37 弟たちの逆襲
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映画を観たり買い物をしたりすれば、時間が経つのはあっという間だ
駅の前でみんなと別れて、成実と二人で駅から家まで歩いていく
「片倉先輩とか綱元先輩とかにお迎え頼まなくて良かったの?」
「俺がいるのに?」
「マジでそのセリフを私に言ったところを登勢に見られたら、私が登勢に消されるんだろうなと思ってる」
「仕方ねぇだろ
お前が新倉を置いてくるからだぞ
あと登勢はそんな女じゃねぇ」
「登勢がそんな子じゃないことは私も知ってますぅー!
それにほら、かすがと成実がいるから、和真さんまではいらないかなって」
「……信頼してくれてるのは嬉しいけどよ」
私の荷物持ちまでやってくれながら、成実が小さくそう言ってそっぽを向く
なんだなんだ、照れてるのか、可愛いヤツめ
「そりゃあ信頼してるに決まってるでしょ
学院時代の政宗さんへの献身を私は忘れないよ……」
「ほとんど梵に振り回されてた記憶しかねぇな……」
「振り回されてたねぇ
私も振り回されたけど、成実はそれ以上じゃない?」
「冗談抜きで俺が一番の被害者だろ
それでもまあ、大事な従兄だしさ
あいつが俺を振り回せてるってこたぁ、平和ってことだよ
平和じゃなけりゃ、俺だってあいつの我儘に付き合う暇ないし」
「……そうだね」
成実がどう思うかに関わらず、成実の立場が彼に犠牲を強いる
今でこそ平和にのんびりやってるみたいだけど、一時期は酷かったらしいから
「これからは、そういうことも無いといいな」
「まあな、俺らみたいなのは暇してるのが一番だし
っつっても最近はずっと暇してるんだぜ?
昔に比べりゃ、穏やかなもんだよ
こじゅ兄の眉間の皺は寄りっぱなしだけどさ」
揶揄うように言って笑った成実が、最後の角を曲がって別邸が見えた瞬間、固まった
別邸の目の前には、それはそれはド派手な単車が停まっている
いったい誰のものなのか、などという問いは必要ない
「あああやっぱりこっちにいるんじゃねぇか……!!」
「ドンマイ、成実!」
「くっそぉー!
また俺が雑魚寝かよ!?」
悔しそうに言って、成実が何かを思い出したように「あっ」と声を上げた
そうして私に荷物を持たせ、スマホで誰かに電話をし始めたのだ
「あ、親泰?
元親のやつ、俺ん家にいるぞ
住所教えてやっから、親貞の兄貴と一緒に迎えに来てくれ」
じゃ、と言って電話を切り、成実は別邸へと帰っていく
暇だから私も別邸に行くことにした
別邸の玄関の鍵は開いたままだ
「帰ったぞー」
「お邪魔しまーす」
成実に続いて、玄関からリビングのあるドアを開けると
面白いくらいリラックスした元親先輩がいた
「よォ成実、邪魔してるぜ!
久しぶりだな夕歌!」
「あはは、お久しぶりです、元親先輩……」
「お前なぁ……
毎回言ってるけど、ここはお前ん家じゃねぇっての」
「知ってらァ、だから邪魔してるぜって言ったんだろ」
「もうちょっとこう、客としての礼節ってもんをだな……」
「へぇ、成実の口から礼節なんてセリフが出てくるたァ驚いたぜ」
「テメェは俺をなんだと思ってんだよ!?」
ていうか、綱元先輩はどこ行ったんだろう
政宗さんが別邸から私の家に移り住んだから、別邸からは足が遠のいたかと思ったけど、そうでもないみたい
綱元先輩とも仲が良かったからだろうな
「ところで綱元の奴はどこ行った?」
「綱?
綱なら右目の兄さんと取り込み中だぜ
深刻な話じゃなさそうだったがな」
「……そうか」
短く答えて、成実が私の手から荷物を取り上げた
それはそのままリビングの端に置かれて、成実の手によって私はテーブルの椅子へ座らせられた
「喉乾いたろ、何がいい?」
「アイスティー!」
「ストレート?」
「うん!」
「はいよ」
カチャカチャと調理器具が音を立てる
成実がキッチンでアイスティーを淹れている途中で、片倉先生と綱元先輩も戻ってきた
「なんだオメェ、来てやがったのか」
「む、教え子の顔が見られて嬉しいでしょうに」
「そいつぁ久々に見た顔の奴に言うモンだ」
「久々に見た顔ですよ!」
「あと三年は顔を見せなけりゃな」
「無理では?」
片倉先生が政宗さんにお仕えしている限り、それは不可能では?
嫌でも顔を合わせるじゃん、無理だよ三年も顔を合わせないとか
「放り出してすまなかったな、元親
成実の淹れたアイスティーを飲んだら帰れ」
「固ェこと言うなよ!
