22章
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全員が頭を抱えたとき、最後尾を走っていた馬車から陛下が飛び降りてきた。
そうして私達の足元まで走ってきて、陛下が船を見上げる。
「……むむっ!? これは!!」
陛下につられて、私達も改めて船を見上げた。
避雷針のついた柱や、マストらしきものはあるけど、どれも風害にやられてボロボロだ。
幽霊船みたいで嫌だな……。
「ううむ……。間違いない、これは船じゃ! パルミドで聞いた古代の船じゃぞ! この船を我がものとすれば、憎きドルマゲスの奴めを追うこともできようぞ! しかし、どうやって港までこの巨大な船を運べばいいのじゃ。わしには見当もつかん。せめて、もう少し海のそばなら、どうにかなるものを……」
陛下のおっしゃる通り、ここは荒野のど真ん中で、海からはかなり離れている。
ここから海にこの船を持っていくなんて、正気の沙汰ではない。
つまり我々の誰もが、この場においてお手上げというわけだ。
「……! そうじゃ! エイト!! ちょっと地図を見せてみい!」
「地図ですか?」
エイトが袋から世界地図を取り出す。
それを陛下が覗き込んで、ひとつの場所に丸をつけた。
北の大陸の北方、海を背にして山脈を前に抱える、この大陸唯一の王国。
──トロデーン城、その場所だ。
「まず、ここがわしの城じゃ。そして、今いる場所は……ふむ。ここか」
陛下は今度、地図の荒野の部分にバツ印をつけた。
こうして見ると、トロデーン城とはそんなに距離がないように見える。
「むむっ!? つまりこの船は、城の真南にあるというわけか! 意外とそばにあったんじゃな。これは……城に戻って、図書室で古い記録を調べれば、何か分かるかもしれんぞ!」
行き詰まっていた私達の目の前に、希望が見えた気がする。
これほど大きな船なら、城から調査が入っていてもおかしくない。
それどころか、この辺りがかつては海だったというのなら、ここにトロデーンの船があった可能性だってある。
城の図書室は年代物の蔵書も多い。
ひょっとしたら、ひょっとするかも!
「エイト、レイラよ! 城じゃ! トロデーン城に戻るぞ! さぁっ、支度をせい!!」
「はいっ!!」
袋に世界地図を戻して、みんなで船から離れていく。
……まさか、このタイミングで戻ることになるとは思わなかった。
トロデーン城──私とエイトが育った城に。
「ちょっと待って。どうやってトロデーン城に戻るの? 吊り橋はヤンガスが壊しちゃったんでしょ?」
「……あ。いけねぇ、そういや兄貴たちと会った時……」
ゼシカに指摘されて、ヤンガスが青ざめる。
ヤンガスが壊した吊り橋は、トラペッタ地方とトロデーン国領を繋ぐ橋で、あれが崩落したせいでトロデーン城とトラペッタは行き来が断絶してしまった。
おまけに修理する側のトロデーン国は、人知れず滅びているわけだし……。
「そういえばエイト、トロデーンへの行き方って、もうひとつあるんじゃなかったっけ? ほら、城の南西にある洞窟を通った行き方! あれって方向的にこの荒野と繋がってそうじゃない?」
「たしかに。よっぽど変な作りじゃない限り、まっすぐ進めばトロデーン国領に着きそうだね」
二人で世界地図を覗き込んで、洞窟の場所を確認する。
どうやらこの荒野を北西に抜けた先に、トロデーン方面への洞窟があるようだ。
まずはこの荒野を南西方向に抜けていかなければ。
「あんたらにとっちゃ、王国への凱旋ってわけだ。感慨深いんじゃないか?」
「どうかなぁ。ドルマゲスを倒してないから、出迎えてくれる人はいないし」
坂道を登りながら、ククールに素っ気なく返すと、ククールは言葉に詰まった後、「そうだよな」と呟いた。
私達は、かつてのトロデーン城の姿を取り戻したいから、こうして旅をしている。
お気楽道中のように見せているだけで、本当はいつだってお城の皆が恋しい。
坂道を登り終えると、地面に緑が戻ってきた。
そうして目の前に海が広がって、山を挟んだ向こうの岬には──。
「西の教会……」
「懐かしいね」
