初雪
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飛んでくる雪玉をギリギリで躱す。
小十郎の奴、俺に投げる時だけ遠慮のひとつもねぇときた。
「ほぉ、まだ余裕はありそうですな」
「ンの野郎……」
ぶん投げた雪玉をあっさりと見切って躱し、小十郎の手からまたもや豪速球が飛んできた。
当たらなかったそいつは、背後にある木の幹にぶち当たり、その衝撃で枝葉に積もった雪がドサッと音を立てて落ちた。
当たったら骨が砕けるんじゃねぇか?
「えいっ!」
「その意気や良し。しかしまだまだ足りませんな」
月夜と話しているくせに、飛んでくるのは常に俺だ。
おかげで月夜は投げるだけになっちまってるし、こっちは足元の雪も少なくなってきやがった。
「ッ、うぉ!?」
雪に足を取られかけた瞬間。
「そこだ!!」
俺の頭に雪玉がぶつかった。
「痛ってぇ!!」
中に石でも入ってんのか!?
人が殺せるだろ、なんだこの威力!!
恨みがましく小十郎を見上げると、なんとその手にはまだ三つも雪玉が握られている。
終わる頃には俺の顔がボコボコにされてるんじゃねぇか、これ……?
「兄様、負けなの!」
「小十郎テメェ俺の頭をかち割る気か!!」
「当たらなければどうということはございますまい」
「マジでお前、中に石でも入れてやがんのか?」
「まさか。そのようなもの、人に向かって投げるものではありませぬ。ただ少し渾身の力で雪を握っただけのこと」
「馬鹿力が過ぎんだろ……」
およそ雪玉を当てられただけとは思えない音がしたぞ、俺の頭から。
雪玉を受け止めた額を触ってみたが、コブになっていないことを願うばかりだ。
やれやれ──と持っていた雪玉を地面に放り投げた時。
「隙あり、なの!」
弾んだ声と共に、小十郎の顔に雪玉が飛んでいった。
突然の事で避けられず、小十郎が顔面でそれを受け止める。
投げた本人は俺の隣で大はしゃぎだ。
「やった、当たった!」
「でかした月夜、よくやった!」
「兄様の仇は取ったの!」
なんてよくできた妹なんだ。
優しい妹を持てて、俺は幸せ者だな。
ざまぁみやがれ!
俺に凶器みてぇなモンを投げるからだぜ!
「この辺りは雪も少なくなっちまったな。月夜の部屋の前に移動するか」
「うん!」
月夜がウキウキとした足取りで、庭を歩いていく。
ちょいとお転婆が顔を出してきたような気もするが、俺に比べたら可愛いもんだろう。
まぁそもそも俺の妹である時点で、お転婆は約束されたようなもんだしな。
月夜の部屋の前も見事に真っ白で、桜の枝は重たそうに頭を垂れている。
池の氷も表面は凍っちまったらしい。
「さすがにまだ南天は実をつけちゃいねぇか」
「なんてん?」
「赤く小さな実をつける植物です。冬に実をつけるため、雪うさぎの目と耳に使用することが多くありましてな」
南天の木は葉こそあるが、赤い実はまだついていない。
今回は雪うさぎを作るのは無理そうだな。
娘っ子はそういうのが好きだと思ったんだが。
だがまあ、雪だるまくらいなら作れそうだ。
「小十郎、月夜。ありったけの雪をかき集めてこい」
「うん!」
「雪掻きの道具を持ってまいります。しばしお待ちを」
「月夜も行く!」
「だったら小十郎が戻ってくるまで、月夜は俺と木の枝を探すぞ」
それだけで俺が何を作る気なのか小十郎は分かったらしい。
笑いながら、桶も持ってくると行って去っていった。
さて、庭には大小様々な枝が落ちている。
唐松の足元にはお誂え向きに松ぼっくりも落ちていた。
「それ、なぁに?」
「ん? 松ぼっくりは見た事なかったか。この松の木になってたやつで、こうやって開いたあとは地面に落ちるんだ」
月夜の手のひらに乗せてやると、おっかなびっくりしながら、小さな指が松ぼっくりをつついた。
危険はないと理解した月夜が、それを持ち上げて、開いたかさの中を覗き込む。
中には何もないが、初めて見たら面白く映るものなんだろう。
「これ、何に使うの?」
「そいつはあとのお楽しみだ。ひとまず枝を拾うぞ」
「うん」
手として使う太くて長い枝を二本。
眉と口にする短い枝を三本。
探そうとすると、これがなかなか難しい。
月夜と一緒になって探しているうちに、月夜の部屋の前からすっかり遠ざかってしまったことに気付いたのは──。
「……そこで何をしているのです」
頭上から、雪にも負けないくらいの冷たい声が降ってきた瞬間、だった。
小十郎の奴、俺に投げる時だけ遠慮のひとつもねぇときた。
「ほぉ、まだ余裕はありそうですな」
「ンの野郎……」
ぶん投げた雪玉をあっさりと見切って躱し、小十郎の手からまたもや豪速球が飛んできた。
当たらなかったそいつは、背後にある木の幹にぶち当たり、その衝撃で枝葉に積もった雪がドサッと音を立てて落ちた。
当たったら骨が砕けるんじゃねぇか?
