20章
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初めて会うゲルダさんは、私の予想通りの性格のようだった。
そりゃあヤンガスが苦手とする程の相手だもん、一筋縄じゃいかないような人だというのは、想像に難くない。
「気の強いレディは好みだが、こいつは俺の守備範囲じゃねえな……」
「よーし黙れそこのバカリスマ」
鳩尾に一発食らわせて、悶えるククールを放置した。
まるで役に立たないし死ぬほどどうでもいい情報が判明しただけだ。
私より中身がないこと言ってるじゃん。
……けどまあ、美人なのはその通りでもある。
そして盗賊だからなのか、露出が多い。
ゼシカだって大胆に胸元が開いてるのに、私の着ている服ときたら。
長袖の白のチュニックの上から、ターコイズグリーンの膝丈のジャンパースカートを合わせて、腰のベルトから剣を提げた、冒険者スタイル。
……色気などあるはずがない。
「あんたがあたしの所に来るなんて、珍しいこともあるもんだ。……で、話ってのはなんだい?」
「ゲルダ……お前さんが闇商人の店で買ったって馬のことさ。あの馬を譲ってくれねえかい? あれは元々、俺の旅の仲間の持ち物だったのが、盗まれて闇商人の店に並んでたんだよ。金額については、お前の言い値で構わねぇぜ。正直きついが、何とか用意してみせる」
ヤンガスの真剣な物言いに、思わず感動してしまった。
自分の失態とはいえ、姫様のためにそこまで言ってくれるなんて……!
何千ゴールドでも何万ゴールドでも、私達みんなで用意してやろうじゃないか……!
「相変わらず率直な物言いだね。あんたのそういうとこ、嫌いじゃないよ」
ゲルダさんは顔色ひとつ変えずに、ヤンガスを見上げたままそう言った。
なんだろうな、この嫌な予感。
素直に返してくれなさそうだなという直感が働いてしまった。
「でも、あの馬は売らないよ。毛並みといい、従順そうな性格といい、実に良い馬じゃないか。あたしは本当に良い物は手元に置いときたくなる性分なのさ。いくら金を積まれても譲れないね!」
そうなると思った。
あーあと首を振って天井を仰ぐ。
姫様、昔は城を抜け出すくらいにはお転婆だったのに……。
……私が言えたことじゃないけど。
「ぐぅ……どうしても駄目か? 仲間のためなんだ。俺に出来ることなら何だってするぜ」
「……へえ。あんたの口からそんな言葉が聞けるなんて驚いた。よっぽど大切なお仲間らしいね」
ロッキングチェアに揺られながらゲルダさんはそう言い、そうして椅子の揺れに合わせて立ち上がった。
「いいだろう。ただし、条件を出させてもらうよ。ここから北にある洞窟のこと、まさか忘れちゃいないだろう? あの洞窟に眠るという、ビーナスの涙って宝石を、あんたに取ってきてもらおうじゃないか」
「げげっ! お前、未だにアレを? だけどよう、あの洞窟は昔、俺が……」
「あんた、今、何でもやるって言ったばかりじゃないか! 男が一度言ったことを翻すのかい? とにかく、ビーナスの涙を持ってきな。そしたら、あの馬のことも考えてやろうじゃないか」
……洞窟。
今、ゲルダさん、洞窟って言ったよね。
洞窟にいい思い出がないんだよなぁ……。
絶対に出るじゃん、骸骨系とかミイラとか、なんか色々。
ぐぬぬぬ、と唸りつつも、ヤンガスは「分かった」と頷いてゲルダさんの家を出ていった。
私達もゲルダさんにぺこりと頭を下げ、ヤンガスに続いておうちをお暇することにした。
「まさか姫様と馬車を取り戻すために、洞窟に潜ることになるとはなぁ〜……」
「す、すいやせん姉貴。アッシが強く出られりゃあよかったんでげすが……。昔っから、どうもゲルダのことが苦手で」
「責めてるわけじゃないよ!? どうしたってこっちが下手に出ないといけないからさ、条件を飲まされるのは仕方ないって」
ね、とヤンガスの背を叩いて笑ってみせる。
そりまあもちろん、人様の持ち物を盗まれた上に勝手に売られた挙句、返してほしけりゃ宝石を取ってこいと無茶苦茶を言われたわけだから、頭に来ていないと言えば嘘にはなるけど。
穏便に事が解決するなら、それがいいに決まってる。
