42 続・サマートリップin北米
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日も沈んだ夕飯時、政宗さんに連れられて向かった先は、ちょっと高級そうなレストランだ
「本当にドレスコードいらないんですよね?」
「Yes.
硬っ苦しいのは初日で充分だろ」
「確かに」
政宗さんに続いてレストランに入ると、これまた出迎えてくれたウェイターが奥へ引っこんだ
この旅行、いったい総額でいくらかかってるんだろう、知りたくないな
一番奥にある席からは、浜辺とバンクーバーの夜景が一望できた
メニューを渡されて開いてみると、英語の羅列で目が滑る
何が何だか分かりませんと目で訴えたら、政宗さんがいくつか注文してくれた
「何聞かれてたんですか?」
「最初の一杯は何にするかだとよ」
「えっ、まさかと思いますけどアルコール……」
「No problem.
度数の低いやつだ」
「いやいや私まだ未成年」
「もう二十歳だろ」
慌ててスマホをつけてカレンダーを見る
現地時間で今日、十日だった
「……誕生日だ!?」
「厳密にゃ、もう終わってるがな
時差的にsafeだろ」
「ほんとだ!!」
時差の存在ちょっと忘れてたな
そっかぁ、日本時間だともう十一日なのか
「お酒解禁だ」
「飲みすぎんなよ」
「分かってますってば
お酒そんなに強くなさそうなので」
「そうなのか」
「両親が飲んでるところを見たことなかったんですよ
ひょっとしたら弱かったのかなって」
「そうかもな」
それに人生初めてのお酒だ
用心するに越したことはない
「政宗さんは強いんですか?」
「昔に比べりゃな」
「昔は弱かったんだ」
「らしいぜ?
原田辺りなら覚えてるんじゃねぇのか」
お酒でぐでんぐでんに酔う政宗さん……
……想像できないな
「来た当初は長いなーなんて思ってましたけど、あっという間に旅程も後半ですねぇ」
「楽しかったか?」
「めちゃくちゃ楽しんでますよ
政宗さんは?」
「肩の力を抜いて楽しめるvacationってのも乙なもんだな」
「普段から肩肘張ってますもんね」
グラスがやってきて、政宗さんと乾杯
甘いお酒は炭酸入りで、アルコールをほとんど感じなかった
「お義父さん達へのお土産、決まりました?」
「ああ、totem poleのreplicaだ
mini sizeのな」
「怒らないといいですね」
「腹抱えて笑い転げてくれるだろうぜ」
……私も何となくそんな気はしてるけど
それじゃお義母さんへのお土産は私が選ぼうかな
ドリームキャッチャーとかいいかもしれない
「明後日には帰国かぁ、早いなぁ」
「また来ればいい」
運ばれてきた前菜をフォークで上品に食べながら政宗さんが言う
……そうだよね、また来たらいいんだ
政宗さんとでもいいし、仲良しクインテットのみんなとでもいいし、青葉中女子会でもいいし
「政宗さんは行きたいところとかないですか?
どこでも付き合いますよ」
「そうだな……」
政宗さんの手の中でシャンパンがとぷりと揺れる
一口飲んで、グラスの中の泡を見つめ、政宗さんは口元に微笑を浮かべた
「お前と行きてぇところなら、山ほどあるが……
……いつか、俺の里帰りに付き合ってもらうかもしれねぇな」
「里帰り?」
「ああ
伊達政宗の魂が還る場所──かつての俺が愛して、守り抜きたかった故郷──に、な」
「……そうですね
政宗様のご帰郷こそ、奥州の民が真に待ち望んでいたことでしょうから」
私には前世の記憶がほとんどない
乱世の時代を駆け抜けた伊達政宗がどんな人で、どんな終わりを迎えたのかは、人の口から伝え聞いたことでしか知りようがない
「……どうやら帰れなかったらしいからな、俺は」
伊達政宗は、尾張にて織田軍に敗北して命を落とした
伊達軍は奥州まで命からがら逃げきれたものの、殿を務めた伊達成実も戦死
奥州筆頭という標を失った伊達軍は、片倉小十郎や鬼庭綱元らの奮闘も虚しく、蘆名を始めとした敵対勢力に攻め込まれて滅亡し、歴史から姿を消した
……この国が歩んできたものとはまるで違う歴史を辿った、私達の前世
あの頃の私たちが生きていた世界は、今どうなっているんだろう
「……暗い顔すんなよ
奥州筆頭・伊達政宗のstoryはあそこで終わった
俺はその事に不満を抱いちゃいねぇんだ
……ただ、親父達が守り通してきた奥州の地を、俺は守り切れなかったことが、悔しくてな」
「……」
「罪滅ぼしってわけじゃねぇよ
今生きてる世界と俺達が生きていた世界が別のモンだってことも知ってる
……ただ、俺のために行くだけだ
今の仙台をこの目で見て、『この世界の伊達政宗は仙台を守れたんだ』と……それを、過去の俺への赦しにしたい」
今更どうにかできるものではないから
そう言い残して、政宗さんは口を閉ざした
あの時代の仙台を守りたいと政宗さんが願っても、それはもう叶わない
だから今の仙台を目にして、「仙台の地を守れた伊達政宗」を感じることで、かつて守り切れなかった自分への後悔を断ち切りたい
……そういうことなら、私がお供しないでどうする
「一緒に行きます」
「……Thanks.」
政宗さんはほっとしたように微笑んだ
だけれど私は知っている
いつもの不敵な態度の裏で──守り切れなかった故郷に対して、ずっと自責の念を抱いてきたことを
心の奥にあるその後悔が、少しでも小さくなるといいな
「……ん!
