21章
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ビーナスの涙が収められている宝箱。
その正体はなんと、トラップボックスだった!
「無理無理無理無理!!」
宝箱が半分に割れた先には、鋭利な刃先がびっしり。
明確な殺意を感じる。
刃先をすんでのところで躱して私はそんな悲鳴を上げた。
「絶対、今の食らってたら死んでた……!」
「状態異常にも強いようでがすな。アッシの兜割りが通用しないでげす」
「じゃあゼシカ、エイトにバイキルトを──おぉぉ!?」
足元から氷の柱が突き出てきた。
あいつ、メダパニに飽き足らず、ヒャダルコまで唱えるんかい!!
ゼシカがマジックバリアを張ってくれてなかったら危なかった。
「おりゃあああ! 火炎斬り!!」
もはや物理に物を言わせることしかできず、剣先に炎を宿らせてトラップボックスへ切りつける。
間合いを取ろうと足に力を込めた瞬間、一瞬だけ目の前がふっと暗くなった。
トラップボックスの唸り声が聞こえる。
「う……っ!」
トラップボックスの刃先が左腕を掠めた。
ぱっと血が飛び散って、腕の感覚が引いていく。
ふらつきながらもトラップボックスから離れたタイミングで、ククールのベホイミがかけられた。
「ありがと、ククール……!」
「少し前に出すぎじゃないのか? 突っ込むのはエイトとヤンガスに任せておいたほうがいいぞ」
「う、うん……」
しゃがれた叫び声と共に、両側からトラップボックスの腕が迫る。
今度はしっかりと避けられた。
ヤンガスの攻撃が決まって、トラップボックスが追撃を嫌がるみたいに間合いを取る。
「……やっぱり変だ。あいつ、物理攻撃になるとレイラばかり狙ってくる」
「え、そうなの!?」
「勘違いじゃないはず──っく!」
足元から勢いよく伸びてきた氷の柱。
ゼシカの傷が酷くなっているのが見えて、咄嗟にベホイミを唱えた。
ありがとう、とゼシカが立ち上がった瞬間──その横顔が引き攣った。
「レイラ、危ない……!!」
エイトの悲鳴が届く直前。
私の眼前に、トラップボックスが飛びかかってきた。
今までに見せたことのない動きで、私の反応が遅れる。
間合いへの侵入を許した瞬間──私の上半身に、鋭利な刃先がいくつも食い込んだ。
「レイラ!?」
「姉貴!!」
とてつもない力で、階段下の床に叩き付けられる。
凄まじい音が響いて視界がぐるんぐるん回った。
手から鋼の剣が飛んでいって、それは甲高い金属音を残して鉄柵にぶつかった。
「あいつ、レイラを殺すつもりだぞ!!」
「させない──!!」
意識が半分ほど飛んで、身体に力が入らない。
トラップボックスが私に向かって両腕を振り下ろす。
(避けなきゃ──)
ほんの一瞬、奴の動きを止められれば。
身体が動かないなら、呪文で攻撃すればいい。
そう決めた瞬間、ほぼ無意識だった。
「──イオラ」
飛びかかろうとしていたトラップボックスの眼前で大爆発が起こる。
吹き飛ばされたトラップボックスと入れ違いで、誰かが私の体を抱えた。
「大丈夫?」
「エイト……」
エイトの両腕が私を抱き上げて、戦闘から離れたところに私を降ろした。
ベホイミが唱えられて、私の身体の傷が塞がっていく。
「あいつは僕達で倒すから、レイラはここで休んでて」
「うん……ありがとう……」
戦線離脱は嫌だったけど、今はその言葉に甘えておこう。
エイトが頷いて、階段を駆け上がっていく。
トラップボックスはまだ私を標的にしているみたいだけど、ゼシカの呪文に足止めされて、更にエイトとヤンガスの攻撃もあるから、それどころではない様子だ。
(私、なんでイオ系呪文なんか、唱えられたんだろう……)
私が扱える攻撃呪文は、せいぜいがギラ系だ。
イオラどころか、イオすら唱えられたことがないのに、どうしていきなり?
……もしかして関係があるのかな、霊導の力が目覚めたことと。
激しい戦闘の衝撃音を潜り抜けて、エイトの指示を出す声が聞こえる。
その後ろ姿を見つめながら、私はふっと意識を手放した。
* * *
「……う、ん……?」
重たい目蓋を無理やり開く。
目が覚めてみると、どうやら戦いは既に終わっているようだった。
全然、役に立てなかったな……。
「気が付いた?」
「エイト……?」
真横からエイトの声が聞こえてきて、そっと顔を上げる。
私を抱きかかえているエイトはあちこち擦り傷だらけだけど、大きな怪我はないみたいだ。
「まだ本調子じゃないくせに、あんな無茶をして……。いったい、どれだけ僕の寿命を縮めれば気が済むのかな、レイラは」
「う、ごめんなさい……。あっそうだ、宝石は!?」
「ここにあるわよ」
ゼシカがひっくり返ったままのトラップボックスを指差す。
四人で勝てたんだ……すごいな、みんな。
今回、私は足を引っ張っただけだもん。
「ったく……。エイトの奴、大変だったんだからな。戦いが終わるなり、顔面蒼白になって、あたふたしだすしよ」
「し、仕方ないだろ! 心配で死ぬかと思ったんだから!」
「兄貴の慌てっぷりは凄かったでがすなぁ」
「ヤンガスまで!」
顔を赤くして言い返すエイトを、三人が笑う。
そんなやり取りを聞きながら、私はどういう訳か、もう少しだけこうやってエイトの腕の中にいたいと思ってしまった。
その正体はなんと、トラップボックスだった!