今晩は泊めてくれや、ちょいと家にゃ寄り付けそうもなくてよ」
「自業自得という言葉が良く似合っているぞ」
穏やかに微笑みながら綱元先輩が辛辣な一言を放った
どうやら親貞お兄さんが帰ってきていることは、元親先輩も綱元先輩もご存知らしい
つまりここは元親先輩の避難場所になってしまったわけだ
どうりで成実が親泰君に電話したわけだ……
「ほら、アイスティー
元親もこっち来い」
「相変わらず気が利くよなァ、お前さん」
「気が利かなきゃやってけねぇからな」
全員分のアイスティーをテーブルに並べて、成実が私の隣に座った
うーん、言動は至って普通の男子なんだけど、ふとしたところで育ちの良さが滲み出るなぁ成実は
自分は背負うものがない分、気楽な立場だーなんて言うけど、なんだかんだ社交の場に呼ばれるし
社交ダンスが踊れて、更にはそういうマナーが求められる場でも卒なく立ち回れるんだから、成実もやっぱりちゃんとお坊ちゃんなんだろう
「俺の顔をガン見して楽しいか?」
「口を開かなきゃ本当に育ちの良い、いいところのお坊ちゃんなのにな……」
「遠回しにバカにした?」
「バカにはしてない、残念だなって思ってる」
「……それバカにしてないんだよな?」
そうは言うけど、姿勢は良いし、飲む時に音を立てないし、政宗さんには劣るけど細かい所作は丁寧というか
「成実もしっかりお坊ちゃんなんだなぁ……」
「忘れてるみてぇだけど、俺は割としっかりお坊ちゃんだぞ」
「自分で言うんだ」
「事実だしな」
じとっとした目で成実を見て、それから綱元先輩と片倉先生を見やる
二人は私の視線を受け、片方は曖昧に微笑み、もう片方は無言で視線を逸らした
「まァ、本家本元の従弟がぼんぼんじゃなけりゃ何なんだって話だな」
「そういうことだな
お坊ちゃんにしては気楽な立場だけどよ」
「これで気楽なのか……」
「梵に比べりゃ気楽だろ、なぁ?」
成実が二人に同意を求める
二人は揃って頷いた
そこは共通の意見なんだ
政宗さんと比べたら、だいたいの人が『気楽な立場の人』になりそうな気はするけど
駅の前でみんなと別れて、成実と二人で駅から家まで歩いていく
「片倉先輩とか綱元先輩とかにお迎え頼まなくて良かったの?」
「俺がいるのに?」
「マジでそのセリフを私に言ったところを登勢に見られたら、私が登勢に消されるんだろうなと思ってる」
「仕方ねぇだろ
お前が新倉を置いてくるからだぞ
あと登勢はそんな女じゃねぇ」
「登勢がそんな子じゃないことは私も知ってますぅー!
それにほら、かすがと成実がいるから、和真さんまではいらないかなって」
「……信頼してくれてるのは嬉しいけどよ」
私の荷物持ちまでやってくれながら、成実が小さくそう言ってそっぽを向く
なんだなんだ、照れてるのか、可愛いヤツめ
「そりゃあ信頼してるに決まってるでしょ
学院時代の政宗さんへの献身を私は忘れないよ……」
「ほとんど梵に振り回されてた記憶しかねぇな……」
「振り回されてたねぇ
私も振り回されたけど、成実はそれ以上じゃない?」
「冗談抜きで俺が一番の被害者だろ
それでもまあ、大事な従兄だしさ
あいつが俺を振り回せてるってこたぁ、平和ってことだよ
平和じゃなけりゃ、俺だってあいつの我儘に付き合う暇ないし」
「……そうだね」
成実がどう思うかに関わらず、成実の立場が彼に犠牲を強いる
今でこそ平和にのんびりやってるみたいだけど、一時期は酷かったらしいから
「これからは、そういうことも無いといいな」
「まあな、俺らみたいなのは暇してるのが一番だし
っつっても最近はずっと暇してるんだぜ?
昔に比べりゃ、穏やかなもんだよ
こじゅ兄の眉間の皺は寄りっぱなしだけどさ」
揶揄うように言って笑った成実が、最後の角を曲がって別邸が見えた瞬間、固まった
別邸の目の前には、それはそれはド派手な単車が停まっている
いったい誰のものなのか、などという問いは必要ない
「あああやっぱりこっちにいるんじゃねぇか……!!」
「ドンマイ、成実!」
「くっそぉー!
また俺が雑魚寝かよ!?」
悔しそうに言って、成実が何かを思い出したように「あっ」と声を上げた
そうして私に荷物を持たせ、スマホで誰かに電話をし始めたのだ
「あ、親泰?
