39 襲来、風雲児連合
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それは夏が近づく六月の上旬
珍しく予定のない土曜日、私達は別邸に顔を出して、そのまま居座ることにした
……したのは、いいのだが
「よう、伊達のみんな!」
「ちょいと邪魔するぜェ」
「なんでェ?」
突然現れた二人を見るなり、成実が悲壮な声で嘆いた
成実、強く生きてくれ
39 襲来、風雲児連合
「――いやぁ久しぶりだね、夕歌!」
私の前に座ってニコニコしているのは、前田慶次先輩
学院を卒業して以来、マジで一度も顔を合わせていないので、正真正銘ご無沙汰だ
元親先輩はちょっと前にここで会ったので、こんにちはと頭を下げた
「お久しぶりです、慶次先輩
……本当にお久しぶりですね……」
「本当にな!
元気そうで安心したよ
独眼竜の嫁は大変だろうからなぁ」
「政宗さんの妻だからというよりは、自分の血筋のほうでめちゃくちゃ忙しいです」
「そいつァ俺も親泰の奴から聞いてるぜ
藤野を継ごうってんだろ?」
「え、藤野を!?」
慶次先輩の丸くなった瞳に頷く
みんなからしてみれば、私が藤野の継ぐのは心配なことなんだろう
ほとんどは伯父のせいだ
刑務所で嫌というほど反省してほしい
「あんなに金持ち集団のやることなすことに一々驚いて、過剰に恐れ慄いていた夕歌が、この国のブルジョワ軍団の最高峰に……」
「そうかァ、そうなっちまうのか……
何もかもにビビり散らかしてた小心者の夕歌は、もう拝めねぇってことか……」
慶次先輩と元親先輩が悲しそうに呟く
この人らはどういう楽しみ方をしていたんだ
ブルジョワ軍団に囲まれて怯える庶民を見て楽しかったか、楽しかったのかー!?
「大丈夫ですよ、安心してください
私は死ぬまで庶民の心を持ち続けます」
「それはそれで大丈夫なのか?」
「スーパーのタイムセールは今でも私の主戦場です」
「庶民系お嬢様?」
「どっちかというとブルジョワ系庶民です」
「新しいジャンル開拓すんな」
風雲児連合が総じてツッコミに回る流れ、あるんだ
最近はタイムセールに突撃したりはしてないけど、心はいつでもスーパーに向いている
「お前まだ輸入牛なんか食ってんのか?」
「それがなんと、国産の和牛にグレードアップしました!」
「ただしブランド牛ではないがな」
横から綱元先輩がいらんこと訂正を入れてきたのを睨む
大袈裟に肩を竦めて、綱元先輩はにっこりと微笑んだ
副音声で「何か間違っていたか?」と聞こえてくる
何も間違ってないし正解でしかないんだけど、なんとはなしに腹立つな
「独眼竜がいるのに……」
「お前、苦労を無理やり背負い込まなくてもよォ……」
「いやいやほら、若いうちは買ってでも苦労しろって言うじゃないですか」
「お前の場合は買わなくても、過去に押し付けられた分の苦労で、充分元が取れてると思うんだけどよ……」
成実のそれに全員が頷く
それはまあ、正直ちょっと思ったけど
自分で言うのも変だけど、苦労しすぎてないかなって思ってはいる
しかしそれはそれ、これはこれだ
「ブランド牛は誕生日と年末のすき焼きの時だけです
斎藤家のルールは曲げられません」
「独眼竜、あんたそれでいいのかい?」
「節約がhobbyの奴をどう説得したって無理だろ」
「一生豪遊しても使い切れないぐれぇの金持ってんのにな」
「でも遊びに行くとなると、パーッとお金使っちゃうんです、政宗さんが
だから普段の財布は、私が紐を締めておかないと!」
なるほどね、と慶次先輩が頷く
元親先輩も頷きかけたところで、「けどよぅ」と眉根を寄せた
「あんたら二人、遊びに行けるほど暇なのかよ?」
「Nothing.」
「旅行なんて夢のまた夢ですね」
「最後に旅行したのっていつだったっけ」
成実に問われて記憶を遡る
……もしかしなくても、去年のクリスマスが最後だな
あれを旅行にカウントするのであればだけど……
「箱根は?」
「No count.」
「じゃあどこにも行ったことないです」
「どこにも!?」
「何泊もできるほど日程が取れなかったんですよね
結婚した直後は私が高三で受験生だったし、大学に進んだ頃には政宗さんが」
「あー、そっか
後継者育成の名目で、梵があっちこっち連れ回され始めたのって、その頃からだったもんな」
「そして今はお前もな」
そんなわけで、我々は遠方への旅行など未経験なのだ
そもそも最後に遠方に泊まったの、下手すると高二の時の修学旅行が最後だったりするな
「つーか、旅行自体、修学旅行が最後じゃねぇの?」
「やっぱり?」
「まあそれは俺もなんだけどよ」
「成実はいつでも行けるのに!?」
「ほんとにな」
「あ、ああ、思ってはいたんだね……」
登勢が外に出たがらないとかかなぁ
……会いたいからって理由だけで他人の家に来る、行動力に溢れるお嬢様が?
そんなふうな目で見てしまうと、「お前らのせいだよ」と言われてしまった
失礼な、自分が登勢と旅行に行けないのを、私と政宗さんのせいにするんじゃない!
