23章
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城の中からの最短ルートは、嫌がらせのごとく茨で邪魔されて進めなかった。
結局かなりの遠回りになった挙句、ククールが姫様の部屋のクローゼットからガーターベルトを発見して、私とゼシカからボコボコにされていた。
なんつーもの引っ張り出しやがったんだ、あのバカリスマは!
「あ……」
「……ピアノ」
私とエイトは、同時に足を止めた。
姫様のお部屋にあるグランドピアノ。
姫様はピアノがお上手で、透き通るような歌声に誰もが癒されていた。
「以前はよく姫がピアノを弾いて聴かせてくれたものだが、馬の姿ではそれも無理な相談じゃ。せめて国一番と言われた美しい歌声だけでも聴ければよいのだが、今はそれも馬の嘶き……」
陛下が嘆きの言葉と共にピアノの鍵盤を鳴らす。
ピアノは呪いの衝撃のせいか、はたまた長いこと調律をされていないせいか、調子外れな音を響かせた。
「なんと不憫な! ミーティアよ、父は必ずお前を元の姿に戻してやるからな〜!」
そうですね、と。
私はそう頷くしかなかった。
今更たらればを言っても仕方ないと分かってはいる。
でも、考えてしまうんだ。
もしあの夜、私が夜勤なんかやらず、姫様たちの警備を受け持っていたら。
そうしたらドルマゲスを止めることが出来たかもしれないって。
沈んだ気持ちのままに、本棚に目をやると、タイトルのない本を見つけた。
おもむろにページを開いてみると、大きな文字で「大吉」と書いてあった。
……これ、小さかった頃の姫様の字だ。
ちょっと嬉しくなりながら、そっと本棚に戻す。
とりあえず、ガーターベルトはククールから取り上げて、共有の袋に入れておいた。
バカリスマはあとで処す。
姫様の隣は、あの封印の間。
エイトは扉を開けたものの、中に入ろうとはしなかった。
長い階段を見上げる横顔からは、なんの感情も読み取れない。
あの夜、エイトは私の手を引いて城中を走り回った。
私はエイトに手を引かれながら、『何が起きたの』『怖い』と震えていることしか出来なくて。
お部屋におられないと分かったエイトは、迷うことなく封印の間への階段を駆け上がった。
その先にいたのは、魔物に姿を変えられてしまった陛下と、馬に変えられてしまった姫様。
夢だったら良かったのに、と……そう思ったことは、一度や二度ではない。
それでも、私達はドルマゲスを追う旅を続けている。
いつか必ず……奴にたどり着くと信じて。
「この上は何になってるの?」
「ここは封印の間で……。ドルマゲスに奪われた杖を封印してたところ」
みんなで階段を上って、封印の所へと向かう。
床に描かれた結界は今も作動しているけれど、肝心の杖はドルマゲスに持ち去られたままだ。
「あの時、わしと姫が茨の呪いから無事でいられたのは、この結界のおかげだったのじゃな。杖の魔力を封じるため、我が先祖によって作られた結界が、子孫であるわしらを守ってくれたわけだ。ご先祖さまには感謝せねばな。……もっとも、できれば変身の呪いからも守ってほしかったんじゃがのう」
そう言って陛下は肩を落とした。
お命が無事であっただけでも、私としては嬉しいことだけど……。
でも陛下も姫様も姿を変えられたせいで、これまでに幾度となく苦労を強いられた。
そう考えると、たしかに変身の呪いからも守ってほしいもんだよね。
封印の間を挟んだ隣は、たしか姫様の世話係の部屋だった。
エイトの手がドアを開けると、世話係のメイドは、今にも部屋を飛び出そうとしている姿で呪われていた。
「この者は、姫の世話係だったな。こんな姿になってしまって……。まったく可哀想なことじゃよ」
私達とさほど年齢は変わらなかったこの子は、姫様の世話係としてよく働いていた。
姫様の信頼も厚かったし、私たち城仕えの人間から見ても、勤勉な働き者だったように思う。
このときもきっと、姫様の元へ駆け付けようとしたのだろう。
そうして、自分に迫ってきた茨に恐怖して──。
「……行こう。先に進まなきゃ」
「うん」
エイトはここに来てから、何度、こうやって顔を歪めただろう。
助かってしまったと、自分の無事を悔いているようだった。
……でもこんなの、エイトのせいなんかじゃない。
だって、予測できるわけがなかったんだから。
こんな悲劇が起きるなんて──あの日の昼、ドルマゲスが奇術を披露した時に、分かるはずがなかったんだから。
三階のバルコニーから塔の螺旋階段を降りて一階へ。
玉座の間の後ろに差し掛かって、私達は引き寄せられるように二つ並んだ玉座へと近付いた。
いつも陛下が座っておられる椅子には、大臣が座ったまま呪われている。
「おお、大臣よ。変わり果てた姿になってしまって……。しかし呪いがかけられたのは夜中だったのに、なぜおぬしは謁見の間の、それも玉座の上におるのじゃ? さてはおぬし、こっそり玉座の座り心地を楽しんでいたな? このお調子者めが!」
そんなことしてたんかアンターッ!!
