21章
夢小説設定
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ドアを開けて外へ出た瞬間、私達は思わぬ光景に面食らった。
姫様が、馬車を引いて待っている。
「え……ゲルダさんは、返すつもりがなさそうだったのに」
ぽかんとしたまま呟いたエイトへ声をかけたのは、ゲルダさんの部下である荒くれだった。
「実はゲルダ様から前もって、馬を返す準備をしとけって言われてたのさ。なんだかんだ言って、ゲルダ様、あんたらがビーナスの涙を持ってくるって信じてたみたいだな」
そう……だったのか。
あの「やっぱ返すのやめた」発言は、本当にヤンガスへのちょっとした仕返しだったんだな。
ぱちんと姫様と目が合う。
お優しい瞳を見つめた瞬間、酔いどれキントに連れ去られてしまったときのことを思い出した。
「姫さほぁおう!!」
駆け出そうとしたところを、誰かに突き飛ばされた。
顔面から地面に突き刺さった私の頭上から、「えぇぇええ!?」というエイトの大声が聞こえてくる。
「姫や。怖い思いをさせてすまんかったのう。これからはわしが一緒にいてやるからな。もうお前を残して酒場に飲みに行ったりはしないと約束するぞ」
「おっさん、いつの間に……」
「本当にねェ……」
エイトの手を借りて起き上がる。
私の鼻、ひしゃげてないよな?
それはもう勢いよく地面に突っ込んだから、顔の全部が痛い。
「姫様、申し訳ありません! 御身をお守りできず……!!」
姫様に向かって直角に頭を下げると、姫様がそっと顔を摺り寄せてきた。
顔を上げてと言っているようで、恐る恐ると姫様のお顔を窺う。
姫様は怒っているようには見えなくて……むしろ私を気遣うような眼差しをしていた。
「お許しくださるのですか?」
ぶるる、と鼻を鳴らす姫様の瞳は優しくて、つんと鼻の奥が痛くなった。
姫様の首にしがみついて、顔を隠す。
泣いてるところなんて、エイトには見られたくない。
「姫様がご無事で良かったぁ〜……」
「ま、これであんたも、肩の荷が降りたろ?」
「レイラが一番、責任を感じていたみたいだものね。誰のせいでもないのに」
「そ、そうだけど……」
姫様が小さく嘶いて、酔いどれキントの一撃を食らってしまったお腹の辺りを見つめてきた。
……あ、そうか、姫様は私の体調が良くなったことを知らないのか。
怪我してないか心配してくださってるんだな。
「ご心配いただき恐縮です。この通りピンピンしてます! 元気だけが取り柄ですしね!」
「だけじゃないけどね」
「うん?」
背後からそう訂正してきたエイトに小首を傾げると、エイトは「なんでもない」と小さく笑って首を振った。
元気以外の取り柄、私にあるか?
自分で言うのもおかしいけど、私って難しいことは考えたくないタイプだしなぁ。
伊達に「エイトの活発さを吸った」とか「アホの子」とか言われてきてないぞ。
最後のやつは悪口な気がするけど。
「さて、エイト、レイラよ。こっちはいつでも出発できるぞ。次はどこを目指すのじゃ?」
御者台に座った陛下に尋ねられ、私とエイトは顔を見合わせた。
そういや、この先に行く当てがないから、情報屋さんにドルマゲスの行方を尋ねようってなってたんだっけ?
