36 望む明日へ
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――目の前でオシャレに盛られたパフェが輝いている
ほぁぁ、と小さく歓声を上げて、私は写真を撮り、それからパフェスプーンを手に取った
どこから手をつけようかと迷っていると、目の前からは可笑しそうに笑う声が
「わ、笑うことないじゃん」
「やー悪ぃ、こんなパフェでここまで嬉しそうにするなんて、俺の周りだとお前くらいなもんでさ」
「庶民感覚が抜けなくて悪かったな」
「それがお前らしさだ、無理に忘れる必要はない」
「ていうか忘れないで!
この金持ち集団に俺を取り残さないで!!」
「もちろんだよ親泰君!
私と親泰君は学院で苦楽と常識を分かち合った仲間だよ!」
「それとなく我らが常識外れと言われてしまったような気がしたのでござるが……」
「気のせいだよ」
幸村君が曖昧に頷く
それから二つ目のパフェに着手した
胃袋どうなってるんだ、本当に
――二年前期が始まって、早くも一ヶ月
世間はゴールデンウィークを終えて、どこか悲壮感が漂う今日この頃
二年にしてついに全休というものを手にした私達は、親泰君の空きコマを利用して、パフェを食べに来ていた
ちなみに親泰君のみ、パフェではなくコーヒーゼリーにブラックコーヒーを合わせて、ひとりコーヒー祭りを開催中だ
「梵に言えば、凝ったパフェの一つや二つ、作ってくれるだろ」
「そういうことじゃないじゃん!」
「ここで食べるからこそ価値があるのだ
理解のない奴め」
「すいませんね!
理解の無い奴で悪うございました!」
そう言いつつも、伊達家の甘党代表は、メニューの中でも一、二を争うくらい甘いやつを、それは大事そうに食べている
成実こそ、登勢と一緒にこういうところはいくらでも来られるだろうに、わざわざ私達と来なくても
「……で、結局お前、藤野を継ぐって?」
「うん」
「なんと!
夕歌殿があの藤野グループを!?」
「ああ……夕歌さんがどんどん遠い存在になっていく……」
親泰君には本当に申し訳ないことをした
あの学院の中で、同じ庶民感覚を持ち合わせた稀有な存在同士、親泰君と私は固い絆で結ばれてきた
そんな彼にとって、私が藤野を継ぐことは、上流階級に染まりきってしまうことと同義なんだろう
残念だけど、一生染まらない自信がある
染まってたまるかと思っているくらいだし
「夕歌なら大丈夫だろ
新倉もいるしな」
「ああ、あの男がそばに居るのであれば、私も賛成だ」
「新倉殿はなにやら、常人ならざる能力をお持ちでおられるご様子
夕歌殿のことも必ずお支え下さるはずでござる」
「さすが夕歌さんの執事だよね
新倉さんの爪の垢、ほんの少しでいいから煎じて兄さんに飲ませたいよ……」
親泰君の嘆きが、とうとう元親先輩にまで及んでしまった
苦労してるんだろうな、今でも……
去年の遊園地で見た親泰君のことを思い出した
ものすごい悲鳴あげて、絶叫系完全制覇コースから逃げようとしてたもんなぁ
「それじゃあしばらくしたら、お前も梵みたく忙しい感じになるのか?」
「うん、そうみたい
後継者としておばあちゃんに付き添うことになるかな」
「俺の就活が失敗したら、第二新卒で雇ってほしいな……」
「親泰君なら大丈夫だと思うけど……」
ていうか、親泰君は就活しないんだと思ってた
元親先輩と一緒に、長曾我部海運の仕事を手伝うんだとばかり思ってたや
「お前は兄の世話があるのではないか?」
「長曾我部殿はたしか、長曾我部海運の次期社長でござり申したな
親泰殿も長曾我部殿の配下となられるのでは?」
「……俺は逃げたいなぁ
もう一人の兄に任せてさぁ……」
「え!?
親泰君、まだお兄さんいたの!?」
「あ、言ってなかったっけ
親貞って名前の兄がいるんだ
こっちも親戚の家に養子に出されたから、名字は長曾我部じゃないけど」
「えー!?
そうなの、えっどんな人?
元親先輩寄り?」
「あんな破天荒は兄さんひとりで充分だよ!」
香曾我部親泰、魂の叫び
親貞お兄さんはどうやら親泰君の味方であるようだ
孤軍奮闘するわけじゃなさそうでちょっとだけ安心した
「元親先輩のことは兄さんって呼んでるけど、親貞お兄さんのことはなんて呼んでるの?」
「……夕歌さんが聞いたら、絶対可愛いって言うから言わない」
「親泰君は何もしてなくても可愛いよ」
「なんて曇りのない目で……」
「……親泰、もう諦めたほうが早いぞ」
成実がそう言って親泰君の肩をポン……と叩いた
私が酷いこと言ったみたいになってるのは何故だ
かすがは「お前より可愛い人間はこの世にいないぞ」と脈絡のないことを言い出す始末だ
そんなことは無いはずなんだけどな
私より可愛い人なんてごまんといると思うんだけどな
ほぁぁ、と小さく歓声を上げて、私は写真を撮り、それからパフェスプーンを手に取った
どこから手をつけようかと迷っていると、目の前からは可笑しそうに笑う声が
「わ、笑うことないじゃん」
「やー悪ぃ、こんなパフェでここまで嬉しそうにするなんて、俺の周りだとお前くらいなもんでさ」
「庶民感覚が抜けなくて悪かったな」
「それがお前らしさだ、無理に忘れる必要はない」
「ていうか忘れないで!
