40 五度目の夏
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くったくたになった体を引きずるように歩いて、和真さんの待つ駐車場へと向かう
政宗さんも疲労の色が濃いので、今日は二人して爆睡できるだろうな
「……メシを食う気にもならねぇな」
「Me too.」
「左右に同じです……」
両脇を従兄弟組で挟まれつつ頷くと、背後から声がかかった
よく見ればそれは幸村君だ
「おお、政宗殿もご一緒でござり申したか!」
「……よう、真田幸村」
「お前も帰りか?
気合い入ってんな、フットサルサークル」
「来週は他校との練習試合でござるゆえ、みな気合いが入っているようでござる
御三方は……なにやらひどくお疲れのようでござるが……」
「容赦ねぇ師範のおかげでな……」
「夕歌、もう少しだぞ」
政宗さんが手を引いてくれて、なんとか駐車場へゴール
せっかくなので、幸村君のことも送ってあげることにした
よろよろと車に乗り込み、速攻で目を閉じる
隣に来た政宗さんにもたれ掛かると、政宗さんは何も言わず枕になってくれた
「天下の伊達財閥の御曹司を枕にするってんだから、贅沢だよな」
「天下の伊達財閥の御曹司の嫁だからね」
「自分で言うのかよ」
「うん」
「Good sleep,my dear.」
政宗さんの声が優しく囁いてくる
睡魔に抗うことなく身を委ねて、ぐぅ、と爆睡しかけたとき
「はっ!
そうだった!!」
一気に目が覚めた
隣で政宗さんが「うおっ!?」とらしくない声を上げたのはスルーだ
「幸村君、誕生日教えて!!」
「Birthday?
……真田幸村のか?」
「そういや昼間、そんな話になったっけな」
「幸村君とかすがの誕生日、聞きそびれちゃってさ」
「たしかにそうでござるな
某は十月十日でござる!」
「体育の日じゃん」
「今はスポーツの日になったけどな」
「そうだった」
しかも日付が変動する形式に変わちゃったじゃん
でもなんか納得した
なんていうか、幸村君らしい誕生日だなという気持ちだ
かすがはいつなんだろう
「良かった!
幸村君は誕生日まだ来てない!」
「お前、そんなに俺の誕生日が過ぎてたこと気にしてたのかよ」
「五年来の親友の誕生日を一度も祝ったことがないって、普通に考えておかしくない?」
「や、うーん……
俺にとっちゃそれが普通だったから別に……」
成実が気まずそうに言って、顔を外に向けた
みんなは前世の記憶が残ってるかもしれないけど、こっちはほとんど残ってないんだ
現代っ子として、友人や家族やその他大切な人の誕生日は見逃せない!
「ちなみに和真さんは?」
「私の誕生日ですか?
企業秘密です」
「えっなんでですか!?」
「私は奥様にお仕えする身でございますから
奥様のお誕生日をお祝いすることはあっても、逆は有り得ません」
「どうしても?」
「主従とはそういうものでございます」
しょんぼりと分かりやすく肩を落としてしまった
そういうものだと分かってはいるけど、寂しいなと思うのも事実だ
でも政宗さんだって、成実や片倉先生の誕生日をお祝いしたことはないんだっけ
「……私がおかしいのかなぁ」
「おかしいなどと、とんでもない
私のような者の誕生日まで祝ってくださろうとする、そのお優しいお心こそ、私は奥様が皆様に慕われる所以であると存じます
私も奥様のそのお心は、ありがたく頂戴致します」
「母から祝ってもらったこともないんですか?」
「美奈子社長……ですか」
私の母は、家族の誕生日を絶対に忘れなかった
どんなに仕事が忙しくても、誕生日の日は早めに仕事を終わらせて帰ってきて、みんなでお祝いをした
それは母の誕生日の時もそうで……
母の誕生日は、父がいつも午後から家に居た
母は三月生まれで、私はいつも春休み中だったから、父と私で料理を用意して、ケーキも父が昼間に買ってきていて
弟は……友達と遊んでたけど
「母なら、和真さんの誕生日を知っていたら、絶対にお祝いしたと思うんですけど……」
「……そうですね
一度だけ、根負けして受け取ったことはあります」
「一回だけですか」
「受け取るまで帰さないし私も帰らない、と社長室のドア前で仁王立ちされてしまいまして
私が今、身に付けております腕時計が、その時に頂いたものでした
美奈子社長にお仕えするようになってから、その時で既に二十年以上経っておりましたが、受け取ったのはその一度きりです
受け取ってもらえなかった分は、私がこの仕事を辞める時にまとめて渡すのだ、とおっしゃっておりましたが、受け取る前に美奈子社長のほうが先に私を置いていかれてしまいました
今となっては、あのお言葉の真偽の程も定かではありませんが……
ともかく私はお気持ちだけ受け取らせて頂きますので、奥様はお気遣いなくお過ごしください」
車が交差点を右折していく
もう少しで幸村君を下ろす場所だ
車は信号に捕まることなく、幸村君のおうちの近くまでやってきた
「では、政宗殿、夕歌殿、成実殿!
また明日にござる!」
「お疲れ様、幸村君
気を付けてね」
「Good night.」
「また明日なー」
私達に手を振って、幸村君が走って帰っていく
練習の後に走って帰れるなんて、相変わらず体力おばけだ
政宗さんがドアを閉めて、車は私達の家がある方向へと走り出した
……そういえば、私がまだ家族といた頃、お母さんの部屋に変な引き出しがあったな
引き出しの中には、明らかに男性用のものがたくさん入っていて……
「お世話になってる人に、いつかまとめて押し付けるんだ」って、お母さんが言っていたっけ
政宗さんも疲労の色が濃いので、今日は二人して爆睡できるだろうな
「……メシを食う気にもならねぇな」
「Me too.」
「左右に同じです……」
両脇を従兄弟組で挟まれつつ頷くと、背後から声がかかった
よく見ればそれは幸村君だ
「おお、政宗殿もご一緒でござり申したか!」
「……よう、真田幸村」
「お前も帰りか?
