35 意志を継ぐ者
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
シラバスを開いて頭を抱えること数十分
大学の売店横にある休憩スペースで固まった我々クインテットは、絶賛時間割の組み立てに追われていた
「猿でも分かる!
簡単オススメ履修登録セット!
……みたいなのないかな」
「残念ながら無さそうだな」
「ないかー……」
かすがの無慈悲な一言に私は撃沈した
一から時間割を考えるの、面倒なのになぁ……
35 意志を継ぐ者
さて四月頭ともなれば、春休みの終了が目の前となり、構内はフレッシュな新入生で溢れるというわけだ
シラバスを受け取りに来た私たちは、そのままの流れで売店横の飲食エリアに留まった
誰もいないので、大きなテーブルも取り放題
遠慮なくそのうちの一つをを五人で囲んだ
「選択必修、どれにする?
みんなコースを揃えてくれたのは嬉しいけどさ」
「取りやすいのがいいよな」
成実の呟きには大いに賛同した
為になるかというより、単位を取れるかが重要なのだ
幸村君は言いたげな目をしていた
「いいよなぁ、四人は……
俺は学部が違うから、孤軍奮闘って感じだもんな」
「ご、ごめんねなんか……」
親泰君は我々とは学部が違う
ゆえに、私達と同じ講義は取れないのだ
同じ学部のお友達と合わせるそうなので、申し訳ないが頑張ってほしい
「ゼミはどうするんだ?
どうせ入るなら、同じゼミにしないか?」
「そうでござるな
夕歌殿らがご一緒であれば、某も心強うござる!」
「どこのゼミにするかは決めてる?」
「夕歌は決めてねぇの?
こういうの、お前のほうがやりたいこともはっきりしてそうだと思ったけど」
「あー……」
言葉を濁して俯く
考えていたわけじゃないけど、でもそれはみんなを巻き込むほどのものじゃないというか
みんなで入るのなら、もっと別の……有名なゼミに入ったほうがいいんじゃないかな
「夕歌のことだ
有沢ゼミに入ると思っていたが」
「……!」
「有沢ゼミ?
そこって有名だったか?」
「いや、知名度で言えばさほどではない
……厳密に言えば、有沢ゼミが取り扱う研究範囲そのものは、一躍有名にはなったがな
有沢ゼミは後続のゼミだ
その範囲を最初に取り扱ったのは、今は亡き斎藤教授だった」
「斎藤……ああ、そっか
お前の親父さんの……」
小さく頷いて俯く
この場所で、お父さんの講義を受けられたら、どんなに良かっただろう
今になってそんな思いが浮かんでしまった
はるか昔に絶たれたその夢を、私はまだ抱えていて、捨てる場所を見失ったまま
「じゃ、有沢ゼミにすっか」
「えっ」
「お前がやりたいと思ったことをやるのが一番だろ
まぁ梵はちょっとうるせぇかもだけどよ」
「同じゼミに入ってくると思っているだろうからな
だがそれは夕歌が自由に決めることだ
独眼竜に合わせる必要はないだろう」
「某も、夕歌殿のお父上が開拓されたという分野に興味が沸いておりまする!
夕歌殿さえ宜しければ、有沢ぜみで良いのではござりませぬか?」
幸村君までこう言ってるし……
お言葉に甘えて、有沢教授のゼミにしようかな
有沢教授はお父さんのことを知っているんだろうか
もし知っているなら、教授をしていたときのお父さんの姿を教えてもらえないかな
「ゼミも決まったことだし、履修登録に戻ろうぜ」
「本気で猿でも分かる履修登録みたいなやつないかな」
「ないと思う」
「親泰君が辛辣」
優しさがほしいよ、親泰君の
しくしくと泣く真似をしながら、履修登録を進めていく
どうにかこうにか、時間割が確定した
「Hey,guys.
まだ春休みだってのに、こんなところでmeetingか?」
「うお!?