「えいっ!」
「その意気や良し。しかしまだまだ足りませんな」
月夜と話しているくせに、飛んでくるのは常に俺だ。
おかげで月夜は投げるだけになっちまってるし、こっちは足元の雪も少なくなってきやがった。
「ッ、うぉ!?」
雪に足を取られかけた瞬間。
「そこだ!!」
俺の頭に雪玉がぶつかった。
「痛ってぇ!!」
中に石でも入ってんのか!?
人が殺せるだろ、なんだこの威力!!
恨みがましく小十郎を見上げると、なんとその手にはまだ三つも雪玉が握られている。
終わる頃には俺の顔がボコボコにされてるんじゃねぇか、これ……?
「兄様、負けなの!」
「小十郎テメェ俺の頭をかち割る気か!!」
「当たらなければどうということはございますまい」
「マジでお前、中に石でも入れてやがんのか?」
「まさか。そのようなもの、人に向かって投げるものではありませぬ。ただ少し渾身の力で雪を握っただけのこと」
「馬鹿力が過ぎんだろ……」
およそ雪玉を当てられただけとは思えない音がしたぞ、俺の頭から。
雪玉を受け止めた額を触ってみたが、コブになっていないことを願うばかりだ。
やれやれ──と持っていた雪玉を地面に放り投げた時。
「隙あり、なの!」
弾んだ声と共に、小十郎の顔に雪玉が飛んでいった。
突然の事で避けられず、小十郎が顔面でそれを受け止める。
投げた本人は俺の隣で大はしゃぎだ。
「やった、当たった!」
「でかした月夜、よくやった!」
「兄様の仇は取ったの!」
なんてよくできた妹なんだ。
優しい妹を持てて、俺は幸せ者だな。
ざまぁみやがれ!
俺に凶器みてぇなモンを投げるからだぜ!
「この辺りは雪も少なくなっちまったな。月夜の部屋の前に移動するか」
「うん!」
月夜がウキウキとした足取りで、庭を歩いていく。
ちょいとお転婆が顔を出してきたような気もするが、俺に比べたら可愛いもんだろう。
まぁそもそも俺の妹である時点で、お転婆は約束されたようなもんだしな。
月夜の部屋の前も見事に真っ白で、桜の枝は重たそうに頭を垂れている。
池の氷も表面は凍っちまったらしい。
「さすがにまだ南天は実をつけちゃいねぇか」
「なんてん?」
「赤く小さな実をつける植物です。冬に実をつけるため、雪うさぎの目と耳に使用することが多くありましてな」
南天の木は葉こそあるが、赤い実はまだついていない。
今回は雪うさぎを作るのは無理そうだな。
娘っ子はそういうのが好きだと思ったんだが。
だがまあ、雪だるまくらいなら作れそうだ。
「小十郎、月夜。ありったけの雪をかき集めてこい」
「うん!」
「雪掻きの道具を持ってまいります。しばしお待ちを」
「月夜も行く!」
「だったら小十郎が戻ってくるまで、月夜は俺と木の枝を探すぞ」
それだけで俺が何を作る気なのか小十郎は分かったらしい。
笑いながら、桶も持ってくると行って去っていった。
さて、庭には大小様々な枝が落ちている。
唐松の足元にはお誂え向きに松ぼっくりも落ちていた。
「それ、なぁに?」
「ん? 松ぼっくりは見た事なかったか。この松の木になってたやつで、こうやって開いたあとは地面に落ちるんだ」
月夜の手のひらに乗せてやると、おっかなびっくりしながら、小さな指が松ぼっくりをつついた。
危険はないと理解した月夜が、それを持ち上げて、開いたかさの中を覗き込む。
中には何もないが、初めて見たら面白く映るものなんだろう。
「これ、何に使うの?」
「そいつはあとのお楽しみだ。ひとまず枝を拾うぞ」
「うん」
手として使う太くて長い枝を二本。
眉と口にする短い枝を三本。
探そうとすると、これがなかなか難しい。
月夜と一緒になって探しているうちに、月夜の部屋の前からすっかり遠ざかってしまったことに気付いたのは──。
「……そこで何をしているのです」
頭上から、雪にも負けないくらいの冷たい声が降ってきた瞬間、だった。