「さぁてと、洞窟の場所はヤンガスが知ってるんだよね?」
「勿論でがす。忘れたことなんてありゃしねぇでげすよ」
「ふぅん? ちょっと理由がありそうだけど、まぁいいわ。それじゃ、引き続きヤンガスに道案内してもらいましょ」
「仕方ねぇな、囚われの姫を助けるためだ。さっさとその宝石を取ってきてやろうぜ」
「……ちょっと待って」
洞窟へ向かおうとした私達を、エイトが引き止める。
エイトが真っ先に行くものだと思っていたから、私達は多少なり驚きつつも足を止めた。
どうしたの、と首を傾げて問うと、エイトは心配そうな顔をして私を見て。
「レイラはパルミドで待ってて」
「え……なんで!? 私も行くよ!」
「駄目だよ。だってレイラは病み上がりじゃないか! ここで無理をして、また倒れたりなんかしたらどうするんだよ?」
「も、もうすっかり治ったもん! 私は平気だから!」
「……心配なんだよ! レイラはそうやって我慢して無理をするから!」
うぐ、と言葉に詰まる。
そりゃあエイトにはいつも心配やら迷惑やらかけっぱなしだって自覚はある。
いつもなら、素直にエイトの言うことを聞いたかもしれない。
……でも。
「姫様が攫われちゃったのは、私の失態でもあるから。自分のミスは、自分で取り返さないと」
「姫があの盗賊に攫われたのがレイラのせいだなんて、そんなこと誰も思ってないよ!」
「……陛下!」
私に名を呼ばれ、陛下が「なんじゃ」と返す。
私は陛下の前に膝をつき、頭を下げた。
「姫様が盗賊に拐かされ、ゲルダの元へ売られてしまった責任は、誰が負うべきでしょうか」
「今はそんなことを議論してる場合じゃないだろ。一刻も早く姫を助けるんじゃなかったのか?」
「陛下。酔いどれキントが姫様を攫った時、私は姫様のお傍にいました。そのうえで姫様の誘拐を許してしまった。今回の件、私にも責任の一端があると存じます」
「ええい、皆まで言うな! お前に責任があるのは当然じゃ! 無理せん程度にエイト達について行け!」
「はい!」
やった、陛下の言質取ったぞ!
にししと笑ってエイトを見やると、エイトは怒ったような呆れたような顔をして、それから大きなため息をついた。
「トロデ王の命令まで受けたんじゃ仕方ない。ただこれだけは約束して。僕から絶対に離れないで。つらかったらすぐに言うこと。いい?」
「分かった。ありがとうエイト!」
「はーやれやれ、面倒な建前が必要な奴らだよ」
ククールが呆れ返った様子で歩き始める。
エイトは頑固なところがあるから、建前でもなんでも使って説得しないと、頷いてくれないんだ。
そういうところもエイトの長所ではあるんだけどね。
私と違って慎重派というか、余計な無茶はしないっていうのは大事なことでもあるから。
そりゃあヤンガスが苦手とする程の相手だもん、一筋縄じゃいかないような人だというのは、想像に難くない。
「気の強いレディは好みだが、こいつは俺の守備範囲じゃねえな……」
「よーし黙れそこのバカリスマ」
鳩尾に一発食らわせて、悶えるククールを放置した。
まるで役に立たないし死ぬほどどうでもいい情報が判明しただけだ。
私より中身がないこと言ってるじゃん。
……けどまあ、美人なのはその通りでもある。
そして盗賊だからなのか、露出が多い。
ゼシカだって大胆に胸元が開いてるのに、私の着ている服ときたら。
長袖の白のチュニックの上から、ターコイズグリーンの膝丈のジャンパースカートを合わせて、腰のベルトから剣を提げた、冒険者スタイル。
……色気などあるはずがない。
「あんたがあたしの所に来るなんて、珍しいこともあるもんだ。……で、話ってのはなんだい?」
「ゲルダ……お前さんが闇商人の店で買ったって馬のことさ。あの馬を譲ってくれねえかい? あれは元々、俺の旅の仲間の持ち物だったのが、盗まれて闇商人の店に並んでたんだよ。金額については、お前の言い値で構わねぇぜ。正直きついが、何とか用意してみせる」
ヤンガスの真剣な物言いに、思わず感動してしまった。
自分の失態とはいえ、姫様のためにそこまで言ってくれるなんて……!
何千ゴールドでも何万ゴールドでも、私達みんなで用意してやろうじゃないか……!