呪いが解けた時、陛下に首を刎ねられないよう、祈っておこう……。
こんな形でバレることあるんだ、怖いなぁー!
私も変なことしないように気を付けよう!
そんなこんなで、やっとたどり着いた図書館。
城を上から下までほとんど一周してくる羽目になるとは思わなかった。
「わぁ……」
蔵書の多さにゼシカが感嘆の声を上げる。
部屋の壁一面に本棚が並ぶここは、トロデーン王国の叡智の結晶。
もちろん貴重な蔵書だってあるぞ。
……呪いの衝撃を受けてもなお無事かは分かんないけど。
「うーん、あの時の揺れとか茨とかで、本が散らばってて、通りづらいね……。あ、じゃあ手分けして探そう」
「そうだね。レイラ、そこのドアの鍵、開けておいて」
「そだね」
外側から開けられなかった鍵を開けておいた。
これで次回からはサクッとショートカットで図書室に入れるって寸法だ。
……次があるかは微妙だけど!
私たちは図書室で、それぞれが思い思いの場所を探し始めた。
ただ、なにせこれだけの蔵書数だ。
今日中に見つかるかなぁ?
「うーん、これは違う……。あ、でも錬金レシピゲット! メモしとこ」
「頭が痛くなってきたぜ……。本なんて滅多に読まねぇからなぁ……」
「これ……は、違うわね。こっちも違う……」
「ふうん、時を彩ったトロデーンの女性たち……。へぇ、こりゃまた綺麗なレディたちだ」
「探す気あんのかバカリスマァ!!」
どさくさに紛れて自分のモテテクを上げようとか思ってんじゃないよ!!
船をどうにかする方法を探せっつってんだよ!!
バカか、バカなのか!!
お前の頭にゃ美女の口説き方しかないんかァ!?
「絡むだけ無駄よ、ほっときましょ」
「あ、ああ、うん……」
ゼシカのマインド、見習わないとな……。
私にはそこまでのスルースキルが身に付いていない……。
何気なく隣の本棚に目をやったときだった。
「あ……」
目に飛び込んできた本のタイトルは、『荒野に忘れられた船』。
これって、あの荒野に打ち捨てられてた船のこと?
「あったかも!」
私はそう言って、その本を本棚から取り出した。
少し埃を被ってるけど、問題なく読めそうだ。
「おお、見つけたようじゃな。ではじっくり読んでみるとしよう」
「はい、陛下!」
取り出した本を中央のテーブルに広げる。
みんなも私が見つけた本を囲むように、椅子に座った。
分厚い本を六人で回し読んでいくうちに、日は暮れてすっかり夜になってしまって。
エイトがロウソクを立てて、そこに火をつけた。
「結局分かったのは、あの船がある荒野の辺りが、大昔は海であったということくらいか。これではどうしようもないな。今現在もあそこが海だったなら、何の苦労もなかったのじゃが……。……うん?」
陛下の声が不自然に途切れる。
何事かと陛下を見やると、陛下は不思議そうな顔をして、崩れ落ちた図書室の壁を見つめた。
月を覆っていた雲が切れ、月光が図書室へ差し込む。
虫の鳴き声が響く空間に──不思議な力が集まり始めた。
崩落した壁には、ガラスが無くなった窓枠が取り残されている。
そこに茨がまるで、窓を作るように交差していて──。
「……窓枠」
願いの丘の出来事が脳裏を掠めた。
まさか……と思っている間にも、月影に照らされた窓枠はどんどん伸びていく。
「な、何じゃ、あれは!」
陛下が驚いたように声を上げた。
私達も信じられないでいる。
だって、この窓は……この現象は、間違いない。
──月の世界への、入口だ。
結局かなりの遠回りになった挙句、ククールが姫様の部屋のクローゼットからガーターベルトを発見して、私とゼシカからボコボコにされていた。
なんつーもの引っ張り出しやがったんだ、あのバカリスマは!