日が傾いてきた中、遠くに見える西の教会は、私達の記憶の中にある姿のままだった。
呪いをかけられたのは城と陛下と姫様だけだから、西の教会は何の被害も受けていないのかもしれない。
山をくり抜いて作られた洞窟をまっすぐ通り抜ける。
そこは──見慣れた、私達の故郷。
放牧中の乳牛はのんびりと草を食み、左手側には西の教会が。
そして右手側を見やれば──禍々しい雲に覆われた、呪われしトロデーン城。
橙色の空が、それらを淡く照らし出していて。
「……」
「行こう、レイラ」
「……うん」
エイトは笑っていたけれど、寂しさを隠しきれていなかった。
……寂しいのは、私だけじゃない。
エイトも、陛下も姫様も同じだ。
「日も暮れてきたことだし、今日は西の教会に泊まろう。明日、城に行こうと思う」
「そうね、そうしましょう」
すぐ近くにある教会に急いで、扉を開く。
この教会はトロデーン城での祭典なんかで使ったり、祭祀関連の行事で陛下や姫様が度々訪れる場所。
トロデーン国領に住む人達にとっては身近な場所だ。
「こんばんは……」
ドアを開けて教会の中へ入ると、シスターが私達を見て目を丸くした。
「このようなさびしい土地の教会にお客様が来るなんて、いつ以来でしょう? 以前はこの辺りももう少し賑わっていたのですが、今ではすっかり人通りも途絶えてしまって……。これも、北にあるトロデーンのお城が呪いの茨に覆われて滅んでしまったからですわ」
「……」
ぐっと唇を噛み締めて、教会の椅子に座る。
それから祭壇へ向かって祈りを捧げた。
どうかこの旅路の果てで、みんなを救うことができますように。
「宿屋の予約は取っておいた。いつでも休めるぜ」
「ただ、ベッドの数がやっぱり足りなくて、私とレイラは同じベッドになるわ」
「分かった、ありがとう。ゼシカも、いつもごめんね」
「気にしなくていいわ。レイラは寝相もいいから、困ったこともないもの」
うん、と頷いて礼拝所から宿屋へと移動する。
夕食をいただいて、私達は少し早めに就寝した。
明日はいよいよ、トロデーン城に帰ることになる。
あれから少し経ったけど、城はどうなっているだろう。
お城の人達は……。
そうして私達の足元まで走ってきて、陛下が船を見上げる。
「……むむっ!? これは!!」
陛下につられて、私達も改めて船を見上げた。
避雷針のついた柱や、マストらしきものはあるけど、どれも風害にやられてボロボロだ。
幽霊船みたいで嫌だな……。
「ううむ……。間違いない、これは船じゃ! パルミドで聞いた古代の船じゃぞ! この船を我がものとすれば、憎きドルマゲスの奴めを追うこともできようぞ! しかし、どうやって港までこの巨大な船を運べばいいのじゃ。わしには見当もつかん。せめて、もう少し海のそばなら、どうにかなるものを……」
陛下のおっしゃる通り、ここは荒野のど真ん中で、海からはかなり離れている。
ここから海にこの船を持っていくなんて、正気の沙汰ではない。
つまり我々の誰もが、この場においてお手上げというわけだ。
「……! そうじゃ! エイト!! ちょっと地図を見せてみい!」
「地図ですか?」
エイトが袋から世界地図を取り出す。
それを陛下が覗き込んで、ひとつの場所に丸をつけた。
北の大陸の北方、海を背にして山脈を前に抱える、この大陸唯一の王国。
──トロデーン城、その場所だ。
「まず、ここがわしの城じゃ。そして、今いる場所は……ふむ。ここか」
陛下は今度、地図の荒野の部分にバツ印をつけた。
こうして見ると、トロデーン城とはそんなに距離がないように見える。
「むむっ!? つまりこの船は、城の真南にあるというわけか! 意外とそばにあったんじゃな。これは……城に戻って、図書室で古い記録を調べれば、何か分かるかもしれんぞ!」
行き詰まっていた私達の目の前に、希望が見えた気がする。
これほど大きな船なら、城から調査が入っていてもおかしくない。
それどころか、この辺りがかつては海だったというのなら、ここにトロデーンの船があった可能性だってある。
城の図書室は年代物の蔵書も多い。
ひょっとしたら、ひょっとするかも!