梵、なんでここに!」
突然現れた政宗さんに全員が驚き、その後から現れた綱元先輩に成実の顔がちょっと強ばった
聞けば昨日、綱元先輩が買っておいたプリンを勝手に食べてしまったらしい
申し訳ないが成実の自業自得だと思う
「政宗殿、お久しゅうござる!
鬼庭殿もご一緒でござったか!」
「ご無沙汰してます、政宗さん
春休み中は兄が迷惑を掛けてませんでしたか?」
「俺が忙しくて、元親の野郎の相手をしてる暇がなかったしな
どちらかと言やぁ、迷惑被ってんのは綱元だろ」
「いやぜってー俺」
成実が呟いた
確か、元親先輩が泊まりに来ると、成実の部屋が占拠されるんだっけ
ということは、私と政宗さんが知らなかっただけで、元親先輩の襲来があったのだろう……
元親先輩、せっかくなら私達の家にも寄ってくれれば良かったのに
「元親先輩は元気?」
「元気も元気、こっちがうんざりするくらい
春休み中も、舎弟を連れて元気にツーリングに行ってたよ
俺も連れて行かれそうだったから、全力で拒否って香曾我部の家に逃げ込んだんだ」
親泰君は元親先輩の親戚筋である香曾我部の養子
普段は元親先輩のいる長曾我部家で過ごしているらしいけど、香曾我部のご家族とも仲良くやっているのだとか
「……親泰は持ってんのか、免許?」
「実は春休みの間に教習所に行って、取ったんです、大型二輪の免許
香曾我部のおばさんが兄さんに話しちゃったらしくて、危うくツーリングに巻き込まれそうになりましたけど
あんなのどう見たって暴走族じゃないですか?
俺は普通の人間でいたいんです!」
香曾我部親泰、魂の叫び
元親先輩と舎弟さん達の風貌を知っているだけに、「暴走族」という的確な表現へのフォローが見つからなかった
ガラの悪さなら、伊達の護衛役達も負けてはいないと思うけどね……
大学の売店横にある休憩スペースで固まった我々クインテットは、絶賛時間割の組み立てに追われていた
「猿でも分かる!
簡単オススメ履修登録セット!
……みたいなのないかな」
「残念ながら無さそうだな」
「ないかー……」
かすがの無慈悲な一言に私は撃沈した
一から時間割を考えるの、面倒なのになぁ……
35 意志を継ぐ者
さて四月頭ともなれば、春休みの終了が目の前となり、構内はフレッシュな新入生で溢れるというわけだ
シラバスを受け取りに来た私たちは、そのままの流れで売店横の飲食エリアに留まった
誰もいないので、大きなテーブルも取り放題
遠慮なくそのうちの一つをを五人で囲んだ
「選択必修、どれにする?
みんなコースを揃えてくれたのは嬉しいけどさ」
「取りやすいのがいいよな」
成実の呟きには大いに賛同した
為になるかというより、単位を取れるかが重要なのだ
幸村君は言いたげな目をしていた
「いいよなぁ、四人は……
俺は学部が違うから、孤軍奮闘って感じだもんな」
「ご、ごめんねなんか……」
親泰君は我々とは学部が違う
ゆえに、私達と同じ講義は取れないのだ
同じ学部のお友達と合わせるそうなので、申し訳ないが頑張ってほしい
「ゼミはどうするんだ?
どうせ入るなら、同じゼミにしないか?」
「そうでござるな
夕歌殿らがご一緒であれば、某も心強うござる!」
「どこのゼミにするかは決めてる?」
「夕歌は決めてねぇの?
こういうの、お前のほうがやりたいこともはっきりしてそうだと思ったけど」
「あー……」
言葉を濁して俯く
考えていたわけじゃないけど、でもそれはみんなを巻き込むほどのものじゃないというか
みんなで入るのなら、もっと別の……有名なゼミに入ったほうがいいんじゃないかな
「夕歌のことだ
有沢ゼミに入ると思っていたが」
「……!」
「有沢ゼミ?