私はぶっ倒れたから、そのあたりの流れがよく分かっていない。
判断はエイトに任せよう。
「そういや、いい加減、留守にしてた情報屋の旦那が帰ってきてもいい頃だな。おっさん、とりあえずもう一度パルミドへ戻ろうぜ。どこへ向かうにしても、ドルマゲスの野郎の行く先を知らなきゃ話になんねぇだろ?」
「む〜う。できればあの町には二度と近付きたくないんじゃが……。仕方ない。パルミドに戻るとするか」
「それじゃあ今度こそ情報屋さんが戻ってきていることを願って、パルミドにレッツゴー!」
「相変わらず喧し……元気だな、あんたは」
「そこまで言ったならもう喧しいって言えばいいと思うよ、バカリスマ」
「バカリスマを名前にするなっつーの」
「えっ?」
「さすがに冗談だよな? 俺の名前をバカリスマだと思ってないよな?」
「ククール・バカリスマでしょ?」
「誰かこいつを何とかしてくれ」
ククールが絶望に打ちひしがれたように顔を手で覆った。
心配しなくてもククールがバカリスマなのは周知の事実だと思う。
エイトがそっとククールの肩を叩く。
ククールはなんとも言えない苦い顔をして、エイトの手をそっと払い除けたのだった。
姫様が、馬車を引いて待っている。
「え……ゲルダさんは、返すつもりがなさそうだったのに」
ぽかんとしたまま呟いたエイトへ声をかけたのは、ゲルダさんの部下である荒くれだった。
「実はゲルダ様から前もって、馬を返す準備をしとけって言われてたのさ。なんだかんだ言って、ゲルダ様、あんたらがビーナスの涙を持ってくるって信じてたみたいだな」
そう……だったのか。
あの「やっぱ返すのやめた」発言は、本当にヤンガスへのちょっとした仕返しだったんだな。
ぱちんと姫様と目が合う。
お優しい瞳を見つめた瞬間、酔いどれキントに連れ去られてしまったときのことを思い出した。
「姫さほぁおう!!」
駆け出そうとしたところを、誰かに突き飛ばされた。
顔面から地面に突き刺さった私の頭上から、「えぇぇええ!?」というエイトの大声が聞こえてくる。
「姫や。怖い思いをさせてすまんかったのう。これからはわしが一緒にいてやるからな。もうお前を残して酒場に飲みに行ったりはしないと約束するぞ」
「おっさん、いつの間に……」
「本当にねェ……」
エイトの手を借りて起き上がる。
私の鼻、ひしゃげてないよな?
それはもう勢いよく地面に突っ込んだから、顔の全部が痛い。
「姫様、申し訳ありません! 御身をお守りできず……!!」
姫様に向かって直角に頭を下げると、姫様がそっと顔を摺り寄せてきた。
顔を上げてと言っているようで、恐る恐ると姫様のお顔を窺う。
姫様は怒っているようには見えなくて……むしろ私を気遣うような眼差しをしていた。
「お許しくださるのですか?」
ぶるる、と鼻を鳴らす姫様の瞳は優しくて、つんと鼻の奥が痛くなった。
姫様の首にしがみついて、顔を隠す。
泣いてるところなんて、エイトには見られたくない。
「姫様がご無事で良かったぁ〜……」
「ま、これであんたも、肩の荷が降りたろ?」
「レイラが一番、責任を感じていたみたいだものね。誰のせいでもないのに」
「そ、そうだけど……」
姫様が小さく嘶いて、酔いどれキントの一撃を食らってしまったお腹の辺りを見つめてきた。
……あ、そうか、姫様は私の体調が良くなったことを知らないのか。
怪我してないか心配してくださってるんだな。
「ご心配いただき恐縮です。この通りピンピンしてます! 元気だけが取り柄ですしね!」
「だけじゃないけどね」
「うん?」
背後からそう訂正してきたエイトに小首を傾げると、エイトは「なんでもない」と小さく笑って首を振った。
元気以外の取り柄、私にあるか?
自分で言うのもおかしいけど、私って難しいことは考えたくないタイプだしなぁ。
伊達に「エイトの活発さを吸った」とか「アホの子」とか言われてきてないぞ。
最後のやつは悪口な気がするけど。
「さて、エイト、レイラよ。こっちはいつでも出発できるぞ。次はどこを目指すのじゃ?」
御者台に座った陛下に尋ねられ、私とエイトは顔を見合わせた。
そういや、この先に行く当てがないから、情報屋さんにドルマゲスの行方を尋ねようってなってたんだっけ?
私はぶっ倒れたから、そのあたりの流れがよく分かっていない。
判断はエイトに任せよう。
「そういや、いい加減、留守にしてた情報屋の旦那が帰ってきてもいい頃だな。おっさん、とりあえずもう一度パルミドへ戻ろうぜ。どこへ向かうにしても、ドルマゲスの野郎の行く先を知らなきゃ話になんねぇだろ?」
「む〜う。できればあの町には二度と近付きたくないんじゃが……。仕方ない。パルミドに戻るとするか」
「それじゃあ今度こそ情報屋さんが戻ってきていることを願って、パルミドにレッツゴー!」
「相変わらず喧し……元気だな、あんたは」
「そこまで言ったならもう喧しいって言えばいいと思うよ、バカリスマ」
「バカリスマを名前にするなっつーの」
「えっ?」
「さすがに冗談だよな? 俺の名前をバカリスマだと思ってないよな?」
「ククール・バカリスマでしょ?」
「誰かこいつを何とかしてくれ」
ククールが絶望に打ちひしがれたように顔を手で覆った。
心配しなくてもククールがバカリスマなのは周知の事実だと思う。
エイトがそっとククールの肩を叩く。
ククールはなんとも言えない苦い顔をして、エイトの手をそっと払い除けたのだった。
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