19章
夢小説設定
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物乞い通りと呼ばれる場所には、もうひとつ酒場がある。
闇商人の店は、その酒場のカウンターと繋がっているらしい。
酒場のマスターに「店の奥に用がある」と伝えると、マスターは私達を上から下までじっと見て、それからカウンターの出入り口を上げてくれた。
ヤンガスがカウンターの中にあるドアを開けると、そこにはちょっとヤバそうな店主が立っている。
……さすが闇商人の店、違法性しか見当たらない。
「おっ、ヤンガスじゃないか。今日はどうしたんだ? 久しぶりに盗品でも売りに来たのか?」
「ヤンガス、あんたねぇ……」
垣間見えたヤンガスのかつての暮らしぶりに、ゼシカが呆れて眉をひそめた。
今では盗賊稼業からは足を洗っているはずなので、昔のことは大目に見てやってほしい。
「いや、そうじゃねぇ。今のアッシは、こっちの兄貴と姉貴と旅をしてて、盗賊稼業からは足を洗ったんだ。それより、あんた! 最近、酔いどれキントって奴から、馬と馬車を買わなかったかい!? 実はその馬と馬車は兄貴と姉貴の持ち物なんだが、そのキントってのに盗まれちまってな。……で、野郎を問い詰めたら、この店に売ったって白状しやがるから、慌てて駆け付けたんだよ」
「キントなんぞに盗まれるたぁ、お前さんともあろう者がついてながら、油断したもんだな。まっ、それはそうと、その馬と馬車だが、確かにキントの奴が売りに来たのを買い取ったぜ。買い取ったんだが……その……言いにくいけど、もう売っちまったんだよな」
「え、ええー!? 売ったぁ!?」
「あんだってぇ〜!? そ……それで、どこの誰に売ったんだ? すぐに取り返しに行かねぇと……」
私とヤンガスの大声が店の中に響く。
この町から出てないってヤンガスが言ったのに!
そんな爆速で売れちゃうことある!?
さすが姫様、馬になっても気品がダダ漏れですね!!
「……それがなぁ。さらに言いにくいんだが、買ってったのはゲルダなんだよ」
気まずそうな顔をする店主が告げた名前に、今度はヤンガスが顔を青くした。
「ゲゲッ! ゲ……ゲルダって、あの女盗賊のゲルダかよ!? 冗談キツイぜぇ……」
「え、ヤンガス、知り合いなの?」
「知り合いも何も、アッシが一番会いたくない人物でがすよ……」
ヤンガスが肩を落とす。
誰に対しても物怖じしないヤンガスにも、うだつの上がらない相手ってのはいるものなんだな。
私は苦手な相手ばっかりだから、ヤンガスの物怖じのなさが羨ましいと思う時もあるけど。
「すまねぇな。オレにはどうにも出来ねえや。後はお前自身で何とかしてくれよ」
肩を落としてトボトボと歩くヤンガスを慰めながら、闇商人の店を出る。
相当苦手なんだな、ゲルダさんって人のこと。
エイトと目が合って、なんて声を掛けたらいいか分からず、私達はそっと視線を逸らした。
「まさか、この件にゲルダの奴が関わってくるなんてなぁ……」
「や、ヤンガス、元気だして……」
とはいえ、これからそのゲルダとかいう人の所に行かなきゃいけないんだから、ヤンガスの気持ちは分かる。
これがただの馬なら私達も無理して取り返しに行ったりしないけど、実際はあの方、馬ではなくて一国の姫君だから、そうはいかない。
「……やれやれ。ほんとは行きたくねぇけど、しょうがねぇや。アイツの家、たしか町を出て南西の方にある、池に囲まれた場所だったよな。さあ、兄貴、姉貴! 馬姫様を助けに行くとしやしょうぜ! 目指すは南西でがす」
ちょっと無理してる感じが否めないけど、ヤンガスがそう言ってくれるなら、私達も遠慮なくゲルダさんのところに向かえるってもんだ。
情報屋さんも戻ってきてないなら、どの道、私達は行くあてもないわけだし。
姫様を助けに行ってこの町に戻ってきた頃には、情報屋さんもひょっこり帰ってきてるかもしれない。
「ともかく、急いでその女盗賊とやらのところへ向かうぞい!」
「そうね、早くお姫様を取り戻しましょう!」
「そうと決まったらすぐに出発するよ!」
「……レイラ、体調が悪くなったら言えよ」
「ククールが優しい……」
うっかり本音が漏れてしまった。
ごめんと謝って、素直に頷いておく。
適当に宜しく、なんて言って私達の旅に加わったけど、なんだかんだで仲間意識はあるのかもしれない。
パルミドを後にして、ゲルダという人が住んでいる場所を目指して急ぐ。
日が傾いてきて、夜が近いけれど、姫様を取り戻すのが先だ。
「ヤンガスって、ゲルダさんの家の場所、知ってるんだよね?」
「もちろんでがすよ。まあ、できれば会いたくはなかったんでがすけどね……」
本気でゲルダさんのことが苦手なようで、こんな時だけどちょっと笑ってしまった。
どういう人なのか、大体の予想はついたかもしれない。
「じゃあ、道案内は任せたよ!」
「任せてくだせえ!」
私たちは走る速度を上げて、ゲルダさんの所に急いだ。
なんとしても、姫様を助け出さないと!