友達甲斐のないやつ!!
珍しく予定のない土曜日、私達は別邸に顔を出して、そのまま居座ることにした
……したのは、いいのだが
「よう、伊達のみんな!」
「ちょいと邪魔するぜェ」
「なんでェ?」
突然現れた二人を見るなり、成実が悲壮な声で嘆いた
成実、強く生きてくれ
39 襲来、風雲児連合
「――いやぁ久しぶりだね、夕歌!」
私の前に座ってニコニコしているのは、前田慶次先輩
学院を卒業して以来、マジで一度も顔を合わせていないので、正真正銘ご無沙汰だ
元親先輩はちょっと前にここで会ったので、こんにちはと頭を下げた
「お久しぶりです、慶次先輩
……本当にお久しぶりですね……」
「本当にな!
元気そうで安心したよ
独眼竜の嫁は大変だろうからなぁ」
「政宗さんの妻だからというよりは、自分の血筋のほうでめちゃくちゃ忙しいです」
「そいつァ俺も親泰の奴から聞いてるぜ
藤野を継ごうってんだろ?」
「え、藤野を!?」
慶次先輩の丸くなった瞳に頷く
みんなからしてみれば、私が藤野の継ぐのは心配なことなんだろう
ほとんどは伯父のせいだ
刑務所で嫌というほど反省してほしい
「あんなに金持ち集団のやることなすことに一々驚いて、過剰に恐れ慄いていた夕歌が、この国のブルジョワ軍団の最高峰に……」
「そうかァ、そうなっちまうのか……
何もかもにビビり散らかしてた小心者の夕歌は、もう拝めねぇってことか……」
慶次先輩と元親先輩が悲しそうに呟く
この人らはどういう楽しみ方をしていたんだ
ブルジョワ軍団に囲まれて怯える庶民を見て楽しかったか、楽しかったのかー!?
「大丈夫ですよ、安心してください
私は死ぬまで庶民の心を持ち続けます」
「それはそれで大丈夫なのか?」
「スーパーのタイムセールは今でも私の主戦場です」
「庶民系お嬢様?」
「どっちかというとブルジョワ系庶民です」
「新しいジャンル開拓すんな」
風雲児連合が総じてツッコミに回る流れ、あるんだ
最近はタイムセールに突撃したりはしてないけど、心はいつでもスーパーに向いている
「お前まだ輸入牛なんか食ってんのか?」
「それがなんと、国産の和牛にグレードアップしました!」
「ただしブランド牛ではないがな」
横から綱元先輩がいらんこと訂正を入れてきたのを睨む
大袈裟に肩を竦めて、綱元先輩はにっこりと微笑んだ
副音声で「何か間違っていたか?」と聞こえてくる
何も間違ってないし正解でしかないんだけど、なんとはなしに腹立つな
「独眼竜がいるのに……」
「お前、苦労を無理やり背負い込まなくてもよォ……」
「いやいやほら、若いうちは買ってでも苦労しろって言うじゃないですか」
「お前の場合は買わなくても、過去に押し付けられた分の苦労で、充分元が取れてると思うんだけどよ……」
成実のそれに全員が頷く
それはまあ、正直ちょっと思ったけど
自分で言うのも変だけど、苦労しすぎてないかなって思ってはいる
しかしそれはそれ、これはこれだ
「ブランド牛は誕生日と年末のすき焼きの時だけです
斎藤家のルールは曲げられません」
「独眼竜、あんたそれでいいのかい?」
「節約がhobbyの奴をどう説得したって無理だろ」
「一生豪遊しても使い切れないぐれぇの金持ってんのにな」
「でも遊びに行くとなると、パーッとお金使っちゃうんです、政宗さんが
だから普段の財布は、私が紐を締めておかないと!」
なるほどね、と慶次先輩が頷く
元親先輩も頷きかけたところで、「けどよぅ」と眉根を寄せた
「あんたら二人、遊びに行けるほど暇なのかよ?」
「Nothing.」
「旅行なんて夢のまた夢ですね」
「最後に旅行したのっていつだったっけ」
成実に問われて記憶を遡る
……もしかしなくても、去年のクリスマスが最後だな
あれを旅行にカウントするのであればだけど……
「箱根は?」
「No count.」
「じゃあどこにも行ったことないです」
「どこにも!?」
「何泊もできるほど日程が取れなかったんですよね
結婚した直後は私が高三で受験生だったし、大学に進んだ頃には政宗さんが」
「あー、そっか
後継者育成の名目で、梵があっちこっち連れ回され始めたのって、その頃からだったもんな」
「そして今はお前もな」
そんなわけで、我々は遠方への旅行など未経験なのだ
そもそも最後に遠方に泊まったの、下手すると高二の時の修学旅行が最後だったりするな
「つーか、旅行自体、修学旅行が最後じゃねぇの?」
「やっぱり?」
「まあそれは俺もなんだけどよ」
「成実はいつでも行けるのに!?」
「ほんとにな」
「あ、ああ、思ってはいたんだね……」
登勢が外に出たがらないとかかなぁ
……会いたいからって理由だけで他人の家に来る、行動力に溢れるお嬢様が?
そんなふうな目で見てしまうと、「お前らのせいだよ」と言われてしまった
失礼な、自分が登勢と旅行に行けないのを、私と政宗さんのせいにするんじゃない!
友達甲斐のないやつ!!
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