この金持ち集団に俺を取り残さないで!!」
「もちろんだよ親泰君!
私と親泰君は学院で苦楽と常識を分かち合った仲間だよ!」
「それとなく我らが常識外れと言われてしまったような気がしたのでござるが……」
「気のせいだよ」
幸村君が曖昧に頷く
それから二つ目のパフェに着手した
胃袋どうなってるんだ、本当に
――二年前期が始まって、早くも一ヶ月
世間はゴールデンウィークを終えて、どこか悲壮感が漂う今日この頃
二年にしてついに全休というものを手にした私達は、親泰君の空きコマを利用して、パフェを食べに来ていた
ちなみに親泰君のみ、パフェではなくコーヒーゼリーにブラックコーヒーを合わせて、ひとりコーヒー祭りを開催中だ
「梵に言えば、凝ったパフェの一つや二つ、作ってくれるだろ」
「そういうことじゃないじゃん!」
「ここで食べるからこそ価値があるのだ
理解のない奴め」
「すいませんね!
理解の無い奴で悪うございました!」
そう言いつつも、伊達家の甘党代表は、メニューの中でも一、二を争うくらい甘いやつを、それは大事そうに食べている
成実こそ、登勢と一緒にこういうところはいくらでも来られるだろうに、わざわざ私達と来なくても
「……で、結局お前、藤野を継ぐって?」
「うん」
「なんと!
夕歌殿があの藤野グループを!?」
「ああ……夕歌さんがどんどん遠い存在になっていく……」
親泰君には本当に申し訳ないことをした
あの学院の中で、同じ庶民感覚を持ち合わせた稀有な存在同士、親泰君と私は固い絆で結ばれてきた
そんな彼にとって、私が藤野を継ぐことは、上流階級に染まりきってしまうことと同義なんだろう
残念だけど、一生染まらない自信がある
染まってたまるかと思っているくらいだし
「夕歌なら大丈夫だろ
新倉もいるしな」
「ああ、あの男がそばに居るのであれば、私も賛成だ」
「新倉殿はなにやら、常人ならざる能力をお持ちでおられるご様子
夕歌殿のことも必ずお支え下さるはずでござる」
「さすが夕歌さんの執事だよね
新倉さんの爪の垢、ほんの少しでいいから煎じて兄さんに飲ませたいよ……」
親泰君の嘆きが、とうとう元親先輩にまで及んでしまった
苦労してるんだろうな、今でも……
去年の遊園地で見た親泰君のことを思い出した
ものすごい悲鳴あげて、絶叫系完全制覇コースから逃げようとしてたもんなぁ
「それじゃあしばらくしたら、お前も梵みたく忙しい感じになるのか?」
「うん、そうみたい
後継者としておばあちゃんに付き添うことになるかな」
「俺の就活が失敗したら、第二新卒で雇ってほしいな……」
「親泰君なら大丈夫だと思うけど……」
ていうか、親泰君は就活しないんだと思ってた
元親先輩と一緒に、長曾我部海運の仕事を手伝うんだとばかり思ってたや
「お前は兄の世話があるのではないか?」
「長曾我部殿はたしか、長曾我部海運の次期社長でござり申したな
親泰殿も長曾我部殿の配下となられるのでは?」
「……俺は逃げたいなぁ
もう一人の兄に任せてさぁ……」
「え!?
親泰君、まだお兄さんいたの!?」
「あ、言ってなかったっけ
親貞って名前の兄がいるんだ
こっちも親戚の家に養子に出されたから、名字は長曾我部じゃないけど」
「えー!?
そうなの、えっどんな人?
元親先輩寄り?」
「あんな破天荒は兄さんひとりで充分だよ!」
香曾我部親泰、魂の叫び
親貞お兄さんはどうやら親泰君の味方であるようだ
孤軍奮闘するわけじゃなさそうでちょっとだけ安心した
「元親先輩のことは兄さんって呼んでるけど、親貞お兄さんのことはなんて呼んでるの?」
「……夕歌さんが聞いたら、絶対可愛いって言うから言わない」
「親泰君は何もしてなくても可愛いよ」
「なんて曇りのない目で……」
「……親泰、もう諦めたほうが早いぞ」
成実がそう言って親泰君の肩をポン……と叩いた
私が酷いこと言ったみたいになってるのは何故だ
かすがは「お前より可愛い人間はこの世にいないぞ」と脈絡のないことを言い出す始末だ
そんなことは無いはずなんだけどな
私より可愛い人なんてごまんといると思うんだけどな