待っていてください、姫様。
どうかご無事で!!
闇商人の店は、その酒場のカウンターと繋がっているらしい。
酒場のマスターに「店の奥に用がある」と伝えると、マスターは私達を上から下までじっと見て、それからカウンターの出入り口を上げてくれた。
ヤンガスがカウンターの中にあるドアを開けると、そこにはちょっとヤバそうな店主が立っている。
……さすが闇商人の店、違法性しか見当たらない。
「おっ、ヤンガスじゃないか。今日はどうしたんだ? 久しぶりに盗品でも売りに来たのか?」
「ヤンガス、あんたねぇ……」
垣間見えたヤンガスのかつての暮らしぶりに、ゼシカが呆れて眉をひそめた。
今では盗賊稼業からは足を洗っているはずなので、昔のことは大目に見てやってほしい。
「いや、そうじゃねぇ。今のアッシは、こっちの兄貴と姉貴と旅をしてて、盗賊稼業からは足を洗ったんだ。それより、あんた! 最近、酔いどれキントって奴から、馬と馬車を買わなかったかい!? 実はその馬と馬車は兄貴と姉貴の持ち物なんだが、そのキントってのに盗まれちまってな。……で、野郎を問い詰めたら、この店に売ったって白状しやがるから、慌てて駆け付けたんだよ」
「キントなんぞに盗まれるたぁ、お前さんともあろう者がついてながら、油断したもんだな。まっ、それはそうと、その馬と馬車だが、確かにキントの奴が売りに来たのを買い取ったぜ。買い取ったんだが……その……言いにくいけど、もう売っちまったんだよな」
「え、ええー!? 売ったぁ!?」
「あんだってぇ〜!? そ……それで、どこの誰に売ったんだ? すぐに取り返しに行かねぇと……」
私とヤンガスの大声が店の中に響く。
この町から出てないってヤンガスが言ったのに!
そんな爆速で売れちゃうことある!?
さすが姫様、馬になっても気品がダダ漏れですね!!
「……それがなぁ。さらに言いにくいんだが、買ってったのはゲルダなんだよ」
気まずそうな顔をする店主が告げた名前に、今度はヤンガスが顔を青くした。
「ゲゲッ! ゲ……ゲルダって、あの女盗賊のゲルダかよ!? 冗談キツイぜぇ……」
「え、ヤンガス、知り合いなの?」
「知り合いも何も、アッシが一番会いたくない人物でがすよ……」
ヤンガスが肩を落とす。
誰に対しても物怖じしないヤンガスにも、うだつの上がらない相手ってのはいるものなんだな。
私は苦手な相手ばっかりだから、ヤンガスの物怖じのなさが羨ましいと思う時もあるけど。
「すまねぇな。オレにはどうにも出来ねえや。後はお前自身で何とかしてくれよ」
肩を落としてトボトボと歩くヤンガスを慰めながら、闇商人の店を出る。
相当苦手なんだな、ゲルダさんって人のこと。
エイトと目が合って、なんて声を掛けたらいいか分からず、私達はそっと視線を逸らした。
「まさか、この件にゲルダの奴が関わってくるなんてなぁ……」
「や、ヤンガス、元気だして……」
とはいえ、これからそのゲルダとかいう人の所に行かなきゃいけないんだから、ヤンガスの気持ちは分かる。
これがただの馬なら私達も無理して取り返しに行ったりしないけど、実際はあの方、馬ではなくて一国の姫君だから、そうはいかない。
「……やれやれ。ほんとは行きたくねぇけど、しょうがねぇや。アイツの家、たしか町を出て南西の方にある、池に囲まれた場所だったよな。さあ、兄貴、姉貴! 馬姫様を助けに行くとしやしょうぜ! 目指すは南西でがす」
ちょっと無理してる感じが否めないけど、ヤンガスがそう言ってくれるなら、私達も遠慮なくゲルダさんのところに向かえるってもんだ。
情報屋さんも戻ってきてないなら、どの道、私達は行くあてもないわけだし。
姫様を助けに行ってこの町に戻ってきた頃には、情報屋さんもひょっこり帰ってきてるかもしれない。
「ともかく、急いでその女盗賊とやらのところへ向かうぞい!」
「そうね、早くお姫様を取り戻しましょう!」
「そうと決まったらすぐに出発するよ!」
「……レイラ、体調が悪くなったら言えよ」
「ククールが優しい……」
うっかり本音が漏れてしまった。
ごめんと謝って、素直に頷いておく。
適当に宜しく、なんて言って私達の旅に加わったけど、なんだかんだで仲間意識はあるのかもしれない。
パルミドを後にして、ゲルダという人が住んでいる場所を目指して急ぐ。
日が傾いてきて、夜が近いけれど、姫様を取り戻すのが先だ。
「ヤンガスって、ゲルダさんの家の場所、知ってるんだよね?」
「もちろんでがすよ。まあ、できれば会いたくはなかったんでがすけどね……」
本気でゲルダさんのことが苦手なようで、こんな時だけどちょっと笑ってしまった。
どういう人なのか、大体の予想はついたかもしれない。
「じゃあ、道案内は任せたよ!」
「任せてくだせえ!」
私たちは走る速度を上げて、ゲルダさんの所に急いだ。
なんとしても、姫様を助け出さないと!
待っていてください、姫様。
どうかご無事で!!
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