんな」
「今年は誰が焼かれるんだろうね
やっぱ佐助先輩かな」
「嬉々として焼かせにかかる奴がいるもんな、約一名」
誰が焼かせにかかるかは推して知るべし
脳裏に浮かんだ大親友を隅に追いやって、とりあえず佐助先輩のLEINにメッセージを送っておいた
どれくらいの人が集まるんだろう
楽しみだなー!
夏休みは折り返しだけど、まだまだ終わらせないぜ、夏!!
「そこまで元気なら、テメェが今日の晩メシを作るこったな」
「ウッ!
急に腹が……!」
「白々しいにも程がありすぎない?」
成実が助手席で項垂れた
夏はまだ終わらないけど、成実のメンタルは終わりそうらしい
……頑張れ、成実
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