23章
夢小説設定
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あの時、私は『夜勤』明けで、夜の見張りを交代したばかりだった。
エイトと二人で、他愛のない話をしようとして……。
眩い閃光を見たと思った次の瞬間には、城中のあちこちから茨が這い出てきて、私達の頭上から瓦礫が降ってきて……。
エイトが庇ってくれなければ、私もきっと無事ではいられなかった。
「あの時……。結界の中にいたわしらはともかく、どうしてお前達が無事だったのかのう?」
陛下の素朴な疑問に、内心でドキーンと心臓が跳ねた。
なんとなくみんなにはまだ、私の出自は伝えていなくて。
……実は私が霊導者の末裔です、霊導の力で何を逃れました、とか……信じてもらえなさそうだよな……。
「う、うーん? 私がというより、エイトがちょっと不思議な体質の持ち主だったんじゃないかと思うんですが……」
「そう言われても、僕にも見当なんてつかないよ」
「……ふむ、分からんか。まあ、運が良かったのじゃろうな。お前達は昔からそうじゃったし……」
運が良かった、のかな。
あの時、衝撃で気を失ってしまって、目を覚ましたら城はすっかり様子が変わってしまっていたのは覚えている。
言葉を失った私の手を引いて、エイトが城の中を走り回って、封印の間にいる陛下と姫様を見つけ出して……。
そうして私達は、あの道化師──ドルマゲスを追う旅を始めたんだ。
……必ず追い付いて、城も陛下も姫様も救ってみせる。
「兄貴、姉貴ぃ〜! そんな所でおっさんと突っ立って、何してんでさぁ? 城の中で、あの船のこと調べんでげしょう? さっさと行くでがすよ〜!」
枯れた噴水の前で、ヤンガス達が待っている。
ここを出る時は私とエイトと、陛下と姫様だけだったのに、随分と人が増えたもんだ。
三人で顔を見合わせて小さく笑い、頷く。
「……そうじゃったな。たしか、城の図書館はあの辺りにあったはずじゃ」
陛下の視線が左手側にある建物へ向けられる。
そこもまた茨で外壁が破壊され、内部が剥き出しになっていたけれど、茨が塞いでいるせいで通れそうにない。
とはいえ実は、図書館は外から入れるドアがあるのだ。
ドアノブに手をやって捻る。
が、ドアはガチャガチャと音を立てるだけだった。
「あれ……開かない」
「鍵がかかってるんでがすか?」
「うーん……?」
鍵なんて掛けてたっけなぁ?
首を捻る私の後ろで、エイトが「あっ」と声を上げた。
「そういえば、あの時は夜だったから、鍵が閉まったままなんだ」
「げ、そうじゃん……」
「やれやれ。それじゃ、面倒くせぇが中から行くしかねぇな」
「そうね」
と言っても、一階の玉座の間に繋がる扉も、茨が塞いで開かない。
見上げた先は、二階に通じる階段。
半螺旋階段から二階内部に通じるドアは、奇跡的に無事だった。
二階からは、玉座の間が見下ろせる。
「ここ……。よく陛下と姫様が楽しそうに話してたな」
何もかもが懐かしくて……。
でも同時に、呪いがもたらした爪痕の生々しさで、足取りが重たくなる。
「……早くみんなを元に戻さなきゃ」
「……うん」
痛切な面持ちで、エイトが目を背ける。
廊下に立ったまま呪われて眠っている兵士は、生きているかどうかさえ分からない。
鍛冶屋の親父さん、道具屋のお兄さん。
厨房のおばちゃんや小間使い時代の同期。
近衛兵の同僚、先輩、隊長……。
みんな、茨に呪われて、手足が異形の姿になってしまっている。
「……エイト、大丈夫?」
「え?」
「つらいのはエイトも同じなのに、何も言わないから……。ね、つらい時はさ、つらいって言っていいんだよ」
は、と微かに息を呑んだエイトが、小さく頷いて俯く。
いつもは旅のリーダーとして、みんなの先頭に立っているエイト。
いつだって彼の背は伸びていて……。
でもエイトだって人間だもん。
苦しいことだってあるし、悲しいことだってある。
「……絶対に助けよう。みんなを」
「ん」
ポンとエイトの背を叩いて、先へと促す。