サーモンのソテーめちゃくちゃ美味しい!」
「追加で頼むか?」
「コース料理なのに!?」
「main dishだろ、あとはdessertで終わりだぞ」
「え、絶対足りない
二軒目行きません?」
「飲み歩きじゃないんだが」
そうは言いつつ、近くのお店を探すように片倉先生に指示を出してくれるから、なんだかんだで政宗さんもお腹空いてるんだろうな
だって私でも足りないって思ったんだもん
私より食べる人が足りるわけない
「近くにあるbarか、別のrestaurantか……」
「んー、お酒は怖いのでレストランで」
「へーへー」
政宗さんが片倉先生に指示を出し終えて、スマホをポケットに戻す
そのタイミングでスイーツとコーヒーがやってきた
うーん、食べ足りない!
「二軒目ってお肉ですか?」
「そっちのがいいだろ」
「はい!」
力強く頷いてコーヒーを飲む
「コース料理食った後にガッツリ肉食うとか、お前ら人間辞めた?」という成実のツッコミが聞こえてきた気がしたけど、きっと気のせいだ
仕方ないじゃん、お腹空いてるんだもん!
「本当にドレスコードいらないんですよね?」
「Yes.
硬っ苦しいのは初日で充分だろ」
「確かに」
政宗さんに続いてレストランに入ると、これまた出迎えてくれたウェイターが奥へ引っこんだ
この旅行、いったい総額でいくらかかってるんだろう、知りたくないな
一番奥にある席からは、浜辺とバンクーバーの夜景が一望できた
メニューを渡されて開いてみると、英語の羅列で目が滑る
何が何だか分かりませんと目で訴えたら、政宗さんがいくつか注文してくれた
「何聞かれてたんですか?」
「最初の一杯は何にするかだとよ」
「えっ、まさかと思いますけどアルコール……」
「No problem.
度数の低いやつだ」
「いやいや私まだ未成年」
「もう二十歳だろ」
慌ててスマホをつけてカレンダーを見る
現地時間で今日、十日だった
「……誕生日だ!?」
「厳密にゃ、もう終わってるがな
時差的にsafeだろ」
「ほんとだ!!」
時差の存在ちょっと忘れてたな
そっかぁ、日本時間だともう十一日なのか
「お酒解禁だ」
「飲みすぎんなよ」
「分かってますってば
お酒そんなに強くなさそうなので」
「そうなのか」
「両親が飲んでるところを見たことなかったんですよ
ひょっとしたら弱かったのかなって」
「そうかもな」
それに人生初めてのお酒だ
用心するに越したことはない
「政宗さんは強いんですか?」
「昔に比べりゃな」
「昔は弱かったんだ」
「らしいぜ?