「あ……」
「……ピアノ」
私とエイトは、同時に足を止めた。
姫様のお部屋にあるグランドピアノ。
姫様はピアノがお上手で、透き通るような歌声に誰もが癒されていた。
「以前はよく姫がピアノを弾いて聴かせてくれたものだが、馬の姿ではそれも無理な相談じゃ。せめて国一番と言われた美しい歌声だけでも聴ければよいのだが、今はそれも馬の嘶き……」
陛下が嘆きの言葉と共にピアノの鍵盤を鳴らす。
ピアノは呪いの衝撃のせいか、はたまた長いこと調律をされていないせいか、調子外れな音を響かせた。
「なんと不憫な! ミーティアよ、父は必ずお前を元の姿に戻してやるからな〜!」
そうですね、と。
私はそう頷くしかなかった。
今更たらればを言っても仕方ないと分かってはいる。
でも、考えてしまうんだ。
もしあの夜、私が夜勤なんかやらず、姫様たちの警備を受け持っていたら。
そうしたらドルマゲスを止めることが出来たかもしれないって。
沈んだ気持ちのままに、本棚に目をやると、タイトルのない本を見つけた。
おもむろにページを開いてみると、大きな文字で「大吉」と書いてあった。
……これ、小さかった頃の姫様の字だ。
ちょっと嬉しくなりながら、そっと本棚に戻す。
とりあえず、ガーターベルトはククールから取り上げて、共有の袋に入れておいた。
バカリスマはあとで処す。
姫様の隣は、あの封印の間。
エイトは扉を開けたものの、中に入ろうとはしなかった。
長い階段を見上げる横顔からは、なんの感情も読み取れない。
あの夜、エイトは私の手を引いて城中を走り回った。
私はエイトに手を引かれながら、『何が起きたの』『怖い』と震えていることしか出来なくて。
お部屋におられないと分かったエイトは、迷うことなく封印の間への階段を駆け上がった。
その先にいたのは、魔物に姿を変えられてしまった陛下と、馬に変えられてしまった姫様。
夢だったら良かったのに、と……そう思ったことは、一度や二度ではない。
それでも、私達はドルマゲスを追う旅を続けている。
いつか必ず……奴にたどり着くと信じて。
「この上は何になってるの?」
「ここは封印の間で……。ドルマゲスに奪われた杖を封印してたところ」
みんなで階段を上って、封印の所へと向かう。
床に描かれた結界は今も作動しているけれど、肝心の杖はドルマゲスに持ち去られたままだ。
「あの時、わしと姫が茨の呪いから無事でいられたのは、この結界のおかげだったのじゃな。杖の魔力を封じるため、我が先祖によって作られた結界が、子孫であるわしらを守ってくれたわけだ。ご先祖さまには感謝せねばな。……もっとも、できれば変身の呪いからも守ってほしかったんじゃがのう」
そう言って陛下は肩を落とした。
お命が無事であっただけでも、私としては嬉しいことだけど……。
でも陛下も姫様も姿を変えられたせいで、これまでに幾度となく苦労を強いられた。
そう考えると、たしかに変身の呪いからも守ってほしいもんだよね。
封印の間を挟んだ隣は、たしか姫様の世話係の部屋だった。
エイトの手がドアを開けると、世話係のメイドは、今にも部屋を飛び出そうとしている姿で呪われていた。
「この者は、姫の世話係だったな。こんな姿になってしまって……。まったく可哀想なことじゃよ」
私達とさほど年齢は変わらなかったこの子は、姫様の世話係としてよく働いていた。
姫様の信頼も厚かったし、私たち城仕えの人間から見ても、勤勉な働き者だったように思う。
このときもきっと、姫様の元へ駆け付けようとしたのだろう。
そうして、自分に迫ってきた茨に恐怖して──。
「……行こう。先に進まなきゃ」
「うん」
エイトはここに来てから、何度、こうやって顔を歪めただろう。
助かってしまったと、自分の無事を悔いているようだった。
……でもこんなの、エイトのせいなんかじゃない。
だって、予測できるわけがなかったんだから。
こんな悲劇が起きるなんて──あの日の昼、ドルマゲスが奇術を披露した時に、分かるはずがなかったんだから。
三階のバルコニーから塔の螺旋階段を降りて一階へ。
玉座の間の後ろに差し掛かって、私達は引き寄せられるように二つ並んだ玉座へと近付いた。
いつも陛下が座っておられる椅子には、大臣が座ったまま呪われている。
「おお、大臣よ。変わり果てた姿になってしまって……。しかし呪いがかけられたのは夜中だったのに、なぜおぬしは謁見の間の、それも玉座の上におるのじゃ? さてはおぬし、こっそり玉座の座り心地を楽しんでいたな? このお調子者めが!」
そんなことしてたんかアンターッ!!