エイトは私に聞こえる声で、「ありがとう」と囁いた。
私はともかく、エイトも助かった理由は、やっぱり考えても分からない。
だけどせっかく拾った命だ、母国のために使わなくてどうする。
この国には、並々ならぬ恩があるんだから。
三階へ上がる階段の向かい側には、王国の貴族のご婦人がお住まいになられている部屋がある。
本棚を見やると、日記のようなものが見えた。
手に取って開いてみると、日々の取り留めのない日常が綴られているその中に、エイトの名前が現れた。
『ついにエイトが近衛兵に任命された。たしか、彼に与えられた最初の仕事は、住み込みの小間使いだったはずだ。素性の分からぬ余所者の彼が、いつか近衛に取り立てられるとは、当時は夢にも思わなかった』
普通に考えれば、エイトや私のような人間が近衛兵になるなんてありえない。
近衛兵は王族に最も近いところで仕事をするから、素性の知れない人物がなれるような職ではないのだ。
『来年にはレイラも近衛兵に取り立てられるようだ。女性が近衛兵に任命されるなど前例のない事だが、ミーティア姫もエイトとレイラを気に入っているようだし、この人事はきっと上手くいくだろう』
その日の日記はそれで終わっていた。
否定的な内容じゃなくてよかった。
当時のことは今でも思い出せる。
それまで私が握っていたものといえば、せいぜいが包丁だ。
それがある日突然、剣を握ることになったのだから、そりゃあ心底驚いた。
……最初は剣や槍に振り回されてばかりだった人間も、鬼のような教官に鍛えられて、一人前になった。
当時は教官の恐ろしさが嫌だったけど……今はあの指導があったからこそ、こうして母国を救う旅を続けられている。
めちゃくちゃ厳しい人だったけど、今では感謝しているくらいだ。
エイトと二人で、他愛のない話をしようとして……。
眩い閃光を見たと思った次の瞬間には、城中のあちこちから茨が這い出てきて、私達の頭上から瓦礫が降ってきて……。
エイトが庇ってくれなければ、私もきっと無事ではいられなかった。
「あの時……。結界の中にいたわしらはともかく、どうしてお前達が無事だったのかのう?」
陛下の素朴な疑問に、内心でドキーンと心臓が跳ねた。
なんとなくみんなにはまだ、私の出自は伝えていなくて。
……実は私が霊導者の末裔です、霊導の力で何を逃れました、とか……信じてもらえなさそうだよな……。
「う、うーん? 私がというより、エイトがちょっと不思議な体質の持ち主だったんじゃないかと思うんですが……」
「そう言われても、僕にも見当なんてつかないよ」
「……ふむ、分からんか。まあ、運が良かったのじゃろうな。お前達は昔からそうじゃったし……」
運が良かった、のかな。
あの時、衝撃で気を失ってしまって、目を覚ましたら城はすっかり様子が変わってしまっていたのは覚えている。
言葉を失った私の手を引いて、エイトが城の中を走り回って、封印の間にいる陛下と姫様を見つけ出して……。
そうして私達は、あの道化師──ドルマゲスを追う旅を始めたんだ。
……必ず追い付いて、城も陛下も姫様も救ってみせる。
「兄貴、姉貴ぃ〜! そんな所でおっさんと突っ立って、何してんでさぁ? 城の中で、あの船のこと調べんでげしょう? さっさと行くでがすよ〜!」
枯れた噴水の前で、ヤンガス達が待っている。
ここを出る時は私とエイトと、陛下と姫様だけだったのに、随分と人が増えたもんだ。
三人で顔を見合わせて小さく笑い、頷く。
「……そうじゃったな。たしか、城の図書館はあの辺りにあったはずじゃ」
陛下の視線が左手側にある建物へ向けられる。
そこもまた茨で外壁が破壊され、内部が剥き出しになっていたけれど、茨が塞いでいるせいで通れそうにない。
とはいえ実は、図書館は外から入れるドアがあるのだ。
ドアノブに手をやって捻る。
が、ドアはガチャガチャと音を立てるだけだった。
「あれ……開かない」
「鍵がかかってるんでがすか?」
「うーん……?」
鍵なんて掛けてたっけなぁ?