そこって有名だったか?」
「いや、知名度で言えばさほどではない
……厳密に言えば、有沢ゼミが取り扱う研究範囲そのものは、一躍有名にはなったがな
有沢ゼミは後続のゼミだ
その範囲を最初に取り扱ったのは、今は亡き斎藤教授だった」
「斎藤……ああ、そっか
お前の親父さんの……」
小さく頷いて俯く
この場所で、お父さんの講義を受けられたら、どんなに良かっただろう
今になってそんな思いが浮かんでしまった
はるか昔に絶たれたその夢を、私はまだ抱えていて、捨てる場所を見失ったまま
「じゃ、有沢ゼミにすっか」
「えっ」
「お前がやりたいと思ったことをやるのが一番だろ
まぁ梵はちょっとうるせぇかもだけどよ」
「同じゼミに入ってくると思っているだろうからな
だがそれは夕歌が自由に決めることだ
独眼竜に合わせる必要はないだろう」
「某も、夕歌殿のお父上が開拓されたという分野に興味が沸いておりまする!
夕歌殿さえ宜しければ、有沢ぜみで良いのではござりませぬか?」
幸村君までこう言ってるし……
お言葉に甘えて、有沢教授のゼミにしようかな
有沢教授はお父さんのことを知っているんだろうか
もし知っているなら、教授をしていたときのお父さんの姿を教えてもらえないかな
「ゼミも決まったことだし、履修登録に戻ろうぜ」
「本気で猿でも分かる履修登録みたいなやつないかな」
「ないと思う」
「親泰君が辛辣」
優しさがほしいよ、親泰君の
しくしくと泣く真似をしながら、履修登録を進めていく
どうにかこうにか、時間割が確定した
「Hey,guys.
まだ春休みだってのに、こんなところでmeetingか?」
「うお!?
梵、なんでここに!」
突然現れた政宗さんに全員が驚き、その後から現れた綱元先輩に成実の顔がちょっと強ばった
聞けば昨日、綱元先輩が買っておいたプリンを勝手に食べてしまったらしい
申し訳ないが成実の自業自得だと思う
「政宗殿、お久しゅうござる!
鬼庭殿もご一緒でござったか!」
「ご無沙汰してます、政宗さん
春休み中は兄が迷惑を掛けてませんでしたか?」
「俺が忙しくて、元親の野郎の相手をしてる暇がなかったしな
どちらかと言やぁ、迷惑被ってんのは綱元だろ」
「いやぜってー俺」
成実が呟いた
確か、元親先輩が泊まりに来ると、成実の部屋が占拠されるんだっけ
ということは、私と政宗さんが知らなかっただけで、元親先輩の襲来があったのだろう……
元親先輩、せっかくなら私達の家にも寄ってくれれば良かったのに
「元親先輩は元気?」
「元気も元気、こっちがうんざりするくらい
春休み中も、舎弟を連れて元気にツーリングに行ってたよ
俺も連れて行かれそうだったから、全力で拒否って香曾我部の家に逃げ込んだんだ」
親泰君は元親先輩の親戚筋である香曾我部の養子
普段は元親先輩のいる長曾我部家で過ごしているらしいけど、香曾我部のご家族とも仲良くやっているのだとか
「……親泰は持ってんのか、免許?」
「実は春休みの間に教習所に行って、取ったんです、大型二輪の免許
香曾我部のおばさんが兄さんに話しちゃったらしくて、危うくツーリングに巻き込まれそうになりましたけど
あんなのどう見たって暴走族じゃないですか?
俺は普通の人間でいたいんです!」
香曾我部親泰、魂の叫び
元親先輩と舎弟さん達の風貌を知っているだけに、「暴走族」という的確な表現へのフォローが見つからなかった
ガラの悪さなら、伊達の護衛役達も負けてはいないと思うけどね……
1/5ページ