呪いが解けた時、陛下に首を刎ねられないよう、祈っておこう……。
こんな形でバレることあるんだ、怖いなぁー!
私も変なことしないように気を付けよう!
そんなこんなで、やっとたどり着いた図書館。
城を上から下までほとんど一周してくる羽目になるとは思わなかった。
「わぁ……」
蔵書の多さにゼシカが感嘆の声を上げる。
部屋の壁一面に本棚が並ぶここは、トロデーン王国の叡智の結晶。
もちろん貴重な蔵書だってあるぞ。
……呪いの衝撃を受けてもなお無事かは分かんないけど。
「うーん、あの時の揺れとか茨とかで、本が散らばってて、通りづらいね……。あ、じゃあ手分けして探そう」
「そうだね。レイラ、そこのドアの鍵、開けておいて」
「そだね」
外側から開けられなかった鍵を開けておいた。
これで次回からはサクッとショートカットで図書室に入れるって寸法だ。
……次があるかは微妙だけど!
私たちは図書室で、それぞれが思い思いの場所を探し始めた。
ただ、なにせこれだけの蔵書数だ。
今日中に見つかるかなぁ?
「うーん、これは違う……。あ、でも錬金レシピゲット! メモしとこ」
「頭が痛くなってきたぜ……。本なんて滅多に読まねぇからなぁ……」
「これ……は、違うわね。こっちも違う……」
「ふうん、時を彩ったトロデーンの女性たち……。へぇ、こりゃまた綺麗なレディたちだ」
「探す気あんのかバカリスマァ!!」
どさくさに紛れて自分のモテテクを上げようとか思ってんじゃないよ!!
船をどうにかする方法を探せっつってんだよ!!
バカか、バカなのか!!
お前の頭にゃ美女の口説き方しかないんかァ!?
「絡むだけ無駄よ、ほっときましょ」
「あ、ああ、うん……」
ゼシカのマインド、見習わないとな……。
私にはそこまでのスルースキルが身に付いていない……。
何気なく隣の本棚に目をやったときだった。
「あ……」
目に飛び込んできた本のタイトルは、『荒野に忘れられた船』。
これって、あの荒野に打ち捨てられてた船のこと?
「あったかも!」
私はそう言って、その本を本棚から取り出した。
少し埃を被ってるけど、問題なく読めそうだ。
「おお、見つけたようじゃな。ではじっくり読んでみるとしよう」
「はい、陛下!」
取り出した本を中央のテーブルに広げる。
みんなも私が見つけた本を囲むように、椅子に座った。
分厚い本を六人で回し読んでいくうちに、日は暮れてすっかり夜になってしまって。
エイトがロウソクを立てて、そこに火をつけた。
「結局分かったのは、あの船がある荒野の辺りが、大昔は海であったということくらいか。これではどうしようもないな。今現在もあそこが海だったなら、何の苦労もなかったのじゃが……。……うん?」
陛下の声が不自然に途切れる。
何事かと陛下を見やると、陛下は不思議そうな顔をして、崩れ落ちた図書室の壁を見つめた。
月を覆っていた雲が切れ、月光が図書室へ差し込む。
虫の鳴き声が響く空間に──不思議な力が集まり始めた。
崩落した壁には、ガラスが無くなった窓枠が取り残されている。
そこに茨がまるで、窓を作るように交差していて──。
「……窓枠」
願いの丘の出来事が脳裏を掠めた。
まさか……と思っている間にも、月影に照らされた窓枠はどんどん伸びていく。
「な、何じゃ、あれは!」
陛下が驚いたように声を上げた。
私達も信じられないでいる。
だって、この窓は……この現象は、間違いない。
──月の世界への、入口だ。
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