「無理無理無理無理!!」
宝箱が半分に割れた先には、鋭利な刃先がびっしり。
明確な殺意を感じる。
刃先をすんでのところで躱して私はそんな悲鳴を上げた。
「絶対、今の食らってたら死んでた……!」
「状態異常にも強いようでがすな。アッシの兜割りが通用しないでげす」
「じゃあゼシカ、エイトにバイキルトを──おぉぉ!?」
足元から氷の柱が突き出てきた。
あいつ、メダパニに飽き足らず、ヒャダルコまで唱えるんかい!!
ゼシカがマジックバリアを張ってくれてなかったら危なかった。
「おりゃあああ! 火炎斬り!!」
もはや物理に物を言わせることしかできず、剣先に炎を宿らせてトラップボックスへ切りつける。
間合いを取ろうと足に力を込めた瞬間、一瞬だけ目の前がふっと暗くなった。
トラップボックスの唸り声が聞こえる。
「う……っ!」
トラップボックスの刃先が左腕を掠めた。
ぱっと血が飛び散って、腕の感覚が引いていく。
ふらつきながらもトラップボックスから離れたタイミングで、ククールのベホイミがかけられた。
「ありがと、ククール……!」
「少し前に出すぎじゃないのか? 突っ込むのはエイトとヤンガスに任せておいたほうがいいぞ」
「う、うん……」
しゃがれた叫び声と共に、両側からトラップボックスの腕が迫る。
今度はしっかりと避けられた。
ヤンガスの攻撃が決まって、トラップボックスが追撃を嫌がるみたいに間合いを取る。
「……やっぱり変だ。あいつ、物理攻撃になるとレイラばかり狙ってくる」
「え、そうなの!?」
「勘違いじゃないはず──っく!」
足元から勢いよく伸びてきた氷の柱。
ゼシカの傷が酷くなっているのが見えて、咄嗟にベホイミを唱えた。
ありがとう、とゼシカが立ち上がった瞬間──その横顔が引き攣った。
「レイラ、危ない……!!」
エイトの悲鳴が届く直前。
私の眼前に、トラップボックスが飛びかかってきた。
今までに見せたことのない動きで、私の反応が遅れる。
間合いへの侵入を許した瞬間──私の上半身に、鋭利な刃先がいくつも食い込んだ。
「レイラ!?」
「姉貴!!」
とてつもない力で、階段下の床に叩き付けられる。
凄まじい音が響いて視界がぐるんぐるん回った。
手から鋼の剣が飛んでいって、それは甲高い金属音を残して鉄柵にぶつかった。
「あいつ、レイラを殺すつもりだぞ!!」
「させない──!!」
意識が半分ほど飛んで、身体に力が入らない。
トラップボックスが私に向かって両腕を振り下ろす。
(避けなきゃ──)
ほんの一瞬、奴の動きを止められれば。
身体が動かないなら、呪文で攻撃すればいい。
そう決めた瞬間、ほぼ無意識だった。
「──イオラ」
飛びかかろうとしていたトラップボックスの眼前で大爆発が起こる。
吹き飛ばされたトラップボックスと入れ違いで、誰かが私の体を抱えた。
「大丈夫?」
「エイト……」
エイトの両腕が私を抱き上げて、戦闘から離れたところに私を降ろした。
ベホイミが唱えられて、私の身体の傷が塞がっていく。
「あいつは僕達で倒すから、レイラはここで休んでて」
「うん……ありがとう……」
戦線離脱は嫌だったけど、今はその言葉に甘えておこう。
エイトが頷いて、階段を駆け上がっていく。
トラップボックスはまだ私を標的にしているみたいだけど、ゼシカの呪文に足止めされて、更にエイトとヤンガスの攻撃もあるから、それどころではない様子だ。
(私、なんでイオ系呪文なんか、唱えられたんだろう……)
私が扱える攻撃呪文は、せいぜいがギラ系だ。
イオラどころか、イオすら唱えられたことがないのに、どうしていきなり?
……もしかして関係があるのかな、霊導の力が目覚めたことと。
激しい戦闘の衝撃音を潜り抜けて、エイトの指示を出す声が聞こえる。
その後ろ姿を見つめながら、私はふっと意識を手放した。
* * *
「……う、ん……?」
重たい目蓋を無理やり開く。
目が覚めてみると、どうやら戦いは既に終わっているようだった。
全然、役に立てなかったな……。
「気が付いた?」
「エイト……?」
真横からエイトの声が聞こえてきて、そっと顔を上げる。
私を抱きかかえているエイトはあちこち擦り傷だらけだけど、大きな怪我はないみたいだ。
「まだ本調子じゃないくせに、あんな無茶をして……。いったい、どれだけ僕の寿命を縮めれば気が済むのかな、レイラは」
「う、ごめんなさい……。あっそうだ、宝石は!?」
「ここにあるわよ」
ゼシカがひっくり返ったままのトラップボックスを指差す。
四人で勝てたんだ……すごいな、みんな。
今回、私は足を引っ張っただけだもん。
「ったく……。エイトの奴、大変だったんだからな。戦いが終わるなり、顔面蒼白になって、あたふたしだすしよ」
「し、仕方ないだろ! 心配で死ぬかと思ったんだから!」
「兄貴の慌てっぷりは凄かったでがすなぁ」
「ヤンガスまで!」
顔を赤くして言い返すエイトを、三人が笑う。
そんなやり取りを聞きながら、私はどういう訳か、もう少しだけこうやってエイトの腕の中にいたいと思ってしまった。
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