「相変わらず率直な物言いだね。あんたのそういうとこ、嫌いじゃないよ」
ゲルダさんは顔色ひとつ変えずに、ヤンガスを見上げたままそう言った。
なんだろうな、この嫌な予感。
素直に返してくれなさそうだなという直感が働いてしまった。
「でも、あの馬は売らないよ。毛並みといい、従順そうな性格といい、実に良い馬じゃないか。あたしは本当に良い物は手元に置いときたくなる性分なのさ。いくら金を積まれても譲れないね!」
そうなると思った。
あーあと首を振って天井を仰ぐ。
姫様、昔は城を抜け出すくらいにはお転婆だったのに……。
……私が言えたことじゃないけど。
「ぐぅ……どうしても駄目か? 仲間のためなんだ。俺に出来ることなら何だってするぜ」
「……へえ。あんたの口からそんな言葉が聞けるなんて驚いた。よっぽど大切なお仲間らしいね」
ロッキングチェアに揺られながらゲルダさんはそう言い、そうして椅子の揺れに合わせて立ち上がった。
「いいだろう。ただし、条件を出させてもらうよ。ここから北にある洞窟のこと、まさか忘れちゃいないだろう? あの洞窟に眠るという、ビーナスの涙って宝石を、あんたに取ってきてもらおうじゃないか」
「げげっ! お前、未だにアレを? だけどよう、あの洞窟は昔、俺が……」
「あんた、今、何でもやるって言ったばかりじゃないか! 男が一度言ったことを翻すのかい? とにかく、ビーナスの涙を持ってきな。そしたら、あの馬のことも考えてやろうじゃないか」
……洞窟。
今、ゲルダさん、洞窟って言ったよね。
洞窟にいい思い出がないんだよなぁ……。
絶対に出るじゃん、骸骨系とかミイラとか、なんか色々。
ぐぬぬぬ、と唸りつつも、ヤンガスは「分かった」と頷いてゲルダさんの家を出ていった。
私達もゲルダさんにぺこりと頭を下げ、ヤンガスに続いておうちをお暇することにした。
「まさか姫様と馬車を取り戻すために、洞窟に潜ることになるとはなぁ〜……」
「す、すいやせん姉貴。アッシが強く出られりゃあよかったんでげすが……。昔っから、どうもゲルダのことが苦手で」
「責めてるわけじゃないよ!? どうしたってこっちが下手に出ないといけないからさ、条件を飲まされるのは仕方ないって」
ね、とヤンガスの背を叩いて笑ってみせる。
そりまあもちろん、人様の持ち物を盗まれた上に勝手に売られた挙句、返してほしけりゃ宝石を取ってこいと無茶苦茶を言われたわけだから、頭に来ていないと言えば嘘にはなるけど。
穏便に事が解決するなら、それがいいに決まってる。
「さぁてと、洞窟の場所はヤンガスが知ってるんだよね?」
「勿論でがす。忘れたことなんてありゃしねぇでげすよ」
「ふぅん? ちょっと理由がありそうだけど、まぁいいわ。それじゃ、引き続きヤンガスに道案内してもらいましょ」
「仕方ねぇな、囚われの姫を助けるためだ。さっさとその宝石を取ってきてやろうぜ」
「……ちょっと待って」
洞窟へ向かおうとした私達を、エイトが引き止める。
エイトが真っ先に行くものだと思っていたから、私達は多少なり驚きつつも足を止めた。
どうしたの、と首を傾げて問うと、エイトは心配そうな顔をして私を見て。
「レイラはパルミドで待ってて」
「え……なんで!? 私も行くよ!」
「駄目だよ。だってレイラは病み上がりじゃないか! ここで無理をして、また倒れたりなんかしたらどうするんだよ?」
「も、もうすっかり治ったもん! 私は平気だから!」
「……心配なんだよ! レイラはそうやって我慢して無理をするから!」
うぐ、と言葉に詰まる。
そりゃあエイトにはいつも心配やら迷惑やらかけっぱなしだって自覚はある。
いつもなら、素直にエイトの言うことを聞いたかもしれない。
……でも。
「姫様が攫われちゃったのは、私の失態でもあるから。自分のミスは、自分で取り返さないと」
「姫があの盗賊に攫われたのがレイラのせいだなんて、そんなこと誰も思ってないよ!」
「……陛下!」
私に名を呼ばれ、陛下が「なんじゃ」と返す。
私は陛下の前に膝をつき、頭を下げた。
「姫様が盗賊に拐かされ、ゲルダの元へ売られてしまった責任は、誰が負うべきでしょうか」
「今はそんなことを議論してる場合じゃないだろ。一刻も早く姫を助けるんじゃなかったのか?」
「陛下。酔いどれキントが姫様を攫った時、私は姫様のお傍にいました。そのうえで姫様の誘拐を許してしまった。今回の件、私にも責任の一端があると存じます」
「ええい、皆まで言うな! お前に責任があるのは当然じゃ! 無理せん程度にエイト達について行け!」
「はい!」
やった、陛下の言質取ったぞ!
にししと笑ってエイトを見やると、エイトは怒ったような呆れたような顔をして、それから大きなため息をついた。
「トロデ王の命令まで受けたんじゃ仕方ない。ただこれだけは約束して。僕から絶対に離れないで。つらかったらすぐに言うこと。いい?」
「分かった。ありがとうエイト!」
「はーやれやれ、面倒な建前が必要な奴らだよ」
ククールが呆れ返った様子で歩き始める。
エイトは頑固なところがあるから、建前でもなんでも使って説得しないと、頷いてくれないんだ。
そういうところもエイトの長所ではあるんだけどね。
私と違って慎重派というか、余計な無茶はしないっていうのは大事なことでもあるから。