原田辺りなら覚えてるんじゃねぇのか」
お酒でぐでんぐでんに酔う政宗さん……
……想像できないな
「来た当初は長いなーなんて思ってましたけど、あっという間に旅程も後半ですねぇ」
「楽しかったか?」
「めちゃくちゃ楽しんでますよ
政宗さんは?」
「肩の力を抜いて楽しめるvacationってのも乙なもんだな」
「普段から肩肘張ってますもんね」
グラスがやってきて、政宗さんと乾杯
甘いお酒は炭酸入りで、アルコールをほとんど感じなかった
「お義父さん達へのお土産、決まりました?」
「ああ、totem poleのreplicaだ
mini sizeのな」
「怒らないといいですね」
「腹抱えて笑い転げてくれるだろうぜ」
……私も何となくそんな気はしてるけど
それじゃお義母さんへのお土産は私が選ぼうかな
ドリームキャッチャーとかいいかもしれない
「明後日には帰国かぁ、早いなぁ」
「また来ればいい」
運ばれてきた前菜をフォークで上品に食べながら政宗さんが言う
……そうだよね、また来たらいいんだ
政宗さんとでもいいし、仲良しクインテットのみんなとでもいいし、青葉中女子会でもいいし
「政宗さんは行きたいところとかないですか?
どこでも付き合いますよ」
「そうだな……」
政宗さんの手の中でシャンパンがとぷりと揺れる
一口飲んで、グラスの中の泡を見つめ、政宗さんは口元に微笑を浮かべた
「お前と行きてぇところなら、山ほどあるが……
……いつか、俺の里帰りに付き合ってもらうかもしれねぇな」
「里帰り?」
「ああ
伊達政宗の魂が還る場所──かつての俺が愛して、守り抜きたかった故郷──に、な」
「……そうですね
政宗様のご帰郷こそ、奥州の民が真に待ち望んでいたことでしょうから」
私には前世の記憶がほとんどない
乱世の時代を駆け抜けた伊達政宗がどんな人で、どんな終わりを迎えたのかは、人の口から伝え聞いたことでしか知りようがない
「……どうやら帰れなかったらしいからな、俺は」
伊達政宗は、尾張にて織田軍に敗北して命を落とした
伊達軍は奥州まで命からがら逃げきれたものの、殿を務めた伊達成実も戦死
奥州筆頭という標を失った伊達軍は、片倉小十郎や鬼庭綱元らの奮闘も虚しく、蘆名を始めとした敵対勢力に攻め込まれて滅亡し、歴史から姿を消した
……この国が歩んできたものとはまるで違う歴史を辿った、私達の前世
あの頃の私たちが生きていた世界は、今どうなっているんだろう
「……暗い顔すんなよ
奥州筆頭・伊達政宗のstoryはあそこで終わった
俺はその事に不満を抱いちゃいねぇんだ
……ただ、親父達が守り通してきた奥州の地を、俺は守り切れなかったことが、悔しくてな」
「……」
「罪滅ぼしってわけじゃねぇよ
今生きてる世界と俺達が生きていた世界が別のモンだってことも知ってる
……ただ、俺のために行くだけだ
今の仙台をこの目で見て、『この世界の伊達政宗は仙台を守れたんだ』と……それを、過去の俺への赦しにしたい」
今更どうにかできるものではないから
そう言い残して、政宗さんは口を閉ざした
あの時代の仙台を守りたいと政宗さんが願っても、それはもう叶わない
だから今の仙台を目にして、「仙台の地を守れた伊達政宗」を感じることで、かつて守り切れなかった自分への後悔を断ち切りたい
……そういうことなら、私がお供しないでどうする
「一緒に行きます」
「……Thanks.」
政宗さんはほっとしたように微笑んだ
だけれど私は知っている
いつもの不敵な態度の裏で──守り切れなかった故郷に対して、ずっと自責の念を抱いてきたことを
心の奥にあるその後悔が、少しでも小さくなるといいな
「……ん!
サーモンのソテーめちゃくちゃ美味しい!」
「追加で頼むか?」
「コース料理なのに!?」
「main dishだろ、あとはdessertで終わりだぞ」
「え、絶対足りない
二軒目行きません?」
「飲み歩きじゃないんだが」
そうは言いつつ、近くのお店を探すように片倉先生に指示を出してくれるから、なんだかんだで政宗さんもお腹空いてるんだろうな
だって私でも足りないって思ったんだもん
私より食べる人が足りるわけない
「近くにあるbarか、別のrestaurantか……」
「んー、お酒は怖いのでレストランで」
「へーへー」
政宗さんが片倉先生に指示を出し終えて、スマホをポケットに戻す
そのタイミングでスイーツとコーヒーがやってきた
うーん、食べ足りない!
「二軒目ってお肉ですか?」
「そっちのがいいだろ」
「はい!」
力強く頷いてコーヒーを飲む
「コース料理食った後にガッツリ肉食うとか、お前ら人間辞めた?」という成実のツッコミが聞こえてきた気がしたけど、きっと気のせいだ
仕方ないじゃん、お腹空いてるんだもん!
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