35 意志を継ぐ者
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それから二週間が経ち、前期が本格的にスタートした
四月は何があるかというと、新入生の勧誘シーズンである
「……勧誘期間のはずなんだよなぁ」
剣道場にずらっと並んだ見学生を見やって、成実が呟いた
私も同じことを言いたい
勧誘する前に新入生の方からわんさかやって来るって、どういう状況なんだろう
「八割が学院からの人間だもんな」
「見覚えのある顔がたくさんいるもんね」
「全員お前がいるからここ受けたやつだろうな……」
「どうしてこうなった……」
政宗さんからの視線が痛い
違う、本当に私は何もしていない……
私が声を掛けてきたわけじゃなくて、向こうから来たんだから、無下に扱うわけにもいかないというか……
「伊達ファミリーは何なの?
歩く客寄せパンダ?」
「もっとあったろ、いい例えがよ」
新部長の一言に成実が容赦なくツッコミを返した
しかしながら学院出身者ということは、実力もそれなりにあるということ
どんどん強豪チームになっていくな、この剣道部……
「そういや、あれ書いたか、ゼミの志望動機」
「書いた書いた、ここに来る前に出してきたよ
成実は?」
「俺も書いて出してきた
かすがと幸村も明日の休み時間に出してくるってよ」
「四人で同じゼミに入れるといいよね」
「そうだなー
何より、お前を一人にはしておけないし」
「あはは……」
政宗さんは綱元先輩と同じゼミだけど、綱元先輩は四回生で政宗さんは三回生だから、そもそも時間割が違う
だから政宗さんには留守さんが絶えず張り付いている
学院時代は、学院内のセキュリティが万全だったし、成実と綱元先輩に加えて片倉先生もいたから、心配はいらなかったんだけど……
成実の役割は私の護衛になったから、政宗さんよりも私の側、というわけだ
……これで登勢は嫉妬しないで私の身の安全を案じてるっていうんだから、私には勿体ないくらいの友人だ
そろそろ練習をしたいなぁ、と部長をちらりと横目で見たとき、やっと師範がやってきた
そして壁に並んだ新入生の多さに、綺麗な二度見をした
「今ものすごく綺麗な二度見したよな、師範」
「めっちゃ綺麗な二度見だったよね」
師範が来たので練習開始だ
整列して挨拶をして、まずは通常通りの練習を始めた
去年の冬でゴリゴリに鍛えられた部員達にとって、かつてのメニューはもはやアップ程度
なんと学院方式のスパルタメニューが通常メニューとなってしまったのだ
目に見えて学院出身者の顔色が悪い、メニューの内容に心当たりがあるようで何よりだ
「うー、四月なのに暑い」
「ほれタオル」
「ありがとうー」
成実から投げ渡されたタオルを掴んで顔を拭く
メイクは練習が始まる前に落としたので無問題だ
花の女子大生がそれでいいのかという話は無視する
「ゼミの件、なんか言ってたか、梵は」
「口では何も言わなかったかな
私ならそうするって分かってはいただろうけど、残念だなって顔はしてた」
「あの梵がねぇ……」
政宗さんの方を見て、成実がニヤニヤとした笑みを浮かべた
長年付き添ってきた従兄に思うところがあるのだろうか
「ま、いい傾向だな」
「なにが?」
「梵の話
大人なんだかガキなんだか分かんねぇとこあったけど、お前に対しては素が出せてるようで安心した」
「あはは、そりゃあ私相手に格好つけても今更だし……それは私もだけど
お互い情けないところ見せ合って、それでも一緒にいたいって思えた相手だもん
俺様だし人の話あんまり聞かないし、振り回されることも多いけど――」
あの背中を信じていれば、きっと大丈夫
不思議とそう思えてしまうのだから、伊達政宗という人間に備わったカリスマ性には恐れ入る
それでも彼だって人間だ、肩の力を抜ける瞬間はあっていい
「私相手には、何も背負っていない、ただの伊達政宗で接してほしいって思ってるよ」
「……だな
四方八方に見栄を張る奴だけど、お前と一緒にいる時くらいは自然体でいてくれって、俺も思う」
その結果が、あのムスッとした拗ね顔なのだとしたら、政宗さんって実はかわいい人なのかもしれない
天下の伊達財閥を将来背負って立つような人が、好きな人とゼミが被らなかったって拗ねるのか……
「片倉先生なら分かってくれるかも
政宗さんって可愛いですよねって言ったら」
「あーまあ、多分な
綱元とか原田あたりも心当たりありそうだけど、俺はアイツにいっちばん振り回されてきた自負があるせいか、梵のこと可愛いとは思えねぇもん」
「成実が振り回されてるのは、政宗さんのせいだけじゃないと思うけどね」
「半分以上は梵だぞ、残り半分を綱元とその他が競ってっけど」
「嫌って言えない性格も考えものだよねぇ」
「拒否っても圧に負けるんだよなー……」
さすが成実、伊達家のヒエラルキー最底辺にいる男
だから成実が結果的に貧乏くじ担当になるんじゃないかなと思わんでもない
でも成実がノーを貫こうとしたところで、綱元先輩の笑顔の圧は怖いし、片倉先生と政宗さんは端からノーなんて聞かないだろうし
「……成実
私達相手には、ちゃんと嫌だって言っていいからね……」
「えらく悲しい同情をもらった気がするのは気のせいか?」
可哀想な成実、せめて私達といる時はノーをノーと言えるようにしてあげたい……
最初の話題からかなり遠いところに着地した気がするけど、何話してたんだっけな……
四月は何があるかというと、新入生の勧誘シーズンである
「……勧誘期間のはずなんだよなぁ」
剣道場にずらっと並んだ見学生を見やって、成実が呟いた
私も同じことを言いたい
勧誘する前に新入生の方からわんさかやって来るって、どういう状況なんだろう
「八割が学院からの人間だもんな」
「見覚えのある顔がたくさんいるもんね」
「全員お前がいるからここ受けたやつだろうな……」
「どうしてこうなった……」
政宗さんからの視線が痛い
違う、本当に私は何もしていない……
私が声を掛けてきたわけじゃなくて、向こうから来たんだから、無下に扱うわけにもいかないというか……
「伊達ファミリーは何なの?