首を捻る私の後ろで、エイトが「あっ」と声を上げた。
「そういえば、あの時は夜だったから、鍵が閉まったままなんだ」
「げ、そうじゃん……」
「やれやれ。それじゃ、面倒くせぇが中から行くしかねぇな」
「そうね」
と言っても、一階の玉座の間に繋がる扉も、茨が塞いで開かない。
見上げた先は、二階に通じる階段。
半螺旋階段から二階内部に通じるドアは、奇跡的に無事だった。
二階からは、玉座の間が見下ろせる。
「ここ……。よく陛下と姫様が楽しそうに話してたな」
何もかもが懐かしくて……。
でも同時に、呪いがもたらした爪痕の生々しさで、足取りが重たくなる。
「……早くみんなを元に戻さなきゃ」
「……うん」
痛切な面持ちで、エイトが目を背ける。
廊下に立ったまま呪われて眠っている兵士は、生きているかどうかさえ分からない。
鍛冶屋の親父さん、道具屋のお兄さん。
厨房のおばちゃんや小間使い時代の同期。
近衛兵の同僚、先輩、隊長……。
みんな、茨に呪われて、手足が異形の姿になってしまっている。
「……エイト、大丈夫?」
「え?」
「つらいのはエイトも同じなのに、何も言わないから……。ね、つらい時はさ、つらいって言っていいんだよ」
は、と微かに息を呑んだエイトが、小さく頷いて俯く。
いつもは旅のリーダーとして、みんなの先頭に立っているエイト。
いつだって彼の背は伸びていて……。
でもエイトだって人間だもん。
苦しいことだってあるし、悲しいことだってある。
「……絶対に助けよう。みんなを」
「ん」
ポンとエイトの背を叩いて、先へと促す。
エイトは私に聞こえる声で、「ありがとう」と囁いた。
私はともかく、エイトも助かった理由は、やっぱり考えても分からない。
だけどせっかく拾った命だ、母国のために使わなくてどうする。
この国には、並々ならぬ恩があるんだから。
三階へ上がる階段の向かい側には、王国の貴族のご婦人がお住まいになられている部屋がある。
本棚を見やると、日記のようなものが見えた。
手に取って開いてみると、日々の取り留めのない日常が綴られているその中に、エイトの名前が現れた。
『ついにエイトが近衛兵に任命された。たしか、彼に与えられた最初の仕事は、住み込みの小間使いだったはずだ。素性の分からぬ余所者の彼が、いつか近衛に取り立てられるとは、当時は夢にも思わなかった』
普通に考えれば、エイトや私のような人間が近衛兵になるなんてありえない。
近衛兵は王族に最も近いところで仕事をするから、素性の知れない人物がなれるような職ではないのだ。
『来年にはレイラも近衛兵に取り立てられるようだ。女性が近衛兵に任命されるなど前例のない事だが、ミーティア姫もエイトとレイラを気に入っているようだし、この人事はきっと上手くいくだろう』
その日の日記はそれで終わっていた。
否定的な内容じゃなくてよかった。
当時のことは今でも思い出せる。
それまで私が握っていたものといえば、せいぜいが包丁だ。
それがある日突然、剣を握ることになったのだから、そりゃあ心底驚いた。
……最初は剣や槍に振り回されてばかりだった人間も、鬼のような教官に鍛えられて、一人前になった。
当時は教官の恐ろしさが嫌だったけど……今はあの指導があったからこそ、こうして母国を救う旅を続けられている。
めちゃくちゃ厳しい人だったけど、今では感謝しているくらいだ。