「エイト、レイラよ! 城じゃ! トロデーン城に戻るぞ! さぁっ、支度をせい!!」
「はいっ!!」
袋に世界地図を戻して、みんなで船から離れていく。
……まさか、このタイミングで戻ることになるとは思わなかった。
トロデーン城──私とエイトが育った城に。
「ちょっと待って。どうやってトロデーン城に戻るの? 吊り橋はヤンガスが壊しちゃったんでしょ?」
「……あ。いけねぇ、そういや兄貴たちと会った時……」
ゼシカに指摘されて、ヤンガスが青ざめる。
ヤンガスが壊した吊り橋は、トラペッタ地方とトロデーン国領を繋ぐ橋で、あれが崩落したせいでトロデーン城とトラペッタは行き来が断絶してしまった。
おまけに修理する側のトロデーン国は、人知れず滅びているわけだし……。
「そういえばエイト、トロデーンへの行き方って、もうひとつあるんじゃなかったっけ? ほら、城の南西にある洞窟を通った行き方! あれって方向的にこの荒野と繋がってそうじゃない?」
「たしかに。よっぽど変な作りじゃない限り、まっすぐ進めばトロデーン国領に着きそうだね」
二人で世界地図を覗き込んで、洞窟の場所を確認する。
どうやらこの荒野を北西に抜けた先に、トロデーン方面への洞窟があるようだ。
まずはこの荒野を南西方向に抜けていかなければ。
「あんたらにとっちゃ、王国への凱旋ってわけだ。感慨深いんじゃないか?」
「どうかなぁ。ドルマゲスを倒してないから、出迎えてくれる人はいないし」
坂道を登りながら、ククールに素っ気なく返すと、ククールは言葉に詰まった後、「そうだよな」と呟いた。
私達は、かつてのトロデーン城の姿を取り戻したいから、こうして旅をしている。
お気楽道中のように見せているだけで、本当はいつだってお城の皆が恋しい。
坂道を登り終えると、地面に緑が戻ってきた。
そうして目の前に海が広がって、山を挟んだ向こうの岬には──。
「西の教会……」
「懐かしいね」
日が傾いてきた中、遠くに見える西の教会は、私達の記憶の中にある姿のままだった。
呪いをかけられたのは城と陛下と姫様だけだから、西の教会は何の被害も受けていないのかもしれない。
山をくり抜いて作られた洞窟をまっすぐ通り抜ける。
そこは──見慣れた、私達の故郷。
放牧中の乳牛はのんびりと草を食み、左手側には西の教会が。
そして右手側を見やれば──禍々しい雲に覆われた、呪われしトロデーン城。
橙色の空が、それらを淡く照らし出していて。
「……」
「行こう、レイラ」
「……うん」
エイトは笑っていたけれど、寂しさを隠しきれていなかった。
……寂しいのは、私だけじゃない。
エイトも、陛下も姫様も同じだ。
「日も暮れてきたことだし、今日は西の教会に泊まろう。明日、城に行こうと思う」
「そうね、そうしましょう」
すぐ近くにある教会に急いで、扉を開く。
この教会はトロデーン城での祭典なんかで使ったり、祭祀関連の行事で陛下や姫様が度々訪れる場所。
トロデーン国領に住む人達にとっては身近な場所だ。
「こんばんは……」
ドアを開けて教会の中へ入ると、シスターが私達を見て目を丸くした。
「このようなさびしい土地の教会にお客様が来るなんて、いつ以来でしょう? 以前はこの辺りももう少し賑わっていたのですが、今ではすっかり人通りも途絶えてしまって……。これも、北にあるトロデーンのお城が呪いの茨に覆われて滅んでしまったからですわ」
「……」
ぐっと唇を噛み締めて、教会の椅子に座る。
それから祭壇へ向かって祈りを捧げた。
どうかこの旅路の果てで、みんなを救うことができますように。
「宿屋の予約は取っておいた。いつでも休めるぜ」
「ただ、ベッドの数がやっぱり足りなくて、私とレイラは同じベッドになるわ」
「分かった、ありがとう。ゼシカも、いつもごめんね」
「気にしなくていいわ。レイラは寝相もいいから、困ったこともないもの」
うん、と頷いて礼拝所から宿屋へと移動する。
夕食をいただいて、私達は少し早めに就寝した。
明日はいよいよ、トロデーン城に帰ることになる。
あれから少し経ったけど、城はどうなっているだろう。
お城の人達は……。
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