元親のやつ、俺ん家にいるぞ
住所教えてやっから、親貞の兄貴と一緒に迎えに来てくれ」
じゃ、と言って電話を切り、成実は別邸へと帰っていく
暇だから私も別邸に行くことにした
別邸の玄関の鍵は開いたままだ
「帰ったぞー」
「お邪魔しまーす」
成実に続いて、玄関からリビングのあるドアを開けると
面白いくらいリラックスした元親先輩がいた
「よォ成実、邪魔してるぜ!
久しぶりだな夕歌!」
「あはは、お久しぶりです、元親先輩……」
「お前なぁ……
毎回言ってるけど、ここはお前ん家じゃねぇっての」
「知ってらァ、だから邪魔してるぜって言ったんだろ」
「もうちょっとこう、客としての礼節ってもんをだな……」
「へぇ、成実の口から礼節なんてセリフが出てくるたァ驚いたぜ」
「テメェは俺をなんだと思ってんだよ!?」
ていうか、綱元先輩はどこ行ったんだろう
政宗さんが別邸から私の家に移り住んだから、別邸からは足が遠のいたかと思ったけど、そうでもないみたい
綱元先輩とも仲が良かったからだろうな
「ところで綱元の奴はどこ行った?」
「綱?
綱なら右目の兄さんと取り込み中だぜ
深刻な話じゃなさそうだったがな」
「……そうか」
短く答えて、成実が私の手から荷物を取り上げた
それはそのままリビングの端に置かれて、成実の手によって私はテーブルの椅子へ座らせられた
「喉乾いたろ、何がいい?」
「アイスティー!」
「ストレート?」
「うん!」
「はいよ」
カチャカチャと調理器具が音を立てる
成実がキッチンでアイスティーを淹れている途中で、片倉先生と綱元先輩も戻ってきた
「なんだオメェ、来てやがったのか」
「む、教え子の顔が見られて嬉しいでしょうに」
「そいつぁ久々に見た顔の奴に言うモンだ」
「久々に見た顔ですよ!」
「あと三年は顔を見せなけりゃな」
「無理では?」
片倉先生が政宗さんにお仕えしている限り、それは不可能では?
嫌でも顔を合わせるじゃん、無理だよ三年も顔を合わせないとか
「放り出してすまなかったな、元親
成実の淹れたアイスティーを飲んだら帰れ」
「固ェこと言うなよ!
今晩は泊めてくれや、ちょいと家にゃ寄り付けそうもなくてよ」
「自業自得という言葉が良く似合っているぞ」
穏やかに微笑みながら綱元先輩が辛辣な一言を放った
どうやら親貞お兄さんが帰ってきていることは、元親先輩も綱元先輩もご存知らしい
つまりここは元親先輩の避難場所になってしまったわけだ
どうりで成実が親泰君に電話したわけだ……
「ほら、アイスティー
元親もこっち来い」
「相変わらず気が利くよなァ、お前さん」
「気が利かなきゃやってけねぇからな」
全員分のアイスティーをテーブルに並べて、成実が私の隣に座った
うーん、言動は至って普通の男子なんだけど、ふとしたところで育ちの良さが滲み出るなぁ成実は
自分は背負うものがない分、気楽な立場だーなんて言うけど、なんだかんだ社交の場に呼ばれるし
社交ダンスが踊れて、更にはそういうマナーが求められる場でも卒なく立ち回れるんだから、成実もやっぱりちゃんとお坊ちゃんなんだろう
「俺の顔をガン見して楽しいか?」
「口を開かなきゃ本当に育ちの良い、いいところのお坊ちゃんなのにな……」
「遠回しにバカにした?」
「バカにはしてない、残念だなって思ってる」
「……それバカにしてないんだよな?」
そうは言うけど、姿勢は良いし、飲む時に音を立てないし、政宗さんには劣るけど細かい所作は丁寧というか
「成実もしっかりお坊ちゃんなんだなぁ……」
「忘れてるみてぇだけど、俺は割としっかりお坊ちゃんだぞ」
「自分で言うんだ」
「事実だしな」
じとっとした目で成実を見て、それから綱元先輩と片倉先生を見やる
二人は私の視線を受け、片方は曖昧に微笑み、もう片方は無言で視線を逸らした
「まァ、本家本元の従弟がぼんぼんじゃなけりゃ何なんだって話だな」
「そういうことだな
お坊ちゃんにしては気楽な立場だけどよ」
「これで気楽なのか……」
「梵に比べりゃ気楽だろ、なぁ?」
成実が二人に同意を求める
二人は揃って頷いた
そこは共通の意見なんだ
政宗さんと比べたら、だいたいの人が『気楽な立場の人』になりそうな気はするけど