気合い入ってんな、フットサルサークル」
「来週は他校との練習試合でござるゆえ、みな気合いが入っているようでござる
御三方は……なにやらひどくお疲れのようでござるが……」
「容赦ねぇ師範のおかげでな……」
「夕歌、もう少しだぞ」
政宗さんが手を引いてくれて、なんとか駐車場へゴール
せっかくなので、幸村君のことも送ってあげることにした
よろよろと車に乗り込み、速攻で目を閉じる
隣に来た政宗さんにもたれ掛かると、政宗さんは何も言わず枕になってくれた
「天下の伊達財閥の御曹司を枕にするってんだから、贅沢だよな」
「天下の伊達財閥の御曹司の嫁だからね」
「自分で言うのかよ」
「うん」
「Good sleep,my dear.」
政宗さんの声が優しく囁いてくる
睡魔に抗うことなく身を委ねて、ぐぅ、と爆睡しかけたとき
「はっ!
そうだった!!」
一気に目が覚めた
隣で政宗さんが「うおっ!?」とらしくない声を上げたのはスルーだ
「幸村君、誕生日教えて!!」
「Birthday?
……真田幸村のか?」
「そういや昼間、そんな話になったっけな」
「幸村君とかすがの誕生日、聞きそびれちゃってさ」
「たしかにそうでござるな
某は十月十日でござる!」
「体育の日じゃん」
「今はスポーツの日になったけどな」
「そうだった」
しかも日付が変動する形式に変わちゃったじゃん
でもなんか納得した
なんていうか、幸村君らしい誕生日だなという気持ちだ
かすがはいつなんだろう
「良かった!
幸村君は誕生日まだ来てない!」
「お前、そんなに俺の誕生日が過ぎてたこと気にしてたのかよ」
「五年来の親友の誕生日を一度も祝ったことがないって、普通に考えておかしくない?」
「や、うーん……
俺にとっちゃそれが普通だったから別に……」
成実が気まずそうに言って、顔を外に向けた
みんなは前世の記憶が残ってるかもしれないけど、こっちはほとんど残ってないんだ
現代っ子として、友人や家族やその他大切な人の誕生日は見逃せない!
「ちなみに和真さんは?」
「私の誕生日ですか?
企業秘密です」
「えっなんでですか!?」
「私は奥様にお仕えする身でございますから
奥様のお誕生日をお祝いすることはあっても、逆は有り得ません」
「どうしても?」
「主従とはそういうものでございます」
しょんぼりと分かりやすく肩を落としてしまった
そういうものだと分かってはいるけど、寂しいなと思うのも事実だ
でも政宗さんだって、成実や片倉先生の誕生日をお祝いしたことはないんだっけ
「……私がおかしいのかなぁ」
「おかしいなどと、とんでもない
私のような者の誕生日まで祝ってくださろうとする、そのお優しいお心こそ、私は奥様が皆様に慕われる所以であると存じます
私も奥様のそのお心は、ありがたく頂戴致します」
「母から祝ってもらったこともないんですか?」
「美奈子社長……ですか」
私の母は、家族の誕生日を絶対に忘れなかった
どんなに仕事が忙しくても、誕生日の日は早めに仕事を終わらせて帰ってきて、みんなでお祝いをした
それは母の誕生日の時もそうで……
母の誕生日は、父がいつも午後から家に居た
母は三月生まれで、私はいつも春休み中だったから、父と私で料理を用意して、ケーキも父が昼間に買ってきていて
弟は……友達と遊んでたけど
「母なら、和真さんの誕生日を知っていたら、絶対にお祝いしたと思うんですけど……」
「……そうですね
一度だけ、根負けして受け取ったことはあります」
「一回だけですか」
「受け取るまで帰さないし私も帰らない、と社長室のドア前で仁王立ちされてしまいまして
私が今、身に付けております腕時計が、その時に頂いたものでした
美奈子社長にお仕えするようになってから、その時で既に二十年以上経っておりましたが、受け取ったのはその一度きりです
受け取ってもらえなかった分は、私がこの仕事を辞める時にまとめて渡すのだ、とおっしゃっておりましたが、受け取る前に美奈子社長のほうが先に私を置いていかれてしまいました
今となっては、あのお言葉の真偽の程も定かではありませんが……
ともかく私はお気持ちだけ受け取らせて頂きますので、奥様はお気遣いなくお過ごしください」
車が交差点を右折していく
もう少しで幸村君を下ろす場所だ
車は信号に捕まることなく、幸村君のおうちの近くまでやってきた
「では、政宗殿、夕歌殿、成実殿!
また明日にござる!」
「お疲れ様、幸村君
気を付けてね」
「Good night.」
「また明日なー」
私達に手を振って、幸村君が走って帰っていく
練習の後に走って帰れるなんて、相変わらず体力おばけだ
政宗さんがドアを閉めて、車は私達の家がある方向へと走り出した
……そういえば、私がまだ家族といた頃、お母さんの部屋に変な引き出しがあったな
引き出しの中には、明らかに男性用のものがたくさん入っていて……
「お世話になってる人に、いつかまとめて押し付けるんだ」って、お母さんが言っていたっけ