歩く客寄せパンダ?」
「もっとあったろ、いい例えがよ」
新部長の一言に成実が容赦なくツッコミを返した
しかしながら学院出身者ということは、実力もそれなりにあるということ
どんどん強豪チームになっていくな、この剣道部……
「そういや、あれ書いたか、ゼミの志望動機」
「書いた書いた、ここに来る前に出してきたよ
成実は?」
「俺も書いて出してきた
かすがと幸村も明日の休み時間に出してくるってよ」
「四人で同じゼミに入れるといいよね」
「そうだなー
何より、お前を一人にはしておけないし」
「あはは……」
政宗さんは綱元先輩と同じゼミだけど、綱元先輩は四回生で政宗さんは三回生だから、そもそも時間割が違う
だから政宗さんには留守さんが絶えず張り付いている
学院時代は、学院内のセキュリティが万全だったし、成実と綱元先輩に加えて片倉先生もいたから、心配はいらなかったんだけど……
成実の役割は私の護衛になったから、政宗さんよりも私の側、というわけだ
……これで登勢は嫉妬しないで私の身の安全を案じてるっていうんだから、私には勿体ないくらいの友人だ
そろそろ練習をしたいなぁ、と部長をちらりと横目で見たとき、やっと師範がやってきた
そして壁に並んだ新入生の多さに、綺麗な二度見をした
「今ものすごく綺麗な二度見したよな、師範」
「めっちゃ綺麗な二度見だったよね」
師範が来たので練習開始だ
整列して挨拶をして、まずは通常通りの練習を始めた
去年の冬でゴリゴリに鍛えられた部員達にとって、かつてのメニューはもはやアップ程度
なんと学院方式のスパルタメニューが通常メニューとなってしまったのだ
目に見えて学院出身者の顔色が悪い、メニューの内容に心当たりがあるようで何よりだ
「うー、四月なのに暑い」
「ほれタオル」
「ありがとうー」
成実から投げ渡されたタオルを掴んで顔を拭く
メイクは練習が始まる前に落としたので無問題だ
花の女子大生がそれでいいのかという話は無視する
「ゼミの件、なんか言ってたか、梵は」
「口では何も言わなかったかな
私ならそうするって分かってはいただろうけど、残念だなって顔はしてた」
「あの梵がねぇ……」
政宗さんの方を見て、成実がニヤニヤとした笑みを浮かべた
長年付き添ってきた従兄に思うところがあるのだろうか
「ま、いい傾向だな」
「なにが?」
「梵の話
大人なんだかガキなんだか分かんねぇとこあったけど、お前に対しては素が出せてるようで安心した」
「あはは、そりゃあ私相手に格好つけても今更だし……それは私もだけど
お互い情けないところ見せ合って、それでも一緒にいたいって思えた相手だもん
俺様だし人の話あんまり聞かないし、振り回されることも多いけど――」
あの背中を信じていれば、きっと大丈夫
不思議とそう思えてしまうのだから、伊達政宗という人間に備わったカリスマ性には恐れ入る
それでも彼だって人間だ、肩の力を抜ける瞬間はあっていい
「私相手には、何も背負っていない、ただの伊達政宗で接してほしいって思ってるよ」
「……だな
四方八方に見栄を張る奴だけど、お前と一緒にいる時くらいは自然体でいてくれって、俺も思う」
その結果が、あのムスッとした拗ね顔なのだとしたら、政宗さんって実はかわいい人なのかもしれない
天下の伊達財閥を将来背負って立つような人が、好きな人とゼミが被らなかったって拗ねるのか……
「片倉先生なら分かってくれるかも
政宗さんって可愛いですよねって言ったら」
「あーまあ、多分な
綱元とか原田あたりも心当たりありそうだけど、俺はアイツにいっちばん振り回されてきた自負があるせいか、梵のこと可愛いとは思えねぇもん」
「成実が振り回されてるのは、政宗さんのせいだけじゃないと思うけどね」
「半分以上は梵だぞ、残り半分を綱元とその他が競ってっけど」
「嫌って言えない性格も考えものだよねぇ」
「拒否っても圧に負けるんだよなー……」
さすが成実、伊達家のヒエラルキー最底辺にいる男
だから成実が結果的に貧乏くじ担当になるんじゃないかなと思わんでもない
でも成実がノーを貫こうとしたところで、綱元先輩の笑顔の圧は怖いし、片倉先生と政宗さんは端からノーなんて聞かないだろうし
「……成実
私達相手には、ちゃんと嫌だって言っていいからね……」
「えらく悲しい同情をもらった気がするのは気のせいか?」
可哀想な成実、せめて私達といる時はノーをノーと言えるようにしてあげたい……
最初の話題からかなり遠いところに着地した気がするけど、何話してたんだっけな……